嫌われ冒険者は変わりたい   作:興梠 すずむし

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なんか一応それなりのは出来たので、2話目でございます。


2話 暴走機関車(猛る変態)×2

「……で?アンタがあの泣き虫だって?」

 

「誰が泣き虫だババア!?」

 

思わず口をついて出たババア(ばとう)に、瞬速のゲンコツが飛んでくるが、そこは腐ってもAランク冒険者。最小限の動きで避けて受け止める。

 

「アタシのゲンコツを躱すとはやるね小娘。避けられたのはアンタが2人目だよ」

 

「だぁからオレがラインドットだっつってんだろうがよォ!?」

 

頑なに俺をラインドットと認めないグレンダに疲れが溜まってくる。

気分を一新すべく、右手で髪をかきあげ、左肩を3度叩いてから首を左右に振って骨を鳴らす。

 

「……ほんとにあの泣き虫みたいだねぇ」

 

「…あん?何度もそう言ってんだろォが」

 

疲れた時の独特なルーティンに俺を見出したらしいグレンダは、重苦しくため息を吐き出した。こめかみをグリグリと押しながら向かいあわせで座っていた椅子から立ち上がると、眉間に深く皺を刻んだ顔でこちらを見やる。

 

「…とりあえずアタシのお古持ってくるから、部屋行って着替えな。なんて格好で出てきてんだい」

 

「おめぇが連れ出したんだろォが…」

 

部屋へ戻る途中で相棒が引っ込んだ場所を観察しているのをグレンダに目撃されたのを思い出して死にたくなった。

まぁこれ以上のこともそうそうあるまい。

そそくさと部屋に引き上げようと席を立つと、こんな時に限って普段は死ぬほど来ない客が扉を開けて入ってきた。

 

「あのー、すみません。部屋って空…い…て…」

 

見られた。ダボついた元の服を引き絞って無理矢理着ているせいで色々危うい今の格好を見られた。声質的に男だと判断を下した俺は面倒が起こる前に、せめて脳には焼き付けさせまいと十八番であるオリジナルの対人用の小規模魔法、『スリンガー』を発動して目を潰しにかかる。

これは人体の中でも比較的魔力が通りやすい爪を媒体に小石程度の魔力弾を生成して打ち出す魔法であり、強烈なノックバック効果がある。

 

射出(ショット)

 

「…女がm──ゔぇっ」

 

寸分違わず目を直撃し、店の外まで吹き飛ばしていそいそと部屋へ逃げ帰る。

 

「うしっ、セーフだろ!うん」

 

しかし、いつもより発動がスムーズだったのが少し気になる。こうしてみると女の方が魔法適性が高いらしいという噂は本当なのかもしれんな。

しばらくすると、グレンダが部屋に服を持ってきた。

着替えようとするが、なぜかグレンダが部屋から出ていかない。

服を脱ごうとするオレの体を凝視しているし、なぜか青筋を浮かべている気がする。

 

「…おい、何見てんだ。見せもんじゃねェぞ、はよ出ろや」

 

「泣き虫のクソガキのくせに全盛期のアタシよりいいカラダしてんのが気に食わないんだよ。揉ませな」

 

「ふざけろ!?触ってもてめぇの萎んだのは戻んねぇぞババア!!」

 

急に訳の分からんこと言いやがって!?

ただでさえ混乱してるってのに変なこと言うんじゃねぇぞ、このババア!?

 

「拒否すると思って1人じゃ着るのが難しい服持ってきてやったんだよぉ!!抵抗するのはよしなぁッ!」

 

「バカかよ!?」

 

本気でどうしたこの婆さん!?

何か悪ィもんに取り憑かれでもしたのか!?

 

グレンダを睨みながら身構え、内心で震えていると扉が蹴破られ、人影が外から飛び込んできた。ソイツは一瞬で距離を詰めるとオレに背を向けてグレンダと対峙した。

 

「大丈夫かい?もう心配いらないよ、女神。キミのことは僕が護る!」

 

「うるせぇ扉弁償しやがれ。あとメガミって言うんじゃねぇ」

 

「恥ずかしがらなくても大丈夫さ。安心してくれ」

 

「はっ倒すぞカスがよォ!?」

 

どうしよう、めちゃくちゃめんどくせぇ。

 

「そして助かった暁にはその立派な…大変立派に実った巨峰を揉ませていただいてもよろしいでしょうかぁッ!!!」

 

そしてとんでもねぇなコイツ。色々ヤベェ。あと目が血走ってて気持ちわりィ。てか結局変わらねェじゃねェか。

 

「そして、僕の巨砲(大見栄(おおみえ))を巨峰(意味深)で発射させえはもらえまいかぁ!!!」

 

「お前の気持ち悪いくらい素直な所だけは尊敬するわ」

 

首の骨を鳴らしているとグレンダからアイコンタクトが飛んでくる。

 

(コイツ邪魔なんだろう?片付けな)

 

(任せろ)

 

今のグレンダはグレンダで面倒だが、目の前の男はもっと面倒だ。面倒くささが上の方を先に片付けて、婆さんは後で対処する。

初撃が肝心だ。近づいて勘づかれると対処がし難くなるから、遠距離かつ速度に優れ、音の小さい魔法が必要だな。

 

選んだのはこれまたオリジナルの対人用魔法、《スタンバレット》。人体に有害にならないギリギリまで威力を落とした麻痺させる魔法だ。

なんでそんなの知ってるかって?絡んでくるやつが多いからに決まってんだろ!!

……言ってて悲しくなってなんかない。

通常の雷系統魔法は狙ったところを貫く性質を持つものが多いが、これは着弾すると全身へくまなく広がるようになっている。威力を落とす代わりに持続性を持たせたこれは、長らく筋肉へ送られる脳からの信号を阻害して行動不能にできるのだ。

 

親指と人差し指の間に細長い紫電を生成して飛ばしたそれは、男の首へ着弾して見事に効果を発揮した。婆さんが行動不能に陥った男に向かってどこから取り出したのか金属製の調理器具を顔面に叩きつける。って、オイ!?

 

「よし、これで問題ないね」

 

「動けんやつに追い討ちかけんなよ…。一応客だぞそいつ…」

 

調理器具を肩に担いで一息ついたグレンダは男の足を持って引きずって部屋を出ていった。

 

「はぁ…。今日だけでどっと疲れちまったぜ…」

 

チラリと変な言葉遊びが好きなレオンが、ライン「ドット」だけに?とニヤニヤしてやがる様を幻視した。

 

アイツ普段はすげぇ純粋で良い奴なんだが、ああいう言葉遊びの時、なぜか凄まじく腹立つんだよな…。

そういや、アイツにゃひでぇこと言っちまったな。色々と落ち着いたら謝ってやんねぇとな…。

 




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