人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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ハーレム物っていざ書くと難しいですね。(異世界転生ハーレム物の小説を書こうとしたら魔女と死神のラブストーリーを書いてしまった人並感)

あとタイトルの元ネタがバレそう。


語ライ/アイ二乗

―――どうして私がこんな目に

―――どうして裏切ったの?叔父様

―――痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ痛イイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!

―――誰カ私ヲ助ケテ!殺シテ!この地獄のヨウナ痛みガ永遠に続クなら、いっそヒトオモイにコロシテ!

 

 

 

「…!」

 

封印されていた少女は目を覚ます。肉親に裏切られ封印されてから、今日でどれほど経つだろう。また痛みに耐えねばならぬのか。少女が憂鬱になりかけた所で違和感に気付く。手が動く、足が動く。封印されていた自分は手足など碌に動かせなかった。しかし今、自身の身体はなんの拘束もされずに横たえられていた。

 

「おや?目が覚めましたか」

 

声が聞こえた方を見ると、見たことの無い道具を弄っている男がいた。体格や声から男性だと分かったが、少し長めの髪に中性的な顔。女性と言われても違和感が無い。

 

「…今何か失礼な事考えてませんでした?」

 

少女は首を横に振って否定する。状況は分からないが、封印されてから初めての知性体である。機嫌を損ねるのは悪手だ。

 

「ああ、そんなに固くならなくても大丈夫ですよ。僕は心が広い…というより自分に無関心だから、大抵の暴言は許してしまうのです」

「それはそれで問題じゃないかな、かな」

 

今自分が思った事と同じ事を言いながら、むすっとした顔で右眼に白い花を咲かせた女が洞穴の奥から出てきた。

 

「あ、目が覚めたんだね!良かった…」

 

しかし意識が戻った自分を見て表情を綻ばせる。すると男は手作業を止めてこちらを見た。

 

「役者も揃ったところですし、貴方について聞きましょうか。まず一つ、これは形式的な質問ですが、僕達と敵対する意思はありますか?」

 

 

苦刑ノ乙女から出現した少女が目覚めた時、ハジメ達が最初に問うたのは「敵」か否か。現状敵対の意思は見られないが、仮にも封印されていて、自分達に襲い掛かってきた相手。本人の口から直接確認を取りたかった。

 

「敵対する意思は…無い。次は…貴方達の…名前を教えて欲しい」

「個人情報の開示はもう少し後ですね。僕はまだ貴女を完全には信用していない。少しでも危険だと判断したら…殺してしまうかもしれませんね?」

 

目の前の少女は少しゾッとしたような表情を見せる。香織は少女を心配そうな表情で見つめるが、いざとなればそのような手段を取らなければならない事も分かっているので、複雑そうな様子だ。

 

「次の質問です。何故、封印されていたのです?」

「…裏切られた」

「ほう、誰に?そして何故?」

「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

枯れた喉で必死にポツリポツリと語る少女。随分とまあ波乱万丈な人生だ。異世界版ロベスピエールの犠牲となったらしい。ハジメと香織の心中は複雑だったが、いくつか気になるワードがあったので質問を重ねる。

 

「貴女、王族だったんですか?」

「……(コク)」

「殺せない、とは?」

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

 

確かにそれは凄まじい力だ。ふとハジメは『自動修復』の限界が気になった。欠損した部位すらも修復するこの技能だが、首を落とす、すなわち脳との接続を断たれても『修復』されるのか、それともそのまま死ぬのか。今度試してみようか。などと考えていると、香織から物凄いプレッシャーを感じる。時々「思考を盗み見ているのか?」と思うような反応をする香織に、ハジメは少し冷や汗を流しながら問答を再開する。

 

「すごい力というのはそれですか?確かに聞く限りは事実上の不死ですし」

「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

「なるほど。危険因子扱いされるわけだ」

 

この少女の演算能力を例えるなら、20世紀の真空管を使ったコンピューターに対する未だ実用化されていない量子コンピューターだ。周りが一千万年かけてNP問題を解いている間、一瞬で最適解が導き出せる。

「わざわざ封印したのは、研究材料にでもしようとしたのかな?」などとマッドサイエンティストのような考えが浮かび、慌てて打ち消すハジメ。少女はそれを拒絶と取ったのか、泣きそうな顔で懇願する。

 

「……おねがい…たすけて……もうあんなの嫌……ずっと暗くて……誰もいなくて……体も蝕まれて……助けないなら…いっそ殺して…」

「ハジメくん…」

 

ハジメは少女と恋人を見る。香織は言葉に出さないが、少女を助けたいと思っているのは表情で分かる。

この少女の言葉には何の根拠も無い。全てが嘘であり、自分達に害するものであるという可能性はゼロではない。しかしハジメには目の前の少女の様子に『嘘』を見出すことが出来なかった。全くもって非論理的だが、ハジメにはこの少女は信用できるという感情があった。「機械と化した今でも、まるで人間みたいな事を考える。理解不能だ」と自身の非論理性に愉快な気分となる。

 

「分かりました。貴女を助ける…かどうかは知りませんが、この旅の道連れとしましょう」

 

捻くれた表現で自身の救済を決めたハジメに、少女は目を見開く。

 

「……いいの?」

「僕の脳裏の量子論は、そう結論付けました」

 

少女はハジメの手を握る。弱々しい、力のない手だ。小さくて、ふるふると震えている。ハジメが横目に様子を見ると少女が真っ直ぐにハジメを見つめている。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

そして、震える声で小さく、しかしはっきりと少女は告げる。

 

「……ありがとう」

 

繋がった手は握られたままだ。いったいどれだけの間、ここにいたのだろうか。少なくともハジメの知識にある吸血鬼族は数百年前に滅んだはずだ。この世界の歴史を学んでいる時にそう記載されていたと記憶している。地球で言うなら第一次世界大戦よりも前だ。

 

話している間も彼女の表情は動かなかった。それはつまり、声の出し方、表情の出し方を忘れるほど長い間、たった一人、この暗闇で孤独な時間を過ごしたということだ。しかも、話しぶりからして信頼していた相手に裏切られて、パニシングに感染し逃げ場のない痛みに耐え続けた。よく発狂しなかったものである。自動再生的な力の影響かも知れないが、だとすれば逆に拷問だっただろう。狂うことすら許されなかったということなのだから。

 

恋人の香織には申し訳ないと思いつつも、ハジメは少女に見惚れてしまった。「死んだ女よりもっと可哀想なのは忘れられた女だ」という言葉を思い出したのだ。現代風に表現するなら、生物学的な死よりも悲惨なのは情報(ミーム)の消滅であるという事だ。実際のところ、ドラマチックに人が死ぬストーリーは売れる。『ロミオとジュリエット』などその最たる例であろう。非業の死によって登場人物の情報(ミーム)は読者の脳裏に残り続ける。

 

しかしこの少女の場合は、封印と言う措置によって存在ごと忘却された。誰の頭にも、文献にも残る事が無く、機械的な予定調和によって(ゼロ)となる。その死滅回遊から救い出された情報(ミーム)という物は得も言われぬ美しさを持つものだ。

 

無論、この少女が小さいながらもどこか神秘性を感じさせる外見であることも拍車をかけているかもしれないが…

 

「ふふ、良かった。たった今から仲間だね」

 

香織が安堵と祝福の声を掛けながらも、ハジメと少女をやんわりと引き離す。少女は少し残念そうな顔をしながらも、「……名前、なに?」と聞いてきた。

 

「南雲ハジメです。ハジメが名です」

「白崎香織。ハジメくんの恋人」

 

香織は名前よりもその後ろの部分を強調している感じがあるが、とりあえずそれぞれが名乗ると、少女は「ハジメ、カオリ」とその名を呟く。それは、裏切られて一人になってから数百年ぶりに出来た誰かとの縁を確かめるような呟きだった。

 

「貴女の名は?」

「……名前、つけて」

「付ける?」

「忘れてしまったのですか?」

 

詳細な年月は不明だが、吸血鬼という種族は数百年前に滅んでいる。目の前の少女は吸血鬼が実在していた時代の存在だ。これらから封印されていた期間は相当長い事は自明である。それだけの時を誰とも話さず、名乗る事も無く過ごせば名前を忘れるというのは有り得ない事ではない。だが、二人の問いかけに少女は首を横に振る。

 

「もう、前の名前はいらない。……二人の付けた名前がいい」

「さてどうしましょうか…」

 

二人は名前を考える。しかし香織はこの手の思考には慣れておらず、小夜(サヨ)月子(ツキコ)といった日本人ネームや、夜想曲(ノクターン)子守歌(ララバイ)といった音楽用語しか思い浮かばない。後は花の名前とかどうだろう。と考えていると、先にハジメが考え付いたようである。

 

「『ユエ』というのはどうでしょう」

「ユエ…?」

「地球の言語の一つで『月』を意味する言葉です。我々のイメージとして吸血鬼といえば夜なので、そこから月を連想しましてね」

「ユエちゃんか…うん、悪くないかも」

「お気に召さなければ別の名を考えますが」

「ユエ…」

 

少女はそっと胸に手を当てる。それはまるで大事な物をそこに仕舞うかのような仕草に見えた。

 

「…ん。今日からユエ。ありがとう」

「うん、よろしくね。ユエちゃん」

 

因みに原典ではユエは封印から解除された時は全裸だったのだが、今作ではパニシングの影響か白い衣装を身に纏っており、髪は白髪でツインテールである。

そして香織は「もしハジメくんとの間に子供が出来たら命名権はハジメくんに譲ろう」と思ったとか。

 

 

 

「そうなると少なくともユエは三百歳以上ということですか」

「…マナー違反」

「おっと…」

 

ハジメ達は拠点で親睦会を開いていた。とはいえ会場はハジメが作った洞穴であるからお世辞にも華やかとは言えないが。

 

「という事は私よりも年上なんだ」

「ん。だから、ちゃん付けはやめて欲しい」

「そっか、うん。ユエ。これでいい?」

「ん」

 

ふとハジメは気になったことがあった。

 

「吸血鬼って皆そんなに長命なのですか?」

「…私が特別。『再生』で年も取らない」

 

事実上の不老不死というわけだ。彷徨えるユダヤ人(カルタフィルス)のように生きながらにして身体が朽ちていくわけではないのが救いか。ただハジメの価値観は『全ての存在は滅びるようにデザインされている』なので、あらゆる状況下で絶対では無いだろうと思っている。

因みに此処に連れてこられたまでの詳しい経緯は記憶に無く、初めて会った時以上の情報は持っていないとの事。

 

「まあ過去の事は置いといて、現状最優先すべきはこの迷宮からの脱出です。ユエ、非常口とか知りません?」

「分からない…でも」

 

ユエにもここが迷宮のどの辺りなのかは分からないらしい。申し訳なさそうにしながらも、何か知っていることがあるのか話を続ける。

 

「…この迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

「反逆者?」

「神話の時代にエヒト神に逆らって世界を滅ぼそうとした集団だそうです」

 

しかし反逆者は敗北。そしてそれぞれの逃げた先で作り出されたのが現代の七大迷宮とされる場所らしい。そしてその最深部には反逆者の隠れ家が存在しているそうな。

 

「……そこなら、地上への道があるかも……」

「なるほど。確かに、僕なら直通エレベーターくらいは作る」

 

隠れ家、と言う事は反逆者はそこで生活をしていたと言う事。ならば生活に必要な物資を揃えるのに密かに地上に出向く必要もある。そしてその度にあんな長い道のりを進むのは普通に考えてありえない。

 

「なら、このまま最深部を目指して進むのが一番ということだね」

「希望が見えてきましたよ、と」

 

言いながら、ハジメはセインなどの銃火器やワルドマイスターなどの楽器のメンテナンスを行う。

 

「…二人は」

「?」

「二人は、どうしてここにいる?」

「ちょっと長くなるよ?少なく見積もっても長編小説の4分の1くらいはあるし」

「構わない。嫌じゃないなら…聞かせて欲しい」

「うん、実はね…」

 

それから香織がメインとなってこれまでの経緯を話す。いきなり別の世界から呼び出されて闘う事になった事、クラスメートの裏切りで奈落へと落ちた事、『セイレーン』と化した後の事、後は多少ハジメとの惚気話もあった。

 

「それで、この階層で怪しい扉を見つけたから一度探索を中断して…って、どうしたの、ユエ!?」

「…ぐす…二人とも…つらい…私もつらい」

 

香織がユエの方に目を向けると、彼女は涙を流していた。特に裏切りの場面と、セイレーンの場面は悲しかったらしい。

 

「それほど気にせずとも良いでしょう。クラスメート達は一部を除いてどうでも良い。僕が真実を告げ、復讐するとするなら、それは真実を知らない者を納得させるためではなく、知っている者を守る為です」

「そうだね。でも…」

 

香織はそこで言葉を止めて、今も涙を流しているユエをそっと抱きしめた。

 

「…カオリ?」

「私達の為に、悲しんでくれてるんだね。慈悲は義務のように与えられるものではないもの。それでも、私達に哀歌(エレジー)を捧げてくれてる。ありがとう、ユエ」

「…ん」

 

暫く後、ユエが泣き止むと、ハジメ達が地上に出たらどうするのかを聞いてくる。

 

「元の世界への帰路を探します。やり残したこともありますし」

「そうだね。私も帰りたい。色々変わってしまったけれど」

「…そう」

 

そこで香織から離れたユエが俯きながら呟く。その声も少し沈んでいる。

 

「…私には、もう、帰る場所…無い」

「ユエ…」

 

そんな彼女の様子を心配そうに見ていた香織だったが、その視線をハジメの方へ移す。ハジメも作業の手を止めて暫し思考の海を漂っていたが…

 

「良ければ貴女も来ます?」

「え?」

「ですから、僕の故郷に。普通の人間しかいない世界ですし、麗しき国であるが故に完璧でない人間を蛇蝎の如く排除しようとしますが…まあ、なんとかなるでしょう。僕達も人間と呼ぶにはズレた存在ですし」

 

ハジメの言うとおり、ユエが地球で暮すには色々と問題は多いだろう。けれど300年以上の時の流れに置き去りにされ、頼れる人が今此処に居るハジメ達だけと言う状況よりはマシな筈だ。

 

「いいの?」

「貴女がそれを望むなら」

「私も反対意見は無いよ。(ぬる)い夜の誘蛾灯の(ヒグラシ)も、軒先の風鈴も、祭囃子の憧憬も、ユエに知ってほしいから…」

 

二人のその言葉を聞いて、ユエはハッキリとした笑顔を浮かべる。それを横目で見たハジメは、その美しさに思わず静止してしまった。

 

「ハジメくん、オディリアとワルドマイスターのメンテナンスは終わったかな。ちょっと『シラノ・ド・ベルジュラック』の曲を演奏したいのだけれど」

 

シラノ・ド・ベルジュラックとは、簡単に言えばこの状況の性別を逆にした横恋慕の戯曲であり、ミュージカルも存在する。不可抗力とはいえ、恋人(コンサート・ミストレス)以外の女性に見惚れるハジメへの警告である。ハジメはその意味を正しく受け取り、背筋に悪寒を感じながら作業に没頭するのであった。

 




実はハジメは原典と違い中性的な見た目となっています。そしてユエの外見『白い』『ツインテール』、そして『月』を意味する名前…この時点で誰が元ネタとなるか分かる人もいるのではないでしょうか。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
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