人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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遅くなりました。新作を書き始めてしまったためでございます……

前回はNieR名物の悲しき戦い。今回はどうなるのか……


追迫/ルシフェル

 闘いの後、シアは友の声を聞いていた。身体は引き裂かれ、ついに頭ばかりとなった機械の狼。しかしパニシングに侵された機械は、この姿になっても生き長らえていた。

 

「奴らは……自由の為に、闘っていると言っていた……だが、俺に自由は無かった」

 

 ロックの声には怒り、諦観、疑問……様々な物が含まれていた。ロックの話によれば、『刑死者』の率いる機械の亜人の集団に捕獲され、爆破機能を埋め込まれた上で戦闘を強要されていたらしい。そして、その集団は『自分達の自由』を目指しているとも。

 

「………」

 

 ハジメはフェアベルゲンを襲った機械の亜人達を思い出していた。虐殺の被害者が生存権を求め、フェアベルゲンに襲撃を仕掛けたというのは、一応筋が通ってはいる。その集団がロックの自由を奪っていたのは、皮肉に過ぎる話だが。

 

「……最後に教えてください。どうして私の前からいなくなったんですか?」

 

 シアとて粗方予想はついている。しかし、本人の口から直接聞きたいのだろう。

 

「……殺された数多の魔物を見れば、お前と我の末路など考えるまでもない。我は自己保存本能に従ったまでだ」

 

 たとえカム達ハウリアが気弱な種族だとしても、ロックからすれば脅威度は他の亜人とそう大差は無い。娘に魔物という危険因子が近づいたら普段とは違う行動を取っていてもおかしくはなかった。

 予想通りの返答にシアは少し苦笑いを浮かべると、改めて口を開いた。

 

「それでも、怪我が治ってからも暫くは一緒にいてくれました。家族以外に繋がりの無かった私にとっては、支えだったんです」

「……そうか」

「ですから、お礼は言わせてもらいます。ありがとうございます」

 

 狼は何も答えなかった。その代わり、自分の死を悟って自嘲するように呟いた。

 

「さあ、殺せ。どのみち、頭部だけでは何もできぬわ。再生もするのかもしれんが、その前に獣に壊されるだろう」

「悪い、村の整備してたら遅くなった。で? あたしは今度は何を直せばいいんだ?」

 

 そこに現れたのはデボルだった。ハジメが戦闘前に『通達』で連絡していたのだが、一体何のためなのか。

 

「幸いと言うか生憎と言うか、仕事は無くなっていませんよ。彼を修理してもらいたくて」

「彼? ああ、この狼? 犬? の頭か?」

 

 デボルはロックの頭部を拾い上げた。そして首の切断面とバラバラに切り裂かれた身体の残骸を見て少し溜息をついた。

 

「修理出来そうですか?」

「すぐにとはいかないけどな。長期戦確定だな、これは」

 

 その光景を見て疑問を持った人物がいる。言わずもがな、シアだ。

 

「ちょ、ちょっと! ロックは死なずに済むのですか!? 修理って一体……!」

「落ち着け! 危うく落とすところだったぞ!」

 

 死を覚悟していた友に関する吉報に冷静さを保てなかったシアは、デボルに掴みかかって問い詰めた。無論、シアの膂力で掴まれたデボルは激しく揺さぶられ、危うくロックの頭部を取り落とす所であった。

 

「ご、ごめんなさい!」

「ふう……ハジメから連絡されたんだよ。戦闘が終わって修理できるようなら狼を直してくれってな。確かに、上手くやれば爆破機能を物理的に破壊する事もできるだろうさ。ここまで上手くいくとは思わなかったけどね」

「じゃあ……!」

「時間は掛かるが直してやる」

「良かった……!」

 

 シアは安心した表情を浮かべると、ハジメにもお礼を言った。

 

「重ね重ね、ありがとうございます……」

「……礼を言われる筋合いはありませんよ。僕はロックを破壊するつもりでしたから。今回は運がよかっただけですよ」

「それでも、何も言わずにはいられないんです! 助けられているのは、事実ですから」

「そうですか……」

 

 シアからすればハジメには何度も救われており、信用度はうなぎ登りである。しかし、ハジメとて全能ではない。病棟の惨劇では知人を救えずに大勢殺した。その後は、一人の少女に治らない傷をつけた……実の所、ハジメの自覚するところでは救った人間よりも傷つけた人間の方が多いのである。あまり過剰に英雄視されるのは良い気分ではない。

 

 ハジメが溜息をついて多少の訂正を入れようとしたところで何かに気付く。

 

「―――っ!」

 

 ハジメは『超速演算』を発動してデボルとシアの二人を突き飛ばす。

 

「きゃっ!?」

「何するん……!」

 

 またもやロックの頭部を取り落としそうになったデボルが抗議の声を上げるが、彼女が見たのは超高速で飛来した人型の物体に組み伏せられ、右腕に取り付けられた丸鋸で削られている所であった。

 

「コンダクター!」

「ハジメ!」

「マスター!」

 

 香織は音を、ユエはオズマを、ミュオソティスはガラティアの砲弾を敵にぶつけ、ハジメもまた循環液に塗れた手でアストレイアを撃ち、敵を引き離す。

 

「コンダクター! 大丈夫なの!?」

「なんとかね……気を付けて下さい。アレの動きは『超速演算』を以てしても捉えられなかった」

「!?」

 

 香織達は驚いて起き上がった敵を見る。昇格者はほぼ全員が持ち合わせている『超速演算』だが、ハジメのそれは群を抜いて演算速度が速い。それこそ、雷速で動く物体さえも視認して対策できるほどである。それが全く通用しない……これまでとは一線を画す敵であると香織達は身構えた。

 

WARNING   ルシフェル

 

(ルシフェル……やはり天使ですか)

 

 タブリス以来の天使の名を冠する敵。オルクス大迷宮の最深部にいた複数の首を持つヒュドラのような天使。攻撃、盾、回復と役割分担をして一つのパーティーのような戦い方をする上に、形態変化して致死性の猛毒を含んだ極光を浴びせてくる強敵であった。いや、ベヒモスに手こずるこの世界の基準ではもはや災厄に近い。

 

(かの敵と同等の強さとすれば苦戦は必至……)

 

 普通ならば絶望するしかない状況だが、迫りくる濃密な『死』の気配に、ハジメの口元は笑っていた。

 

 

 

 目の前の強襲者、ルシフェルはハジメ達よりも一回り背が高い人型で、右腕の先に円盤のような刃が取り付けられている。それを近接武器、もしくは投擲武器として利用しているようだ。そして何より特筆すべき点は敵の動きの速さだろう。『数学者』の頭脳を持つハジメでさえ視認できない程の速度。普通に戦うには無理がある。現に、ルシフェルが通ったであろう場所は地面が抉れ、木々が薙ぎ倒されていた。

 

『厄介だね……』

『ええ、しかし突破口が無いわけでもない。闘っていて分かりましたが、あの速さは恒常的に引き出せるわけではなく、パニシングのエネルギーによって無理矢理引き出したものです』

 

 ルシフェルが何処から来たのかは分からない。しかし、ここまでの移動にエネルギーを使っているなら万全の状態とは言い難い。そして、ルシフェル自身の耐久力が速度に対応できず、少しずつ自壊している事も判明した。

 

(高速移動の反動が本体にマイナスに作用している……)

 

 そして高速移動自体も複雑な軌道では不可能であり、ほぼ直線に限定される。向かってくるのが分かっているなら待ち構えていればいいのだ。物理法則を無視して飛んでくる円盤は厄介だが、それはユエのオズマで慣れている。

 

 稲妻のような軌道で飛んでくる円盤を躱し、それを囮にした本体の強襲をアストレイアで撃ち抜く。ルシフェルは仰け反り、晒された隙にユエがオズマで作った斧で殴りつける。ルシフェルは円盤を複数生成し八方に飛ばすも、香織が音をぶつけて速度を鈍らせ跳躍して回避しワルドマイスターによる刺突攻撃を与える。

 

「―――っ!」

 

 しかしルシフェルもやられっぱなしではなく、香織の攻撃を斥力で弾き飛ばす。だが香織も勢いを殺しつつ着地し、代わりにミュオソティスの砲弾による攻撃がルシフェルを穿った。

 

「……敵も弱ってる。このまま押し切る」

 

 ルシフェルの動きが緩慢になったのを見て、ユエがこの機を逃すまいとオズマによる攻撃を続行し、ハジメもゼロスケールから弾丸を連射する制圧射撃体勢を解除してアストレイアに持ち替える。

 

 だが、ルシフェルの闘いはこれで終わりではなかった。

 

「!?」

「なに、これ!」

「……私達のエネルギーが損失していく!」

 

 ハジメ達のパニシングによるエネルギーが急速に減少した。樹海は霧こそ存在するが、このようにエネルギーを急速に減少させる作用は無かった。ならば、外部からの攻撃という事になる。そしてその攻撃主は目の前に存在する堕天使だった。

 

「エネルギーを吸収しましたか……」

 

 ハジメは異重合核を取り出して不足したエネルギーを補給しながら呟く。他の昇格者も同様の行動を取りながらルシフェルの厄介さを認識する。回復手段がなければそれだけで詰みだ。シアもロックの保護をデボルに依頼して戦線に加わっているが、こんなものがパスカルの村に襲撃を仕掛ければ一瞬で壊滅するだろうと思っていた。

 

 補給が終わったハジメはアストレイアで頭部を狙撃するが、それほど効いている様子が無い。暴走状態のシアにも有効だった攻撃が効かず、さらにはルシフェルは進化を完了させてしまった。

 

 残余エネルギーが解き放たれ、周囲の存在を弾き飛ばす。樹も、土も、一切合切が少しの抵抗も許さずに砕け、めくれ上がり、クレーターが生まれる。その力の奔流の中で、昇格者達は各々の方法で自らの身を守っていた。結界で、音で、巨大な盾で。防御技に乏しいシアだけはユエの庇護下に入っていたが、自力で判断して避難が出来るようになっている辺り、確かな成長を感じる。

 

 そして、エネルギーの奔流が収まった時、その中心部にいたのは絶望の堕天使だった。

 

「うそ……うそだよ……こんなの……」

 

 香織がワルドマイスターを落とし、目の前の現実を否定するかのように(かぶり)を振る。ナイフで出来た翼と背面の十字の入った戦輪を持つ堕天使は、香織と、何よりハジメにとって見覚えのありすぎる人物の姿をしていた。

 

 ハジメは天使を真っ直ぐに見据えて仲間たちに静かに願った。

 

「あの敵は、いいえ、彼女は僕が討ちます」

「……無謀。ハジメ一人で相手が出来る敵じゃない。さっきもアストレイアの弾丸が効いていなかった!」

 

 ユエが現実的な分析をハジメに語り掛けるが、ハジメはそれを肯定しつつも意見は曲げない。

 

「分かっていますよ。自分が莫迦な事を言っていることくらい」

「なら、どうして……」

「この闘いは僕が引き起こした罪だ。だから、僕が終わらせなくてはなりません」

 

 トータスに来る前に、自分が傷つけてしまった少女を思い出しながらハジメは銃を取る。

 

「思う存分、僕に罰を与えなさい。()()()()

 

 復讐に来た殺された過去。壊してしまった少女の貌を持つ天使と対峙しながら。

 




大団円に見せかけてからの絶望の闘いpart2。強さ的にも今までとは別次元かつ知り合いという……大団円が死んだ。

ロックは生き残りました。前回の感想欄で完全にお通夜ムードでしたが、生きてます。今回は更なる絶望が来ましたけどね。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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