人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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今回の話は結構大変でした。要素がてんこ盛りで。特に原作におけるヒュドラ戦は中途半端に書けませんからね。


消エ去ル夜鷹

ラプンツェルを撃破したハジメ達は、特に特筆するべき事も無くハジメが目を覚ました場所から100層目に到達していた。その階層は無数の巨大な柱に支えられた広大な空間だった。柱の一本一本が直径5メートルはあり、各々に螺旋模様と木の蔓が巻き付いたようなデザインがされている。天井までは30メートル近くはあり、地面も荒れたところは無く平らになっている。どうみても人工的に作られた空間だ。

 

「…随分とけったいな棺桶ですね」

 

やたらと手の込んだトラップで飛ばされた場所が同じ20階層だったとしても、この時点で100階層を超えている。オルクス大迷宮は全100階層と一般的には認知されている。すなわち途中からは完全に未知の領域だったという事。上層が100階層で一区切りとし、紐無しバンジ―の着地点が未到達層の第一層だと仮定すれば、節目である100階層目に何かあると警戒するのは当然。そしてやたらと手の込んだ部屋の状態を見てハジメは悪態をついたのである。一体反逆者とやらは何を考えてこんな地獄のような場所を作ったのか、是非とも腹割って話してもらいたいものだ。

 

「念の為、武器のメンテナンスやアップデートはしておきましょう。詰ま(ジャム)って死ぬとか目も当てられない」

 

ハジメ達は警戒を重ねて武器の手入れをする。細かく弄れるのは製作者であるハジメだけ。必然的に香織とユエは手持無沙汰になる。出来る事と言えば雑談くらいしかない。

 

「…カオリ」

「どうしたの?ユエ」

「…地球では、一夫一妻制が普通なの?」

 

香織とて馬鹿ではない。ユエの質問の意味をしっかりと汲み取っていた。

 

「そうだね。他の国は知らないけれど、少なくとも日本…私達の故郷はそうだよ」

「そう…」

「…いつになく直接的だけど、どうしたのかな?」

 

ユエは一瞬だけ逡巡するが、意を決したように言葉を発する。

 

「私を…ハジメの二人目の恋人にしてほしい。それをカオリにお願いしに来た」

 

香織は首を傾げる。ハジメは一瞬だけ手を止めるが、すぐに作業を開始した。

 

「二人目…?てっきり宣戦布告されるものだと思っていたのだけれど」

「私自身は、そういうのは気にしない…封印される前、それは当たり前の事だった」

 

ハジメと香織は失念していたが、ユエは封印される前は王族だった。側室や妾といったシステムが存在し、一人の男に複数の女性が侍る光景は彼女にとって日常だったのだ。事実上の一夫多妻制と言ってもいい。勿論恋愛結婚だけではなく、互いの利害が一致したうえでの政略結婚も存在するが、それでも一夫一妻制が絶対のものでは無かったのは確かだ。

 

「…それに、私はカオリが悲しむのは見たくない…だからハジメを奪うつもりは無い」

「ユエ…」

「…私はハジメが好き。でも…カオリの事も、意味は違うけど同じくらい好き。だから…カオリにも幸せになってほしい。もう…セイレーンにはなってほしくない…」

 

コンサート・ミストレス(恋人)の地位を奪ってカオリが悲しむのは見たくない。だがハジメを諦める事が出来ない。ならばどちらも両立できる案、ユエがハジメの二人目の恋人になる。という解を導き出した。恋愛と言うには似つかわしくない、数学の論理パズルのような思考だが、実に合理的な案だ。

 

「……」

 

不安げな表情でこちらを見つめるユエの視線を受け止め、香織は考える。香織はユエの事を嫌っているわけではない。寧ろ、人間的には友人になりたい部類だ。数学者『エヴァリスト・ガロア』の死因の通り、色恋は時に流血の惨事を引き起こす。その中で、ユエは三人全員が幸せになる方法を模索し、先の解を導出した。それを頭ごなしに否定するのは地球での倫理や価値観をトータスの住人、しかも人間とは違う種族の彼女に押し付ける事に他ならない。だが、

 

「最後に確認させて」

「…ん」

「私達の目的は地球に帰る事。ユエも一緒に来るということは、ユエも地球で暮らすという事になる。ここまではいいかな?」

 

ユエは頷く。

 

「でも地球では、ユエの考え方は殆ど受け入れられていないものなの」

 

平安時代辺りならいざ知らず、二股やハーレムは空想の産物としては楽しまれているが、現代の地球でそれを実行すれば(本人達の事情はどうあれ)間違いなく後ろ指を指される事になるし、婚姻等の法や手続きも男女1対1の関係が前提の物が殆どだ。

 

「ユエの望む関係は地球で暮らす上で色々な問題にぶつかるものだよ。わざわざ資源や労力を使ってまで書面に起こそうとする暇人がいるくらいにはね…それでもいい?」

「………………良い」

 

ユエの言葉に少しだけ悲しそうな顔をする香織。しかしユエの解はこれで終わりではなかった。

 

「その時、ハジメやカオリの辛い思いを少なくできるように…私も頑張る…だから、傍にいさせて欲しい」

 

香織はユエの言葉に安心したような表情になる。自分の懸念が杞憂であった事が嬉しかったのだ。

香織は先程の問いに一つ、穴を作っていた。地球での常識とユエの望む関係の齟齬、その問題はユエだけでなくハジメ達全員に降りかかる物だ。数学に例えるなら、ここでユエが「自分は大丈夫」という証明を披露した所でQ E Dとはならない。しかし彼女はこの命題の最適解を即答して見せた。それならば、香織から言う事は何も無い。

 

「という事だけれど、ハジメくん」

 

ハジメは作業の手を止めて香織達を見る。今までの話は全て聞いていたので、彼女達の気持ちは理解していた。今更ユエの気持ちを「吊り橋効果」だのなんだのと言って否定する気は無い。

 

「ハジメは…私の事…嫌い?」

「嫌いではありませんよ、間違いなく。それは断言できます。しかし、恋愛的な意味で好意を抱いているか、と聞かれれば、首を傾げざるを得ない」

 

ハジメがユエに抱いている感情は「絵のモデルにしたい」という物だ。すなわち、恋愛的な好意ではない。お互いを強力な不可視の枷で繋ぐほどの感情をユエに抱いてはいないのだ。

しかしユエはその返答は予想通りだったので、特段動揺することはなかった。

 

「それで構わない…ハジメを、振り向かせて見せる」

 

ハジメはトータスへ転移する前、香織の告白を断ろうとした時と似たような気配を感じていたのだった。

 

 

 

やがて武器の整備が終了し、奥へと進んでいくと、美しい彫刻の彫られた全長10メートルはある扉が見えてきた。

 

「もしかして、あれが反逆者達の住処かな?」

「神曲 地獄篇もこれで終わりですかね」

「…ん。神曲が何か分からないけど、多分そう」

 

しかし次の瞬間、扉と3人の間の空間に巨大な魔法陣が現れる。それは赤黒い光を放ち、脈打つように音を響かせる。

ハジメ達は、その魔法陣に見覚えがあった。忘れようもない、あの日、ハジメが奈落へと落ちた日に見た自分達を窮地に追い込んだトラップと同じものだ。だが、ベヒモスの魔法陣が直径十メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。おまけに使われているのは天使文字だ。

 

「なんという大きさでしょう。まあ、やる事は変わりませんけどね!」

序曲(オーバーチュア)はもうおしまい。貴方に終結(コーダ)を捧げてあげる!」

 

ハジメと香織がそれぞれの武器を取り、

 

「んっ!」

 

力強く頷いたユエがオズマを起動する。やがて魔法陣が一際強く輝き、光が収まった時3人の視界に映っていたのは、

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

魔法陣と同じくらいの大きさの魔物とも機械ともつかない何か。鋭い牙に長い首、それが6つも同時についている。

 

WARNING   タブリス

 

「自由意志の天使…か」

 

奈落に落とされたハジメ達や、封印されていたユエに対する当てつけだろうか。と、若干の不愉快な気持ちが芽生えたのかハジメが呟く。それが開戦の合図となり、まずは赤い紋様が刻まれた頭が口から炎を吐き出す。3人はそれぞれが左右に分かれる形で散開。ハジメがセインで頭を銃撃すると、赤い頭は吹き飛ばされた。

 

案外なんとかなる物だ。とハジメが思っていると、白い紋様が刻まれた頭が叫び、その直後に赤頭は再生されてしまった。

 

〝白い頭がヒーラーのようですね。潰しましょう〟

 

ハジメは授格者の技能『通達』によって二人に作戦を伝える。すぐさまユエがニードルを飛ばすが黄色の紋様の頭が割り込み肥大化、更に同色の輝きを放ち、ユエの攻撃を弾く。

 

「頭の一つ一つが役割を持ってるみたいだね。黄色いのは盾役みたい」

「アストレイアを使ってみますかね」

「それもいいけど、私に考えがある。二人は攻撃を防いでほしい」

「んっ!」

「わかりました」

 

香織がチェロを演奏し始める。他の頭は香織を攻撃するものの、ハジメとユエに防がれていた。

敵の攻撃を掻い潜り、香織の奏でる破壊音波が白頭へと襲い掛かる。すぐさま黄色頭が盾となるが、

 

「クゥルア!?」

「!?」

 

音波は黄色頭を掻い潜って白頭に直撃した。香織の奏でた音波が回折し、盾役を無視して攻撃が届いたのだ。流石のタブリスも予想外だったのか、軽く困惑している様子。しかし戦場においてその一瞬は命取りだ。

 

『アルマゲスト!』

 

タブリスの巨体をまるまる巻き添えにして放たれるユエの魔法。ダメージを回復する前だったために白い頭は消し飛び、他の頭も少なくないダメージを被った。

しかしタブリスの黒い頭は厄介すぎる敵に対し、打開策を持ち合わせていた。黒い頭はジャマーの役割を担っており、敵に悪夢や幻惑の類を見せる能力を持っていた。しかし相手にはあまり効いている様子が無い。だが、天使と化す前ならいざ知らず、今の自分にはもう一つの能力があった。敵を電脳空間に閉じ込める能力が。

 

「「「!?」」」

 

 

 

突然意識がショートし、視界が暗転する三人。目を開くと、そこは直線的な立体のみで構成された白い空間だった。しかもそれぞれが分断され、周囲には誰もいない。

 

(香織が言っていた空間と同種のものですかね…)

 

ハジメが空間の正体について考察していると、周囲に黒い影が生成されていった。ハジメはその影に見覚えがある。病棟の惨劇の日、自分を殺そうとする侵蝕体達、親しき人の成れの果て。

 

『小僧、また儂の話を聞きに来たのか?カジキを釣り上げて、鮫に追われる羽目になった漁師の話を』

『ハジメ君、今日は体調が良さそうですね。このまま経過を観察しましょう』

『ハジメー!遊ぼうぜ!』

 

かつて人間だった親しい者達の声が聞こえる。耳を切り落としたい衝動に駆られながらも、ハジメは影を射殺してゆく。

 

『ハジメ、この詩はとても綺麗ね。悲しいけれど、美しいわ』

 

かつて好意を抱いていた少女、ヨナの声までもが再現された。銃を握る手が軋む。

 

「うるさい…」

 

『今日は天気がいいわ』

 

「ウルサイ…!」

 

『今日は久しぶりに絵本を持ってきたの』

 

「ウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイ!!!!」

 

ハジメはヨナの影に向けて銃を撃った。声は聞こえなくなる。その場に存在するのは喪失と言う名の静寂だ。

 

「フフ、あははは…」

 

引き金を引いたハジメは自嘲する。彼女たちは死んだ。もういない。声が聞こえた所で何だと言うのだ。

精神を乱され、取り乱した自分の未練と弱さに笑えてくる。過去は受け入れ、彼女たちを弔ったのではなかったのか。ならば今自分がすべきことは一刻も早く影を殲滅する事だ。過去を冒涜したものへ鉄槌を下し、再び彼女達を弔うために。

 

ハジメは数刻後、電脳空間から脱出した。それを形作る影に、葬送の弾丸を放って。

 

 

 

ハジメが現実世界に戻って来た時、他の二人も帰還していた。悪夢を見せられたのか、二人とも少し疲れているようだ。ハジメは二人の頭を撫でると、タブリスに向けて『重合爆発』を放つ。死者への弔いと、冒涜的な好奇への制裁の炎を。

 

闘いの終わりを告げる爆発を見た三人は互いに寄り添う。

しかし、香織が何かの音に反応し、切羽詰まった声を上げる。何事かと視線を向けると、七つ目の頭が胴体部分からせりあがり、三人を睥睨していた。三人は思わず硬直するが、七つ目の銀色に輝く頭は予備動作もなく極光を放つ。

 

「っ!」

 

ハジメは咄嗟に二人を突き飛ばす。香織とユエを助ける事に成功したハジメだったが、自身は極光に飲み込まれる。光が収まり、香織とユエが見たものは、全身から煙を吹き上げて倒れるハジメの姿だった。

 

「「ハジメ(くん)!」」

 

二人は焦燥に駆られるままにハジメに駆け寄る。ハジメの容態は酷いものだった。身体のあちこちが焼け爛れ一部骨格が露出している。『自動修復』は機能しているようだが、明らかに直るスピードは遅い。

 

「どうして…?」

 

実は、タブリスのあの極光には肉体を溶かしていく一種の毒の効果も含まれていたのだ。普通は為す術もなく溶かされて終わりである。しかし、自動修復の回復力が凄まじく、溶解速度を上回って修復しており、速度は遅いものの、時間をかければ直りそうだ。

 

しかしタブリスがそんな時間を与えるはずもない。今度は直径10㎝程の光弾を無数に撃ち出してきた。ユエがオズマを使って光弾の豪雨を防ぎ、香織がハジメを柱の影に連れていく。今まではユエに向いていたタブリスの攻撃が今度は柱の影のハジメ達にも向けられた。柱を削るように光弾が次々と撃ち込まれていく。一分も持たないだろう。光弾の一つ一つに恐ろしい程のエネルギーが込められている。

 

香織はハジメにそっと口づけをすると、決然とした表情でワルドマイスターを手に取り、ユエへと加勢した。

 

 

ユエはタブリスの猛攻に耐えながらオズマで攻撃したり『パニッシュメント』などの高威力な技を放ったりしている。しかし銀色の頭は今までの6頭とは比にならない耐久力を持ち合わせており、なかなか決定打を与える事ができない。

 

「うぅ…」

 

ユエの顔に悔しさの表情が浮かぶ。自分を助けてくれたハジメや香織を、今度は自分が助けたいと思った。しかし自身の力ではタブリスには及ばない。それが悔しくて仕方がないのだ。拮抗していたユエとタブリスの闘いが徐々にタブリスの方へ傾いてゆく。ユエは二人に心の中で謝罪しようとしていた。

 

刹那…タブリスに白い爆炎の花が咲いた。

 

「ユエ、遅くなってごめん!」

「カオリ!」

 

その攻撃の主はワルドマイスターを構えた香織だった。彼女の身体には赤黒い電流が走っており、今の攻撃が全力の物であった事が分かる。

 

「ありがとう、私達を守ってくれて」

「カオリ…んっ!今度は私が、二人を助ける!」

 

香織が再びワルドマイスターを弾き始め、ユエはそれを守るようにニードルを飛ばして光弾を撃ち落としていく。二人のコンビネーションにより、劣勢だった戦況が徐々に拮抗していく。

 

 

 

ハジメは電子の、意識海の虚空の中を漂っていた。痛みも音もなく、自らに内在するデータが、関数が、数列がこの空間を航海して行く。

 

(今まで生きてゆく中で、僕は僕ではなくなっていった)

 

病室で過ごし、惨劇に遭い、香織と出会い、世界の構造を知るたびに、ハジメの思考は作り変えられていった。香織に誘われて見に行った戯曲、『ロミオとジュリエット』や『魔弾の射手』、『レ・ミゼラブル』などの作品の情報が入り込む。

少し前であれば、それらの登場人物たちを、愚かだと一笑に付しただろう。しかし香織という少女に恋をし、学校や本で物事を学ぶたびに、彼らに対する感情が変わっていった。現実にせよ、仮想にせよ、彼や彼女は目標の為に必死に生きている。

ならば自分はどうだっただろうか。死に物狂いで生きていただろうか。惨劇の後、自分はどこか無気力であった。パニシング症候群による死が確定していたから、これ以上足掻いても仕方がないと、どこかで諦めていた。そして、『夜鷹』に起因する『美しい死』は、ハジメにとってはこれ以上ない安息だったのだ。だが異世界に転移し、香織やユエを外敵や精神的外傷から守るためには、自身の生命を守らなければならない。

 

(夜鷹…貴方は僕の最後の迷いです。これまで培ってきた、最も大切にしたいもの。しかし、この戦闘、この局面では、全てを出し尽くさねばなりません)

 

そしてハジメに、強い生存の意志が芽生えた。

 

(ですから、南雲ハジメ…過去の自分よ…生存のために、この世界から消えて下さい!)

 

その瞬間、ハジメの意識は覚醒した。

 

 

 

香織とユエはタブリスの猛攻に苦戦を強いられていた。一度は持ち直したが、二人とも限界を超えて力を使い続けたが故に、再び劣勢に傾き始めたのだ。

 

((ハジメ(くん)、ごめん(なさい)…!))

 

二人が敗北を覚悟したとき、突如として時が止まった。吹雪が光弾を吹き飛ばし、凍氷がタブリスを穿つ。何事かと二人が驚くと、この静寂の空間に足音が響く。それは朱樺とセインを携えたハジメだった。

 

「「ハジメ(くん)!」」

「遅くなりました。さあ、反撃と行きましょう!」

 

ハジメの言葉が終わると、タブリスは氷から脱出し、ハジメに向けて極光を放つ。しかしハジメはセインを向け、その銃口から冷気の渦『白夜還流』を放つ。それは極光と正面からぶつかり合った。更にハジメは朱樺を回転させ、渦を強化する。タブリスの極光は押され始め、遂には完全に打ち消されてしまった。

 

「ハジメ…」

「すごい…」

 

ハジメの技に見惚れる二人。ならばとタブリスは光弾の嵐を撃ち出すが、ハジメは吹雪の竜巻『嵐雪』により、光弾を吹き飛ばす。竜巻の威力は次第に増していくが、タブリスも負けじと光弾を放つ。しかしハジメの冷気を纏わせた剣技により、相殺されてゆく。

 

光弾を殲滅し終えると、突如としてハジメの姿が消える。ユエと香織、そしてタブリスもハジメの姿を探すが、1秒にも満たない時間でハジメはタブリスに飛び掛かり、氷の一撃『氷晶』を加えていた。タブリスは最後の反撃をしようとするが、ハジメは既に次の攻撃に移っていた。

 

「鴉羽よ…」

 

タブリスは死の予兆を、ユエと香織は戦場に舞う氷の美しさを見た。

 

「僕達の刃になってください!」

 

タブリスに叩きつけられた極大威力の氷撃『冷華刹那』。夜鷹から鴉へと生まれ変わったハジメの決別の一撃。空間をも揺らぐと錯覚する威力の技は、為すすべなくタブリスの命を刈り取った。

その場にあるのは静寂。敵が蘇る気配はない。今度こそタブリスの死を確信したハジメはそのまま後ろに倒れた。

 

「ハジメくん!」

「ハジメ!」

 

二人は慌ててハジメの所に行こうと疲労困憊な身体に鞭を打って這いずる。

 

「すみません…本来ならばすぐに扉に向かうべきなのでしょうがね…流石に…疲れました…」

 

そう言ってハジメは意識を手放す。香織が心音を聞くが、ハジメはしっかりと生きている事が分かり、安堵した。

 

「「良かった…」」

「仮にも授格者だ。その程度で死にはしない」

 

突然聞こえてきた声に香織とユエは警戒する。すると扉が開かれ、赤い服の少女が現れた。だが聞こえてきたのは野太い男性の声だった。状況を訝しんでいると、少女が口を開く。

 

「まずは治療だな」

 

少女が手を翳すと、彼女の両隣に電子回路のような模様が現れ、その中から二人の赤毛の女性が姿を現した。片方のウェーブがかかった髪の女性は意識を失ったハジメを運ぼうとする。

 

「ちょっと、貴方達は一体――!」

「私はデボルだ。安心しろ、敵じゃない」

 

そしてもう片方のストレート髪の女性は香織とユエに近づく。

 

「私はポポルよ。聞きたいことはいっぱいあると思うけど、まずは貴方達の治療をしなきゃ」

 

「立てる?」とポポルと名乗った女性は香織達に手を差し伸べる。香織達は半信半疑になりながらも、ついていく事にした。

 




ぶっちゃけユエの二人目云々を此処に挟んだ意味はあまり無いです。ただ次回が怒涛の説明回なので作者が覚えてられる自信が無い…いや、ハーレム展開っていざ書こうとすると非常に難しい。スッと書ける人は尊敬します。
ハジメの覚醒は初期からずっと考えていたのでやっと書けて満足でした。参考にしたのはパニシンググレイレイヴンのルシア鴉羽vs曲のシーンです。
それよりも(オイ)、まさかのデボルポポル登場。主人公達と並んでNieRシリーズの顔となるキャラクターですね。テンションが上がってきました。

備忘録

嵐雪/氷晶/白夜還流:今までもハジメの剣技として時々登場したが、パニグレのルシア鴉羽の技。通常と『極寒モード』で違う技となる。

冷華刹那:ルシア鴉羽の必殺技。シンプルだがそれ故に強い。

タブリス:自由意志の天使…とされることが多いが厳密には違う模様。NieRシリーズと天使、地味に嫌な組み合わせである。

デボル&ポポル:NieRシリーズに登場する双子。今作ではどんな立ち位置なのか。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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