人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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まだまだ樹海編は続きます。今回は久しぶりに戦闘描写。多分次回以降も戦闘。

最近様々なありふれ二次を見ていて、ハジメの扱いに皆さん悩んでいるのだなあ、と思いました。魔王のままだったり、ちょっと軟化していたり、そもそもいなかったり。結構少年漫画的な主人公になっている場合も多いですね。

私の作品では、『魔王』である事は間違いありませんが、暴威や理不尽の象徴ではなく、悲哀や孤独、さらには原作とは別ベクトルの冷酷さを持たせています。NieR Replicantがクロス先に入っている時点でこうならざるを得ない。


首無シノ天使

 機械達が霧の中から現れ、ハジメ達に襲い掛かる。斧を持った中型二足歩行の機械生命体や恵里のお供である異合ユニット達、そして、初遭遇の球体に羽が生えたような飛翔体『ウィルプス』もいる。

 

「今、中村さんってああいうの連れてるんですか?」

「ええ、捕獲して降霊術で仲間にしてたわ」

「便利だね、降霊術」

 

 機械生命体がハジメ達を目掛けて飛び掛かり斧を振り下ろすが、ユエがオズマを同じく斧に変形し弾き返す。すかさずロックが縦回転のチェーンソー攻撃を仕掛けた。

 

「さて、僕達も動きますかね」

 

 ハジメがそう言うや否や、優花がハジメに対してナイフを複数本投擲する。しかし、あらかじめ予期していたようにハジメが身を捻って躱し、反対にハジメが背後に回した手で銃を発砲。結果、ハジメと優花の背後で敵が撃ち落とされた。

 

「また、殺されるかと思いましたよ」

「一本でも当たれば面白かったのに」

 

 「当たらないとは思うけれど」と優花は付け加えた。仮に避けきれないとして、銃で撃ち落とされるだけだろうという確信が優花にはあったのだ。ルシフェルとしてハジメと闘った時の記憶は朧気ながら覚えており、そしてその強さは鮮烈に身体に刻まれている。

 

 また、仲間として本格的に同行するよう事が決まった時、ハジメや香織達が優花の戦闘スタイルを確認するために試合をしたのだが、ハジメに対してだけやたらと殺傷能力の高い攻撃が飛んでくるため、愛情という名の殺意は健在のようだ。香織はハジメの自業自得として黙認しているが、本格的にハジメを殺そうとすれば止めるだろう。とハジメは信じたかった。

 

「それにしても、今回も数が多いね」

 

 香織が『磁場のロンド』を放ちながらぼやく。ライセン大峡谷の赤潮の時、集団戦法で責められた事を覚えているのだ。一体一体は大したことの無い強さでも数が集まれば脅威となる。

 

「……ん、長引かせる事に得は無い。早々に殲滅する」

 

 ユエはウィルプスの光線攻撃を首を動かして避け、異合火力ユニットの散弾を浮遊移動で回避するとパニシングを増幅させ『殲滅モード』へと移行する。移行時に異重合エネルギーによる範囲攻撃が発生し、その後は常にニードルの雨を降らせながらオズマを変形させた様々な武器による強力な近接攻撃を連発する。

 

 何より特筆すべきはモード発動中のユエの防御力だろう。ユエの身体はパニシングの異重合体で構成され、驚異の軽さと防御性を併せ持つ。金属の鎧のように重さで動きが鈍る事も無く、ルシフェルの全力の攻撃でもなければ傷をつける事も叶わない。シアやミュオソティスのような強力な攻撃手段を持つ昇格者でさえ掠り傷をつける事が精いっぱいの代物だ。

 

「相変わらずユエさん強すぎるですぅ……」

「実を言うと我との戦闘でも使われた。直接闘ったのは分身体とはいえ、何も効かないというのは初めての経験だったな……」

 

 弱点と言えばあまりに強大なエネルギー故に長時間の連続発動が至難の技という程度である。シアは白ノ約定で異合解体ユニットを両断しつつ吹き飛ばしながら感心していた。

 

 やがて、ユエの猛攻により敵が殲滅された頃、ユエはシア達に近づきこう言った。

 

「……称賛は素直に受け取っておく。でも、これも絶対的な性能を持ってるわけじゃない。標準的な機械生命体は屠れても、精鋭や天使は化け物」

 

 ユエは自分の力を過信してはいない。タブリスやルシフェル、ダルタニアンなど強力な敵との闘いが油断を削ぎ落していく。おまけに、ライセン大峡谷においては魔力程ではなくとも、微弱ながらエネルギー分解作用が確認された。決して、万能の技ではない。

 

「分かりました。肝に銘じます」

「そうだな。我が味わった絶望がユエに降りかからんとも限らない」

「……ん、いい子」

 

 パニシングはトータスに存在する魔力とは全く別のエネルギーであることが判明している。かなり雑に捉えるなら、熱力と位置エネルギーくらい違う。どちらもスカラーに分類されるエネルギーでありながら発生原理が全く違う物とでも言おうか。

 

 しかし、本来トータスに存在しなかったエネルギーであるために、性質について分かっている事は少ない。そして、エネルギー体である以上、魔力のように弱体化、もしくは無効化される可能性もゼロではないのだ。

 

「では引き締まったところで、改めて出発いたしましょ―――」

 

 ハジメがそう締めくくろうとした所で、何処からともなく飛んできた極光が彼に降り注いだ……ように見えた。

 

「何度も奇襲を喰らってたまるものですか……」

 

 ハジメはその場から跳躍して攻撃を回避していた。戦闘終了後、もしくは最中に奇襲を受けるのはこれで何度目か。ハジメもつくづく運が無い。

 

 樹海の木々に混じってタブリスでも生えてきたのだろうか。オルクス大迷宮最深部に住まう天使を彷彿とさせる極光だが、今回は違ったようだ。下手人は首の無い有翼の人型。首の無い天使が複数の輪を従えて現れた。

 

「ちょっと……嘘でしょ……」

 

 優花が敵の姿を見て呻く。敵の姿は暴走した優花と対峙した〝神の使徒〟と名乗る存在にそっくりだったからだ。記憶の中で頭部を破壊した事は覚えていたが、その状態でも生きているとは想定外だ。また、腕も切り落とされているようで、二つの輪にそれぞれが制御される形で浮遊していた。

 

「ターミナルが言っていた、分解能力を有するエヒトの使徒でしょうかね」

 

 敵の持つ一つの巨大な輪から再び極光が放たれ、それを回避しながらハジメが呟く。大迷宮と思しき大樹は攻撃によって損壊されながらもひとりでに再生されていく。パニシングの気配は感じないが、おそらく何らかの魔法的処置が施されているのだろう。

 

「……ごめんなさい。これは私の責任だわ」

 

 優花がハジメ達に謝罪する。暴走していたとはいえ、敵を見逃したのは自分の責任だと。しかし、ハジメ達は優花を責める事は無かった。

 

「所詮、最後の悪あがきですよ。世の中大抵、こんなものです」

「そうだね。私達がすべきなのは、あの天使に受難曲(パッション)を捧げる事」

 

 そもそも暴走状態でそこまで気にかけろという方が酷である。I’ll be backしてくること自体が非常識なのだから。普通は頭部を吹き飛ばしたらおしまいである。ハジメ達が冷静なのは今まで散々死にかけてきたからに過ぎない。

 

「ありがとう……」

 

 優花はお礼を言うが、ハジメは神速で迫ってきた腕による剣撃を『超速演算』全開で回避していた。とにもかくにも目の前の敵を倒さねば始まらない。

 

 

WARNING   オレステス

 

 

 首無しの天使は自身が持つ幾つもの輪から分解魔法の付与された光線を縦横無尽に打ち出す。さながら蜘蛛の網座敷のように、油断すれば檻に囚われ消滅させられるだろう。おまけにオレステス本体が持つ技能『神速』により、時折『超速演算』でも捕らえられない速さで移動してくる。

 

「e5bcb1e38184e381a7e38199e381ade38082e5ada4e78bace381aae88085e38288」

「だって。何か反論ある? コンダクター」

「〝一つの思いは無辺を満たす〟とでも言っておきましょうか」

「ポエム読んでる場合ですかね!? で、どういう意味なんです?」

「例えドングリの実に閉じ込められていようと、私達は広大な宇宙の王である。そう言いたいのかな?」

「……そういうことです」

「答えになって無いんだから……」

「報告:難解」

「為せば成るということです。行きますよ、同志諸君」

 

 二本の腕の剣舞を躱してそれを銃撃するハジメは敵味方の質問についでに答える。頭部が無いのにどうやって敵が言葉を発しているのかは不明だが。そして、背後から天使の輪が迫るが、アストレイアの銃撃で一つをずらし、脱出する。

 

「どれだけの極光を放とうとも、私達の夜は明かせない」

 

 香織が光線の合間を縫って高速移動から成る強烈な細剣の刺突攻撃を行い、さらに立体機動的な剣舞を披露する。前者は『夜鳴のターゲリート』、後者は『蝶舞のセレナーデ』という技だ。

 

『夜鳴のターゲリート』は高速移動による刺突攻撃というシンプルな技であり、その分派生が容易であることが特徴である。今回はそこから複雑な立体機動を成す『蝶舞のセレナーデ』を派生させた。この二つを含む香織の一部の技は瞬間的な速度であれば、オレステスの『神速』をも上回る。

 

「なんて速さ……敵も味方も。アルコールなんて飲んでたら一瞬で回りそうだわ。飲んだ事は無いけれど、ドラッグもね」

「とか言いながら貴女も凄い速さで移動しましたけど?」

 

 もう一人、『神速』を上回る速度を出す昇格者が存在する。それは優花だ。ルシフェルの時と負けず劣らず。『遊麟』と『引蜘蛛』の合わせ技で攻撃を掻い潜り、戦輪『イエスタデイ』を躍らせる。

 

 その他、ロックの突進技やシアのBモードなど、速さだけなら神の使徒とタメを張れる昇格者は存外多いのだ。

 

 と、その時、オレステスが輪を拡大させ、そこから何かを召喚した。出現したのはエクスカベーターとエクスプローラー、通称『双子のハンター』であった。

 

「……めんどくさい」

「機械体の召喚もできるのか……」

 

 オレステスの技能がまた一つ明らかになったところで、彼女(?) の独立飛行する両腕から分解魔法の極光が放たれる。無論、それに当たる昇格者達ではなかったが、今回は少し事情が違う。それに合わせてエクスカベーターが頭上からの急襲攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

「しゃらくせえですぅ」

 

 普通なら回避後の隙を狙った攻撃に被弾してしまうところだが、数日間の修業によって成長したシアは片腕だけ展開した爪で反撃する。

 その後もハジメに対してオレステスの光線とエクスカベーターの槍の横薙ぎ一閃、更にエクスプローラーの弓による射撃が襲い掛かるが、高速移動の剣技『氷晶』で光線を掻い潜り、飛び上がって槍を躱しエクスカベーターにゼロスケールを乱射、更に空中で身を捻って矢を回避し、アストレイアによる狙撃をエクスプローラーに喰らわす。

 

「背後がお留守よ、ハジメ」

 

 ハジメの攻撃で怯みきっていなかったエクスカベーターが再度攻撃を仕掛けようとするが、優花のナイフと更にそれを起点とした『引蜘蛛』による接近、そしてエクスカベーターの頭上から叩きつけた戦輪『イエスタデイ』によって敵は吹っ飛ぶ。

 

「殲滅開始」

 

 また、ユエが再度『殲滅モード』を起動し、攻撃の雨を降らせる。

 

「無意味!」

 

 その横でロックがエクスプローラーの矢を噛み砕きながらチェーンソーによる攻撃を仕掛ける。獣である事による身軽さと機動力を惜しみなく発揮している戦法がこの戦場に噛み合っていた。

 

「私は大砲だけではありませんよ」

 

 この中で大型の武器を持つミュオソティスは分解攻撃の雨霰の中では不利に思われたが、スカートの中のサブアームに取り付けられた銃により攻撃の合間を縫うような射撃を披露していた。

 

「攻撃ルートを見つけました。高出力作戦回路 アクティベート」

 

 やがて敵の攻撃の間に一つのルートを発見し、多機能砲ガラティアの第二形態、ブレードにより強撃を加える。

 

「第五形態 アクティベート。ロックオン 解析」

 

 ミュオソティスは更にガラティアを変形し、冷気弾を放って敵を凍結させる。オレステスには効かず、また分解魔法によって一瞬で解除されてしまうが、その一瞬が敵にとっての命取りであった。

 

「貴方達に終結(コーダ)を!」

 

 香織がワルドマイスターによる範囲攻撃『終嵐のコーダ』を実行する。音速で迫る破壊の波が双子のハンターの命を刈り取った。

 

「……敵の視野範囲外への逃亡を確認」

「オレステスは逃げましたか……」

 

 だが、オレステスは形勢不利と悟ったのか戦線離脱していた。仕留めきれなかったのは不安要素の除去に失敗したことを意味する。〝神の使徒〟がパニシングによって機械化した敵など、弱いはずがないのだから。

 

「部屋に沸いたゴキブリを見逃した気分ね……」

「ゴキブリも嫌いだけど、厄介さならあっちの方が上だよ」

 

 ゴキブリは生理的嫌悪感を抱きはすれど、命に関わるわけではない。逃げ足が神速の敵と言うのは意外と厄介である。敵にとって有利な場所に逃げ込まれたら目も当てられない。

 

「まあ、今はアレについてはどうしようもありません。一応パスカルの村やアルフレリックさんには報告しておきますか……」

「そうだね……それしかないよ……」

「とはいえ、次に僕達の目の前に出てきたら問答無用で、潰す」

 

 優花が発生の間接的な原因となってしまったオレステスを仕留められなかったのは気がかりだが、現状出来る事は無い。せめて世話になった人物に報告だけはしておこうとハジメが言い、香織がそれに賛同する。希望的観測に過ぎないが、あくまでオレステスの狙いは自分達であるような気もしていた。

 

「まずは樹海から出ましょう。我々の本来の目的のために」

「ハジメさん……その事なんですが……」

 

 とにかく樹海から出る事を優先して動くことに決めた。しかし、シアが芳しくない顔をする。

 

「どうしたのですか?」

「急に方向感覚が分からなくなってしまったんです……樹海を出る道が見つかりません」

「なんですって?」

 

 唐突にシアが方向感覚を見失ってしまった。亜人族は霧の中でも迷わないのだが、今回ばかりは事情が違うらしい。

 仕方が無いので、シアの見つけた道のままに進むことにした。黙っていても事態は好転しない。暗夜行路ならぬ暗中模索、五里霧中の樹海の中を練り歩く昇格者。

 

 そして昇格者達が辿り着いたのは、巨大な古城だった。

 




また過去が追いかけてきましたね……因みにですが、(最近やたらと死にかけるから分かりにくいけど)ハジメ達の戦闘能力はかなり高い設定です。少なくともこの時点で神の使徒とやり合えるくらいには。ステータスに換算したらどれくらいになるのかは不明ですが、同時点での原作のステータスは超えていると思われます。私はステータスの数値を列挙する作業が死ぬほど嫌いな事にこの作品の序盤で気付いたので今後ステータスプレートが出てくることはおそらくないです。

備忘録

ウィルプス:パニグレの敵。緑色のスニッチのような形状をしている。光線発射の予兆が分かりにくい。

殲滅モード:パニグレのルナのコアスキル。ゲームでは発動中は無敵となるが効果時間が切れた直後に攻撃を喰らう事も。

オレステス:優花と交戦した使徒がパニシングで復活したもの。頭部が無く、両腕が分離し独立して動く。また、複数の輪を攻撃に使う。名前の元ネタは原作のハジメのアーティファクトで、空間を繋いでゲートを作る事が出来る。

夜鳴のターゲリート:パニグレのセレーナ嵐音のQTE技。ゲーム内では雷属性の地味な一撃だが、今作では使徒を上回る速さの刺突攻撃に。

蝶舞のセレナーデ:パニグレのセレーナ幻想の技。立体的に移動し多角的な斬撃を浴びせる。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
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