人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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話進まねえなホント……まあ、作者が凝り性だからですけれど。いや、世のハーレム作品を書いている方々は凄いよホント。たとえそれが歪んだ欲望から来たものだとしても形に出来るんだから。私だったら二次創作以外でこんな面倒な事しません。「ああ、めんどくせえ!」って途中で投げます。


殺サレタ未来

「この辺でいいかな……」

 

 村の外の樹海で、ハジメ達とは別の場所で細剣を片手に佇む少女がいた。彼女の名は白崎香織。昇格者と同等の力を持つ亜人の襲撃に会い、致命傷を負った後『花』の力で再生した。あまりに悍ましい再生の仕方に本人は気絶。その後、最愛のコンダクター(恋人)にも拒絶されるかもしれないと恐怖したが、幸いにもそれは杞憂に終わった。

 

(でも、このままじゃだめだよね……)

 

 香織はハンマーのような物を持った亜人の攻撃を諸に喰らってしまった。索敵を怠ったつもりは無かったが、香織とて対応力には限界がある。銃と融合した亜人、ドンナーとシュラークは対処が出来るとはいえ十分に強敵の類である。そのような存在との交戦中に更に敵が増えれば手が回らなくなるのも道理である。

 

 しかし、今後そのような事態が来ないと考えるのは楽観的に過ぎるというものだろう。寧ろ、これからの道筋を考えればこういう事は加速度的に増えていくと考えた方が合理的だ。安直な考えと言われるかも知れないが、対処するためには強くなるしかないだろう。己の弱さに苦悩するのはシアやハウリア達だけではないのだ。幸い、香織の方にも当てがある

 

(じゃあ早速……)

 

 香織は細剣を構え、その後、刺突や斬撃を織り交ぜた連撃を繰り返す。細剣、もといレイピアはその細身の刀身から『見た目重視の華麗な武器』と思われがちだが、実際は戦場で使う事を目的に作られた実用性重視の武器である。また、刺突重視の剣ではあるものの、ブロードソードのような断ち切りを行う事も可能であるとされる。

 

 香織はどこか演劇的かつ実戦向きな動きで身体を慣らした後、いよいよ今回の本題に入ることにした。香織は細剣を振って斬撃を飛ばした後、或る事を同時に行う。

 

「出来た……!」

 

 それは自身の分身の生成だった。これ自体は『暗殺者』である遠藤も可能な事だが、遠藤の分身が影であったのに対し、香織の分身は少々毛色が違う。なんと、彼女の分身は白い植物で作られた人形であったのだ。

 

 無論、人形とは言えただその場に佇むだけではない。この人形は香織の攻撃をトレースし、簡単な動きであればある程度自律して動くことができる。突如としてこのような芸当が出来るようになった理由はハッキリとは分からない。しかし、『花』の防衛機構が咄嗟に働くほどの重傷を負い、〝再生〟を経た事が関係しているのではないか、とは全員に共通する見解であった。

 

 この事はハジメ達に伝え、「何か異変を感じたらすぐに誰かに言う事」を条件に新たな力の探求の許可が下りた。『花』について分かっている事は驚くほど少ない。何が起こるか分からないのも確かだ。とはいえ、既に人ではない身で、よく分からない物の分体がとりつき、更に剣と魔法の世界で戦っている事を考えれば躊躇するのも今更かもしれないが。

 

 とにもかくにも、香織は新たに手に入れた技能を使いこなす事に腐心した。連撃の終わりや技の後に分身を作り、手数を増やす。回避の動作を行った後に分身に攻撃を行わせ、隙を小さくする。極めつけは連続した刺突攻撃の度に分身を生成し、出し終わったら破壊音響と電流の嵐を浴びせ、更に分身の攻撃を加える『ブルーメン・スヴィーテ』という大技。

 

 香織はこの分身生成を有名なミュージカルになぞらえて『ファントム・オブ・ジ・オルケストラ』と名付けた。オペラ座で繰り広げられる恋愛劇を自身の狂愛に、ハジメを縛り付ける自分自身になぞらえるのは一種の戒めか。結局、どのような手段を用いてもハジメと一緒にいる事を最優先にする事は目に見えているのだから。

 

 

 

 樹海の中、凄まじい破壊音が響く。野太い樹が幾本も半ばから折られ、地面には隕石でも落下したかのようなクレーターがあちこちに出来上がっており、更には、燃えて炭化した樹樹まであった。

 

 この多大な自然破壊はたった三人の機械によってもたらされた。そして、その破壊活動は現在進行形で続いている。言わずもがな、ユエにミュオソティス、そしてシアだ。

 

「でぇやぁああ!!」

 

 裂帛の気合とともに撃ち出されたのは武蔵玖型が使っていた大剣による斬撃だ。シアの元々の技能である身体強化にパニシングの膂力が加わり、最早人知を超えた威力となっている。

 

「第三形態 アクティベート」

 

 それを正面から迎え撃つのは多機能砲『ガラティア』を盾の形態にしたミュオソティスだ。それなりの重量を誇る上に人外の力で振るわれた大剣は巨大な盾に防がれる。シアは負けじと連続攻撃を行うが、ミュオソティスの堅牢な守りを突破する事はできない。

 

 しかしこれが時間稼ぎならともかく、ミュオソティスも守ってばかりではいられないため、ガラティアをブレード形態にしてシアに攻撃を加える。しかし、シアはそれにニヤリと笑う。

 

「待ってましたぁ!」

 

 ミュオソティスの防御が薄れた瞬間にシアは大剣を手放し、両手足の爪を展開する。おまけに放たれた衝撃波で少しだけミュオソティスが仰け反り、シアが爪による連撃を加える。

 

(ミュオソティスさんの防御は堅牢、大砲による攻撃も苛烈です。Bモードで倒せなければ後が無い!)

 

 シアが今発動しているのは『狂戦形態』、通称『Bモード』と呼ばれる形態だ。パニシングの出力を増大させ、今までとは一線を画す攻撃力を得る事が出来る。しかし決して万能ではなく、攻撃方法が爪であるために超近接戦闘を強いられ、更に攻撃力に全振りしているために防御力が下がり多大な損傷を受けてしまう。そのため回復に時間がかかり、メンテナンスコストも増大するという欠点があるのだ。

 

 使い方次第で自分の首を絞めてしまうモードだが、使いこなせれば戦闘の大きな助けになる。パニシングの使い方の訓練はユエや手が空いたデボルとポポルの指導の下行われ、割と順調に進んでいたのだが、Bモードの存在が明らかになってからは如何にこのピーキーな技を使いこなすか、というのも主題となっていた。

 

「想定外の事態発生 再解析」

 

 一方ミュオソティスは苛烈となったシアの攻撃をガラティアでなんとか捌いているが、時々攻撃を受けてしまい、紅龍自体も損傷が進む。そこでミュオソティスは一度大砲形態に戻し、発砲。その勢いでシアから距離を取る。

 

「逃がしません!」

 

 しかし、シアはエネルギー体で作った爪でミュオソティスを捕らえて引き寄せる。勝負はついたかのように見えたが、戦闘経験ではミュオソティスの方が上手だった。

 

「おぐへぇ!?」

 

 ミュオソティスは引き寄せられる力を利用してブレード形態に変形したガラティアでシアに強力な刺突攻撃を加えたのだ。防御力が低下しているとはいえ、それだけで倒れるほどヤワではないシアだったが、ミュオソティスの攻撃が終了したわけでもなかった。

 

「第四形態 アクティベート」

 

 ガラティアが再度変形し、そこからレーザーが照射される。大砲のように断続的な砲弾を放つのではなく、長時間熱線によるレーザーを照射する形態だ。

 

「う~、また負けてしまいましたぁ」

 

 シアの戦闘続行が不可能となり、今回の訓練は一度終了となった。ユエとも交代で行われているこの訓練は一度もシアの勝利が無い。しかし、原典ではシアが傷を負わせられるかという内容で勝負していた辺り、シアはその辺は既に十分な水準に達している。なにせ、ユエもミュオソティスも無傷での勝利は最初の数回以外殆ど無かったからだ。

 仰向けに寝転がるシアに休憩がてらオズマで遊んでいたユエが声を掛ける。

 

「……シアは成長していないわけじゃない。これなら足を引っ張る事も無いし、仮に私達が助けられなくても自衛は出来る」

「えへへ、それなら良かったです。最初は、臆病な私が果たして戦えるようになるのか不安でした。でも、私でも皆さんの力になれるなら良かったですぅ」

 

 実の所、シアはネットワークに繋ぐだけ繋いで拠点で待っているという手もあったのだ。ハジメは戦力に加える予定ではあったが、無理と判断したらユエや香織が説得してそうするつもりだった。ハジメも一度助けた手前、頭ごなしに否定はしないだろう。

 

 しかし、他でもない本人がそれを拒んだのである。自分が原因で一族を振り回し、更にはパスカル達まで巻き込んでしまった〝忌み子〟のシアにとって、自分が蚊帳の外に置かれた状態で事態が進行する事は何よりも怖かった。だから、ハジメ達についていく事に決めたのである。

 

「……でも、シアが()を上げない事は分かってた。少なくとも、未来視を使って機械生命体の子供を助けようとするような根性はあるから」

 

 シアの異能がバレた理由、それはパスカルの村に住む機械生命体の子供を魔物の襲撃から『未来視』を使って救出したからである。当初はシアも警戒したが、機会生命体の言葉からして子供、それも本気で怯えている事が分かり、考えるよりも先に行動していた。

 

 運悪く他の亜人族に見つかり、魔力持ちと機械生命体への協力という数え役満で追い出されていたのが真相だった。シア自身はこの行動を後悔はしていないが、感情のまま動く事の危険性も学んだ。ユエとしても、そこまで自己分析が出来ているなら一緒に行動しても害は無いだろうと判断したのである。

 

「そう言えば、ユエさんはハジメさんの二人目の恋人なんですよね」

「……ん。藪から棒にどうしたの?」

「そりゃ私だって他人の恋愛に興味くらい持ちますよ。無理に聞こうとは思いませんけれど、恋バナだってしたいですぅ!」

「……なるほど、別に聞かれること自体は構わない。でも、期待通りの答えかどうかは分からない」

 

 いくら異能持ちとは言え、シアも年相応の少女という事だろう。ハジメを巡る奇妙な恋愛関係に興味津々のようだ。

 

「……シアは、私の名前の由来は覚えてる?」

「たしか、ハジメさん達の世界の言語で『月』を意味するんでしたっけ? 素敵だと思いますぅ」

「……ハジメはそんな意味で付けたわけじゃないだろうけど、月は太陽の光を盗んで輝いている」

「え……まあ確かにそうかも知れませんけど」

「私は、封印されて時間に取り残された。数百年の空白で、私は全てを失ってしまった。『過去』は私の記憶の中にしか存在しない。殺された『未来』は、敵となって私に復讐に来る」

 

 殺された『未来』。ユエにとっては、ハジメ達が生きる『現在』のトータスは自身の存在を証明するものが何もない、それどころか、詠唱も無しに魔法を使い、存在しないはずの種族であるユエの周りは敵だらけだ。まさしく、封印によって殺された未来が蘇ってユエに復讐に来ている状況である。

 

「……そんな中で、私は一体どうやって生きればいい? 私が導き出した答えは、『盗んででも愛が欲しい』だった」

 

 月は太陽の光を盗んで輝く。ならば、その通りに太陽の光を盗むことにした。殺された『未来』で生き抜くには、『現在』に砦を作る。ユエがハジメと恋人になったのはそのためだ。この話はハジメや香織にもしているが、彼らは受け入れてくれた。

 

「……勿論、ハジメの事も好き。こんな私を受け入れてくれたのもそうだけど、時々弱った顔をするのも愛おしい。寝顔は時々悪戯したくなるくらいには可愛い。何より、一緒にいて心地が良い」

 

 ハジメを愛してはいるが、純愛と言えるかは世間一般には微妙な所だろう。そもそも、「殺された未来が復讐に来る」という表現自体、大抵の人間からは怪訝な顔をされて終わりである。世間一般の少女たちがときめく恋愛話には程遠いユエの現状。シアの望むような『恋バナ』ではないとユエは思っていた。

 

「話してくれてありがとうございます。何というか……凄い重い話で、正直私なんかが聞いていいのかと思っているのですが……」

 

 しかしシアは幻滅した様子も無く、軽々しく聞いてしまったことを反省しているようだった。

 

「正直言って、ユエさんの苦しみは私には分かりません。でも、『殺された未来が復讐に来る』という事への恐怖だけは理解できます。程度は違えど、私も『未来』を殺した結果が今の状態なので……」

「…………」

「ですから、幻滅なんてしません。寧ろ、言語化された事で親密感が湧きました。私なんかに仲間扱いされても、鬱陶しいだけかもしれませんけど……」

 

 ユエがシアの反応に目を見開いていると、今まで黙っていたミュオソティスが口を開いた。

 

「私がマスター達を観測し続けた結果、ユエを含む三人の間には生存のための協力関係、すなわち、合理的判断以外のファクターの存在が予想されました。私には『愛』という感情を厳密には理解する事が出来ませんが、このファクターがそれに該当する可能性は極めて高いです。根拠:この関係は、打算というには無駄が多すぎます」

 

 機械的な推論ではあるが、どうやら自分達の愛の形を肯定しているらしいミュオソティス。シアの言葉と言い、ユエにとっては救いだった。

 

「二人とも……ありがとう」

 

 蘇生された未来で、吸血鬼は仲間を得たのだった。

 




ユエの内心吐露。原作メインヒロインですが、香織や優花のキャラが濃すぎて存在感の無い人になりかけていたので補強しました。シアも同様。そしてまた小説が難解に(自業自得)

備忘録

ファントム・オブ・ジ・オルケストラ:なんか大仰な名前が付いているが、要は植物みたいな何かで作った分身人形。パニグレのセレーナ・幻奏というキャラが使う分身生成と性質的にはあまり変わらない。自由度はゲームシステムに縛られないこちらの方が上だが。ただ、人形のスペックは本体よりは低いうえに、操れるのは最大6~7体程度が限界であるため、某深淵卿の方が性能面では高い。多分、この名前が今後出てくることはあまりない。

ブルーメン・スヴィーテ:香織の必殺技的な奴。和訳すると『花の組曲』的な意味。元ネタはセレーナ・幻想の『ガラクシア・スヴィーテ』。向こうでは宇宙がモチーフだったが、こちらでは迷った挙句に花をモチーフにした。

Bモード:NieR: AutomataのA2が使用する技で、攻撃力が増大するがものすごい勢いでHPが減る技。攻撃すれば回復するが、A2を操作したばかりのプレイヤーには正直荷が重い。因みに攻撃を喰らったり、HPが一定量まで減少すると解除される。

シア:パニグレのカム・狂犬というキャラが元ネタ。シアの父親も同じ名前なのでややこしいが、混同しないように。今作ではカムの『本能解放』という技が『Bモード』になっている。

ユエ:以前、『ユエのモチーフは心臓』という記述を行ったが、もう一つのテーマがある。それは『現在』。過去も未来も失った彼女は『現在』に居場所を見出そうとしている。また、優花は『過去』、シアは『未来』がモチーフ。シアはヒロインではないが……

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
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