嫌われ冒険者は変わりたい   作:興梠 すずむし

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何となくで思いついたのを書きました。
続くかどうかはモチベ次第です。


プロローグ。嫌われ者は変わりたい。

チッ…

 

すれ違うといつも聞こえるのは舌打ちだ。

 

「…ンだよ!」

 

目が合えば出てくるのは罵倒や軽蔑の眼差しだ。

 

「クソが!人食い鮫(マンイーター)のクセに人様に口出すんじゃねぇよッ」

 

口を開けば返ってくる排斥の声だ。

 

嫌われ者の人食い鮫(マンイーター)

つり上がった目つきが悪く、錆色が覗く三白眼。漁業の盛んなこの街の人食い鮫代表格デッドリーシャークよろしく鋭く尖ったギザ歯に、筋肉質でガッシリした体格を有した大男。

気に入らないやつをぶっ飛ばしては問題児扱いされる嫌いな冒険者ランキングベストワン3連覇のAランク冒険者。

ラインドット・マークスがこの俺だ。

今日も気に入らないやつが多かった。宿に戻って酒を飲もう。

 

「あら、イドじゃない」

 

声をかけてきたのは親愛なる同期である赤髪の女冒険者、この港街のギルドのマドンナの一角とされているユークレア・アドニスこと、クレアだった。

鬱憤を溜め込んだ俺はクレアの腕を掴んで引っ張っていく。

クレアは訳知り顔で大人しくついて来ているが、周囲にいる人々はヒソヒソと陰口を言っているのがハッキリと聞こえる。

俺は耳が人よりいいんだよ。クソ、クソ、クソッ。

口を歪ませながら宿を目指して歩き続ける。

 

 

 

ところ変わって宿の食堂

 

「はいはい、飲みな飲みな」

 

「…うぅぅぅ…くそぉ…グスッ…!変な絡み方してくるやつを返り討ちにしてるだけなのになんだってこんなことされにゃいかんのだぁ…グスッ…クソがぁ…!」

 

あぁ、クソ。やってらんないな。思えばこうなったきっかけはなんだったか…。

ああ、そうか。当時の趣味を吹聴されて、そこからことあるごとに思うこととは反対のことをし続けた結果がこれだ。

今ではクレア含め、やりきれなくて無理矢理連れていって酒に付き合わせ、以降誘えば愚痴を聞いてくれるようになった数人ばかりの女と連れのちっこい野郎と、酒だけが俺の癒しだ。

 

「俺だって変わりてぇとは思ってんだよぉ…」

 

「わかってるってば。やなことは泣いて飲んで忘れなさい」

 

やんわりと背中をさすってくれるクレアの温かさに、更に涙が止まらなくなる。

 

「アンタまた泣いてんのかい?数年経っても変わりゃしないねぇ。いい加減慣れたらどうだい」

 

が、しかし追い打ちをかけるのが俺が懇意にしているせいで客入りが少ないと常日頃からグチグチ言ってくるくせに定額以上の宿賃を払おうとするとキレるよく分からん婆さんこと宿の女将、グレンダだった。

 

「…だってよぉ…流石に3年弱も続きゃぁ耐えられんって…。そこまで鋼の精神してねぇよ…グスッ」

 

尚もぐずる俺に呆れたようにため息をついてやれやれと首を振る。

 

「気に入らないやつはぶっ飛ばしてやりゃいいんだよ」

 

「あはは…」

 

「そのアドバイスに従って今こうなってる訳だが!!?」

 

クレアが苦笑して、そっと俺に酒を渡してきたが、一気に飲み干して反論する。

そう、そうなのだ。何を隠そう俺が絡んできたやつをぶっ飛ばし始めたのはこの婆さんが原因だった。

当時の俺は不満ばかりが募っていて、ついその甘言に乗って一発殴ったのだ。

そしたらソイツがギャーギャー騒いで事を大きくして、と。思えば原因の大元はグレンダとソイツだった気がする。

 

泣きながらギャンギャン吠えかかってグレンダに軽くあしらわれ、クレアに慰められながら酒を飲み、夜は深くなっていった。

 

……………………。

………………。

……。

 

朝が来て、欠伸を1つ噛み殺して起き上がる。

昨日は久しぶりに飲みすぎたからか、胸の辺りが重苦しい。

今日はチビとチャージフィッシュの討伐依頼だったか。

あまり旨みのない依頼だが、お人好しなチビが受けようと誘ってきたから仕方なくうけることにした依頼だ。

 

「…しっかし…ぃ…?」

 

体の重苦しさから生じた朝の第一声、声がおかしかないか。こんな変な声だったか。

 

『イドさーんっ!おはようございます!レオンです!今日、依頼の日ですよーっ』

 

扉の向こうからチビ、レオンの声がするがそれどころではなかった。

今、俺史上最大の異変が起こっていることに気が付いた。

重いと思っていたのは体調のせいではなく、この大質量の脂肪の塊による物理的な重さだったのだ。

 

「おいレオン…お前今日から1人で依頼やれや。」

 

『え!?そんな急に困りますよ!というか声どうしたんです?』

 

「知るかっ!いいから二度と来んじゃねぇぞ!!」

 

今度は意識して低い声を出しつつレオンを追い払うべくがなりたてる。

しぶしぶ、といった様子ではあったが扉から気配は消えていった。

 

よし、とりあえずはどうにかなった。あとは色々と整理を付ける必要がある。

 

「どうなってんだ、こりゃぁ…?」

 

備え付けの姿見には、元よりいくらか柔らかくなった目付きと、後ろに撫で付けていたくすんだ金の短髪がしなやかな艶のある絹糸のような長髪を変化した、スタイル抜群の女がいた。筋肉も元のゴツゴツ隆起したものではなく、細く引き締まったものへと変わり、女らしい丸みを帯びた体つきとなっている。1番のコンプレックスであるギザ歯は相変わらずであるが。

 

「デケェ…。説明不要…!」

 

足元が見えないわけである。普通に周りの女より二周りくらいデケェ。触ってみたところ普通に触られる感覚があるし、何だかムズムズするしピリピリする。どことは言わんが。

 

そして。

 

「ねぇ。ねぇぞ…!長年連れ添ったそれなりに栄えある相棒が!?」

 

大柄な身体に見合った大きさの立派な相棒がきれいさっぱり消えたどころか穴まであいていた。

 

 

……。ぉぉ。ぉぉ…。こうなってんのか…ここは。ふぅん…へぇ…ほぉ〜ぅ…。ぉぉぉ…。

こう…なんかあれだ…結構───

 

「アンタいつまで寝てんだい!!レオンちゃんがもう出て……ぃ…………」

 

おぉう。




いかがだったでしょうか
よろしければ何かしら感想いただけると続くかもしれません。

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