人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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まーたリアルが忙しいですよ。暫く書いてられなさそうです。この辺りからだんだんNieRっぽさを出したいと思っております。


利用スル者/サレル者―丙

 周囲の亜人達が熊の亜人(名前はジン)を運ぶ中、言葉を発した者はいなかった。戦闘力では一,二を争う程の手練だった熊の亜人が、文字通り手も足も出ず瞬殺されたのであるから無理もない。おまけに彼を下した人間であるハジメは無感情な目で周りを見ており、「まだやります?」と言うように首を傾げたりするものだから余計に恐怖を増長する。

 

 唯一、アルフレリックだけは「やはりこうなったか」という顔をしており、ハジメに対する敵意や怯えは無い。しかし、時折何かを悔やむように表情を歪ませる事があった。過去に〝忌み子〟に関する事で何かあったのかもしれないな、と思うハジメ。

 とりあえずハジメは話し合いを再開しようとアルフレリックに話しかけようとする。しかしそれよりも前に部屋の扉が乱暴に開けられた。

 

「お祖父様! シアは、シアは無事ですの!?」

「アルテナ!? 一体どこから聞きつけて……それより肩を掴むな、揺さぶるな! 年寄りを労わらんか!」

「あ、ごめんなさい……」

 

 お年寄りを揺さぶってはいけない、大切な事だ。アルテナが己の行動を反省する一方、ハジメ達は「どちら様ですか?」という表情と共にアルフレリックとアルテナを見る。尋常でない程シアの事を心配していた辺り、味方と見て良いか? と思いつつも、亜人族と一悶着あった後なので警戒はしている。

 とそこにまた新たな声が上がる。

 

「アルテナさん……?」

 

 アルテナの名を呼んだのはミュオソティスの背後に匿われているシアだった。ミュオソティスは首だけを後ろに回して尋ねる。

 

「味方ですか?」

「ひぃ!? は、はいぃ、アルテナさんは味方ですぅ」

「どうしましたか」

「ミュオソティス、首だけ後ろを向いたら普通は怖いよ」

 

 香織がミュオソティスの行動にツッコミをいれる傍ら、ミュオソティスは少しだけずれてアルテナにシアの姿を見せる。すると、アルテナは安心したように崩れ落ちる。

 

「生きていてくださって本当に良かった……また、あのような悲劇を起こさずに済んだのですね……」

 

 アルテナのその言動に、やはり忌み子関連で何かがあったのだと確信するハジメ。思った以上に複雑で、きな臭い件に首を突っ込んでしまったか、と少し憂鬱になるものの、投げだす事はしない。社会に喧嘩を売る……いや、売られる事は得意だ。どうせこのトータスという大地は、ハジメという人間に抵抗するのだから。

 

「年かな……魂にも脂肪が付くものだ」

 

 アルフレリックが小さく呟いたのを、香織の耳は拾っていた。

 

 

・ ーー・ ーーー ・・ ・・・ -

 

 

騒動の後、アルフレリックが何とか執り成し、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族(俗に言うドワーフ)のグゼ、そして森人族のアルフレリックとアルテナが、ハジメと向かい合って座っていた。アルテナがいるのは、本人曰く次代の長老としての社会勉強のためであるとの事。ハジメの傍らには香織、ユエ、シア、ミュオソティスが座っている。

 

「僕達の要求は三つ。一つ目は機械生命体の村への攻撃の停止、二つ目はシアさんとハウリア族を見逃す事、三つ目は大樹周辺の探索の許可です。それさえ認めていただければ僕達はフェアベルゲンに敵対する理由は無くなりますし、ここに来る理由も同様。しかし、先のように襲撃されれば、反撃せざるを得ません」

「こちらの仲間を再起不能にしておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」

 

 グゼが苦虫を噛み潰したような表情で呻くように呟いた。

 先程の下手人であるジンは現在ここにはいない。原典と違い、身体的な後遺症などは残らなかったが、全く強そうに見えないハジメに歯が立たずに敗れた事にプライドをズタズタにされたらしい。

 

「トータスの住人は人間も亜人も、初対面の相手にやたらと攻撃的ですけど、そういう文化なんですか?」

 

 最初に攻撃してきたのはジンであり、やってることは忌み嫌う人間と変わらないという遠回しな皮肉に、グゼは一瞬鼻白むも、すぐに声を大にして反論する。

 

「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

「だから何だと言うのでしょうね。僕の生は、其処此処に陽の光も落ちたとはいえ、恐ろしい嵐のようでありました。嵐に歯向かうためならば、僕は破滅の撃鉄を起こしましょう。何度も言いますが、先に仕掛けてきたのは向こうです」

「……」

「牢記しておいてください。僕達にとって、あなた方の生命は恐ろしく安いという事を」

 

おそらくグゼはジンと仲が良かったのではないだろうか。その為、頭ではハジメの言う通りだと分かっていても心が納得しないのだろう。ハジメの烏羽玉の瞳に気圧されながらもしつこく食い下がろうとするが、

 

「グゼ、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

 アルフレリックの諌めの言葉に、立ち上がりかけたグゼは表情を歪めてドスンッと音を立てながら座り込んだ。そのまま、むっつりと黙り込む。

 

「確かに、この少年は、紋章の一つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

 そう言ったのは狐人族の長老ルアだ。糸のように細めた目でハジメを見た後、他の長老はどうするのかと周囲を見渡す。ルアは長老衆の中では若輩のようで、それほど思想は凝り固まってはいないのかもしれない。その視線を受けて、翼人族のマオ、虎人族のゼルも相当思うところはあるようだが、同意を示した。代表して、アルフレリックがハジメに伝える。

 

「南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。……しかし……」

「絶対ではない……と?」

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな……」

「それで?」

 

 アルフレリックの話しを聞いてもハジメの顔色は変わらない。すべきことをしただけであり、すべきことをするだけだという意志が、その瞳から見て取れる。アルフレリックは、その意志を理解した上で、長老として同じく意志の宿った瞳を向ける。

 

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい。お前さん達の実力ならば可能だろう?」

 

 ハジメは『通達』を使い、口を開かずに仲間達と会話した後、

 

「分かりました。恨まれる覚えはありますからね。しかし、殺意を持つ相手に手加減などして、鼠を追い詰めた猫のように噛みつかれては敵いません。なので、交換条件として他二つの要求も受け入れて下さい」

「「「何!?」」」

 

 危険な要求を聞き入れる代わりに、他二つの要求も聞き入れるように言うハジメ。

 

「ふざけた事を言うな! 忌み子とそれを隠した一族、そして外敵たる機械は処刑する、既に決定した事だ!」

 

 それに対し、ゼルやグゼは怒鳴りながら抗議してくる。殆どの長老達が似たような様子を見せてくる辺り、長老会議とやらで決まった事なのだろう。

 

「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」

 

 無情な宣告に涙声で容赦を求めるシア。しかしゼル達はそれを聞き入れる様子は無い。ハジメは溜息を吐いて言葉を発しようとするが、その前に大きく凛とした声が響く。

 

「いい加減にしてくださいまし!」

 

 それはアルフレリックの傍に控えていたアルテナの物だった。普段の彼女からは想像の出来ない、憤怒を伴った表情に長老達は気圧される。

 

「皆様揃いも揃って、口を開けば莫迦の一つ覚えのように忌み子忌み子と…! シアが、彼らが貴方達に何をしたというんですの!?」

「それは……」

「答えられませんわよね。だって貴方達は、物心付く前に〝忌み子〟を処刑し、ひっそりと生き延びた者達も虐殺したのですから。分かります? 彼らは襲った者の顔すら知らなかったのですよ」

「虐殺……?」

 

 アルテナの言葉にハジメ達が疑問を浮かべる。するとアルテナは絞り出すように話し始めた。

 

 元々、現在のフェアベルゲンにおいて忌み子の排除は全員が支持しているものでは無いのだという。掟が制定された当時は、魔力を持つ者達への惧れもあって問答無用に処刑する事が多かったが、しっかりと教育すれば魔法を使いこなし、外への対抗手段になり得ると分かってからはその風潮も下火となっていた。

 

 しかし、時代が変わっても一部の亜人達は迷信のように忌み子を排除すべしという思想にとり憑かれていた。そして過激派達の不満が最高潮になった時に、事件は起こった。

 過激派達は、魔力を持った亜人を片端から虐殺していったのだ。その時の彼らの目は、自分達の仲間を甚振った憎き人間族に向ける物と同じ目を相手に向けていたという。

 

 この事件のあと、忌み子を保護し指導するという意見を言う者は殆どいなくなった。理由は魔力持ちの亜人に対してではない、過激派達への恐怖である。彼らに異を唱えるような事をすれば、次に殺されるのは自分達かもしれない。そんな思考の基、誰もが口をつぐんだ。

 

 アルフレリックが宥める中、涙を浮かべて怒りをぶつけるアルテナ。ジャンヌダルクのような彼女に気圧される長老達を見ながら、ハジメ達もまた、内心で怒りを覚えていた。

 

(どこまでも醜く、人間らしいな……)

 

 まるっきり、魔女裁判やホロコーストと同じ現象だった。蛇蝎の如く人間を嫌う亜人が、意図せず人間の負の歴史を再現する。これほどの皮肉がどこにあろうか。

 

 とりあえずこのままでは話が進まないため、ハジメは声を掛ける事にした。

 

「あのー、盛り上がってるところ悪いんですけど、僕から一つ、ある事実を語ってもよろしいですか?」

「なんだ!?」

「単刀直入に言うと、貴方達がシアさんの事を殺害するのは不可能です」

 

 あまりに自然にハジメの口から出てきた言葉に、長老達は訝しむ。

 

「どういう事だ? 我々が忌み子を処刑しようとするのを、貴様が止めるという事か?」

「いえいえ、物理的に不可能という意味です。首を落とそうが、心の臓を貫こうが、瞬く間に再生します。僕が頭を撃ち抜いた時と同じように」

 

 ゼルは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。ハジメの不死性は部下から報告を受けていたのだ。

 

「なんなら証拠を……いえ、やめておきましょう。汚くなるし」

 

 再び手癖(?)で銃口を頭に向けるハジメだったが、雷を纏った龍と般若の表情をした風の精霊(エーリエル)に威圧されるような感覚を覚え、その手を下ろした。

 その様子を見たアルフレリックは少しだけ笑うと、よく通る声で言った。

 

「私としては南雲ハジメの要求は全て受け入れたいところだな。元々、無益な出兵と処刑には反対だったのだ」

「アルフレリック! この戦いが無益だと!? 馬鹿も休み休み言え!」

「故あっての事だ。先方に敵意は無い。良き隣人となれたかもしれないというのに戦いを挑んだ結果はどうだ? 物資は食いつぶされ、戦士は怪我を負った。そしてシア・ハウリアについてはそもそも殺す事など不可能と来ている。要求を拒むことはフェアベルゲンにとって百害あって一利なしだぞ」

「ぐぬ……しかし!」

 

 本心がどうであれ、建前上はフェアベルゲンの未来を憂いての事だ。その理由が潰された以上、ハジメの要求を呑まない理由は無い。上手い物だとハジメは思った。アルフレリックは元々、今となっては意味の無くなった悪法の改善の第一歩にハジメ達を利用したのである。

 

 再び長老達の言い争いが始まりそうになった時、部屋の扉が荒々しく開かれる。

 

「ち、長老様方! 大変です!」

「何事だ! 今は会議中だぞ!」

「構わん。状況を知らせろ」

 

 ゼルが扉を開けた亜人を一喝するが、アルフレリックは説明を促す。

 

「は、はい! 襲撃です! 亜人のような何かがフェアベルゲンを襲撃しております!」

「なに? 亜人のような何かとは何だ、ハッキリ言え!」

「分かりません! 形は亜人のようなのですが、身体は機械のようで……」

 

 その場の全員が顔を見合わせた。一方、その状態に心当たりのあるハジメ達は立ち上がる。

 

「現場に案内してくれます? 僕に少し心当たりが」

 

 相手の亜人は人間に対して一瞬躊躇うが、背に腹は代えられないと案内する。そこで彼らが見た物は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体の一部が銃のような機械と化した二人の亜人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

WARNING   ドンナー シュラーク




最後の亜人達に関しては次回に詳しく書きますが、チェン○ーマンに出てきた銃の魔人みたいな感じをイメージしてください。

備忘録

エアリエル:シェイクスピアの戯曲『テンペスト』に登場する風の精霊。クロス先のネタでもある。

僕の生は~:ボードレールの詩をアレンジしたもの。中原中也の詩『羊の歌』にも登場する。

アルテナ:原作よりも健全だが、私の作品の登場人物らしく若干口が悪い。今作ではシアと知り合い。

ドンナー&シュラーク:ありふれ原作のハジメの武器。別に原作に隔意があるわけではない。詳しくは次回

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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