媒体別ロワイヤル   作:伊勢村誠三

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作者
・香風

登場キャラ
・門矢士@仮面ライダージオウ
・ユージオ@ソードアート・オンライン


RESISTER -世界の破壊者は青薔薇の剣士と旅を再会する-

仮面ライダーディケイドこと(かど)()(つかさ)は死亡した。

世界の破壊者たる彼でもオーマジオウには勝つことが出来ず、新たな力で放った必殺技すら通用せずに消滅した。

 

門矢士の旅はそこで終わる――はずだった。

 

「ここは……」

 

オーマジオウに殺されたと思いきや、また新しい世界に来ていた。

世界の移動という行為自体には慣れている。何度も経験したことだ。

死亡からの復活という事態には――正直こちらも初めてではない。

 

だから再び自分が復活したことに多少驚きこそするが、困惑はしない。今の状況は即座に受け入れる。

 

「俺の旅はまだ終わってないってことか」

 

オーマジオウに殺された時、自分の旅は終わると思っていた。

世界の破壊者は最高最善の魔王を見届け、その役割を終える――と。

 

だがそうじゃない。門矢士は――仮面ライダーディケイドはまだ終わらない。

ディケイドに物語はないが、これまでの旅で関わってきた人々が彼のことを覚えている。彼らの想いが門矢士を復活させた事例が過去にある。

今回はどちらかと言えばそういう類のものじゃなさそうだが、世界の破壊者を復活させるとは何事だろうか?

 

「だいたいわかった。この世界は俺が破壊する」

 

ここはバトルロワイヤルの世界。

ライダーバトルには慣れているが、どうやらこの世界はそういうものじゃない。

命を懸けた殺し合いだ。それにライダー以外にも多数の参加者が巻き込まれている予感がする。見せしめの男は態度からして彼がライダーだとは思えない。

 

……まあデスゲームに巻き込まれることも初めてじゃないのだが。

こういう直接的な殺し合いではないが、よりによって犯人がユウスケだったから割と印象に残っている。本人じゃなかったから良かったし、自分の知るユウスケがあんなことをするだなんて思えないがやはり姿形や声まで一緒だったので印象深い存在だ。

 

とりあえず世界の破壊者である門矢士をよぶとは、そういうことだ。

彼はこのバトルロワイヤルの世界を破壊する。つまり黒幕のアズを倒し、バトルロワイヤル自体の破壊を狙う。

 

「……それにしても歪な名簿だな」

 

自分がいるのに海東やユウスケや夏海がこの世界にいない――というのはまあ割とよくあることだ。

しかし常磐ソウゴとウォズが居るのに、明光院ゲイツの名前が載っていない。少しばかり違和感を覚えるメンツだ。ゲイツを警戒しているのだろうか?

二人の常磐ソウゴについてはまあ、存在を認知しているので大して驚きはしない。こうして自分が復活しているので彼が復活させられることもわからないでもない。

 

「ベルトは当然、入ってるな」

 

デイパックの中にネオディケイドライバーを確認。門矢士がディケイドライバーを持っていることはもはや必然であり、当然のこと。尊大な態度で独りごちる。

だが同時に大事なものが紛失していることに気付いた。各ライダーに変身するためのカードがないのだ。

 

「……カードは集めろってことか?まあ何もかもがそう上手くもいかないか」

 

だが門矢士は悲観しない。彼だって昔は全てのカードが使えたわけじゃなかった。各世界のライダー達と交流を深めて、その力を得てきたのだ。

それに幸いファイナルアタックライドやディケイドが使える各種アタックライドのカードは揃っている。他の世界の仮面ライダーに変身出来ないだけで、仮面ライダーディケイドとしては十分に戦えるだろう。

当然ケータッチ21も没収されている。どうやらこの黒幕は参加者間の強さのバランスに気を配っているらしい。

 

「さて。じゃあ旅を再開するか」

 

門矢士はこの世界を破壊するために旅を再会しようとして――。

 

「少しいいですか?」

 

金髪の少年に呼び止められた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

金髪の少年、ユージオは自らの手足を何度か動かして自分が生きていることを確認していた。

彼は一度死んだ身だ。死人が生き返るような技術もなく、当然だが門矢士のように不思議な復活をした経験もない。

自分がこうして生きていることに嬉しさや喜びよりも疑問を覚える。

 

「おかしい。僕は、あの時たしかに……」

 

ユージオは親友のキリト達に託して死んだ。幼き日のアリスと共にあの世へ旅立ったはずだった。

後悔はない。ユージオは自分に出来ることをして、必死に戦った。なによりキリトという相棒がいる。彼ならきっと世界を在るべき方向に導いてくれる。だからユージオは最期にキリトの剣を「夜空の剣」と名付けた。

この世界を夜空のように優しく包み込んでもらうために――

 

「……そうだ!まずは名簿を確認しないと……」

 

キリトのことを思い出して目が覚めたユージオはすぐに名簿を確認する。真っ先に探すべき名前はキリトとアリスだ。どちらも大切な人でユージオは死に際に彼らに世界を託している。

 

「やっぱり君も居るんだね、キリト……」

 

幸いにもアリスの名前は無かったが、キリトの名前は見付かった。

名簿に載っていないと嬉しい――そんなふうに思いながらも、キリトも参加している予感はしていた。何の証拠もないただの直感だ。

 

キリトの他に知っている者は誰もいない。しかしだからこそ余計に自分とその相棒であるキリトが呼ばれたことに運命のようなものを感じずにはいられない。

 

「キリト。君ならきっと、この殺し合いにも立ち向かうはずだ」

 

ユージオはキリトのことを信用しているから、迷いなくそう断言することが出来る。

何故ならキリトはユージオの親友であり、仲間であり、相棒であり――英雄だ。

だからキリトがこの殺し合いで人々を襲うとは思わない。悪意、敵意、憎悪、恐怖、憤怒――それらを乗り越えて英雄は立ち上がると信じてる。

 

「だから僕も協力するよ」

 

ユージオはこの殺し合いに抗うことを決める。そもそも見せしめを見た時点でこんな残虐なことをするアズを許せないと思っていた。

 

キリトは本来参加するべき人間ではないが、それでもやっぱりキリトが共に参加していることを心強く思ってしまう。彼ならきっとこの殺し合いを止めることが出来る。

名簿を確認したユージオはデイパックに武器がないか確認を始める。

 

「これは……。夜空の剣だよね……?」

 

すごく見覚えのある剣を目にして、手に取る。

夜空の剣。キリトが使っていた黒い剣で、死ぬ間際のユージオが名前を付けた剣だ。

まさか自分に支給されるとは思わなかった。これはキリトが持つべき剣だ。

しかし残念ながら青薔薇はデイパックに入ってなく、暫くは夜空の剣で戦うことになるだろう。

キリトと合流したら彼に返すつもりだが、それまでは代わりに自分が夜空の剣を振るうことになる。

 

「僕はこの殺し合いに抗う。だから合流するまでの間だけ君の剣を貸してほしいんだ……!」

 

ユージオは夜空の剣に語り掛ける。きっとキリトなら喜んで承諾してくれることだろう。

なんとなくだが、夜空の剣という運命的な支給品はキリトが自分に力を貸してくれたようにも感じた。

 

それから暫く歩いていると一人の男が目に入った。

 

『だいたいわかった。この世界は俺が破壊する』

 

彼は当たり前のようにとんでもないことを口にしている。

 

(この世界を破壊?いったい、何を考えているんだ……?)

 

男の言動にユージオは困惑する。その男からは悪人のような雰囲気すら感じるが、不思議とその瞳には確たる強い意志のようなものが秘められている。

なんだかよくわからないが、その場を去ろうとしていたのでユージオは呼び掛けてみた。もしも本当に世界を破壊するような悪人ならここで倒すべきだ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「少しいいですか?」

「さっきから覗き見してたやつが、俺に何の用だ?」

 

自分に話しけてきたユージオに対して門矢士はいつもの尊大な態度で返す。ちなみにこれが門矢士という男であり、別に相手を威圧しているわけじゃない。

 

「世界を破壊するって言いましたよね」

「言ったな。それがどうした?」

 

世界を破壊するという発言がただの聞き間違えなら良かったのだが――門矢士は否定もせず堂々と肯定した。

しかしまだ相手は敵意を示さず、それどころか何故か自分の言葉に対して律儀に返事をしている。悪人だと断定するには早い

 

「世界を破壊するってどういうことですか?」

「このバトルロワイヤルの世界を破壊する。わかりやすく言うとこの殺し合いを破壊するってことだ」

 

バトルロワイヤルの世界……という単語の意味はよくわからないが、殺し合いの破壊と聞いて少し安心した。

どうやら世界そのものを掌握するだとか、破壊するだとか。そういう意味じゃないらしい

 

「それは殺し合いに反対するっていうことですよね」

「そういうことになるな。俺は世界の破壊者なんて呼ばれてきたが、別に無差別殺人する趣味なんてない」

 

世界の破壊者――またしてもとんでもない単語が飛び出してきた。

しかし目の前の男からは本当に敵意や殺意は感じない。やたらと尊大な態度だけは少し気になるが。

 

「世界の破壊者って……どういうことですか?」

「話すと長くなるが……まあいい。教えてやるか」

 

世界の破壊者という通り名や自分の独り言で色々と誤解を産むのも面倒なので士はこれまでの出来事をユージオに話す。

ユージオは驚きこそするが、彼もまた数奇な運命を辿ってきた人物なので士の話を理解することは出来た。

 

そして二人の共通点――どちらも死亡した後、復活してこの殺し合いに呼ばれた点。これはお互いに引っ掛かっていた。

どうしてわざわざ死人を復活させてまで参加させるのか。常磐ソウゴやキリトの存在から考えるに死人だけの殺し合いというわけでもなさそうだ

 

そしてユージオの名前が何故か名簿にない点も二人は引っ掛かった。

お互いの知り合いを教えるために名簿を再確認したのだが、その際にユージオの名前が載っていないことが発覚した。

死人だから名前がない――というわけでもなく門矢士の名前はしっかりと載っている。

 

そして門矢士は明光院ゲイツの名前が記載されていないことを思い出す。

常磐ソウゴ、ウォズが居るのに明光院ゲイツが不在。なかなかに珍しい自体だ。

 

「あえて名簿に載せてない参加者もいるのかもな」

「……どういうことですか?」

 

士はゲイツのことを手短に説明し、彼の不在が何か作為的なものを感じると話した。

常磐ソウゴと明光院ゲイツ。この二人の関係性を知っているからこそ、士は主催者に対して色々と疑う。

 

「まあ今は考えても仕方ない。お前も俺の旅についてくるか?」

「旅……?」

「この世界を破壊するための旅だ。どうせお前も殺し合いには反対だろ?」

 

相変わらず尊大な態度だが、どうやら本当に悪人じゃないらしい。なによりもその瞳には強固な意志が感じられる。

だからユージオはその目を見て士を信じることにした。

 

「はい。僕もこの殺し合いを破壊することに協力します!」

 

よくわからない人物だが、門矢士は意外と善寄りだ。世界の破壊者なんて通り名を持っている癖に人々を助ける、立派な仮面ライダーだ。

 

「それとあなたの名前を聞いていいですか?僕はユージオです」

「門矢士。通りすがりの仮面ライダーだ」

 

仮面ライダーという言葉の意味はわからないが、きっと気にしても無駄だろう。門矢士がそういう人物だということはユージオにもなんとなくわかった。

 

「よろしくお願いします、士さん」

「ああ。よろしく、ユージオ」

 

こうして二人の亡霊は出会った。

バトルロワイヤルの世界を破壊するため、世界の破壊者と青薔薇の剣士は再び立ち上がる。

 




【エリアJ-9/1日目/深夜】
 
【門矢士@仮面ライダージオウ】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服
[所属陣営]:桃(実写作品)
[メダル枚数]:1枚(門矢士)
[参戦時期]:RIDER TIME 仮面ライダージオウVSディケイドで死亡後
[装備]:ネオディケイドライバー&ディケイドのライダーカード@仮面ライダージオウ、ファイナルアタックライドのカード&各種アタックライドのカード@仮面ライダージオウ、ライドブッカー@仮面ライダージオウ
[道具]:なし
[思考]
基本:この世界を破壊する
1:この世界を破壊するための方法でも探るか
2:この名簿、何か胡散臭いな
[備考]
※変身するために必要なディケイド以外のライダーカードは没収されているのでまだ1枚もないです

【ユージオ@ソードアート・オンライン】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服
[所属陣営]:赤(小説)
[メダル枚数]:1枚(ユージオ)
[参戦時期]:死亡後
[装備]:夜空の剣@ソードアート・オンライン
[道具]:ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:殺し合いを破壊する
1:キリトと合流したい
2:僕の名前が名簿にない……?
[備考]

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