そして暫くクラスメイトsideは続きます。同時多発的に色々な事が起こるから書くのが大変です。
時間はリリアーナが優花に助けを求めに来たところから少し遡る。
「では、話そうか。お前に隠していた、私の過去について」
オルニスを撃墜した後、清水は階音にトータスに現れた理由を聞いていた。旧知の人間との再会は嬉しい物だが、それでも何も疑問に思わないわけではない。清水はいくらか疑惑は晴れたとはいえ、今でも本当に目の前にいる人物が自分の知っている女性なのか疑っている。
「最初に言っておくが、今からする話は、お前からすれば到底信じられないような内容だ。信じるか信じないかは……お前に任せる」
「頭ごなしに否定することはしないから安心しろ。ただでさえ、異世界召喚なんていうオカルトな事に巻き込まれてんだ」
それに清水の友人のハジメとて身体が機械化していくという現代の医学では理解不能な病に侵されている。ライトノベルの外、現実世界も大概ファンタジーだと清水は思っていた。
「そうか……まず最初に言うが、私は本来死んでいるはずの人間だ。階音という名前も、偽名だよ。尤も、本名に日本の〝漢字〟を当てただけだが」
「死んでる?」
「ああ、少なくとも、私という人間は間違いなく死んだはずだ」
「いきなりスピリチュアルな話になったな。実は今まで会話してたのはゾンビでした、とか、いきなりテルミット弾ぶち込んできたぞオイ……」
「フッ、これからどんどん爆破していくぞ」
清水の言い草は傍から見たら罵倒とも取られかねない物だが、これが二人の日常である。なんなら階音の方が色々とぶっ飛ばしている事も多い。
「で、アンタはどうやって蘇ったんだ?」
「それを話す前に、まずは私の生い立ちについて話す必要があるな。結論から言えば、私は悪魔によって作り出された人間だ」
「オ前ハ何ヲ言ッテイルンダ」
「本当だぞ。子が出来ない夫婦が悪魔に願って宿らせた子供が私だ」
「にほんごではなそ」
「外国人だな、私は。まあ、にわかには信じがたいだろうが、証拠はあるぞ」
「へぇ?」
「股にアレが付いてる。両性具有という奴だな。分かりやすく言うと、☆○¥&だ」
「言い直さんでいい。てかカミングアウトしていいのかソレ」
カイネさん、この小説R15なんよ。しかし、カイネとて誰にでも秘密を打ち明けるわけではない。地球でそれなりに関わった清水だからこそ話したのである。
「まあ、生まれた後は色々あったな。悪魔に頼んで産み落としたくせに、私の姿を見て発狂した両親に殺されそうになったり、そこを悪魔と闘う組織の奴に助けられたり」
「ちょっと待て。両親も大概だが、悪魔と闘う組織?」
「ああ、オムニブスってな。悪魔と闘う人間をエクソシストって言うんだが、それの集まりみたいなものだ。バチカンにある」
「情報量とツッコミどころが比例するとか……ていうかそれもカミングアウトしていいのかよ」
「知らんな。死者を縛る法律は無い」
そう言うと、カイネは少し間を置いて清水に問いかけた。
「お前は……私を拒絶しないのか?」
「あ?」
「自分で言うのも何だが、私は普通じゃない。こんな話をすれば、お前が私を拒絶するんじゃないか……そう予想していた」
それを聞いた清水は、少し考えて口を開く。
「カイネさんは……俺と出会った頃を覚えてるか?」
「ああ、常に他人に怯えていたな。そしてイライラした私が鍛えて振り回したわけだが」
「そうだ。アンタと出会う前、俺は全ての人間に怯えていた……そしてそれは、今も変わらねえ」
「……え?」
「人間の根底なんてそんなに変わらねえよ。今だって、アンタに対する恐怖は残ってるし、全てを信用してるわけじゃねえんだ」
清水は家族に趣味を拒絶され、小中学校では苛めに遭っていた。その中で他人に怯えるようになり、人間を信用しなくなった。そして偶然見つけた鳥や野良猫と遊んでいたのだが、それもエアガンを持った子供が撃ち殺してしまった。〝友達〟を殺した人間に対する信用は、完全に無くなった。
ライトノベルやフィギュアといった物に傾倒していったのは、それらが〝人間〟に撃ち殺されないからだ。本から出てこない限り殺される事は無い。フィギュアもケースに入れておけば、地震や竜巻でも来ない限り壊れはしない。所詮は〝作られた〟美しさ。だが清水はそれで満足だった。
しかしその日々も長くは続かなかった。今度は兄や弟がライトノベルやフィギュアといった物を排除し始めたのだ。ようやく外敵から殺されない〝友達〟を得たのに、今度は身内によって脅威にさらされる事になった。
「頼むから〝友人〟を殺さないでくれ!」
そう言った清水を見た家族が、不愉快気な表情から恐怖に変わっていったのは今でも鮮明に思い出せる。
結局、その後清水が関わる事の出来た人間は、周りから逸脱していたハジメ達『D坂の思想犯』と、やや強引な手段で自分に迫ってきたカイネだけだった。
「基本的に人を信用しない俺が、なんでアンタとここまで深く関わっているのか……本当の所は俺にも分からん。だが、それが成り行きであれ感情であれ、人間不信という状態を上回るモノであるのは確かだ」
「…………」
「だから、アンタがどんだけ変わった過去を持っていようが、俺にはそれを拒絶するだけの感情は有りゃしないんだ」
その言葉にカイネは苦笑いし、そして安心した。
「そうか……」
「それで、なんでバチカンにいるはずのアンタが日本にいて、オマケに今度はトータスにいるんだ?」
「まず日本にいた理由だが、これは私にも分からん。エクソシストとして悪魔と闘っていた私は、強力な悪魔と闘って、結果死んだ。だが、私の人生は此処で終わらなかった。私の身体に目を付けたクソ悪魔どもが、私を乗っ取ろうとしたのさ」
「波乱万丈だなオイ……」
「私は最後の力を振り絞って抵抗した。そして、一体の悪魔に噛みついた時、闘いで失ったはずの腕が機械になって蘇っていた」
「機械……」
「ああ、這う這うの体で地獄から飛び出した先はアンタの故郷、日本さ。その時は仰天したね。私が生きていた時代から何十年も時がたっていて、私と同じように身体が機械化した人間達が『パニシング症候群』として恐怖の対象となっていた」
「やっぱりパニシングか……となると、パニシングはその『地獄』とやらから来たのか?」
清水は衝撃的な真実に慄く。カイネの言う事が事実だとすれば、友人を蝕む病魔は『地獄』などというオカルトチックな場所から発生した物である可能性がある。現代の医学では解明できない死の病とされていた物は、ファンタジーの産物であったらしい。
「パニシングは伝染はしねえはずだ。だからアンタが震源地じゃねえってのは分かる」
「ありがとう。で、私がトータスにいる理由だが、さっきの『地獄』ってのが関わってくる。お前が失踪した後、私はお前達が地獄にいるんじゃないかと思った。だから捜しに行った。そして、『花』を見つけた」
「『花』……?」
「アレが何なのか、私にも分からん。だが、そうとしか形容しようのない物だったな。自然物とも、人工物とも取れるモノだった。私はそれに近づいて調べようとしたら、この世界に飛ばされた」
何ともまあ、壮大な話だった。追いついた理解が走り抜けていった気分である。詳細はカイネにも分からないそうだが、どうやら地球と地獄とトータスは繋がっているらしい。しかしそれが真実だとするなら、
「じゃあ、アンタは地球への帰り方が分かるのか?」
「残念だが、私が転移した場所に戻っても何も起こらなかった」
「そう簡単にはいかねえか……」
簡単に地球に帰ることは出来ない。だが、仮に可能だったとして、清水としてもハジメや香織を見つけてからでないと帰れないため、今すぐどうこうできるわけではないのだが。
「話は聞かせてもらったぜ」
「は!? お前いつから……」
「最初からだ」
二人しかいないはずの部屋から第三者の声が響き、カイネが驚く。一方、清水は声の主を察し、呆れながら口を開いた。
「盗み聞きとは感心しねえな、遠藤。お前の趣味か?」
「残念、仕事だ」
「チッ、お前がイギリスのエージェントだって話、もう少し真剣に聞いとくべきだったぜ」
遠藤としても、突然現れたカイネという女をノーマークで放置するわけにもいかない。そして何より、
「こんな所で会うとはねえ。
遠藤の右腕から刃や仕込み弓が飛び出す。遠藤もまた、パニシングの適合者だった。
・・・ ・ -・-・ ・-・ ・ -
遠藤がクラスメイト達に隠していたことは大きく分けて二つ。
一つは自分が英国から派遣されたエージェントであるという事。もう一つは遠藤が『授格者』、つまりパニシングに適応して生み出された機械という事だ。
元々、遠藤の任務は病棟に隔離されたパニシング症候群の罹患者達の保護と回収だった。しかし、誰もが予想しないタイミングで患者達が暴走、病棟は壊滅状態になった。そして、遠藤の任務は生存者の監視に切り替わった。暴走の兆候があれば殺害、適応すれば拉致し、英国に連れていく。
そして、遠藤自身もパニシングの有用性を量るための捨て石の実験部隊の一人だ。人としての生活が保障される代わりに、任務への拒否権は無くなる。諜報、暗殺、その他諸々を遠藤は幾つもこなしてきた。上層部から用済みと判断されれば消される。そんな綱渡りを遠藤は続けていた。
その事に対する卑下や後悔はない。そもそも死ぬはずだった自分が生きていられるだけで御の字だと思っている。そして、出来ればパニシング症候群の罹患者達にも生きる希望を与えたいとも思っていた。少なくとも、どん底で人生を終えるよりも、汚泥の中で生き続けた方がマシだ、と遠藤は思っている。
そして、ハジメはこの事実を知っていた。だからこそ、テロ計画を立てた。自分の存在が、消されてしまう前に。
「へえ、じゃあどうする。私を殺すか、拉致るか」
「安心しろ。今じゃどっちも不可能だ。拉致った所で帰る方法が分からんし、パニシングについての新情報を持ったビッグゲストを殺したら、俺が上層部に消される」
遠藤が上記の事実を所々ぼかして伝えると、カイネが警戒の表情を浮かべる。しかし、遠藤は今すぐカイネに危害を加えるつもりは無かった。
「もし地球に帰れたら、アンタ等の待遇は可能な限り良くするように上層部に掛け合うさ。これでも発言権はある方でな。それが、俺に出来る、唯一の贖罪だ」
その話を聞いていた清水は情報量の過剰摂取で胃もたれを起こしそうだった。
「いつも一緒にいた奴らがターミネーターだったとはね……笑えねえ冗談だ。映画と違うのはシュワルツェネッガーが演じてないって事だけじゃねえか」
そして、溜息を吐いて遠藤に剣呑な声で問いかける。
「とりあえず、お前はカイネさんに危害を加えるつもりはねえんだな?」
「ああ、サンタマリアにでも誓おうか?」
「……完全にお前を信用したわけじゃねえが、お前が俺達の味方でいるうちは協力するさ。トリガー戦略って奴だ。お前を敵とみなしたら、容赦なく歯向かうぜ」
「それでいい、賢明な判断だ」
三人が一応の合意をした時、どこからか悲鳴が聞こえてきた。
「何だ?」
「ブギーマンでも現れたかね」
清水と遠藤の二人がそう言って警戒しながら部屋のドアを開けた時、音もなく忍び寄っていた機械の暗殺者『吊人 参型』が襲い掛かった。
説明回ですね。書き始めた当初はこんなに設定が複雑になるとは思ってませんでした……あと、カイネの口調が品がよすぎる。と感じた人もいるかもしれませんが、本家とは家族関係が変わっているため、普段は割と普通です。
清水:過去はほぼ原作通りだが、少し追加されている。
遠藤:何気にコイツも危ない橋を渡り続けているヤツ。因みに捨て石の実験部隊という部分はNieR: Automataのとあるキャラを参考にしている。
カイネ:『鯨ト鳥』でも匂わせていたが、実はエクソシスト。エクソシストについての詳細が気になる方は原作アフターの深淵卿第二章を参照してください。あと、両性具有についてはNieR: Replicantの公式設定である。
オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように
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修理して連れていく
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見なかったことにして放置する