人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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毎度の如く賛否が分かれそう。


暗躍スル秩序

「なるほど。魔物の襲撃は失敗しましたか」

「はい。しかし、対象の戦闘力は判明。計画の続行を支持します」

 

 フューレンに着いたハジメ達を眺めながら二人……いや、二体が瞬きも無く会話をしている。一体はギルドの案内人のような服装をしており、もう一人は宿屋のスタッフのような服装をしていた。

 

 機械教会『法王』麾下の抹殺部隊『オーダー』である。今日も今日とてハジメ達、ひいては昇格者達の抹殺計画を話し合っていた。

 

「まずは私が対象をウルへ誘導します。或る貴族へ意図的に情報を渡しました」

「では、私はウルへ戻り、計画の最終段階へと移行します。しかし、FKX-3O-アイヴィーの抹殺対象も同じエリアに向かっています」

「問題ありません。いざとなれば連携を取りましょう」

 

 そう会話を締めくくり、FKX-5S-サルビアとFKX-6O-プリムラは姿を消した。

 

 

 

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『やはりそうですか? ミュオソティス』

『はい。樹海にて接敵したネメシアと名乗る機械。それと同系統の存在であると推測します』

『俺も賛成だ。あの女からは同じ匂いがする』

 

 フューレンの冒険者ギルドに着いてから、ハジメ達が〝通達〟及び〝圧縮会話〟で目の前の脅威を確認する。傍目には普通に歩いているだけだが、昇格者の演算能力のもとで作戦会議が行われていた。

 

 フューレンを案内するというギルドのサービスを教えられ、その通りに進むと件の女がいた。周りの人間は気付いていないようだが、接敵経験のあるハジメ達にはまる分かりだった。

 

 『オーダー』。ハジメ達の抹殺に動いている機械。

 

『マスター、いつでも戦闘に移れます』

『準備だけはしておいてください。ただ、暴発はしないように。我々が不利益を被る可能性が高い』

『『『『『了解』』』』』

 

 ハジメ達が近寄ると、案内人の女は自分からハジメ達に近寄ってきた。いつでも戦闘に入れるように準備だけは水面下で整え、話し合いに臨む。モットーの時は人目に付かない場所で脅迫行為に及んだが、この衆人環境では分が悪い。

 

「フューレンへようこそ~。どのような案内をご希望でしょうか?」

「とりあえず宿を探したいですね。長旅の後でして」

「でしたら、観光区へ行くことをオススメしますわ。中央区にも宿はありますが、やはり中央区で働く方々の仮眠場所という傾向が強いので、サービスは観光区のそれとは比べ物になりませんから」

 

 フューレンは四つのエリアに分かれている。この都市における様々な手続関係の施設が集まっている中央区、娯楽施設が集まった観光区、武器防具はもちろん家具類などを生産、直販している職人区、あらゆる業種の店が並ぶ商業区がそれだ。

 

 というような案内を聞きながら、ハジメ達は警戒を緩めない。樹海というある種閉鎖的な空間とは違い、堂々と衆人環境に存在している以上、相手の出方が読めないからだ。周囲の視線を無効化できる手段が有るのか、見られた所で構わないのか……

 

「(目的の場所に誘導するつもりでしょうか?) では、オススメの宿を聞いておきましょうか」

「お客様のご要望次第ですわ。様々な種類の宿が数多くございますから」

「(誘導はされない、か) とりあえずご飯が美味しくて、お風呂が有れば文句はありません。ペット可も追加で。後は責任の所在が明確な所がいいですね。なに、連れが目立つものでして。以前滞在した街では襲撃まがいの事もされましたから」

 

 『襲撃』の部分を強調して皮肉気に案内人、否、オーダーを見るハジメ。相手は動じた様子は無いが、まあ、機械だから大して表情が動かないだけかもしれない。

 

 その後も、仲間達の要望を聞いたり細かい話し合いなどをしていると、状況が動いた。今までよりも強い視線を感じる。今までで一番不躾で、ねっとりとした粘着質な視線が向けられている。……しっかりと性別を勘違いされたハジメも含めて。

 

 体重が軽く百キロは超えていそうな肥えた体に、脂ぎった顔、豚鼻と頭部にちょこんと乗っているベットリした金髪。身なりだけは良いようで、遠目にもわかるいい服を着ている。

 事実は小説よりも奇なりというが、ここまで絵に描いたような悪徳貴族然とした人物がいるという現実にハジメは多少驚く。

 

「お、おい、ガキ。ひゃ、百万ルタやる。この兎を、わ、渡せ。それと他の女はわ、私の妾にしてやる。い、一緒に来い」

 

 喉に悪霊でも詰まっているのだろうか。どもっている割には随分と憎まれ役が堂に入っている。臆病なんだか勇敢なんだか分からない。

 

「ふむ、貴方、もしかして算数が苦手ですか?」

「な、何が言いたい?」

「彼女ほどの奴隷がその程度の値段で買えるわけが無いでしょう」

 

 建前上、シアは奴隷である。まあ、服装とかを見る限り、明らかにこの世界の奴隷の扱いではないが。

 因みに、案内人は微動だにしない。とは言っても、エラーによって静止しているわけではなく、想定内であるかのような反応。目的が不明だ。ハジメ達を引き離すにしても、この貴族では些か力不足であろう。

 

 悪徳貴族が手近にいたミュオソティスに触れようとした所、

 

「ひぃ!?」

 

 と情けない悲鳴を上げると尻餅をついた。周囲のテーブルにいた者達ですら顔を青ざめさせて椅子からひっくり返り、後退りしながら必死にハジメから距離をとり始めている。

 

 それもそのはず。なんと、突然ミュオソティスの首が180度回転し、更に床にゴトリと落ちた。なお、打ち合わせも何も無かったため、ハジメも少し驚いている。

 

『何をしているんですか? ミュオソティス』

『ヤバい奴アピールで向こうから離れてもらおう作戦です』

『いや、確かに僕そう言いましたけどね?』

 

 限度がある……とハジメが言おうとした所、ユエが突然オズマに貫かれて倒れた。無論偽装である。機械である故に体温は無い。死体に偽装するというのは妙案であるかもしれない。

 その後も、ギロチンによって首を切断されたように倒れ伏す優花、壁や天井に糸を張り、それに絡めとられたかのように血を流す香織と殺人ショーが続く。全て偽装だが、ハジメは彼女達の裏の目的を察していた。

 

(確かに、これは中々来るものがありますね……)

 

 ハジメの希死念慮に対する当てつけだ。ミュオソティスのポンコツ行動に悪ノリしてハジメに「自分達はあの時こんな思いをしていたのだ」と暗に体験させているのだ。その証拠に、屍体に扮した彼女達の首がミュオソティスを除いて残らずハジメを見ている。

 

 にしても身体を張り過ぎであるが。当てつけに偽装死を選ぶ当たり、彼女達も大概である。原作からして過激な行動が多い香織はともかく、ユエと優花も同調する辺り、彼女等の人間性も大分限界と見える。

 まあ、地球でも人体切断マジックとかあるので、あまり気にしない方が良いかもしれない。ついでに言えば評判もあまり気にしない方が良いかもしれない。

 

「お、おい……アイツら〝楽団死期〟じゃ……」

「メンバーを処刑してるってのは嘘だと思ってたが、本当なのかよ!?」

「嫌だぁああ! 死ぬにしてもあんな死に方は嫌だぁぁ!!」

 

 周囲が阿鼻叫喚である。あと、ハジメ達はもはや〝灰鴉〟と名乗っても誰も認識してくれないだろう事も分かる。

 単純に暴力や威圧で対処しても、ここまでの結果にはならないだろう。百戦錬磨の冒険者であっても、日常崩壊系のホラー演出には耐性が無かったらしい。

 

「そ、そうだ、レガニド! そのクソガキを殺せ! わ、私を殺そうとしたのだ! 嬲り殺せぇ!」

 

 悪徳貴族が護衛として雇っていたのだろう冒険者の男に命令する。だが、

 

「いや、やめておこう。流石に己の命までは金に出来ん」

 

 と、立ち去ってしまった。後で聞いた話によると、あの男は金さえ払えば犯罪まがいの事もするらしく、『金好きのレガニド』と呼ばれるほどだったが、己の命と天秤にかけて逃げ出したようだ。先に言った通り、仮に暴力で制圧していたら違っただろうが。

 

 誰もが硬直していると、おもむろに静寂が破られた。ハジメが、ツカツカと歩き出したのだ。ギルド内にいる全員の視線がハジメに集まる。ハジメの行き先は……

 

「ひぃ! く、来るなぁ! わ、私を誰だと思っている! プーム・ミンだぞ! ミン男爵家に逆らう気かぁ!」

「空は鳥のため、海は魚のために有る如く、下劣な者には軽蔑を」

 

 そう言って、ハジメは〝零度〟で周囲の気温を冷やす。ついでに、「彼女等の美しき屍体が腐っては大変ですからねえ」と追加しておく。勿論演技だ。なお、一瞬戸惑っていたシアが、「うわぁサイコパス」と今では軽く引いていたが。

 

 ホラー演出に寒気、ハジメの殺人鬼さながらの言動に、悪徳貴族が白目を剥いて気絶する。熊に死んだふりは効果が無いとされているが、この貴族には効いたようだ。

 

「あ、気絶しました? 皆さん、そろそろ起き上がっても構いませんよ」

 

 ハジメがそう言うと、いつの間にか切断された首やら流血やらを綺麗に片付けた仲間達が、何事も無かったかのように椅子に座る。それを見て、ハジメは事態の収拾にかかった。

 

「さて皆さん、我々のサプライズ演目、お楽しみいただけましたか? 今回は彼らを遠ざける為にこのような形を取りましたが、皆さん、事実無根の噂に騙されないように。面白いですけど」

 

 ハジメの言葉に冒険者たちが一斉に震え上がる。声があまりに冷静だったのが逆に怖いのだろう。

 

「いやあ、殺人って疲れるじゃないですかぁ。初めてやった時なんて二日寝込んだって話も聞きますし? 感謝の言葉も無いならやる意味なんて無いですよ」

 

 「なんで息をするようにサイコパスな言葉が出てくるんですか?」とシアが香織達に聞くと、「ホラー映画の殺人鬼の真似でしょ」と返って来た。実際、このようなトラブルが続くと困るので、牽制の意味合いもあるが……

 

「では、場所を移動しましょう。願わくば、治安が改善されている事を祈って」

「あ、あの、申し訳ありませんが、あちらで事情聴取にご協力願います」

「心中すれば事情聴取無効になります……?」

 

 どうやらギルドは逃がす気は無いらしい。今回はオーダーの方が一枚上手だったようだ。

 

 

 

 

 

 その後、ハジメ達はウルという街に向かっていた。なんでも、ギルドを事故物件にしようとしたことを不問にし、更にはギルドのフューレン支部が総力を挙げてハジメ達の後ろ盾になるとまで言い出したのだ。正直、前者に関しては絡まれた時点で終わっているが、気にしてはいけない。形式は理屈に勝る。故に世間は理不尽だ。

 

「冒険者ギルド、フューレン支部支部長イルワ・チャングの知り合いの救出、もしくは遺品の回収……ね」

 

 支部長の話によると、

 

「彼に……ウィルにあの依頼を薦めたのは私なんだ。調査依頼を引き受けたパーティーにも私が話を通した。異変の調査といっても、確かな実力のあるパーティーが一緒なら問題ないと思った。実害もまだ出ていなかったしね。ウィルは、貴族は肌に合わないと、昔から冒険者に憧れていてね……だが、その資質はなかった。だから、強力な冒険者の傍で、そこそこ危険な場所へ行って、悟って欲しかった。冒険者は無理だと。昔から私には懐いてくれていて……だからこそ、今回の依頼で諦めさせたかったのに……」

 

 要約すると、捜し人はクデタ伯爵家の三男ウィル・クデタという人物らしい。クデタ伯爵は、家出同然に冒険者になると飛び出していった息子の動向を密かに追っていたそうなのだが、今回の調査依頼に出た後、息子に付けていた連絡員も消息が不明となり、これはただ事ではないと慌てて捜索願を出したそうだ。

 

 だが、彼に冒険者の素質は無かった。

 

 それを見抜いたイルワが、北の山脈の調査依頼を引き受けたパーティーに話を通した。そこそこ危険な場所へ行って悟って欲しかったのだという。やや回りくどい方法に思えるが、そのような方法しか通じないと思わせるような頑なさがウィルなる人物にはあったのだろう。

 

 北の山脈地帯は、一つ山を越えると殆ど未開の地になっており、高ランクの冒険者でなければ到底依頼をこなせないとか。

 

「我々のランクは〝青〟ですが?」

「キャサリン先生の手紙には君達は充分以上に強いと書かれているよ。何せ、ライセン大峡谷を探索できるくらいだしね」

 

 イルワ曰く、

 

「彼女は、王都のギルド本部でギルドマスターの秘書長をしていたんだよ。その後、ギルド運営に関する教育係になってね。今、各町に派遣されている支部長の五、六割は先生の教え子なんだ。私もその一人で、彼女には頭が上がらなくてね」

 

 とのこと。なお、キャサリンの手紙にはハジメ達だけでなく、昇格者組織〝天人五衰〟の存在を遠回しに示唆する内容も書かれており、それに対しても手を貸して欲しいと書かれていた。

 

 ハジメ達とて天人五衰の一遇。組織の為になるというのであれば行くしかない。というのが今の状況だ。

 

 とはいえ、

 

「オーダーの存在を前提に考えると、やはり少々作為的な気配もしますよねえ……」

 

 悪徳貴族の登場に全く動じていなかった案内人のオーダー。この出来事が全て予定調和だとすると、ウルに向かうのは敵の籌作(ちゅうさく)に嵌まりに行くような物だ。

 

「だけど、支部長さんの心音や話すトーンに不自然な所は無かったよ。少なくとも、ウィルさんについて、彼は嘘は言ってない」

「そうなんですよね。流石にそこまで作り込んでいるのは現実的ではない。仮に嘘なら直ぐに確かめる方法は幾らでもありますし」

 

 香織の言葉にハジメは頷く。それこそ、クデタ家に確認したり、やや強引ではあるが資料を盗み見るなど方法はある。少なくともこの計画がオーダー単独の物であり、ギルドが裏で糸を引いているという事は無さそうだ。

 

 無理をしてでも潰しておくべきだったか? と、ハジメは思案する。衆人環境や逃亡のリスクを考えて攻撃を仕掛けなかったハジメ達だが、その判断は間違いだったかもしれないと考えていた。

 

「まあ、ターミナルの情報によれば(ティオ)さんが同じくウルに向かっているようですし、いざとなったらタカりましょう」

「堂々とタカる宣言するのはどうなんですかね」

「どちらにせよ、情報が無さすぎて判断つかないわね。行ってみて、ヤバけりゃ逃げる。今はこれしかないわ」

 

 完全に強者である廷にタカる気でいるハジメと、ヤバかったら即逃げる算段を立てる優花に他の面々は呆れ半分、感心半分で苦笑いする。

 

「合理的と言ってくださいな」

 

 ハジメが冗談めかして返す中、一行は分かれ道に差し掛かる。そして、

 

「ヤバい、道間違えた」

「前見て運転してもらっていいですかね!?」

「何なんですかこの道は。ディンキン図形のD型みたいな形して」

「十割君が悪いからね? コンダクター」

 

 トータス人だけでなく地球人にも分かりづらい喩えをしながらハジメが道に八つ当たりをしていると、香織からツッコミが入る。

 

 だが、道を間違えたおかげでハジメ達は思わぬ出会いをすることになる。

 

 Uターンしようとしたハジメ達の前にバイクに乗った深紅の人物が現れる。正面から現れたその人物はドリフト走行をするようにハジメ達の前に停まる。

 

 紅い服に身を包み、白い髪を振り乱すその人物は―――

 

「雫……ちゃん?」

 




 分かってたことだけど、ウルは原作以上に荒れる予定です。プームとレガニドは……正直ダルかったので死んだふりでやり過ごしました。どうせこの後腐るほど敵が出てくるし、人間関係荒れるし。

 そんな事よりもまずは雫(紅?)ですね。何してんのかと思ったらこんな所にいました。まあ、分かるのは相変わらずバイク乗り回してる事ですね。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
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