人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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今更ながら今作の闇魔法について解説を。

ありふれ原作では精神や意識に作用する魔法だが、今作では暗黒物質のようなナニカや重力による攻撃もこの属性である。ブラックホールなどは重力で光すらも飲み込むため、そこまで突飛な設定では無いと作者は思っている。


苦刑ノ乙女

ヘンゼルとグレーテル、人形のような甲冑のような二体の石像。地球に存在するお菓子の家で有名なあの童話を模しているのか、逆に童話の方が模しているのか、はたまた全くの無関係なのかは不明だ。しかしハジメ達にとっては自分達に立ちはだかる敵以上の意味は持たなかった。

 

「はあ、なんとかやれてるね」

「動きもそれほど複雑ではありません。押し切ってしまいましょう」

「童話の登場人物に動く石像…」

「目の前の景色は現実ですがね」

 

この二体の石像は、石で出来ているとは思えない硬さと身長3メートル程はありそうな巨体に似合わない機動性を持ち合わせるが、今までの奈落の魔物達に比べれば分かりやすいモノだった。

今はハジメが青い目の石像『ヘンゼル』を、香織が赤い目の石像『グレーテル』を相手にしている。とはいえこの状態は固定されたものではなく、二人は相手を入れ替えながら行動パターンを相手に悟らせないように立ち回っていた。

しかし此処にわざわざ配置された番人なだけあり、このままやられるというような事は無かった。

 

「おっと…」

「ハジメくんの攻撃が弾かれた…」

「防御結界ですか。しかし相手も動けないようですね」

 

ハジメはヘンゼルに攻撃が通らないとみると、グレーテルにアストレイアの銃撃を放つ。

 

「ならば結構、結界を張っていない方から倒しましょう」

 

ハジメはセインで中距離戦を挑み、香織はワルドマイスターで接近戦を挑む。

香織は弓で2回斬りつけ、本体で横薙ぎし、エンドピンで刺突、さらにチェロを地面に突き立て、それを弓で斬りつける事により音の斬撃を飛ばし、最後の一撃を弓で加えるという連撃を行った。

香織の攻撃が終わった所で防御結界がグレーテルに移り、ヘンゼルが攻撃を始める。

 

「っ!」

 

ヘンゼルは口?から火炎弾を連射してきた。ハジメは少し驚いたものの、セインで撃ち落としていく。その隙に香織が弓を投げて接近し、ワルドマイスターでの横薙ぎを加える。更にヘンゼルにエンドピンを突き立て、電流を伴った強烈な一撃を加える。

 

しかしヘンゼルとて佇むだけの案山子ではない。すぐに炎を纏った槍で反撃してくる。香織は後ろに跳んで回避し、ハジメがアストレイアで射撃。怯んだヘンゼルに更に肘鉄を当て、リーブラを連射する。ヘンゼルはハジメを攻撃するが、ハジメはそれを回避し、カウンターとしてアストレイアによる銃撃を放つ。すると防御結界はヘンゼルを包み込み、結界が解けたグレーテルが背後から香織を槍で刺そうと突撃してくる。

 

「見えてるよ!」

 

しかし香織はサイドステップで回避し、細剣による一撃を加えようとするが、

 

ガキンッ―――!

 

「っ!」

 

グレーテルは手に持つ盾で攻撃を弾き、槍でカウンターをする。香織はワルドマイスターで防ごうとするが、その前に『氷晶』で急接近したハジメが槍を弾く。

 

「失礼。エスコートの仕方がなっていなかったもので。お邪魔でしたか?」

「いいえ。やっぱりダンスのパートナーはハジメくんじゃなきゃ駄目みたい」

 

軽口を叩き合った二人は流れるように攻撃を続ける。グレーテルは火炎弾を放つが、香織の『破壊音響』によって霧散される。この攻撃で無防備となったグレーテルにハジメは『白夜還流』を叩き込む。よろめくグレーテルに香織がエンドピンによる刺突攻撃を加え、さらにハジメがアストレイアでグレーテルの左目を撃ち抜く。

その銃撃がトドメとなり、グレーテルは倒れた。

 

「残り一体」

「早急に片付けましょう」

 

防御結界を解いたヘンゼルはグレーテルの姿を見て怒り狂ったように叫ぶ。

 

「謝罪はしませんよ。僕達にとって必要なことですから」

 

ハジメの言葉が分かるはずもないが、ヘンゼルはそれまでとは一線を画す勢いで火炎弾を放出する。香織が『破壊音響』で相殺するも、全ては対処しきれない。しかしハジメは『氷晶』で急接近し、袈裟斬りと斬り上げを二回ずつ行う剣技『嵐雪』で火炎弾を切り裂き、更に『白夜還流』でヘンゼルを斬る。

しかし怒涛の連撃を繰り広げながらも、背筋に悪寒が走ったハジメは咄嗟にその場を飛び退く。その直後ヘンゼルが槍を振り下ろし、周りの地面から剣山が生える。

 

「迂闊に近づくのは危険ですね」

「遠隔攻撃だね」

 

ヘンゼルは更に槍を振り下ろし延長線上に剣山を生やすが、武器をオディリアに変えた香織はサイドステップで回避し、演奏を始める。彼女の周りに無数の魔弾が現れるが、ヘンゼルも火炎弾で応酬する。

しかしハジメは異合探査ユニットの残骸から作った機械アームにセインを撃たせ、自身もリーブラによる制圧射撃で火炎弾を相殺していく。

両者が撃ちあっている間に香織の演奏が終了し、魔弾がヘンゼルに襲い掛かる。ヘンゼルは応戦しようとするも、ハジメのアストレイアによる攻撃で体制を崩し、香織の魔弾が次々と命中する。そして白い花のような爆発を連続的に起こし、ヘンゼルも倒れた。

二体が事切れている事を確認した香織はオディリアで演奏を始め、一曲弾き終えるとお辞儀をした。

 

「戦場へ消えていった命へ、鎮魂曲(レクイエム)を」

 

これは香織が自身に課したルールであり、探索や大きな戦闘の終わりに敵を弔う曲を演奏するのである。死した存在が音楽を聴いているはずもない、単なる自己満足であると言われても否定は出来ないが、香織にこの演奏を止める気は無い。敵への弔いだけでなく、自身が殺戮を楽しまないように戒める行為でもあるためだ。『セイレーン』という狂気の産物を生み出した香織の、残虐性への抵抗とも言える行為。

ハジメも香織のこの行動を止める事はしなかった。ハジメも敵を弔う事には賛成であったからだ。音を出すことが出来ない状況下では止めるが、そういった場合は香織も弁えているため止める必要性はあまり無かった。なにより弔いの演奏をする香織は美しかった。ハジメは自分も敵に対して黙祷をした後は、鎮魂曲を演奏する香織を眺めていたりするのである。

 

 

 

 

「待たせちゃったね。行こうか、ハジメくん」

「平気ですよ。気の済むまで弾きなさいな」

「ふふ、ありがとう」

 

ハジメは演奏が終わった後、ヘンゼルとグレーテルの残骸から魔石を取り出し、扉の窪みに合わせてみると、ピッタリとはまり込んだ。直後、魔石から赤黒い電子回路模様が迸り、魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音が響き、光が収まった。同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。

ハジメ達は少し目を瞬かせ、警戒しながら、そっと扉を開いた。扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。ハジメ達がその空間に一歩を踏み出した所で違和感に気付く。本来であれば固い大理石の感触が足に伝わってくるはずが、ハジメ達が踏みしめたのは液体だった。

そして、ハジメ達はその感触を知っていた。それは香織、彼女が侵蝕されたセイレーンによって生み出された赤黒い液体。パニシング赤潮のものだった。

 

「ハジメくん、これ…」

「パニシング赤潮…ですね。香織の時と同じならばこれを生み出している存在がいるという事ですが」

「どうする?引き返す?」

 

ハジメは少し考える。確かに赤潮がある以上この空間は危険だ。しかし自分達を授格者たらしめたパニシングについては不明瞭な点が多い。ここで引き返せば、パニシングの解明への足掛かりを一つ失う事になる。故にハジメはこの部屋を探索することに決めた。虎穴に入らずんば虎子を得ず。時にはリスクを承知で踏み込まねばならないときもある。

 

とはいえ何が起こるか分からないのも事実。ハジメ達は慎重を重ねて部屋を探索する。香織の『反響定位』やハジメの『動体解析』、『敵性反応感知』などの技能を使いながら探索していると、奇妙な物を見つけた。シルエットはドレスを着た長身の女性のようだが、所々から針が生えており、全体的に禍々しい印象を受ける。さしずめゴシックアートと拷問器具の中間体と言ったところか。

一見すると不気味なオブジェのようにも見えるが、あれだけ手の込んだ封印をしていたのだ。ただの芸術作品ではないだろう。

 

ハジメ達が警戒しつつも訝しんでいると、ソレは突如として巨大な針を飛ばしてきた。ハジメ達は左右に分かれるようにして避ける。するとソレの頭部に当たる部分が赤く光り、あまり速くは無いがハジメ達を睥睨するように方向転換する。

 

WARNING   苦刑ノ乙女

 

二人の脳裏に再び警告信号が鳴り響く。

 

鎮魂曲(レクイエム)を弾いたばかりでお手数かけますが、手伝ってください」

「言われるまでもないよ」

 

ハジメと香織が戦闘態勢を取ると、苦刑ノ乙女は二人を分断するように黒い針の壁を作る。

 

「これは…黒ノ処刑?」

「同一ではないにしろ、似たような物のようですね。足元にご注意を」

 

とはいえ二人は分断されてしまっているため、それぞれが敵に攻撃を仕掛ける。ハジメは飛んでくる針や、地面から散発的に生えてくる針を避けながらリーブラで銃撃し、隙を見てアストレイアも使う。香織はハジメ程の機動性は持たないが、飛来する針は『破壊音響』で対処し、地面からの攻撃は確実に避けている。幸いにして苦刑ノ乙女はあまり動かない固定砲台タイプの敵らしく、分断されながらも連携は容易であった。

 

香織が細剣での近接攻撃を仕掛け、注意を誘導し、ハジメはその間にアストレイアで狙い、銃撃時は香織は離れ、今度はハジメが朱樺で攻撃し、香織の遠隔攻撃時は離れる…という戦法で戦っていると、突如として針の壁が消失した。

 

「…!」

 

しかしそれほど間を置かずに今度は二人を中央に追い詰めるように針を出す。更に二人が合流した所で、囲むように針を出した。

 

「これ、まずいんじゃ…」

「閉じ込められましたか…」

 

苦刑ノ乙女は檻の中の獲物に対して赤黒いエネルギー弾を放つがハジメがセインで相殺する。

 

「攻撃は僕が対処します。香織は針の破壊を」

「分かった!」

 

こんな状態で地面からの針攻撃でも来よう物なら詰みである。ハジメがセインやアストレイアで牽制や攻撃をする傍ら、香織は『破壊音響』で針の檻を破壊する。そして地面からの針が来る間一髪で二人は回避した。

 

「出来る限り離れましょう。二人同時に閉じ込められるのだけは回避するんです」

「了解!」

 

あの限定された状況下ではハジメも全ての攻撃を捌く事は出来ず、幾つかの針やエネルギー弾には被弾してしまった。自分の身体に刺さった針を抜き、後は『自動修復』に任せ、ハジメは遠隔攻撃を開始する。それを見た香織は苦刑ノ乙女に弓を投げつけ、急接近してワルドマイスターでの横薙ぎを喰らわせる。

 

苦刑ノ乙女は香織を針の檻に閉じ込めるが、今度はハジメに気を使わなくて良いために、さっきよりも短時間で抜け出される。それならばハジメを、と針の檻を出現させるが、ハジメには『超速演算』を使って回避された。

 

業を煮やした敵は縦横無尽に針を生やし、戦場を狭める事で優位に立とうとするが、香織に片端から破壊され、さらにハジメが針をバリケード代わりにし、隙間から精密な射撃を撃ち込まれる。

 

そうして闘っているうちに、苦刑ノ乙女は動きを停止した。ハジメと香織が警戒し距離を取ると、敵の上半身の装甲が剥がれ、中から何かが出てくる。その出てきたモノは…

 

「人!?」

「っ!」

 

ハジメが咄嗟に近寄り、その人物を抱きとめる。その人物の外見は12歳前後の少女で、意識こそ失っているが、香織曰く心音のような物は聞こえるため、命に別状は無いようだ。

 

「この子、一体…」

「考えるのは後です。ひとまず安全な場所に避難しましょう」

 

ハジメ達はパニシング赤潮が満ちる封印部屋から抜け出し、自分達が作った拠点へと向かった。

 




ユエファンにも怒られるなこりゃ(涙目)。というか現時点の構想では殆どのヒロインのファンに怒られますわ(笑)。既に勇者ファンに喧嘩を売っているというのに…

封印部屋のサソリ「あれ?俺の出番は?」
残念ながら苦刑ノ乙女にやられてしまった模様。

備忘録

苦刑ノ乙女:パニグレのボスの一体。囲むように展開される針の攻撃が厄介。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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