人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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あれ可笑しいな……本当だったらこの話でクラスメイトsideは終わるはずだったんだが。

まあ、人形『タチ』ハ世界最強なので、遠藤とかも主人公って事で許してくれい。

あと、Twitterでも言ったけどパニグレにてセレーナさんお迎え出来ました。やったぜ(クッソどうでも良い自語り)


鼠捕リ

 『吊人 参型』、傘を被った推定六本腕の人型のような姿をした機械だ。機体の構造は精巧かつ軽便であり、ゆったりとした服の下には細長い背骨が一本あるのみである。完全な死角からの一撃を遠藤が勘で弾き、それを見ていたカイネがぼやく。

 

「なあ、こんなに頻繁に敵に侵入されるほど王城の警備ってザルなのか?」

「カイネさん……ここは侵入してきた側が凄いって考えとこうぜ」

 

 姿を消し、音も無く襲い掛かる攻撃。事実上の完全隠密と瞬身性を持つこの機械を、果たして警備の騎士が防げるかと言うとやや疑問だが、大結界の存在ありきの警備であるため、そもそも王城が攻め込まれる事など想定していないのだろう。

 とはいえ、こういう非常事態に対応するための警備が全くの役立たずというのは些か問題だが……

 

 吊人は遠藤の前から姿を消し、三人は相手の存在を知覚できなくなる。そして数秒の静寂の後、清水の背後に現れ釣り針のような武器で斬りかかる。間一髪、剣で攻撃を弾く清水。

 

「あっぶねえ……」

 

 その後も軽業師のようなぬらりとした動きで攻撃を重ねる吊人。カイネや盗賊などとは違う動きを何とか見切り、対応する。

 

「中国雑技団かよコイツ……」

「この中の誰かがサーカス団にでも恨みを買ったのか?」

「残念ながら記憶にないね」

 

 清水が攻撃を回避するために姿勢を低くした瞬間に、カイネの斬撃が吊人を斬る。しかし致命傷とはならず、吊人は再び姿を消す。

 

「チッ、鬱陶しい奴だ。次出てきたら○□*?¥溶接して額に代わりのモン開けてやる!」

「おい、品が無いにも程があんだろ」

 

 カイネの言葉に清水がツッコむ。とはいえ、姿も気配も音も消えるというのは中々に厄介だ。早急に討伐しなければ被害は拡大する一方だろう。腐敗した王国に舞い踊る機械の乱入、この世界からハイリヒ王国に向けた皮肉であろうか。

 

「皆さん! 一体何があったのです!?」

 

 騒ぎを感知したリリアーナが清水達に駆け寄って来る。三人の安否を問わないのは彼らを無下に扱っているのではなく、「彼等ならそうそうやられないはずだ」という信頼があるからだ。更に言うなら、『D坂の思想犯』でもどうにもならないなら誰も対処できない。

 

「鼠が一匹入り込んだ。招いてもねえのに来る辺り、徴税人の真似事か? おまけに頂くのは俺達の命だとよ」

「わ!? いたんですか遠藤さん……」

「Zombieではあるかも知れんがGhostじゃねえよ俺は……」

 

 来た時には知覚できなかった遠藤の声にリリアーナは驚き、自分の意思とは関係なく消失する気配に悪態をつく遠藤。いつまでも攻撃が来ない辺り、吊人は逃げ出したようだ。

 

「姿が見えない上に逃げ足まで速いのか……突っ込んでぶっ潰すだけじゃ倒せないタイプだな。クソッタレ」

「暴走族みてえな発想何なんだよ、聖職者」

「一応、優花にも知らせます。恵里と鈴は別件で動いてるのでここにはいませんし、彼女は頼りになりますから」

「それもいいが、俺に一つ妙案がある。鼠を捕まえるには罠と餌が入り用だ」

 

 遠藤はそう言って全員に作戦内容を話す。そしてそれぞれが動き出した。

 

 

 

 そして、時間は現在に戻る。リリアーナは優花に作戦の概要を説明した。

 

「……というわけなんです。協力してくれますか?」

「分かったわ。幸いネズミ捕りもチーズも揃ってるわね。そこの部屋に勇者様がいるけど。呼んで来る?」

「おびき寄せたいのは虫じゃなくて鼠ですから、光り輝く者は要りませんよ」

「時々腹黒いわよね……アンタ」

 

 因みに『虫』というのは考え無しに勇者や教会を持ち上げる貴族や神殿騎士の事だ。勇者を使ってあぶり出し、何処かのタイミングで排除するつもりなのだろう。現に、『戦死』したミゲルの真実は話題にすらならない。これ幸いとほくそ笑んでいた姫が早々に根回ししていたのである。ミゲルを慕っていた者もいたが、そうでない者も多い。彼を嫌う騎士達に『戦死』の情報を流せば小鳥みたいに囀り出す。そしてそれが真実となった。

 

 リリアーナが黒い笑みを浮かべていると、彼女を突如現れた吊人の刃が襲う。しかし、これは計算された予定調和だった。

 

「今です!」

 

 リリアーナが掛け声とともに身をかがめると、優花と姿を現した遠藤が吊人を攻撃する。攻撃を妨害され、盛大にスカッた吊人はバランスを崩し、隙が生まれる。そして、その間にリリアーナが障壁を展開した。

 

 これが吊人を倒すための作戦である。いかに姿を消そうとも物体を通り抜ける力は無い。ならば障壁の中に閉じ込めてしまえば逃走を封じる事が出来る。

 囮役を買って出たのはリリアーナだった。遠藤達に比べて弱い彼女が単独行動していれば敵は必ず狙ってくる。敵にそれくらいの知能があるかどうかは賭けであったが、どうやら成功したようだ。とはいえ危険な役である事に変わりは無いため、念の為暗殺者の技能で姿を消した遠藤が護衛についていた。

 

「袋の鼠だな。ハイなタンゴを踊ろうぜ、人形」

 

 遠藤がそう言い、立て直した吊人の攻撃を弾く。そして優花がラッシュを決めようとした時、彼女の背後で突然ドアが開く。吊人に戦輪イエスタデイをぶつけながら優花が後ろを振り向くと、開いたドアの位置にいたのは光輝だった。

 

「これは一体……どういう状況だ!?」

「オイ姫さん、この結界には防音機能はねえのか」

「私は結界師じゃないんですよー!」

「取り込み中よ。貴方は幼馴染でも慰めてたら?」

 

 優花がちょっとした皮肉を込めて言葉を発したとき、背後で吊人が飛び上がり、遠藤に滑空攻撃を仕掛ける。遠藤は回避した後ザミエルの攻撃をカウンターした。

 

「戦闘中なのか? リリィ! 君は早く逃げるんだ!」

「私は囮です。そして鈴と違って結界を維持するためにも動けません」

「囮!? 遠藤! 園部さん! なんてことを彼女にやらせてるんだ! 可哀想に……無理矢理やらされてるんだな!」

「志願したんですよ。遠藤さんや優花の事は信用してますから」

「今助ける!」

「おう会話しようや」

「黙れ遠藤! もうお前の詭弁には惑わされないぞ!」

 

 光輝はリリアーナを助けようと、結界を破壊すべく剣を振り上げた。作戦が水の泡となる前に優花がイエスタデイを当てようとした所、光輝を抑える影が現れる。

 

「やめなさい光輝! 彼らの邪魔をするべきではないわ!」

「だが雫、リリィは無理矢理囮にされているんだぞ!」

「彼女の志願だって言ってたじゃない! いい加減に人の話を聞きなさい!」

 

 そう言って雫は光輝に平手打ちをする。今まで光輝を野放しにしていたからこうなったのだ、それなら自分が彼を矯正しなければならないという信念が雫にはあった。

その思い自体は間違ってはいない。光輝の負の側面から目を逸らしてきたのは、雫が人の闇や悪意に対して耐性が無い事が原因である。ハジメや香織のように哲学や戯曲を学んできたわけでも、鈴のように当たり障りなく躱す術も、遠藤や優花や恵里、清水のように言い返せるほどの外連味も無い。そう言い訳して目を逸らし続けてきた。

 

雫に間違いがあったとするなら、それは彼女の思う以上に光輝は思い込みが強い事、つまり、正解など端から存在しないことだろう。

 

「園部さん! お前は雫に何をしたんだ! 一体何を吹き込んだんだ!」

「どちらかと言うと愚痴を聞かされていた側だけどね。主にアンタに対する」

「そうよ! 園部さんは私を受け止めてくれたわ!」

 

 しかし、自分を否定された(と思っている)光輝は聞く耳を持たない。それはまるで現実を受け入れられずに駄々をこねる幼子のようであった。

 

「あーもう、めんどくさい……リリィ、ちょっと」

 

 優花の提案は光輝を結界の中に入れる事だった。その提案にリリアーナは訝しむ。

 

「……いいんですか?」

「このままだと結界壊して入って来るわよ。その方が大損害だわ」

「それもそうですね……」

 

 その理由に納得したリリアーナは結界の対象から光輝を外す。その瞬間にリリアーナを助けようと結界に入った光輝だが、その目論見は早々に瓦解した。

 

「え?」

 

 宙に飛び上がっていた吊人が光輝に武器を投げ飛ばしたのだ。リリアーナを狙っていても埒が明かないと判断したのか他の者を狙い始めたのだ。

 

「くっ……」

 

 更に、姿を消した吊人が光輝の背後から奇襲をかける。どの攻撃にも致命傷こそ負わないものの、基本的に翻弄されるだけであった。基本的に真正面から攻撃を仕掛けるだけなので、搦手を主体とする吊人とは相性が悪い。光輝とてそれが理解できない程頭が悪いわけではないのだが、いかんせん正義感が邪魔をする。

 

「なんて卑怯な……!」

 

 遠藤と優花が揃って溜息を吐く。雫は光輝を説得しようとしているが、結果は芳しくない。

 

「望む場所に引き寄せたまえ 〝引蜘蛛〟」

 

 優花が隙を見て吊人にナイフを投げ、引き寄せる。これは投術師の技能である〝引蜘蛛〟という魔法で、ナイフを刺した相手を引き寄せる、もしくは刺した場所に自分を引き寄せる魔法だ。かつてはワイヤーでやっていた事だったが、技能が発達した事によってそれが無くとも可能になった。

 

「弾き飛ばせ 〝遊麟〟」

 

 これも投術師の技能であり、触れた物を斥力で弾き飛ばす技だ。通常は投擲攻撃の強化に使われるが、今回は触れた敵に対して発動したのだ。その他、魔法以外の物理的な攻撃を弾くという使い方も出来る。

 

 吊人は壁に叩きつけられ、一時的に動きを封じられる。するとどこからともなく〝黒ノ槍〟が飛来し、吊人に突き刺さった。死角に待機させていた清水に遠藤が合図を送り、魔法を撃たせたのである。無論、結界の防御対象に清水の魔法は指定されていないので範囲外からの攻撃でも普通に通る。

 そしてこの一撃がトドメとなり、吊人は機能を停止した。なお、カイネはまたも不完全燃焼だが、弟子? の活躍が見れたので良しとしていた。

 

「ふう……ようやく倒せましたね」

「お疲れさん。見た目に反して戦場での演舞は華麗だったぜ」

「もしかして口説いてます? 駄目ですよー、恋人さんいるんでしょ?」

「知り合い曰く、男ってのはだいたい万国共通で口が軽いらしい。まあ、俺は恋人って存在がこの世で最も恐ろしいから、そんな勇気は無いがね」

 

 リリアーナと遠藤が洋画のようなやり取りをしていると、疲弊した様子の光輝が突っかかって来る。

 

「おい遠藤! さっきも聞いたがなんでリリィを囮にするような事をしたんだ!」

「だから志願した結果だって言ったでしょ、鳥頭」

「三歩動かなきゃ忘れねえならニワトリの方がマシじゃねえか……」

「園部さんもはぐらかすな! 質問に答えろ!」

「ですから私が志願した結果ですよ。近くに『信用』できる人間もいませんでしたし。まあ、私を狙ってくれる保証は無かったので、もし外れたら別のプランを考えていましたが……とりあえず意味は理解できましたでしょうか。天之河さん達は異世界人ですし、言語が理解できないなら雫に通訳してもらいますが」

 

 光輝はリリアーナ本人の理路整然とした返しに黙り込む。召喚者はもれなく『言語理解』の技能を持っているため、リリアーナの言っている事は理解できてしまう。リリアーナも本人がいない所で誘蛾灯のような扱いをしてしまったので、多少の罪悪感はあるが、主張だけはしっかりとしておく。

 

「なあ、あの無駄にキラキラした思い込みの激しそうな、KKKにでもいそうなガキは何なんだ?」

「天之河光輝。天職『勇者』のスーパーエリートでステータスも一番高い。地球にいた頃は学年トップで文武両道の完璧超人」

「意外と高く買ってるんだな」

「事実は事実だからな。昔はいけ好かないながらももう少し話が通じる奴だったんだがな」

「なるほど……まあ私は関わる気は無いが」

「アンタはそれで良いだろうが……」

「それに、貴方は大人なのに何故遠藤達の行動を野放しにしているんですか!」

「ほーら来たぞー」

「Jesus……こういう時はどうすりゃいい、ておい! 何さりげなく立ち去ろうとしてんだ! この黙示録にも書かれてないような危機的状況で私を一人にするな!」

 

 カイネは焦ったように清水の襟首を掴む。「ギュエッ」という声と共に動きを止められてしまう。清水は心底嫌そうな顔をしながらも、一応は答える。

 

「地震や台風が来たときはどうする。去るのを待つか避難するだろ。川が毎年のように氾濫した時は人間はどうした。別の方向に流れを変えるんだよ」

「OK把握。クソ礼拝もやっとくモンだ。いい知人を得られたんだからな!」

「俺はお悩み相談室の世話焼き婆さんじゃねえぞ」

 

 清水とカイネが漫才を繰り広げている間にも光輝は正義のお説教を続けている。だが正直言って聖職者(笑)のカイネには響かない。おそらく光輝の意見に共感できるのは余程の聖人か馬鹿、もしくは別の方向に吹っ切れた差別主義者だけである。カイネはどれでもないのだ。

 

「とりあえず話を聞け!」

 

 カイネはそう言って光輝を殴りつける。会話が成立しないので実力行使にでたようだ。しかしカイネは失念していた。自分は他人と比べて怪力であったことを。

 

「誰が気絶させろっつったよ……」

「すまん……少し耳を傾けさせるだけのつもりだったんだが、身体まで傾けさせるとは」

「何上手い事言ってんだよ。アンタの拳は人殺せるって散々忠告しただろうが」

 

 光輝は気絶してしまった。幸いな事に脳挫傷ではなく脳震盪なので、暫く待てば起き上がる。とはいえステータスは一番高い光輝を一撃で昏倒させられる辺り、カイネの強さが思わぬ形で知れ渡った瞬間だった。

 

 その後、カイネに謝り倒す雫が(知らない仲ではあるものの)不憫に思えてきたので、愚痴くらいは聞くことにした。そしてそこに優花とリリア―ナも加わり、この場にいる女性陣総出で慰める事になったのは余談である。

 




タグで勇者アンチにしてるのはこういう展開が時々挟まるからです。そして相変わらず雫が不憫である。因みに龍太郎君はナガミミウサギ型バイオニックにボコられた怪我が酷くてベッドから起き上がれません。そしてリリアーナの口が悪い……と思ったけど原作でもこんなんだったような?

備忘録

吊人 参型:パニグレユーザーには或る意味一番有名な悪名高い敵モブ。雑魚敵の分類でありながらその脅威は下手なボスや精鋭型を上回る。読みづらいモーション、事実上の完全隠密や瞬間移動、妙に当たり判定の広い攻撃などに苦しめられた指揮官は多いはず。あと時々タイミング良く消えては構造体の必殺技がスカる事もあるため、とことんシステム上の嫌な所を付いてくる敵でもある。因みに作者は吊人『惨』型と呼んでいる模様。

引蜘蛛:敵や自分を引き寄せる優花のオリジナル技能。上手く使えば色々応用できる

遊麟:触れた物を斥力で弾き飛ばす優花のオリジナル技能。パニグレの常羽の型番でもある。モチーフは麒麟。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
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