真剣で旭に恋しなさい!〜月鏡、朝日に照らされて〜   作:夢迷月

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幕間3

 

 

 決戦前日の土曜昼。豪奢な和風屋敷、最上邸の門前に由紀江はピンと背筋を伸ばして立っていた。その手には愛用の刀と、宿泊用道具の詰まった旅行鞄が握られている。送迎した運転主が呼び鈴を鳴らすと、家の中から旭が出てくる。ポニーテールにエプロン姿の、若奥様フォームであった。存在感を消す技を解いたこともあって、より魅力的に見えるようになった旭将軍をストラップが称賛する。

「おおう……なんだか眩しいお姿だぜい」

「ありがとう、松風。ではいらっしゃい、由紀江。ほら、入って入って」

「ありがとうございます。旭先輩。お邪魔します」

 出迎えた旭がくるりと振り返ると、いつもの花のような香りとはまた違う、胸のすくような香りが由紀江の鼻をかすめた。

「もしかして、今蕎麦を打ってらっしゃったのですか?」

「ええ。夏の蕎麦は犬も食わない、とよく言うけれど、南半球の方から蕎麦の実を仕入れてる会社に巴が無理言ってね。いいものをちょちょいっと三キロほど買ってきたそうよ」

「九十九神のオラもびっくりなとんでもない人脈が急に出てきやがったな……」

「なんでも巴のひいおじい様は、その貿易会社の先代社長が戦後やっていた闇市でボディガードとかをしていたんですって。この程度で恩が返せるなら喜んで、と言っていたそうよ」

 旭の言葉と巴の来歴を照らし合わせて、引っかかるものを感じた由紀江は控えめに質問する。

「ボディガードとか、と言いますと」

「まあ、同業他社をあれこれしたとか、しなかったとか」

「ああ……」

 これは深く聞かない方がいいし、あの危険な先輩も詳細には語っていない話だろう、と由紀江は察した。

 キッチンに足を向けながら、旭が話を続ける。

「一度に二百枚とか作るわけじゃないから、蕎麦湯は蕎麦粉を直接溶かしたもので代用してもいいかしら」

 せっかくの客人に薄い蕎麦湯を出すのを善しとしない旭の気遣いに、由紀江は頭を下げる。

「は、はいっ! 何から何まで、ありがとうございます」

「巴と由紀江の感想が楽しみね。今日のは会心の出来なのよ」

 ふふん、と自慢げに宣言し、軽やかなステップで廊下を進む旭将軍を見て、可愛い人だなあと由紀江は思った。

 蝶結びされたエプロンの紐がフリフリと揺れるのを見ていた後輩へ、評議会議長はおもむろにこう訊ねる。

「由紀江。貴女、梯子は手を使わずに降りられるかしら?」

「……可能では、ありますが」

「蒸籠を持ちながらは?」

「……遠慮したいところですね」

「オイオイ、一体まゆっちに何をさせようってんだい。旭パイセン」

 松風の質問に、旭はくるりとポニーテールを踊らせながら振り返って答える。

「私と巴の秘密の部屋へ、ご招待よ」

 

 

 

 

 ガタン、と金属質な音を立てて巨大なハッチが口を開ける。由紀江が少し覗き込むと、体育館ほどの広大な地下空間がそこには広がっていた。

「映画でしか見たことねえぜこんなの。マジパねぇ」

「最上家自慢の地下シェルターよ。幸い、私が巴に稽古つけてもらう時にしかまだ使ったことないけれどね」

 秘密の部屋、と言った割には色気のない答えを明かした旭は、両手へ蒸籠を積み上げた状態で器用に鉄梯子へと足をかける。

「じゃあ私が先に降りて、降りていいわよって下から声かけるから。それからゆっくり来てね。無理そうだったら、飛び降りれば最悪私が受け止めるから」

「あっ、旭先輩のお手を煩わせないよう、努力します」

 こう答えた由紀江だったが、彼女が屋敷に入った時から感じていた疑問がここにきてさらに鎌首をもたげてくる。

「……本当に、相馬先輩はこの中にいらっしゃるんですか?」

 そう。最上邸の中に、相馬巴の気が一切感じられないのだ。地下空間自体に旭の気配を消す技で結界を張っていたことは蕎麦を茹でる時間に聞かされていたが、入り口を開けても巴の存在は認識出来ない。

 旭はその疑問に対する答えを持っていたので、後輩に優しい声を向ける。

「ちゃんといるわよ。今分からなくても、巴をひと目見れば納得すると思うわ。じゃ、私から行くわね」

 こう言って、旭は躊躇いなく身軽に梯子を降りていく。その様子を呆然と眺めていた由紀江だったが、階下から澄んだ声で呼ばれて慌てて降り始める。片手に彼女の分の蕎麦が乗せられた容器を持ちながら、するすると梯子を伝っていった。

 不安定だった足をコンクリートに着地させ、振り返る由紀江の目に入ってきたのは、現実と非現実が入り混じった空間だった。

 広々としたスペースの一角を占拠した畳の上に、男が一人寝転んでいる。座布団の前には背の低いテーブルがあり、その上には筆の乗った硯と文鎮が乗った毛氈、いわゆる下敷きがあった。和紙に包まれた書簡は横によけられている。

 テーブルの傍には桐箱が三つと、美しい青紫の花が咲いた鉢植えが一つ。刀の拵えを施すための用具もあり、さらにその奥には桔梗の家紋入りの羽織がかかった衣紋掛けがデンと鎮座している。

 時代がかった家具こそあれ、一目見た時初めに生活感という単語が飛び出してくる十五畳ほどの場所で、由紀江の目に非現実を感じさせたものが二つ存在した。

 まず、三つある桐箱のうちの一つ。そちらの上蓋にも桔梗紋の焼き印が施されている。しかし、その薄い板では中身の放つ禍々しい気は隠し切れていなかった。

(相馬先輩の三本目の刀、でしょうか)

 残り二つの木箱から巴が愛用していた月鏡と極楽蝶の気配を察知していた由紀江は、三つ目にも刀剣の類が入っていると見抜く。

 そして恐らく……話に聞く父親殺しの刃なのではないか、とも推測した。

 恐ろしい想像をしながら、美少女剣士はもう一つの非現実に視線を向ける。

 それはこの空間の主である、相馬巴。

 もはや見慣れた裃姿に髪は解いた状態で旭にぺちぺちと頬を叩かれていた男は、むくりと起き上がるとあくびを一つしてから寝ぼけ眼で順番に挨拶を始めた。

 おはよう、旭さん。由紀江さんもおはよう。

「おはようございますっ! 相馬先輩」

 あはは。元気でいいねえ。

 後輩からの返礼に笑顔で答えながら、巴は正座の姿勢になる。

 今日も旭さんのお蕎麦は美味しそうだね。

「ふふふ。貴方がいいもの仕入れてくれたから、頑張っちゃった」

 じゃあ、味わって食べさせてもらおうかな。あ、座布団出すよ。

「ありがとう。ほら、由紀江も座って。みんなで食べましょ」

「は、はいっ!」

 由紀江は男の様子に戸惑いながらも、自分の分の蕎麦をいつの間にか設置されたちゃぶ台へ乗せていく。中央に蕎麦湯を置いて配膳が済み、三人が三人とも行儀良く正座したところで、いの一番に旭が手を合わせた。

「では、手を合わせてください。いただきます」

 いただきます。

「いっ、いただきますっ!」

 箸を作法通り持ち、太さの揃った艶のある蕎麦を目の高さまで持ち上げて、濃いめに作ってあると教えられていたつゆに三分の一ほど浸けてから、由紀江は改めて巴のふやけた顔をチラリと見た。

(……本当にこの人は、人間なのでしょうか?)

 美味しい美味しいと言いながら心底嬉しそうに蕎麦をたぐる男へ由紀江が非現実さを感じた理由は、もう少し後で分かることになる。

 

 

 

 喫食が終わり、滋味深い蕎麦湯を味わっていた由紀江と旭に、刀の調整をしていた男から声がかけられる。

 旭さん。由紀江さん。腹ごなし、付き合ってもらえるかな。

「今の状態の相馬先輩に、私が練習相手になれるとは思えませんが……」

「あら由紀江。今のは結構分かりやすい挑発だったけれど、分からない?」

 旭の言葉を理解できるよう、巴が一言継ぐ。

 二対一でいいよ。多分、それぐらいでちょうどいいかな。

 この生意気な科白を聞いた二人の美少女剣士たちは、食後の和やかな雰囲気を消し飛ばす程の闘気をそれぞれ身に纏った。

「……なるほど。これは、カチンと来ますね」

「でしょう? こういうことさらっと言っちゃう人なの。そして巴。……明日に響く怪我しても、知らないわよ」

 俺のことなら大丈夫。じゃ、やろうか。

 悠然と言い放った巴が構えた刀は月鏡と、禍々しい気を放つ二振りの刀。

「相馬先輩、その刀はもしや……」

 ああ。そうだよ。親父殺したときに使ってたやつだね。

 問いかけようとした由紀江の機先を制して、巴はあっけらかんとして答える。

 俺はこれで親父を殺したから、相馬として完成して、さらにその先に到達出来たんだ。だから明日も、絶対に負けるわけにはいかない。

「相馬として完成? その、先……?」

 まあそこら辺は機会があれば話すよ。生きて帰ってきたらの話だけどね。

 こう言って、巴はさらに構えから脱力する。木曾義仲は後輩剣士に警戒を促す。

「来るわよ、由紀江」

「は、はいっ! では、お相手しますっ!」

 疑問符を浮かべていた由紀江だったが、既に微塵丸を構えていた旭に意識を引き戻されて抜刀する。

 じゃ、お願いします。

 軽い調子で男が言った直後、金属同士が激しくぶつかり合う音が地下空間を満たしていった。

 

 

 

 陽のとっぷり暮れた時間帯。巴の最終調整に付き合っていた由紀江は、旭と共にお風呂へ入った後、広々とした和室へと案内されていた。部屋の主は地下にいる恋人へ夜食を届けると言って不在である。

「結局二人がかりでもボコボコにされちまったなー、まゆっち」

「はい松風。いくら相馬先輩とはいえ、あそこまで強いとは思いませんでした。決闘の時どれだけ手加減されていたのか……」

「大丈夫! まゆっちまだまだ成長期! あれぐれーならすぐ倒せるようになるって!」

「そうですね松風。今度父上にまた稽古をつけてもらいましょう」

「随分長い独り言ね、由紀江」

「ひゃあうっ」

 薄手で深緑色をしたパジャマへ豊かに実った体を包み、布団の上に正座してストラップと一人芝居をしていた由紀江は、出入り口へと向き直る。そこには、手紙のようなものと鉢植えを持った旭がいた。

 ファンシーな花柄の寝巻を着た旭は、青紫の花を携えた鉢植えを机の横に置いてから後輩に話しかける。

「由紀江。今巴に会ってきたのだけれど……求婚されちゃった」

「……はい?」

「球根じゃないわよ?」

「いえ、そこの誤解はしておりませんが」

「けっこーベタベタなボケかましてくるんだよなーこのパイセン」

 イントネーションの違いで意味を聞き分けた由紀江に、可憐な一重咲きの花へ指を差しながら旭は問い掛ける。

「この花、何か分かる?」

「桔梗、ですね。花言葉は確か気品、優雅さ……」

「そして永遠の愛、変わらぬ愛だそうよ」

 桔梗色と呼ばれる玄妙な色をした花弁を慈しむように撫でてから、旭は由紀江に手紙を見せる。

 そこには、意志の篭った達筆な字で遺言状と記してあった。

「巴の家は、伴侶に代々桔梗の花を贈っていたそうなの。初代の奥方が桔梗の上と呼ばれていたんですって」

「それはまた、なんともロマンチックなお話ですね」

「うちの当主はみんなロマンチストだよ、と巴は言っていたわ」

 男の言葉を引用してから、旭は折目正しい封筒をそっと引き出しに入れた。それから布団の上にペタンと座る様子を見て、後輩は恐る恐る訊ねる。

「私の前だから読まない、という訳ではなさそうですね。お読みにならないのですか?」

「辛気臭いのは嫌いなの。本当に巴が死んだら読むわ。遺言状って、そういうものでしょう?」

「相馬先輩を、信じてらっしゃるのですね」

 柔らかい笑みを浮かべながらの由紀江の言葉に、旭は自信に満ち満ちた声で応える。

「当たり前じゃない。私を愛してくれて、私が愛した人よ。あの人が勝つと言った以上、それを信じてあげないと」

 それに、と旭はもう一言付け加える。

「さっきも愛してもらっちゃったしね……」

 旭は白い頬をぽっと桜色に染め、腹部を撫でる。それを見た由紀江は一瞬フリーズしてから、素っ頓狂な声を上げた。

「えっ、ええっ!? そ、それは、つまり」

「オイオイ……まさか、夜食を持ってったら夜食にされましたなんてオチじゃあ」

「ふふふ。優しかったわよ、巴」

 由紀江は、風呂上がりの時には黒のレースの大人びたナイトウェアを着ていた旭が、センスを疑う花柄パジャマに着替えていた理由を察した。

 父親からのプレゼントに身を包んだ評議会議長は、自慢の髪をくるくると指に巻き付けながらこう呟く。

「まあ、明日決闘だから体力使いたくないって渋る巴を無理やり押し倒した、というのがほんとの所なんだけれど」

「Wow……そういえば性知識の教育とか言って官能小説を読ませる人だってこと忘れてたぜ……」

「巴のって凄いのよ。ここまで入ってくるんだから」

 旭が横にした手をヘソの上辺りにあてがうのを見て、由紀江はゴクリと唾を飲んだ。

「うっ、馬並みなのですね」

 由紀江がなんとか反応するが、旭の独演会は続く。

「あの太い腕でぎゅっと抱きしめてくれてね。奥までぐぐぐっと……」

「あわわわわ」

「髪を撫でながら、何度も綺麗だ、好きだって囁いてくれて……」

「けっこー愛情表現激しいお人なんだな……」

「腋の下から腕を通して持ち上げるみたいにしてから、顔をがっちり掴んでキスしてくるのよ……」

「……ぷしゅう」

 その後も旭の赤裸々な語りは続き、そのたびに由紀江は変な声を上げるのだった。

 結局温泉旅行での初体験までを聞かされてすっかり茹ってしまった由紀江は布団を頭まで被り、暗くなった部屋の中で悶々と過ごしていた。

(うう……今日は日課が出来ないこと自体は覚悟していましたが、生々しい話を聞かされて……)

 週七で自分を慰める習慣のある黒髪美少女が火照った体を持て余し、もぞもぞと動く音を聞きとがめた旭が、眠気をごまかしきれないぼんやりした声で話しかける。

「由紀江、眠れないの?」

 この言葉に、眠れないのは貴女のお話が刺激的すぎたからですよ、という反論を由紀江は飲み込む。その代わりに、昼頃から気になっていた疑問を先輩へとぶつけた。

「……相馬先輩は、やはりあの状態が一番強いのですか?」

 地下で見た男の様子を思い出しながらの後輩の問いに、議長は事もなげに返答する。

「そうね。私が巴と出会った頃に一番近い、彼曰く相馬のあるべき姿。一本の刃としてその機能を突き詰めた先の完成系だそうよ。もちろん、三年間で強さは段違いになっているけれど」

 一本の刃というワードが、由紀江は自分でも不思議なほどにしっくりと来た。一人納得している新入り議員に、議長は話し続ける。

「巴が熊と猪を獲ってきた話はしたでしょう?」

「はい。確か、生まれて初めてお風邪を召されたとか」

 由紀江は思い出せる限りを話すが、旭からは予想外の答えが返ってくる。

「あれね、前日に巴が私をボコボコにしたから風邪ひいたのよ」

「……誰彼構わず噛みつく狂犬だったってーことかい?」

「ふふ。違うわよ松風。巴は私が義仲だってことには気づかなかったけれど、私が強いってことは見抜いたらしいの。だから、お父様から稽古でもしてみたらって言われて」

「それで、旭先輩もあれほど強くなったのですか」

 刀を抜いた旭の本気―――と言っても奥の手は見せていないが―――を地下で初めて見た由紀江は、その卓越した技量を思い出しながら問いかける。

「稽古を始めたての頃は全然ダメだったけれど、最近ようやく巴に一本取れるようになってきたのよ」

 ここまで話すと旭は並べられた二組の布団のうち、由紀江の方にするりと侵入する。

「今日は想い出話をたくさんしたい気分だわ」

「わあ旭パイセンったら大胆……でもパイセン、オラ達になんでそこまで話してくれるんだい?」

「なんとなく、よ。今日はピンク色の話をいっぱいしたけれど、セピア色の話をするのもまた一興だと思わない?」

 松風の疑問はするりと受け流され、黒髪美少女二人が並んで寝転がる。

「これは私と巴が川神学園に入ったばかりの頃のお話なんだけどね……」

 ウキウキした様子の旭が語り始めるのを聞きながら、由紀江はとある人物を思い出していた。

(そういえば、沙也佳が小さい頃もよくこうやって一緒に寝ていましたね)

 故郷の妹を思い出しながら、夜が更けるまで由紀江は旭と語り明かしたのだった。

 

 

 

 

 北陸、黛家。

 ライムグリーンのパジャマを着用し、寝る直前ということもあり普段は顔の横で結んだリボンを解いた、リラックスした姿の女子が一人。姉そっくりの青みがかった瞳を持ち、姉とは違う華奢な体つきをした少女、黛沙也佳その人であった。由紀江の一学年下だが、もちろん18歳以上である。

 身長含め由紀江をそのまま小さくしたような少女は、姉から自分のことを思い出されているとはつゆ知らず、父親に対する文句を口にする。

「あーあ。お父さんってば、また川神行っちゃった。いくらなんでも過保護すぎだよって言ったけど、今回は別件だからって聞いてくれないんだもん。九鬼のホテルも用意されてるって聞いたときは驚いたけど」

 ベッドへうつ伏せに寝転がり、パタパタと足を動かしていた沙也佳は持っていたケータイごと体をくるりと回転させる。

「お姉ちゃんから友達の家に泊まる時の作法とか聞かれたけど、そんなのよっぽど失礼なことしなければ大丈夫なのに。私も人のこと言えないけど、ウチは皆心配性すぎると思うんだよね」

 メールボックスから姉のメールを引き出しながら、沙也佳は独り言を続行する。

「それに、泊りに行くのってあの木曽義仲さんのおうち……ってことは、お姉ちゃんが何度も手紙で教えてくれた相馬さんの家でもあるんだよね」

 ここまで再確認してから、沙也佳は顔を赤くして妙に早口で呟く。

「同衾同衾同衾……それか、その先輩たちがしてるの覗いちゃったり、まさか3Pまで……!? ダメだよお姉ちゃん、それはやり過ぎだよ……!」

 姉や旭に負けず劣らずピンク色の脳内をしている少女は、身悶えしながら枕に顔を埋める。

 しばらくゴロゴロしていた沙也佳だったが、ふと思い立つことがあってその奇妙な動きを止めた。

「そうだ。私も川神行きたいな。ダメで元々、夏休みになったらお父さんに言ってみよ。お姉ちゃんが心配だから私も様子見に行きたいって言えば多分大丈夫。義仲さんに会ったって言ったら、クラスの皆と良い話のタネにもなるだろうし」

 育て方自体は厳格と言えども、なんだかんだで娘二人には甘い父親の顔を思い出しながら少女は悪だくみを続ける。

「……何よりあのお姉ちゃんを恋に落とした相馬さん、見てみたいな」

 ふふふ、と好事家のような笑みを浮かべた少女が夏休みの予定を一つ埋めたところで、夜は過ぎていくのだった。

 

 

 




沙也佳の年齢、二歳下で一学年下らしいけど扱いが分からん。ということで登場です。ヒロインにはなりません。

というわけで次回決戦。明日7/30日0時に上がります。感想評価等頂けたら非常に嬉しいです。
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