因みにハジメの顔付きは色々考えた結果NieR: AutomataのA2よりという設定になりました。更に女顔に近づいた感じですね。
魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱んだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にハジメ達の頬が緩む。ミュオソティスの表情は変わらないが、これは地上を知らないが故、そして感情が希薄であるが故だろう。できることならばミュオソティスにも感情という物を手に入れて欲しいと思うハジメ達。合理性という意味では不必要なものかもしれないが、数学と違って無駄を省きすぎるのも考え物である。
やがて光が収まり目を開けたハジメの視界に写ったものは……洞窟だった。
「えぇ~……」
魔法陣の先は地上だと無意識に思っていた香織がガッカリしたような声を上げる。そんな香織の服の裾をクイクイと引っ張るユエ。顔を向ける香織にユエは慰めるように自分の推測を話す。
「……秘密の通路……隠すのが普通」
「あ……」
そんな簡単なことにも頭が回らないとは、どうやら自分は相当浮かれていたらしいと恥じる香織。ごまかしの鼻歌を歌いながら気を取り直す。
しかしそんな空気に爆弾を放り込む者が一人。
「疑問:マスター白崎香織の予測能力」
「うるさいなあ!」
メイドロボのミュオソティスである。一応言っておくと彼女に悪意はない。『道具』として現状を分析した結果がポロっと口から飛び出しただけである。しかし、だからこそ余計に刺さる物があり、香織は涙目で壁に向かって三角座りをしてしまった。ハジメはそんな恋人の様子に苦笑しながら口を開いた。
「とりあえず、この辛気臭い場所から出ましょう」
「はぁい……」
緑光石の輝きもなく、真っ暗な洞窟ではあるが、四人とも暗闇を問題としないので道なりに進むことにした。
途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。二人は、一応警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。ハジメと香織はこの数ヶ月、ユエに至っては三百年間、求めてやまなかった光。
ミュオソティス以外の三人はそれを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせた。そして笑みを浮かべると、同時に光に向かって走り出した。
近づくにつれ徐々に大きくなる光。しかし三人は向かう先から不穏な気配を感じ、徐々に足取りは遅くなる。それは事前情報に無い死地に踏み込む兵士の言いようのない原理不明の不安に似たものであった。ミュオソティスはそんな三人の様子を見て首を傾げているが、走り出した三人は今では歩いている。そして、洞窟の出口に辿り着いた三人を待ち受けていたのは……
「なに……これ」
香織がそんな声を上げる。それは未知のものに対する疑問ではなく、目の前の光景が信じられないといった声色だ。それもそのはず。ハジメ達の目の前に広がっているのは奈落で見た『パニシング赤潮』だったのだから。
「地上は楽園ではなく、煉獄と言ったところですか……」
ハジメが神曲ネタを持ち出すが、驚いていないわけではない。しかしここで呆けていても仕方がない。香織やユエの時と同じケースだとすれば赤潮を生み出している元凶がいるはずだ。別にこの世界が崩壊しようが侵蝕されようが他国で起きた震度2の地震くらいどうでも良いが、赤潮は上手く使えば治療薬に転用できる。対応する価値はある。
因みにここは【ライセン大峡谷】という場所であり、断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断する魔境だ。地上の人間にとっては地獄にして処刑場である。
色んな意味で地獄のような場所だが、赤潮の調査のために歩き回るハジメ達。すると、ほどなくして赤潮から出てきた異合生物達に囲まれた。完全に生物というわけではないが、これまで出会った機械生命体達に比べるとかなり有機的な見た目で、植物や海鞘、巨大な蠅といった比較的単純な生物の姿をしている。
「どうやら歓迎されているみたいですね」
「ご馳走してくれるわけじゃないと思うけどね、コンダクター」
「……ん。寧ろ私達がご馳走にされる」
「戦闘回路、動作正常。ご命令とあらば出撃します」
植物型の異合生物『ターニップ』が攻撃態勢を取る。
「聞かれるまでもありませんね。殲滅しましょう」
ハジメの言葉と共に双方が攻撃を開始した。ターニップが水平にレーザーを放つが、ハジメ達はそれを回避。ミュオソティスのスカートの中から飛び出したアームが持つ銃で掃射し、ユエがオズマによる広範囲殲滅で補助。撃ち漏らしは香織とハジメで対処する。
巨大化したコバエのような異合生物『スネイル』が香織に突進してくるが、ハジメが朱樺で両断した。ハジメの近接兵装である朱樺は奈落にいた頃は普通の刀と同程度の長さだったのだが、オルクスの隠れ家で改良を重ねるうちに、某片翼の英雄が扱う長刀のようになってしまった。この少年が残酷な天使のように神話になる日も近いかもしれない。
「背後がお留守ですよ、コンサート・ミストレス」
ハジメが揶揄うように声を掛けると、香織はハジメに回転攻撃を仕掛けようとした異合生物『オクトパス』(見た目はどちらかというと海鞘だが)にオディリアの演奏による遠隔攻撃をぶつけた。
「お互い様だよ、コンダクター」
指揮者と演奏者は戦場で笑い合う。そして異合生物達を掃討したころ、新たな敵が現れた。今までの古生代でも存在し得る単純な生物ではなく、れっきとした人型で、大剣を担いでいる。進化の過程を一気にすっとばして現れたこの人型は『武蔵 玖型』という機械生命体で、熟練の冒険者でなければ危険な敵だ。今回はそれが4体現れた。オマケに赤潮の効果なのか通常時よりも強化されている。
「一人一体相手しましょうか。今更あんなのに手こずらないでしょう?」
全員が頷き、武器を構える。一方「あんなの」呼ばわりされた武蔵は、それぞれ大剣を構えて攻撃を仕掛けてくる。
ミュオソティスが多機能大砲『ガラティア』で一体の剣戟を受け止め、更に砲撃する。自身に備えられた機能で周囲を解析すると、他の三体はそれぞれの仲間の所に向かったことが分かる。
「第二形態、アクティベート」
ミュオソティスがそう呟くとガラティアがカシャカシャと変形し、砲口部分が収納され、代わりに巨大なブレードが顔を出す。このガラティアという武器は戦況に合わせて様々な形態に変形させることが出来るのである。境遇が変わってもハジメのオタク趣味は変わらないのか、某神喰らいのような兵装だ。そのうち捕食機能も付きそうである。
武蔵は再び大剣で斬撃を加えるが、ミュオソティスはそれを躱し、ガラティアを振り回してダメージを与えていく。上段でガラティアを回転させて連続攻撃を加えると、流石に危険と悟ったか、武蔵は攻撃を止めて後ろに下がる。そして、下がった場所で回転し、四方八方に斬撃を飛ばしてきた。
「第三形態、アクティベート」
ミュオソティスがそう言うと、地面に突き刺されたガラティアは棺のような形に変形する。武器自体がデカいのでちょっと変形するだけで盾になるのだ。強度も申し分なく、例えばクラスメート達の魔法一斉射撃を喰らっても普通に耐えられる。
「……いつまで続くのでしょう。この攻撃」
攻撃自体はそれほど脅威ではないのだが、機械であるために疲労が存在しない故か回転攻撃を止める気配の無い武蔵。無理な早期撃破の必要は無いが、徒に長引かせる道理も無い。
「敵の攻撃軌道の解析を開始。終了しました。速やかな排除へと移行します」
ミュオソティスはガラティアの盾形態を解除し、大砲形態へと戻す。そして飛来する斬撃を躱し、武蔵に砲撃を加える。武蔵は大剣で防ぐが、その隙はミュオソティスにとっては十分な物だった。彼女はガラティアをブレード形態に移行させ、武蔵に接近する。
武蔵も体勢を立て直し、ミュオソティスに斬撃を飛ばすが、ミュオソティスはそれをガラティアを一振りして弾き飛ばし、そのままの勢いで武蔵に斬撃を加える。武蔵は動きを停止した。
「戦闘終了。機体状態:異常なし」
見れば他の三人も戦闘を終え、素材の回収を行っていた。
「何かには使えるでしょう」
「……ん。無駄にする道理も無い」
「コンダクター、部屋を片付けられない人の言い訳にそっくりだよ。程々にね」
ミュオソティスも今しがた倒した武蔵の大剣を持って合流する。
「何に使うのですか? マスター」
「大剣は武器破壊された時の予備ですね。機械の装甲等は……まあ弾丸の材料は幾らあっても困りませんから」
「武器破壊で思ったけど、よく折れないよね、朱樺」
香織がハジメの長刀を見て言う。この武器は長い上に細い。いくら硬い鉱石で出来ていると言っても力の入れ具合によれば簡単にへし折れてしまいそうなものだ。
ふと、香織がハジメの胸に自分の手を当てる。刀とハジメの運命を重ねたのだろうか。
「形有るものはいつか壊れますよ、須らくね。それは武器においても例外ではありません」
「相変わらずだね……私達は
「……肝に銘じます」
ハジメと香織の退廃的なイチャつきが終わると、赤潮の主を探しにハジメ達は動き出した。先程の武蔵4体は主ではなく、何かを基に赤潮に生み出されただけの存在だった。ライセン大峡谷は処刑場としても使われていたので、処刑された犯罪者を基に作られた存在なのかも知れない。
峡谷を徘徊している最中、何度も異合生物や機械生命体の襲撃にあった。大型の刃を持つ『解体者』という機械や、奈落でも遭遇した『バイオサラマンダー』、上半身のみで這いずる『プロテクター』にも遭遇したが、ハジメ達の脅威ではなく、また赤潮の主でもなかった。
赤潮の元凶は依然として見つからないが、ただ無意味に歩き回っているわけでもない。ある特定の方向に向かおうとすると、敵の密度が上昇する。奈落の恐竜の群れと同じ思考方法で、密度が高い方へと進むハジメ達。高度な誘導という可能性もあるが、まあその時はその時だ。手がかり無しよりはマシである。
とはいえだ。
「密です」
少々辟易した表情でアストレイアの引き金を引くハジメ。確実に目標には近付いているのだろうが、いい加減物量が鬱陶しい。赤潮の力で通常よりも強化されているのが尚拍車をかけていた。
「……そろそろ見つかってほしい」
「マスター・ユエ、エネルギー切れでしょうか」
小さく唸るユエに、星戦争の緑色の何某のような呼称で疑問を呈するミュオソティス。それに対してユエは
「……そうじゃないけど、終わりが見えないのは苦痛」
と答えるが、ミュオソティスは首を傾げるだけであった。彼女には理解が出来ない感情であったらしい。
ユエは説明を諦めて索敵に移る。パニシングのエネルギーを辿るという方法で、今までは濃度が希薄で意味を成さなかったが、震源地に近づくにつれて計測可能な程度に濃度が高まってきたのである。
「……ん。見つけた」
ユエが手応えを感じたようだ。香織も音を拾い、いよいよ確信度が高まる。ハジメ達はその方向へ進んでいった。
そして目標地点に近づくと、この赤潮の主と思われる人型を発見した。手には大剣を持ち、こちらを警戒するように赤い目が睨みつけてくる。なぜか頭にはウサミミが付いていた。
数瞬の間対峙したあと、その人型はハジメ達に襲い掛かる。ハジメ達はそれぞれの方向に避け、それが戦闘開始の合図となった。
WARNING ダルタニアン
「ウサギはベジタリアンだって聞いたんですけどね!」
更に追撃してくるウサミミ人型『ダルタニアン』に縦回転の剣技『白夜還流』をぶつけるハジメ。ついでにゼロスケールによる銃撃も加えるが、ダルタニアンには多少傷がついただけでそれ程効いてはいないようだ。驚異的なタフさである。ハジメがその旨を『通達』で仲間に伝えると、容赦なく攻撃が来る。
ハジメがダルタニアンの大剣による横薙ぎを宙返りで躱すと、入れ替わるようにユエがオズマを変形させた斧でダルタニアンに攻撃する。流石に効いたのかダルタニアンは怯み、更にそこに香織のワルドマイスターによるエンドピンの刺突攻撃と、ミュオソティスのガラティアのブレード攻撃が追加される。特に香織は『破壊音響』による防御力をある程度無視した攻撃を加えたため、ダルタニアンにもそれなりのダメージが入る。
更にそこにハジメのアストレイアによる銃撃も加わった。
「……終わった?」
「いえ、やはり驚異的な防御力です。今の攻撃も見た目ほど効いていない」
ダルタニアンは未だに戦意を喪失していない。今度は大剣を振りかぶり、ソニックブームを飛ばしてくる。ハジメはそれを回避し、攻撃後の隙にアストレイアで銃撃、そして閃光手榴弾による視覚妨害を行う。しかしダルタニアンはウサミミが拾う音を頼りにこちらに攻撃を加えてくる。
(……視界を奪っても音で感知してくるのか。ん? ウサミミ……?)
香織はその様子を見て妙案を思いつき、それを『通達』で伝える。
『私ならダルタニアンの動きを止められるかもしれない! 皆はその隙に攻撃して!』
『『『了解!』』』
香織はワルドマイスターを構え、大音量の演奏を始める。ハジメ達にとっては何という事も無い音量だが、ウサミミを持つダルタニアンは違う。許容できない音量に剣を捨てて苦しみ始めた。ハジメ達はその間に連続攻撃を叩き込む。
(このまま押し切れるか……?)
この戦闘に希望が見えてきたハジメ達だったが、ダルタニアンもただではやられない。咆哮を上げると、両手から鉤爪を生やし、強行突破してくる。
「っ!?」
ハジメの長刀である朱樺が切断され、ついでに右腕も皮一枚でつながっているような状態にされてしまった。ダルタニアン自身も勢いを制御しきれないのかハジメを通り過ぎて壁に突撃して行ったため、追撃をされなかったのは不幸中の幸いであろう。
「コンダクター!」
「ハジメ!」
「……!」
香織とユエはハジメを案ずる声を上げ、ミュオソティスは無言ながらもハジメの損傷具合を判断しようとしている。ハジメはそんな彼女達に返事をする。
「『自動修復』で腕は直ります。今は敵に集中を!」
ダルタニアンは壁を飛び移り、こちらを攪乱する。ミュオソティスが砲撃を行うが、
「……速いですね。一発掠っただけです。敵の行動パターンの変化を確認、再解析、解析終了」
ミュオソティスはダルタニアンの動きを解析しなおし、再び砲撃を加えると、今度は命中する。しかしダルタニアンは今度はミュオソティスを攻撃対象にし、壁から飛び掛かって来る。更に砲撃を加えるミュオソティスだが、砲弾は鉤爪に切り裂かれてしまった。
ミュオソティスはガラティアを変形させ、盾にするが、ダルタニアンの攻撃が彼女に届く前にユエの高威力攻撃『パニッシュメント』が攻撃者を貫く。更に香織が全力の『破壊音響』を加える。ダルタニアンもかなりのダメージを被ったがそれでも動きは止まらない。再度鉤爪による攻撃をしようとするが、その前にハジメのアストレイアによる銃撃がダルタニアンを穿つ。ハジメの右腕は完全に直ったわけではないが、とりあえず使える程度にはなったので、それを支えにして銃撃したのだ。今も右腕からは循環液(人間においての血液)が流れ続けている。
「いい加減に……壊れろ!」
ダルタニアンはそれでも動こうとするが、その前にユエが斧による一撃を加えた。そしてそれがこの戦闘の終結となった。
はい、話が進みませんね(笑)。そしてセフィ○スみたいになるハジメ君。一体どこに向かっているのか……まあ少なくとも早々に死んで思い出になるとかいう展開は無い、多分。
備忘録
朱樺:エラい長くなったハジメの刀。某片翼さんと違ってあっさりへし折られたが、これは武器が弱かったのではなく相手が強かった。
ダルタニアン:ライセン大峡谷のウサミミ……果たして正体は誰なのか(すっとぼけ)。名前の元ネタは『三銃士』の主人公。一応言っておくが、元ネタのダルタニアンは男性である。
いい加減壊れろ:NieR: Automataの2Bのセリフ。こう言いたくなる敵がこの先も出てくる。
オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように
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修理して連れていく
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見なかったことにして放置する