人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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なんか雑だな今回。ちょっとスランプ入ったっぽいです。また書き直すかもしれません。


燃エ上ガル戦場

先手はベヒモスだった。自身の持つ剣を振り、熱波を飛ばしてくる。どうやら自分の角を引き抜いて剣にしたらしい。

 

「ここは聖域なりて 神敵を通さず 『聖絶』!」

 

鈴が発動した絶対の防御はしっかりとベヒモスの熱波を受け止めた。この攻撃は本来の四節からなる詠唱ではなく、二節で無理やり展開した詠唱省略の『聖絶』でも受け止められるようだ。と分析した。

そして結界の内側から遠藤のコイン『ザミエル』によるレーザーが放たれる。光線はベヒモスの顔に当たり、敵は仰け反る。

 

「この攻撃は有効らしい」

「この程度なら『聖絶』で防げる。今のうちにやっちゃって!」

 

鈴の掛け声と同時に恵里がファイで魔法攻撃を行う。ベヒモスの攻撃後の隙を狙って三角形の拘束フィールドで相手の動きを停止させ、さらに黒い楔を撃ち込む。

しかしベヒモスがこの程度の攻撃でやられるわけもなく、すぐに体勢を立て直すと今度は熱の斬撃を飛ばしてくる。先程と違い熱が分散していない為、これは防ぐよりも避ける方が無難であると判断した三人は現時点で可能な範囲の最小限の動きで躱していく。

 

「うわあ!」

 

なんだよ、と三人が声の発生源に目を向けると、未だ完全回復しない永山達がすんでの所で結界を展開し、防いでいる所だった。結界を張っている人員の中にはクゼリーもいる。

 

「まだ回復しないんかい。アイツ等」

「まあ分かってたさ。そんなにすぐには回復しないって」

「何としてでも防げよ。出来ないなら気合いで避けろ!」

 

言っている事は酷いが状況故に仕方がない。いくら実戦において強さを発揮するとはいえ、強化されたベヒモス相手に足手纏いを守りながら闘う程の強さは三人には無い。

ベヒモスは遠距離攻撃では埒が明かないと判断したのか、手に持つ剣で殴りかかって来る。

 

「あっぶな」

 

間一髪で恵里が避ける。そしてそのまま恵里を両断しようとするベヒモスだが、

 

「ウガァッ!?」

「いい気になるなよ?」

 

ベヒモスを黒い楔が貫いていた。恵里はベヒモスが近づいて来た段階で魔法を詠唱し、攻撃後の隙を狙って放ったのだ。ベヒモスは恵里を攻撃対象にするが、今度は別の攻撃を受ける。ベヒモスは攻撃を受けた方向に剣を振るが、そこにあったのは影であり、霧散して消えるのみ。怪訝に思って周りを見回すも、またもや死角から攻撃をくらう。

ベヒモスは攻撃者を探すが一向に見つからず、捜索を諦めた時、無数の斬撃が襲った。

 

「!!??」

 

一つ一つは大したことの無い攻撃でも、一度に多量に浴びせられれば話は別だ。ベヒモスは斬撃を浴びせた相手を探すと、ソレは無数にいた。今ベヒモスに攻撃したのは『暗殺者』の天職を持つ遠藤であり、彼の技能『無名影撃』によって影の分身を作った状態だった。この影も攻撃することが可能であり、単体の攻撃力で劣る暗殺者が敵に大ダメージを与えるための技である。

ベヒモスは怒りの咆哮を上げ遠藤を殺そうとするが、本体を攻撃しようとしても巧みに影と入れ替わり、剣を当てる事ができない。更に遠藤が投げた『ザミエル』により煙幕を張られ、一時的に視界を遮られるが、頭に血が上ったベヒモスはもう一人の襲撃者に気が付かない。

 

「グゥガァァァァァァ!!」

 

ベヒモスに連続的な苦痛と流血を与える者。それはベヒモスにチェーンソーを突き刺している鈴だった。流石の強化ベヒモスもこの一撃は効いたのか、鈴を引きはがそうとする。しかしベヒモスの手が伸びる前に鈴はその場から回避する。そして、

 

「破滅の、開始!」

 

遠藤と鈴が稼いだ時間で詠唱が完了した恵里の必殺技が火を噴く。名を『コラプス』といい、三角形のフィールドで拘束した敵を闇の楔の雨で蜂の巣にするというものだ。

 

「あっははははは!」

 

恵里の笑い声の直後、楔がフィールドごと爆発する。『コラプス』はここまでがワンセットだ。永山達が「やったか?」と思うも、ベヒモスは尚も立ち上がる。

 

「タフだねえ。コイツ」

「エリリン、今の何回撃てる?」

「多めに見積もって三回」

「二回は撃てるんだ…」

 

鈴が驚いたような呆れたような声を恵里に掛けるが、そこで声を上げた者達がいた。

 

「待ってくれ!俺達も戦わせてくれ!」

「はあ?」

「倦怠感も大分マシになった。俺達にも手伝わせてくれ!」

 

一見すると善意の塊のようなこの申し出。しかし遠藤は彼らの瞳に野心の色があるのを見逃さなかった。ステータスで光輝達に劣り、冷遇され、活躍の場を奪われてきた彼らにとってはこの状況は渡りに船だ。遠藤達の発言は軽視されても、ここには王国の騎士であるクゼリーがいる。ここで活躍を残し、光輝達に認められたい。だが他の局面ならともかく、この極限の状況下でそのような余裕は無い。

 

「…寝言は寝て言え。アンタ等の自尊心を満たすためだけに遊ばせてやる余裕はねえ」

「なっ!?お前も天之河みたいに俺達を冷遇するのか!?仲間だろ!」

 

遠藤は舌打ちとザミエルによるレーザーを撃ちながら反論する。

 

「冷遇でもなんでもねえ。元々仲間意識も無いしな。アンタ等に二転三転するこの戦況を瞬時に見極める判断力と、それについて来れる体力があるのか」

「ある!活躍の場さえくれれば――」

 

しかしその言葉にクゼリーが苦言を呈する。

 

「僭越ながら申し上げますと、皆さんの身体機能は完全回復したとは言えません…今出て行っても本来の力は発揮できず、身体の方の限界が先に来るでしょう。ここから地上まで歩いて帰る事は出来ますが、戦闘となると…」

「クソ!なんでだよ…!」

 

永山達は悔しそうに俯く。しかし今出て行ってもベヒモスに初遭遇した時の光輝の二の舞になるだけだ。彼らとてそれが分からない程頭が悪いわけではないが、やはり感情が先走ってしまうのだろう。

 

「ガンマンは稼業、気分で撃つのは乱射魔だ。チャールズ・ホイットマンを助ける気は無いし、仲間扱いなんざ虫唾が走る…!」

 

遠藤は吐き捨てるようにそう言うと、戦線に戻っていった。英国保安局のエージェントとして暗殺者の任務を遂行する遠藤だからこその信念である。殺しの際には自己の感情は徹底的に排すると決めているのだ。

永山達が反論できずに黙り込むと、クゼリーが言葉を発した。

 

「…今は防御に徹しましょう。我々の安全が確保されているだけでも、彼らの戦闘の助けになります」

 

遠藤とクゼリーの言葉で幾分か頭が冷えたのか、永山達は結界を張り、『土術師』の野村が岩石の壁を作って防御に徹することにした。

 

 

「おっそい。ようやく戻って来たね」

「おいおい、寧ろ追加報酬を要求したいくらいだ。あのまま乱入されても全員仲良くヴァルハラ行きだぞ。まだエインヘリアルになる気は無いんでね」

「残念。僕の人形にしてあげようかと思ったのに」

「ふざけんな。絶対お前より長生きしてやるよ、クソ降霊術師」

 

恵里と遠藤が軽口を叩き合っていると、それを両断するかのようにベヒモスの剣撃が叩きつけられる。

 

「破局しちゃった」

「勝手に彼氏にするんじゃねえ。エミリーに殺される」

「お二人さん、そろそろ手伝ってくれませんかね!」

 

いつの間にか単独戦闘していた鈴がイラついたように叫ぶ。というより二人の所に回避して強制的に戦闘に引きずり込んだ。

恵里が指示を出し、鈴とスイッチしてカイが前衛を務める。カイはブレードや遠隔攻撃でベヒモスを翻弄する。ベヒモスも応戦するが、カイほどの小ささでは攻撃が当たらない。無論、恵里の技量もあるが。

 

業を煮やしたのか、ベヒモスは火炎弾と熱波を飛ばして広域殲滅に乗り出した。しかし結界師の鈴が熱波を防ぎ、火炎弾は伽藍ノ堂で撃ち落とす。全ての攻撃を防げるわけではないが、撃ち漏らしは遠藤のザミエルや恵里のファイが撃墜する。

遠藤は恵里と鈴に迎撃を任せ、自分は攻撃の合間を縫ってベヒモスに分身した上で斬撃を浴びせる。ベヒモスの剣の横薙ぎが遠藤に迫るが、遠藤は側宙で回避。その隙を狙ってファイの楔攻撃がベヒモスに命中した。

 

「敵のカードも打ち止めかな?」

 

その言葉が理解できたはずも無いが、ベヒモスは今度は床一面を火の海にするが、三人は鈴が出した結界に飛び乗り回避する。ベヒモスも火炎弾で応戦するが、善戦しているとは言い難い。

 

「そろそろキャンプファイヤーはお開きにしないとね」

 

ふざけた言葉だが、表情は真剣そのものである恵里が『黒闇地獄』を詠唱する。鈴と遠藤が時間を稼ぎ、恵里の詠唱が完了。ベヒモスは再び楔の雨に打たれることとなった。

そして、降霊術師の笑い声を最後にこの戦闘は終わりを告げた。

 

 

 

その後、光輝達が戻ってきたころに見たものは、焼け野原となった広場と倒れ伏すベヒモス。そして戦闘の疲れでダレている恵里、鈴、遠藤の三人と永山達だった。大規模な戦闘があった事は明白であり、ミゲルが遠藤達を問い詰める。

 

「これは…一体何があったのだ!」

「ベヒモスが復活したので死闘の末倒しました」

「出鱈目を言うな!そうか、分かったぞ!大方手柄を得られないお前たちの自作自演だろう!」

 

ベヒモスが復活したという事すら信じられないのに、ステータスで光輝達に劣る三人がそれを倒したなど、ステータス偏重主義のミゲルにとっては受け入れ難い事だ。故にこれは遠藤達の自作自演と決めつけた。

 

「見損なったぞ!君達は努力をしないばかりか、こんな自作自演までするのか!今なら間に合う。嘘をついたことを謝るんだ。そして心を入れ替えて真面目に訓練をするんだ!」

 

光輝もこの惨状を自作自演と決めつけて三人を罵る。しかし三人は鼻で笑って返した。

 

「こんな自作自演をするくらいなら他の所で魔物でも狩ってるさ。というか何事も無いならすぐに合流するし、明らかに労力と利益が合ってないだろ。頭を使いな。学年トップ」

「だが一度倒した魔物がすぐに復活するわけ無いだろう!それに君達のステータスではベヒモスに勝てやしない。いい加減に認めたらどうだ!」

 

そこで雫から待ったが入る。

 

「光輝、恵里の言っている事は正論よ。信じがたいけど、彼らの言っている事は真実だとすれば全て辻褄が合うわ」

「雫…君は本当に優しいな。でも彼らに同情する必要なんて無い。だって彼らのステータスでは―――」

「ベヒモスを倒せないって言いたいのかしら。でも彼らはステータスで勝る檜山達を圧倒してたわよ」

 

雫が小悪党組を睨みながら言う。しかし光輝とミゲルはそれを認めない。

 

「認めん。認めんぞ!ステータスで劣る奴らが、勇者以上の力を発揮したなど…!もう良い、このことは王国に報告する!しかるべき処遇が決まるまで謹慎していろ!」

 

その後、ミゲルは王国に遠藤達の悪行を報告したが、その訴えは却下された。その原因はクゼリーがリリアーナに持たされていた記録用アーティファクトに二足歩行のベヒモスと闘う三人が映っていたからである。

ミゲルは尚も「捏造だ!」と騒いでいたが、今となっては原理不明なアーティファクトにどうやって干渉するのか問われると、何も言えなくなった。

 

その後、遠藤達の根城であるハジメの工房に永山達やクゼリー、リリアーナが訪れるようになり、ベヒモスの素材は遠藤達が手中に収めたことは余談である。

 




この時期の戦闘にしては無理があるか?まあこれくらいは許してください…この辺りの地上組はどうしても戦術が限定されるのがね。

備忘録

無名影撃:パニグレのワタナベのスキルの一つ。だが今作では効果が違い、影による分身そのものを指している。なんか遠藤の技に『ジオセントリック』とか『スーパーノヴァ』とか付けるのも違う気がして…

コラプス:恵里の闇魔法の一つ。元ネタはパニグレの21号の必殺技。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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