人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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クラスメートsideその2。雫の回想の続きです。遠藤対小悪党でございます。


内紛/回想

突如として始まったクラスメートの内紛。遠藤一人に対し、相手は小悪党四人だ。小悪党達は気に入らない相手をリンチできる状況に喜びを隠しきれない。雫は小悪党達を諫めようとするが、光輝は「相手を馬鹿にした遠藤が悪い」と言って雫を止める。永山達は遠藤を心配そうに見るが、割って入る勇気は無い。

 

「来ねえならこっちから行くぞ!」

 

『槍術師』である近藤が遠藤に槍の刺突攻撃を放つ。しかし遠藤はそれを難なく避けるとカウンターをお見舞いした。そしてそのまま下段、横薙ぎ、振り下ろし、二連撃、突進しての斬りつけと連撃を行う。

それを妨害するように檜山が剣による攻撃を仕掛けるが、遠藤はその場で錐揉み回転して檜山と近藤に斬撃を浴びせる。ついでに魔法を放とうとしている中野と斎藤に、暗器の投擲を行い牽制。自分よりもステータスの高い四人を相手に互角どころか善戦している。その状況は小悪党達の表情を歪ませるには充分だった。

 

「余裕のつもりかよ!」

 

自分達の勝利が揺らいだからか、中野が叫ぶ。しかし遠藤は動じた様子も無く答える。

 

「まさか。ギリギリだ。だが、悪くはない」

 

遠藤はそう言うと、コートの内ポケットから二枚のコインらしき物を取り出した。怪訝に思う小悪党と周りを他所に遠藤はコインを前方に投げると、直後に指を鳴らす。すると二枚のコインからレーザーが発射され、中野と斎藤へ迫る。

 

「はああああ!?」

 

驚きながらも間一髪で避ける二人。遠藤以外は何が起きたのか一切分からなかった。

今の技を説明すると、投げられたコインには魔法陣が付与されており、魔力を供給されると発動する仕組みになっている。ではその魔力は何処から来たのかと言うと、遠藤が装着している指抜きのグローブだ。このグローブにも魔法陣が付与されており、指を鳴らすと任意の方向に魔力を飛ばす仕組みになっている。ただ魔力を飛ばすだけなので、身体強化と同じく詠唱の必要が無い。いや、厳密には詠唱をしているのだが、指を鳴らす音が詠唱代わりという地味に凄い事をやっている。ハジメと遠藤が考えた趣味全開のロマン兵装だ。

 

「んなもん、撃たせる前に攻撃すりゃあ…」

「足元にご注意を」

「あ?」

 

檜山が一歩を踏み出した瞬間に、彼の足元が爆発する。

 

「今度はなんだよ!」

 

間一髪で避けた檜山が悪態をつく。そしてついさっきまで自分がいた場所を見ると、そこにはレーザーを撃った後地面に落ちたコインがあった。コインは一度使用して終わりではない。地面に落ちた後は設置型のトラップとしても機能するのだ。

 

「ならそれを避けて戦えば―――!」

 

近藤はそう言って槍で攻撃するが、今度は眼前でコインを爆発させられて怯む。そして地面に落ちたコインから更に爆破攻撃を喰らう。

 

「この野郎!」

 

中野と斎藤が魔法を放とうとするが、遠藤はそちらにコインを投げ、指を鳴らす。するとコインから煙が噴射され、二人の視界を遮る。

 

「しゃらくせえ!」

 

二人は魔法を放つが、その後聞こえてきたのは遠藤の声では無く、

 

「うおあ!?痛え!」

「アッチイ!!」

 

檜山と近藤の悲鳴だった。中野と斎藤は困惑する。今の今まで遠藤は確かにその位置にいた。しかし自分達が放った魔法は味方に命中していた。

 

「この程度の策に謀られるなよ。情けない…」

 

遠藤はのたうち回る二人の奥で涼しい顔をして立っていた。今遠藤がやった事と言えば煙幕を張って中野と斎藤の視界を遮り、魔法の軌道上に檜山と近藤を誘導して自分は離れただけである。遠藤からしたら、フレンドリーファイアくらい警戒しろよと言いたかった。

 

「で、まだやるか?」

 

遠藤としては自分の主張の正当性は示せたため、これ以上の戦いは無意味であった。しかし公衆の面前でプライドをへし折られた小悪党組は違うらしい。遠藤を睨みつけながら立ち上がり、攻撃態勢を取る。遠藤は「まだやる気かよ…」と溜息交じりに武器を抜くと、この場に似つかわしくない能天気な声が聞こえてきた。

 

「わあ、賑やかだねー。パーティーをやるつもりなの?」

 

それは笑顔で訓練場にやってきた谷口鈴だった。手には物騒な機械、チェーンソーを持っている。遠藤対小悪党の戦いを見ていたクラスメート達はモーセの前の海のように割れる。この中では一番冷静な雫でさえ驚いていた。

 

「た、谷口!?なんだよ、それ…」

「おー、整備終わったのか。どうだ?使い心地は」

「悪くないよ。外で機械や魔物達を何匹か切って来たけど、近接戦には余裕で対応できるね。ウォルペンさん達にはたくさん手伝ってもらったし、今度お礼しないと」

「だな。このコインも量産してもらったし」

 

鈴が持つチェーンソーには生々しい血痕が付いていた。彼女の言葉通り、ソレで生き物を切ったのだろう。刀で魔物を斬った時の感触に心底恐怖していた雫は、そのような行為をして顔色一つ変えない鈴を、まるで人間ではない違う生き物のような視線で見てしまった。

 

「てか掃除して来いよ。切れ味落ちるだろ」

「この後掃除するつもりだったよ。でもその前に遠藤君達を見つけたんだからしょうがないじゃん」

「いや遠藤君、鈴、切れ味の心配する前に周りの反応見なよ。まるで13日の金曜日じゃないか」

 

いつの間にか近くの屋根に上っていた恵里がツッコむ。遠藤は「確かに」と苦笑いだ。

 

「で?お前らはまだ勝負を続けるか?俺はこれ以上はカロリーの無駄と判断するが」

「ふ、ふざけんな!俺達はまだ負けてねえ!」

「へ~、面白そうじゃん。鈴も参加していい?実を言うと対人戦のシミュレーションはまだなんだ」

「ひっ!?」

 

チェーンソーを起動させた鈴に小悪党組は悲鳴を上げる。

 

「暇だから僕も参加するよ。いいデータが取れそうだ」

 

恵里も参加を表明する。しかしそのあまりにも興味本位な姿勢に怒りや恐怖を覚える者もいる。そして正義と善意の塊、天之河光輝が声を上げる。

 

「恵里!檜山達は不真面目な遠藤を更生させようとしているんだぞ!それを君は自分の興味本位で搔き乱そうと言うのか!鈴もだ!チェーンソーなんて残虐な武器は捨てるんだ!」

 

しかし二人は耳を貸さない。それどころか冷笑すら浮かべている。まるで「雲の中に顔がある」と騒ぐ子供を見るような見下すような笑顔。

 

「残虐な武器、ね。聖剣とやらは違うのかな?純白の光で敵を倒す。光に焼かれた皮膚の臭気が戦場に満ちる。暴威に蹂躙された生き物の苦痛の声がこだまする。なんにも違わないよね?」

「な…そんな事有り得ない!俺はそんな残酷な事なんかしていない!話を逸らすんじゃない、鈴!」

「剣や魔法で殺せば上等?チェーンソーで殺せば外道?どちらも相手を征服し、殺害している事には変わりないのにね。まあいいんじゃない?でも、君の趣味を鈴に押し付けないで欲しいなあ。I'm my own master now. I'm not(選択は自分次第だ。違う)?」

 

鈴が無表情に反論する。光輝は反発しようとするが、周囲の異変に気付く。なんと場内の訓練用の武器が浮いていた。そして誰かが屋根の上で腕を遊ばせている恵里と、攻撃態勢を取るファイに気付く。

僕っ娘、性悪、伊達眼鏡、図書委員の降霊術師、属性の盛り過ぎで重力場が歪んだとでも言うのか。

 

「僕には気に入らない奴を寄ってたかってリンチしてるようにしか見えないけどねぇ。まあ、嫌になったら観念(サレンダー)すればいいんじゃない?元々そっちが始めたみたいだし」

「お、おい、中村、一体何を―――」

「は~い、時間切れ~」

 

恵里がそう言った瞬間に訓練場に武器の雨が降り注いだ。鈴と遠藤は、鈴が張った結界で防ぐが、小悪党組は散々な目に遭っている。必死に躱したり撃ち落としたりするが幾つかには被弾した。

 

「ポルターガイストって奴か?死んでねえだろうな、アイツ等」

「ステータスは高いんだし大丈夫でしょ」

 

遠藤と鈴は暢気に話している。遠藤の考察通り、これは『騒霊』という魔法で、幽霊の力を使って物を動かす魔法だ。つまりはポルターガイストを意図的に引き起こす魔法である。ファイとカイを動かしているのもこの魔法の発展形である。

 

「あっはは!これで生きてるなんて凄いねえ。ステータスの恩恵って奴?」

「中村!テメエ俺らを殺す気か!?」

「雫に聞いたけど先に斬りかかったの君なんでしょ?人殺しさん」

「く、そ、があ!」

 

容赦のない攻撃に抗議する檜山だったが、恵里に軽くあしらわれて頭に血が上り、屋根から叩き落してやろうと走る。しかし鈴のバリアバースト型結界『閃光』に阻まれ、更に怪我をする結果となった。

それを見た近藤がリーチを生かした槍の攻撃を鈴に放つが、鈴は幾つか出現させていた立方体型結界『伽藍ノ堂』に跳び乗り回避。勢いを殺せなかった近藤は遠藤が投げたコインの爆心地に突撃する形となり、黒焦げとなって焼け出された。そして『伽藍ノ堂』を飛び移って移動した鈴が縦回転によるチェーンソーの奇襲攻撃で近藤に迫る。近藤は咄嗟に槍でガードするが、

 

「!?」

 

近藤の槍はチェーンソーによって両断されてしまった。そして眼前に迫ったチェーンソーの刃を見た近藤は力尽きてしまった。

 

「礼一!?テメエ!」

 

檜山は鈴に斬りかかろうとするが、その前に背後に回った遠藤に気絶させられてしまった。そして中野と斎藤は何をやっているかと言うと、魔法の使用をひたすらファイとカイに妨害され、何もできずにいた。そして恵里が再び武器を浮き上がらせると、情けない声で呟いた。

 

「む、無理だ…こんな奴ら、勝てねえよ…」

 

そして二人とも戦意を喪失し、その場に膝をついた。

 

 

恵里、鈴、遠藤はこの戦いで勝利を収めたが、結果はめでたしめでたしとはならなかった。なぜなら三人は小悪党組だけでなく、永山達などの他のクラスメートからも恐怖の対象となり、「触らぬ神に祟りなし」とでもいうような腫れ物扱いになってしまった。かろうじて雫だけは今まで通りに接しているが、結局雫の気苦労は解決の糸口を見いだせない。

 

「つまらない奴らだねえ。結局永山君達の扱いも変わらないし。というか強くなりたいなら頭を使えよ。なんでそれすらも拒むのさ」

 

恵里が呆れたように言葉を発すると、遠藤が自分の見解を発表する。

 

「まあ、天之河を中心とした自然発生クラスカーストに逆らえないんだろ。英雄というのは電気冷蔵庫時代には目立たない賞品だが、文明的に逆行したこの世界では鬱陶しい程に輝くのさ」

 

それを聞いた鈴が補足意見を出す。

 

「まあそれもあるけれど…彼らの本音はこうじゃないかな?『何人も、ドイツ軍占領下を生きていた頃ほどには自由を感じたことが無い』」

「サルトルの言葉だね」

「要するに何かに抑圧されている時は『自由』を求めるけれど、いざ解放されれば指針が無くなって恐慌に陥り『自由』どころじゃなくなる。そして新たな支配者を求めるんだよ」

「救えねえな…」

 

遠藤はそれを聞いて溜息を吐いた。自分達の方針を変えるつもりは無いが、憂鬱なのは間違いない。そしてそれを聞いていた雫は頭を抱えたくなるのだった。

 




実にスタイリッシュにやられた小悪党組(笑)。後悔も反省もしていません。

そして変更されたタグも相まって遠藤の戦闘スタイルに既視感を覚える人もいるかも?

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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