人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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とりあえず多忙のピークは抜けたので、少しずつ投稿していこうとは思います。また忙しくなりそうですけど。

さて、暗い話は置いといて、NieR Automataのアニメが始まりましたね。2話まで見た感想としては「かなり世界観が再現されている」という物でした。ネットの評価は知りませんが、とても楽しめています。


綺麗事ト現実

 修業を終えたユエ、シア、ミュオソティスはハジメの元に向かっていた。そしてその道中、遠目に魔物を狩っているハウリア達を見かけた。

 

「これで、良かったんですよね……?」

「シア?」

 

 シアは自分の家族が魔物達を狩り続ける光景を複雑な表情で見つめていた。元々は虫も殺せないような、気弱で心優しい種族だったハウリア族。それが今では殆ど躊躇いなく魔物を屠り続けている。必要な事ではあるし、一概にどちらが良いかとは論じれない。しかし、自分の行いのせいで変わりゆく家族に、シアとしては一抹の寂しさを覚えるのだろう。

 

「……正直に言って、私はハウリア族のような気弱な種族は見たことが無い」

 

 そのシアの様子を見てユエは自分の見解を語り出す。

 

「ハウリア族が今日まで争いを避けて生きてこられたのは、やっぱりフェアベルゲンが原因。そこにある掟や隠密性がハウリア達を守っていた」

 

 争いが頻発するトータスにおいて、ハウリア達が生き残れたのは間違いなくフェアベルゲンの存在が原因だろう。掟に支配されているということは、裏を返せばある一定の秩序は保たれていたという事なのだから。少なくとも、ハウリア族がこの状況に至るまで争いを避けられるほどの秩序が。

 

「……シアの行動を否定する気は無いし、魔力持ちを理由なく殺した過激派の行動を正しいという気も無い。でも、ハウリア族がフェアベルゲンの庇護下にあったのは事実」

 

 そしてユエは過去を思い出す。突如として全てを奪われ、封印された過去を。

 

「……叔父様が何を成し遂げたかったのか、王位を奪ってまで目指した目標が私には分からない。でも、私はその犠牲になった。何かを成し遂げるなら、何かを変えようとするなら、別の何かを犠牲にしないといけない」

「ユエさんは、それを受け入れたのですか……?」

「……少なくとも、犠牲無しで成果を得ようとは思わない」

 

 シアは顔を俯かせた。理屈としては分かる。おそらく万人がそれを正しいと言うだろう。しかし、感情が追い付くかと言うと、それは別問題なのだ。変わる前の家族を知っているともなれば、尚更である。

 

「……私の選択をシアに強要するつもりはない。答えは、シアが見つけて」

 

 折り合いをつけるにせよ、反抗するにせよ、今すぐに答えは出ないだろう。明確な正解など、有りはしないのだから。

 

「………」

 

 シアとユエが話している間、ミュオソティスは修行するハウリア達を見ていた。

 

(妙ですね)

 

 ミュオソティスは修行を続けるハウリア達、その中の一人に違和感を感じていた。どうにも動きがおかしいのである。小太刀を十字に構えたり、各々が何やら格好つけた動きをしているが、ミュオソティスにとってはどうでも良い事である。

 

(なぜ一人だけが遅れて動くのでしょう)

 

 修業するウサミミ達の中の一人が、平均して0.05秒遅れて動く。偶然と斬って捨てても差し支えないが、戦闘だけでなく日常で行われるだろう動作にも遅れが生じている。まるで変わり続けるアルゴリズムを必死でトレースするコンピューターのように。

 おまけにハウリア達のウサミミが動きに伴って揺れるのに対し、問題の人物の耳は直立不動だ。どうにも作り物めいた気配を感じる。同じく作り物であるミュオソティスのように。

 

(念の為、マスターに報告しておきましょう)

 

 ミュオソティスは『通達』にて、画像データとともにハジメに報告した。

 

 

 

(怪しい人物、ですか。一応、気を付けておきましょう。他の昇格者にも『通達』しておかねば)

 

 ミュオソティスからの報告を、ハジメは真面目に受け取っていた。0.05秒の遅れというのは普通なら偶然か何かですませてしまう。だが、この聖書の内容のような狂った世界では何が起こるか分からない。気にし過ぎという事は無いはずだ。聖書もこの世界も、重度のホラー、スプラッタ映画のファンをも十二分に満足させるほどの強奪、暴力、獣欲、殺人、さらには狂信に溢れているのだから。

 

「……怪しい人、か。気を付けないとね」

 

 傍にいた香織も『通達』を受け取り、神妙な顔をする。元々明るく、素直な性格をしている香織は、ハジメと出会う前には人を疑う事は少なかった。ハジメを、ゼロという画家を通して対面やネットで様々な人間と関わるうちに、そして、様々な文学作品や戯曲に触れるうちに、『人を疑う』という事を覚えた。

 

 これが良い変化か、それとも悪い変化かは分からない。天之河光輝からすれば「悪い変化だ!」と迷いなく言うだろう。もしかすると、八重樫雫も『良い変化』とは思えないかもしれない。だが、世の中には人を騙す存在がいるのも事実だ。生者を底なし沼に案内するウィルオーウィスプや、リア王を騙したゴネリルやリーガンのように。

 

ハジメと香織が待つ場所にシア達三人が現れた。なお、ミュオソティスの報告はシアには伝えていない。自分の家族の中に裏切り者がいるかもしれない、そんな情報は確定する前に伝えるべきではないのだ。

 

「お疲れ様です。どうです? 修業の結果は」

「……問題は無い。私達についてきても、無駄死にする事は無い」

「それは良かったよ。じゃあ、これからは正式な仲間だね」

 

 香織の言葉を聞いて、シアは嬉しそうに表情を綻ばせる。原作のように恋愛感情は抱いていないが、認められるだけでも嬉しい物なのだろう。

 

 なお、後にシアは恋愛感情を抱かなかった理由についてこう語った。

 

「確かにハジメさんは美人ですし、強いし頭も良い。トータスの出身である私には分かりませんが、多くの地球の哲学者の思想をご存じのようです。私の願いも叶えてくれましたし、此処だけ見れば好きにならない理由がありません。でも、ハジメさんが纏う夜のような雰囲気が、私には恐ろしく感じてしまったんです。一度足を踏み入れたら、二度と出てこられない気がして……」

 

閑話休題

 

「そうそう、貴女に贈り物があるんです。加入祝いとして」

 

 そういってハジメは宝物庫から白い大剣を取り出す。形状を見れば正確には大太刀と言った方が良いかもしれないが。

 

「貴女の武器です。敵から奪取したあの武器も性能は悪くありませんが、あまり格好がつかないですし」

「私の武器……」

 

 シアは渡された白い大太刀を見る。柄や鍔なども白と黒で統一された、儀式用か装飾用に思えるほどに美麗なその武器は、明らかに実戦向きの性能を感じさせる鋭さも放っていた。ずっと眺めていると、純白の刀身に魅せられそうになる。紛れもない芸術品だ。

 

「僕は『白ノ約定』と名付けました。気に入らなければ変えていただいても構いませんが……」

「いいえ、とても良い名前だと思います」

 

 シアはそう言うと、白ノ約定を背負った。武蔵玖型の使っていた剣よりも余程彼女に似合う武器だ。ハジメはシアに『家族を救う』という約定を結んだ。そして、その結果が今からやって来る。

 本来なら依頼の達成を喜ぶべき場面で、何故かハジメの表情は微妙な物だった。怪しい人物が一人いるというのも理由の一つではあるのだが、他にも頭の痛い事情があった。

 

「シアさん」

「? 何でしょう?」

「先に謝っておきます。ごめんなさい」

「はい? この後は父様達が合流するんですよね? まさか、何かあったのですか? いえ、さっき生存は確認しましたけど、凄い不安になってきたのですが、何もないですよね!?」

「ねえ、コンダクター。私も知らないけど、何があったの?」

 

 一応、『通達』の内容は伏せて香織が問いかける。ハジメの表情からは『警戒』しているというよりも、明らかに『気まずい』という感情が読み取れた。ハジメにしてはそれなりに珍しい表情なので、ユエも何があったのか気になると言う表情をしている。

 

 四人がそうしていると、件のハウリア族がやってきた。だが様子がおかしい。明らかにシアが知る彼等では無かった。父親に報告したいことが山ほどあるシアだったが、一瞬、それを忘れてしまう程には異様であった。

 

 歩み寄ってきたカムはシアを一瞥すると僅かに笑みを浮かべただけで、直ぐに視線をハジメに戻した。そして……

 

「親愛なる我等が主よ。貴女様より指定された魔物の討伐、完了致しました」

「あ、主?と、父様? 何だか口調が……というか雰囲気が……」

 

 父親の言動に戸惑いの声を発するシアをさらりと無視して、カム達は、この樹海に生息する魔物の中でも上位に位置する魔物の牙やら爪やらをバラバラと取り出した。

 

「一体で良い、と言ったはずですが……」

 

 ハジメの課した訓練卒業の課題は上位の魔物を一チーム一体狩ってくることだ。しかし、眼前の剥ぎ取られた魔物の部位を見る限り、複数体狩ったとしか思えない量である。

 

「ええ、我々は相当量を狩った時点で撤退するつもりだったのですが、運の悪い事に他の個体が押し寄せて来ちまいましてね。退路の確保のため、やむを得ず戦闘を行いました」

「ええ、族長の言う通りです。しかし、元は肥溜めに住むクズ供。慈悲をくれてやるいわれは無いでしょう? 私達の前に立ちはだかったのが運の尽き」

「幸い、墓標には困らねえですぜ? 何せ、何処を見渡しても木が生えてるんですからねえ」

 

 言葉遣いが何処か不穏だ。全員、元の温和で平和的な兎人族の面影が微塵もない。ギラついた目と不敵な笑みを浮かべたままハジメに物騒な戦闘報告をする。

 

それを呆然と見ていたシアは一言、

 

「……誰?」

 

 

 

 ハジメとシアの間に氷点下の沈黙が流れる。美麗な剣を送られた時のシアの表情は無限遠の彼方に吹き飛び、今は猜疑と憤懣に支配されている。シアの心情は推して知るべし。すなわち「お前ウチの家族に何をした」という疑問で埋め尽くされていた。

 

「ねえ、コンダクター。貴方は一体何をしたの? 貴方自身のためにも早く答えた方が良いよ?」

「とりあえず生き残れるようにすることが先決でしたから、戦闘訓練を行いました」

「はい、それは承知しています。事前に私には告知されていましたし」

「そして段階的に厳しくしていき、大抵の敵には対処できるようになりました」

「はあ、それで?」

 

 語っているハジメの目が死んでいく。少なくともこの結果はハジメが望んだものではないらしい事は明白である。

 

「こうなりました」

「ならねえよ!!」

 

 ついにシアの感情が爆発した。樹海に彼女の焦燥に満ちた怒声が響く。ハジメの襟を掴み、揺さぶり、「私の家族に何をした、言え、さっさと吐け!」と尋問する。一体どうしたんだ? と分かってなさそうな表情でシアとハジメのやり取りを見ているカム達。先ほどのやり取りから更に他のハウリア族も戻って来たのだが、その全員が殺し屋のような雰囲気を漂わせていた。それも洋画とかに出てくる身体能力がバグった重力が仕事を放棄しているタイプの。男衆だけでなく女子供、果ては老人まで。

 

 ハジメに聞いても埒が明かないと判断したのか、シアはカム達に縋るような疑問を投げかける。

 

「父様! みんな! 一体何があったのです!? まるで別人ではないですか! さっきから口を開けば恐ろしいことばかり……正気に戻って下さい!」

 

 シアの問いにカムは、ギラついた表情を緩め前の温厚そうな表情に戻った。それに少し安心するシア。だが、

 

「何を言っているんだ、シア? 私達は正気だ。ただ、この世の真理に目覚めただけさ。主のおかげでな」

「し、真理? 何ですか、それは?」

 

 嫌な予感に頬を引き攣らせながら尋ねるシアに、カムはにっこりと微笑むと胸を張って自信に満ちた様子で宣言した。

 

「戦わねばこの世界は生き残れない。破壊でも救済でもなく、ただ悪とした我々を赦さんとする聖者の行進に抗い、知性体としての矜持を捨てないためにな」

「………」

「無力を呪う声と救いを祈る声……その両方の声を家族が発するのを聞かずに済む。これは願っても無い事よ」

「………」

「主は綺麗事を否定しているわけではないんでさぁ。しかし、実現できない綺麗事はただの世迷言であると気付かせてくれたんですぜ」

 

 ハウリア達の言葉に何も言えなくなるシア。事あるごとに気取ったポーズをするのはともかく、言っている事はまあ、マトモではある。

 

「フェアベルゲンを追い出された時は運命を呪いましたが、捨てたものでは無いようですぜ。まさかこのような女傑と会う事ができようとは」

 

 なお、今の発言の出処は〝お花さん〟を気遣っていたパル少年である。足元の新芽を踏みつけていたが、特に気にした様子は無い。その肩には大型のクロスボウが担がれており、腰には二本のナイフとスリングショットらしき武器が装着されている。随分ニヒルな笑みを見せる少年へと変貌していた。

 

「パル君! あなたの足元には新芽がありますよ! 今からでも遅くないですから、正気に戻りましょう!?」

 

 どうやら、まだ幼い少年だけでも元の道に連れ戻そうとしているらしい。元の性格を想起させる言葉で必死に呼び止めようとしている。

 

「新芽ですかい……まあ、平和な世になったら考えまさァ。今の状況でそこまで気を回せるほど、俺はまだ強くないんでね」

 

 まるで歴戦の兵士のような事を言うパル少年十一歳。しかし、言っている事は至極真っ当なので何も言えなくなる。そんなシアに対して、少年はさらに追撃をする。

 

「俺は過去と一緒に前の軟弱な名前も捨てました。今はバルトフェルドです。〝必滅のバルトフェルド〟これからはそう呼んでくだせぇ」

「誰!? バルトフェルドってどっから出てきたのです!? ていうか必滅ってなに!?」

「そんなものは俺の情熱から「パル君」……何ですかい?」

 

 意気揚々と演説を始めようとした少年の言葉を遮って呼びかけるハジメ。彼らの難儀な性格はともかく、これだけは訂正しておかなければならない。そんな雰囲気を漂わせている。

 

「僕は男です。女傑という言い方は不適切だ」

 

 ハジメがそう言うとパル少年の顔は驚愕に染まり、

 

「そ、それはとんだ失礼を! 以後気を付けます!」

 

 慌てて謝罪するパル少年。何人かが目を逸らしたので、どうやらハジメの性別を勘違いしていた人物はそれなりにいたようだ。ハジメの目が死んだ。

 ハジメとシアがそれぞれ別の理由で遠い目をしていると、カムから報告が上がった。どうやらハジメに合わせたい人物がいるらしい。

 

「どうやらフェアベルゲンから出てきた者のようでして。ハウリアではありませんが、我々と同じ兎人族です。なんでも我々の元に加わりたいとか……」

 

 カムがそう言うと、ある一人の兎人族の女性がハジメの前に出てきた。

 

「試しにナイフの一本を持たせてみたら上手く扱いましてね。筋は悪くありません」

「は、初めまして、ネム・スクロフです。ハウリアではありませんが、仲間に加えて下さい。そして、」

 

 カムの紹介でハジメに自己紹介をする新参者の女性。だが、次の瞬間に無感情な声と共に持っていたナイフをハジメに向けて振るった。

 

「貴方の命を頂きに参りました。秩序(オーダー)の名に於いて」

 

WARNING FKX-2B ネメシア




とりあえず気弱なハウリア達がどうやって生き残ったのかという考察と、訓練の結果、そして不穏な最後でした。

備忘録

ネメシア:ありふれ原作アフターのメイド集団『フルールナイツ』の構成員の名前。今作では『花』から送り込まれた刺客『オーダー』の一人である。型番は天使文字で表示されており、ハジメ達が持つ『言語理解』の技能でアルファベットに翻訳されたもの。

白の約定:NieR Automataの主人公2Bの初期装備。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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