駿!!ウマ娘塾   作:UMA大佐

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第一話「自由とアオハル?ここが噂のウマ娘塾」

「皆さん、こちらの映像をご覧ください」

 

薄暗い部屋に、数人の大人達が集まっていた。

彼らはウマ娘競争協会、通称URAの重役達であり、日々激務に追われている筈の人物ばかりである。

そんな彼らを呼びつけた本人、中央トレーニングセンター()理事長の樫本理子の手によってスクリーンにある映像が映し出される。

そこに映っていた物を見て、その部屋にいる者は皆顔を顰めた。───かつて排除した、忌まわしき過去が映し出されていたからである。

 

 

 

 

 

『ウェーイウェーイ、どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!ゴルシ神拳奥義、ゴルシ百烈全方位から約束された勝利の聖剣のサビにしてやるぜキィィィィィィィィィィィック!!!』

 

『ふっ、やれやれだな……』(壁に叩きつけられながら)

 

 

 

 

 

『すまない、お代わりを貰えないだろうか』

 

『お、オグリ……これ以上は、財布が保たん時が来ているのだ……』

 

『まだ三分目なのに……』

 

 

 

 

 

『はーっはははは、ふふふひひひ!なんだモルモット君、何をどうしたら体が平面になってしまうというんだい!?くくっ、ダメだ、は、ら、が……!』

 

『あー、俺2Dになっちゃったよー』(ペラペラ)

 

 

 

 

 

「懐かしいものですな……」

 

「ええ」

 

とはいえ、それは彼らにとって過去の出来事。

もうその悪夢のような光景を目にすることはない、そう分かっているものなのだ。

 

「かつての中央トレセン学園ではこのような無法が蔓延っていた。

トレーナーを振り回すどころか投げ飛ばすようなウマ娘達の日々の暴走によって、どれだけ我々が事後処理に追われたことか……」

 

かつての中央トレセン学園は生徒達の自主性を重んじすぎるあまり、ともすれば暴走としか思えない所業に出る生徒達が多かった。

 

食堂がお代わり自由なのをいいことに太り気味を頻発する者。

 

くだらないダジャレを連発して他者のやる気を下げる者。

 

「4月に開催してるんだから皐月賞を卯月賞に変えろ」と主張する者。

 

本当に色々といた。いすぎた。

 

「ですが、それもこれも過去のことです」

 

「そう、理事長代理に就任した当時の樫本理事長が導入した『管理教育プログラム』……あれが導入されたことによってトレセン学園は生まれ変わった!」

 

「トレーナー達による徹底した管理教育が行なわれたことで暴走するウマ娘達は次々と姿を消していき、真面目で立派な選手達が育ち始めた!」

 

「生徒達の平均的な質も向上し、正しく我が世の春の到来ですな!」

 

わっはっは、と朗らかに笑う役員達の中、ただ一人だけ笑っていない人物がいた。『管理教育プログラム』導入の張本人、樫本理子である。

彼女が成し遂げた功績はこれまでのURAの長い歴史から見ても類を見ない大改革にして大功績。本人もそれを認められた時には喜んでいた筈だが、今はそのような顔を見せず、苦渋の表情を浮かべている。

それを不思議に思った役員の一人が声を掛けた。

 

「どうしたのです、樫本理事長。既に過ぎ去った過去のこと、これ以上貴方が心労を貯める理由など……」

 

「……過去ではありません」

 

理子の言葉に疑問を浮かべる役員達。

だってそうだろう。今スクリーンに映し出されている光景は彼女の手によって……。

 

「この映像が撮られたのは、本日から三日前のことです。───過ぎ去った過去などではないのです!」

 

朗らかな様子が一転、ザワザワと騒がしくなる室内。

このような非常識極まりない光景が今でも繰り広げられているという情報は、役員達にとって寝耳に水。

そして悪夢の再来に他ならない。

 

「そ、そんな馬鹿な!『管理教育プログラム』はその成果の証明を以て、いまや全国のトレセン学園にて導入されつつあり、このような無法がのさばるトレセン学園など有るはずが無い!」

 

「そうだ、そんな場所など……」

 

「───あるのです、たった一校だけ」

 

ピタリ、と声が止む。

待っているのだ、理子の言葉の続きを。

無法、無秩序、混沌の極みを今もなお貫くその学園の名が告げられる、その時を!

 

「私が理事長として正式に任命された後、追放される形になった()()の行方を知る者はいませんでした。しかし、遂に突き止めたのです」

 

「彼女?……ま、まさか!」

 

深呼吸をしてテーブルの上に置かれていた紙コップを煽り、水を飲む。

そして、理子は覚悟を決めてその名を告げる。

 

「『ウマ娘達に自由な未来を』。そう言い残した前理事長は今、新たに自らの理念を貫くためのトレセン学園を作り、私達URAに挑戦してきたのです。

そして、その学園の名は───!」

 

 

 

 

 

駿!ウマ娘塾

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「歓迎!私がウマ娘塾塾長、秋川 やよいであるっっっっっっ!!!」

 

その小さな体躯の何処からそんな声が出ているのか。

先ほどの緊急会議を終えてすぐにウマ娘塾を訪れた役員達は耳を押さえながら、目の前の少女を見やる。

理子との権力闘争に敗れた彼女は潔く中央トレセン学園から去ったのだが、まさかこのような場所で新たにトレセン学園を作り出すとは思ってもみなかった。

ちなみにウマ娘塾が存在しているのはギリギリ多摩地域に入るか入らないかくらいの山の中であり、彼らがいるのはその塾長室である。

廃校となった場所を再利用でもしたのか、古い木造建築の床が軋んでいる。

 

「どういうことです、秋川前理事長!学園から去ったかと思えばこんな山の中で新たにトレセン学園を、しかもあのような問題児達をのさばらせておくなど、我々に対する挑戦とみなされますよ!?」

 

「奇妙!私がウマ娘塾塾長、秋川やよいであるっっっっっっ!!!」

 

「塾長は『おかしなことを言うものだ。私も彼らも共に追い出された身、そこから先に文句を付けられる筋合いなどあるものか』と仰られています」

 

やよいの横に立つ駿川 たづなが補足する。

彼女は『管理教育プログラム』に若干の共感も覚えていたようだったが、結局はやよいに付いて姿をくらまし、ウマ娘塾で塾長秘書をしているのだった。

 

「文句も付けますよ!せっかく『管理教育プログラム』導入が本格的に進められるというこのタイミングで、プログラムに反抗するようなことをされては!」

 

「差別!私がウマ娘塾塾長、秋川やよいであるっっっっっっ!!!」

 

「塾長は『プログラムを受け入れられない者もいる。この塾はそんな者達のための場所である』と仰られています」

 

たしかに、初期の『管理教育プログラム』は自由というものを極端に排除し、徹底的に管理を行なう点や、実行するには個々のトレーナーの負担が大きすぎる点が問題視されていた。

しかしそれらの問題点も徐々に軟化させていき、プログラムから排除されるウマ娘やトレーナーの数を減らしていこうという風潮が生まれ始めていたのだ。

役員達の言い分を、しかしやよいは真っ向から反論する。

 

「傲慢!私がウマ娘塾塾長、秋川やよいであるっっっっっっ!!!」

 

「塾長は『それを既に排除されてしまった後の者達にも言えるのか、一度排斥された者達が受け入れられると思うのか』と仰られています」

 

「いちいち通訳挟まないと話せないんですか!?」

 

怒りやら呆れやら恐怖やら、そろそろ頭が痛くなってきた役員達であった。

何人かはやよいの後ろに坊主頭の巨漢の幻影まで見えてきていた。なんだあれは。

 

「だいたい、あんな好き放題暴れる暴走ウマ娘が良い成績を残せるわけがないでしょう!」

 

それを聞いたやよいは深く溜息を吐いた後に、くつくつと笑い出す。

 

「何が可笑しいんです!?」

 

「失笑!樫本君自らが手がけるならともかく、陳腐化した『管理教育プログラム』でどんなウマ娘が育った!自分で満足に蹄鉄も付けられないポニー達ばかりではないか!」

 

「いや自分で話せるなら話せよ!?」

 

「ウマ娘塾に在籍する生徒達は誰もが日本を、いやさ世界を牽引するウマ娘達である!首を洗って出直してくるのだな!

私がウマ娘塾塾長、秋川やよいであるっっっっっっ!!!」

 

役員達のツッコミも虚しく、やよいの高笑いが理事長室に響き渡るのだった……。

 

 

 

 

 

「押忍!皆さん、おはようございます!サクラバクシンオーです!」

 

『押忍!おはようございますサクラバクシンオー監督生殿!』

 

ウマ娘塾は設立されて間もない。

それもその筈、この場所はやよい達が急遽作り上げた、『管理教育プログラム』に排除されたウマ娘やトレーナーの避難場所。

義務教育を行なうための教員や校内を整備する用務員の数も不足しており、苦肉の策として取り上げられた施策が『監督生制度』である。

これはレースなどで好成績を残した生徒を監督生として、後輩ウマ娘の指導に当たらせるというものだった。

例として、以前中央トレセン学園に所属していた時に寮長を経験したことのあるヒシアマゾンやフジキセキ。そして短距離レースで負け無しのサクラバクシンオーなどが監督生として選出されている。

 

「さっそく本日の特別学習……と、いきたいところですが!その前に、やらなければいけないことがあります!ハルウララ一号(ジュニア)生、前に!」

 

「はーい!」

 

元気よく前に出てくるハルウララ。

彼女は「そもそも愛嬌だけで入学するな。中央を無礼るなよ」という理不尽極まりない理由で退学か転校を迫られたところを、ウマ娘塾に拾われた。

中央トレセン学園よりも明らかに悪環境であっても、彼女の朗らかさは一切陰りを見せず、その姿に癒やされる生徒も少なくない。

 

「貴方は今朝、通学途中に歌を歌っていましたね!ここでもう一度、同じ曲を歌ってみせてください!」

 

「分かりましたー!ハルウララ、歌いまーす!

……響けファーンファーレ~、届けゴールまで~。輝くみらーいをー、君ーとーみーたーいーから~♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょわーっ!バクシン的指導ーっ!」

 

「あいたーっ!?」

 

突如としてハルウララの頭に振り下ろされる(ハンマー)。ピコッという音とハルウララの悲鳴が昼間の校庭に響き渡る。痛みは殆ど無い。

ウマ娘塾は個々人の自由を尊重するが、生徒の上下関係はきちんと厳守されるべしという校訓がある。

奴隷の一号(ジュニア)、鬼の二号(クラシック)、そして閻魔の三号(シニア)

三号生でもあるサクラバクシンオーが気に入らぬと言えば、体罰を行なっても反抗してはいけないのである!

ちなみに体罰に使っていいのはピコピコハンマー(優しめ)張り扇(厳しめ)だけである。

 

「ここは天下のウマ娘塾です!『Make debut!』などとGⅡ以下のウイニングライブの曲を歌う暇はありません!

貴方たちが歌っていいのは校歌と君が代、そして『ENDLESS DREAM!!』『彩 Phantasia』『winnning the soul』『本能スピード』『UNLIMITED IMPACT』『NEXT FRONTIER』『Special Record!』『うまぴょい伝説』だけです!」

 

「は、はーい!」

 

意外とバリエーションは豊富だった。

ハルウララを戻した後、サクラバクシンオーは更に、ある物を取り出す。

 

「まだまだいきますよー!これは今朝、寮長のヒシアマゾンさんが風呂場の脱衣所で見つけた物です!」

 

『!?』

 

取り出されたのは……黒のパンツ。

それも普段着などで使うようなものではない、明らかに()()に使うような、際どいラインを攻めた一品であった。

 

「こ、ここここここのののような、はっ、はっ、破廉恥な代物を持ち込むむむむなど、言語道断です!これは委員長的にというかガイドライン的にもアウトだと思います!*1

犯人は今すぐに名乗り出なさい!貴方達の中にいるのは分かっているのですよ!」

 

純情故に直視出来ないのか、サクラバクシンオーは顔を背けながらパンツを両手で掲げる。

そんなに恥ずかしいならフジキセキにでも変わって貰えばいいのに……と若干の憐みを生徒達が向ける中、ただ一人だけ俯くウマ娘がいた。

 

(……ど、どどどどどどどうしよう!あれ、ライスが昨日無くしちゃった奴だよね……!?)

 

何を隠そう、この一号生ライスシャワーが、際どいパンツを持ち込んだ犯人である。

「最強勝負下着!これで気になるお兄様もイチコロ!」の煽りに惹かれて恐る恐る購入したものの、脱衣所で転んだ際に紛失したものがまさか見つかってしまうなんて!

ライスシャワーが戦々恐々としていると、サクラバクシンオーは更なる詰問を開始する。

 

「貴方ですかドカドカさん!

名前以外にも特徴を得ることで育成シナリオ実装を目論んでいるのですか!」

 

「じ、自分じゃありませんー!?」

 

「では貴方ですかブリッジコンプさん!

何故か貴方だけボイス付きでグラスワンダーさんのストーリーに出演してましたね!?」

 

「違いますー!?」

 

なんとサクラバクシンオーは、次々と無関係の生徒達に詰問を開始してしまった。

自分のミスのせいでこれ以上無関係な生徒達に被害が及んで欲しくない。そう考えてライスシャワーが手を挙げようとすると、それに先んじて手を挙げるウマ娘がいた。

 

「押忍!サクラバクシンオー監督生殿、それはあたしが落とした物であります」

 

「ほう、貴方でしたか一号生筆頭ゴールドシップさん!少々サイズ的に合わない気もしますが……」

 

「パンツバード制作のために購入したもので、自分用じゃありません」

 

「それはそれで問題だと思いますが!?パンツバードとはいったい……!?」

 

ライスシャワーには分かる。一号生筆頭を務めるゴールドシップは大体いつも頓珍漢なことを言っているが、根本的に優しいウマ娘だ。

きっと今回も、ドジを踏んだ自分を庇うために汚れ役を買って出たのだと。

それはそれとして、パンツバードなるものを本当に制作していてもおかしくないウマ娘でもあるが。

 

「ご、ゴールドシップさん……」

 

ライスシャワーがゴールドシップに謝罪の念を込めた視線を向けると、ゴールドシップは何故か首を傾け、舌を垂らした奇妙な表情を見せる。*2

きっとおそらくたぶん、「気にするな」と言ってくれてるのだろう。そうに違いない。そうであって欲しい。

 

「ま、まあいいでしょう……ゴールドシップさんには後で何かしらの処罰を与えておくとして、今日は皆さんに特別な訓練プログラムを用意してきました!時間も押してるので早速始めていきましょう!」

 

「いつもの『ギリギリ限界バクシンゴー!』ではないんですかー?」

 

「あれはまた今度です!」

 

監督生の主催する授業では、その監督生の性格に応じて授業が変わる。ウマ娘によってはレースとは関係無く、自分が得意とする分野に関する講義を行なうこともあり、例えばマルゼンスキーであれば『ナウでヤングな一人生活術』という、意外にも実用的な生活術に関する授業を行なう。

難点は講師の言語が激マブということだけである。

そしてサクラバクシンオーの主催する『ギリギリ限界バクシンゴー!』は、単に学年全体でのスピードトレーニングだ。

生徒が勝手にトレーニングを行なってもいいのかという疑問もあるかもしれないが、実はこっそりトレーナー達がウマ娘達の様子をチェックしながら行なわれているので怪我の心配もない。

そんな優良授業を行なわず、いったい何を行なうというのか?

 

「今日は一部のトレーナーさん達が午後からの出勤となっているので、代わりにトレーナーさん達のチェック無しでも出来る訓練を行ないます!」

 

サクラバクシンオーがいつの間にか手に持っていた巻紙を広げると、そこには習字でデカデカと、『驀進行軍(ばくしんこうぐん)』と書かれていた。

 

「ば、『驀進行軍』?」

 

「賢さGでも出来る、最強の根性トレーニングです!」

 

サクラバクシンオー曰く、トレーナー達は根性という物を軽視しがちである、速さもスタミナもパワーも、そして知恵も振り絞った末に役に立つのが根性なのにこれはおかしい!と考えて考案したのだとか。

 

「方法は簡単、皆でこの棒の倒れた方向に向かってまっすぐ歩いて行くだけです!」

 

「まっすぐ歩くだけ、ですか?」

 

「はい!まっすぐ、ストレートです!」

 

本当にそれでトレーニングになるのだろうか?

疑問に思う者は多数いるが、上級生の言うことは基本的に絶対遵守のウマ娘塾。

一号生達は地面に立てた棒が倒れた方向に向かって行進隊形を組んだ。

 

「さあ、バクシン開始です!いいですか、たとえ何があっても、バクシンを止めてはいけません!()()()()()()、です!

それでは、バクシンバクシーン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだありゃあ……!?」

 

男はこの日、信じられない物を見た。

男は自動車に乗って外出していたのだが、その途中、突如として急停止した前方の車の動きに対応出来ず、 そのまま衝突してしまった。

幸いにも急ブレーキを踏んだことで被害は少ないものの、青信号の交差点で急停止するなど何を考えているのか。文句の一つも言ってやろうと窓から身を乗り出した時、目に飛び込んできた光景は、男の想像の遙か上をいっていた。

なるほど、これは前方の車の運転手も急停止するわけである。何故、何故───。

 

「───なんでウマ娘が街中を行進してんだぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世の中には様々な困難が待ち受けています!時には複数の脅威が襲い来ることもあるでしょう!しかしこの『驀進行軍』をこなすことが出来れば、たとえ何があっても動じない胆力を身につけることが出来るのです!」

 

んなわけあるか!行進している一号生達の心は今、一つになっていた。

これの何処が特訓なのかと全員で問い詰めたいところだが、逃げ出したら逃げ出したでまた面倒なことになるのは目に見えている。

一号生の多くから怒りの目線で見られていることに気付かないまま先頭を進むサクラバクシンオーは、懐からとある本を取り出した。

 

「えーと、何々……『驀進行軍の起源は、古くは戦国時代にまで遡り、武田信玄が臣下のウマ娘に行なわせていた鍛錬が元であるとされている。武田信玄が精強な騎バ軍団を指揮していたことは広く知られているが……』。なるほど、ふむふむ」

 

元凶はどうやら、サクラバクシンオーの持っている怪しげな本にあるようだ。

今すぐにでも取り上げて出版社を訴えたいところだが、サクラバクシンオーはそう簡単には手放さないだろう。

一号生達が悶々としている中、突如として行進が中断する。否、せざるを得なかった。

 

「サクラバクシンオー監督生殿、前方に家があります!これではバクシン出来ませんがいかがしたらよろしいですか!」

 

ここまでは障害という障害は存在しなかったが、このような障害物があっては進むことは出来ない。

流石にこれならサクラバクシンオーも諦めるだろう。『驀進行軍』はまっすぐ歩くだけ、であれば、曲がるわけにはいかず、必然的に驀進は中断せざるを得ない。

しかしサクラバクシンオーは、行進を中断する素振りを見せなかった。

 

「どうやら皆さんの賢さはFくらいのようですね!無理もありません、一号生は未だに未熟ですから!」

 

「……どういうことかしら?」

 

校旗を持ってサクラバクシンオーの真後ろで行進していたキングヘイローの問いかけに、サクラバクシンオーはとんでもないことを言い出す。

ちなみにキングヘイローは校旗を掲げながら先頭で行進する役割を任されており、本人は「一流ウマ娘として見事にこなしてみせるわー!」などと言っていた。

後々、この『驀進行軍』の様子を通行人が動画投稿サイトにアップロードするのだが、それを見たキング母は「お願いだから一度帰ってきて冷静さを取り戻して欲しい」と娘との電話で語ったという。

 

「バクシン、バクシンあるのみです!壁があるなら壊して進みなさい!この民明書房刊『よく分かる風林火山トレーニング』にもそう書かれています!」

 

「さ、流石に民家を壊すのはやり過ぎよ!」

 

「試練、試練です!更に言うなら監督生命令です!」

 

「横暴だわー!?」

 

サクラバクシンオーは何処からか大きなハンマーを取り出すと、近くにいたウマ娘に壁の破壊を命じる。

 

「さあ、今こそバクシンの時です!」

 

「すまない、バクシンオー。流石にそんなことはしちゃいけないと思うんだ」

 

「なんと!貴方も拒否するというのですか!」

 

「ああ。一度冷静になるんだバクシンオー。ここに至るまでもたくさんの人に迷惑を掛けているのが分かるだろう?」

 

「ちょわわ……そうですか。それでは仕方有りませんね。中断するとしましょう。せっかく……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっかくヒシアマゾンさんに頼んで、今日だけはご飯お代わり可能にしようと思いましたのに。中断するのでは用意が間に合わないかもしれませんね」*3

 

「何をしているバクシンオー。すぐにそれを貸してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、良い子良い子~」

 

「ばぶぅ(あ”あ”~ママのよしよしが日頃の疲れに効くんじゃぁ~)」

 

ソファに座った美少女に膝枕をしてもらう成人男性(おしゃぶり装備)、そんな常人には理解しがたい光景が広がるここは、スーパークリークとそのトレーナーが暮らす一軒家。

今日は珍しく2人ともスケジュールに空きが出来たために、二人は穏やかな休日を過ごしていた。

しかし、突如として建物を大きな揺れが襲う。

 

「ばぶ!?(なんだ、地震か!?)」

 

「いえ、これは地震では……」

 

たしかに地震とは違い、この揺れは断続的に発生しているようだ。

何か、堅い物同士がぶつかり合っている音のような……。二人がそう思った時、突如として目の前の壁が轟音と共に粉砕される。

 

「ばっ、ばぶ~!?(いったい何が起きてるんだ!?)」

 

「あらあら~、どうしましょう」

 

粉塵が舞う中、煙を裂いて現れたのは嫌というほど見た相手。

 

「……失礼するぞ」

 

「ばーーーーーっ!ばぶぶばっぶばーーーーーーーーーっ!!!?(うわぁぁぁぁぁっ!オグリキャップだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?)」

 

「まぁ、オグリちゃん。久しぶりですね~」

 

クリークトレーナーからすればオグリキャップは中距離以下と有馬記念における天敵。

自力での加速力に乏しいスーパークリークを何度もその驚異的な末脚で差しきっていく姿はクリークトレーナーのトラウマと化していた。

そんな存在が自宅の壁を粉砕して現れたのだ。震えてスーパークリークに抱きついても決して恥ずかしくはない。スーパークリークはそんなトレーナーの頭を撫でていた。

そもそもどうして粉砕するのだ、普通に玄関から入ればいいだろうに。クリークトレーナーが混乱している間にも事態は進行していく。

 

「お休みのところ失礼します!さぁ皆さん、バクシン再開ですよっ!」

 

「ご、ごめんなさいクリークさん……」

 

「あーっ、クリークさんだー!こんにちわー!」

 

「あらあら、バクシンオーさんにライスちゃんにウララちゃん、それとそれと……大勢ですねぇ。こんにちわ~」

 

破壊された家の中を、ウマ娘の集団が行進していく。この時点でクリークトレーナーの頭はパンクしかけていた。

なんなのだこれは、どうすればいいのだ?

集団の最後の一人が家の中を通過していくと、オグリキャップも「では、私も失礼するぞ」と頭を下げて去っていく。

 

「ば、ばぶぅ……(な、なんだったんだ……)」

 

「そうですねぇ、たぶんウマ娘塾での何かのイベントなんでしょうけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、続きでもしましょうかぁ」

 

「ばぶぅ!?(マジかクリーク!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デジタルーーーーーーっ!なんで死んでしまったんだーーーーーー!」

 

所変わって、ここは某所の葬式会場。

今日ここでは、へ……勇者と呼ばれたウマ娘、アグネスデジタルの葬式が行なわれていた。

穏やかな表情を崩さぬまま物言わぬアグネスデジタルの遺体に、彼女のトレーナーが縋り泣く。

 

「どうして逝ってしまったんだ……あんなに、あんなに待ち望んでいたコミックウマーケットへの参加もしてないのに!」

 

そもそも、何故彼女は死んでしまったのか?

不幸な交通事故?それは違う。

何か命に関わる病気を発症していた?それもNO。

 

「まさか、まさか街を歩いていたらダイタクヘリオスとメジロパーマーのコンビに囲まれて一緒にプリクラを撮ったショックで死んでしまうなんてーーーーーー!」

 

いつものこと(尊死)であった。

悲しみに暮れるトレーナーの後ろに、影が落ちる。

何事かと振り返ると───大勢のウマ娘が、こちらに向かって行進してくるではないか!

 

「わーっ、いったいなんだーーーーーーっ!?」

 

このままでは行進に轢かれてしまう。そう考えてデジタルトレーナーは急いで飛び退くが、そうなれば当然……。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ、デジタルが、デジタルの顔面が踏まれてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

行進を続ける謎のウマ娘の集団は次々とアグネスデジタルの顔面を踏みつけていく。

いくらアグネスデジタルがへん……色々と残念美少女であっても、死体にここまで鞭打ちされるような謂われはない。

憤慨してつかみかかろうとしたトレーナーだが、ここで彼の思考に電流走る!

 

「待てよ、デジタルなら、デジタルならもしや……!」

 

アグネスデジタルはへんた……無類のウマ娘フリークだ。

そんな彼女が大量のウマ娘に踏んづけられるという貴重な機会を前に、死んでいるわけがあるだろうか、いや、ない!

一縷の望みを託して、デジタルトレーナーは叫ぶ。

 

「帰ってこい、デジタルーーーーーーっ!」

 

謎のウマ娘集団が壁を破壊してこの場から立ち去って間もなく。

───アグネスデジタルの、滅茶苦茶に踏みつけられて滅茶苦茶になったその顔が動き、目が開かれる。

彼女の『ウマ娘ちゃん愛』は、冥府からの帰還をも可能とするのだ。

 

「で、デジタルーーーーーーー!」

 

「……」

 

感極まったトレーナーに抱きしめられながら、アグネスデジタルは呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにか、とてつもなくレアな機会を逸した気がする……!」

 

結論から言うと、アグネスデジタルは変態(ウマ娘狂い)であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うら~……疲れたぁ~」

 

「うららちゃん……!ほら、ライスに掴まって」

 

「まったく、どうなってるのよウマ娘塾は……!」

 

スーパークリーク宅を破壊し、葬式会場を蹂躙し、それでもバクシンは止まらない。

これが本当に、自らそう称する一流ウマ娘として相応しい姿なのだろうか?キングヘイローにはとてもそう思えなかった。

かくなる上は、差し違えてもサクラバクシンオーを止めるべきか。彼女がそう考え始めた時のことである。

 

「ふふふっ……」

 

これまで無言だったゴールドシップが、笑った。

 

「な、何が面白いっていうのゴールドシップさん?」

 

「分からねぇ」

 

「は?」

 

「あたしにも分からねぇ。だが、今のあたしは最高にワクワクしている」

 

そう話すゴールドシップの顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。

何故そのような表情を浮かべているのか、それは本人が語った通り、自分自身でも分かっていない。

だが、それでいい。

───「面白い」という気持ちに、余計な理屈はいらない。「面白い」から、「面白い」のだ。

 

「一つだけ言えるのは、ウマ娘塾ってのは常識が通用しない場所ってことだけだな……」

 

「ゴールドシップさん……」

 

「お前も、試しにバカになってみろよ。飛ぶぞ?」

 

キングヘイローには、普段ゴールドシップの言うことの半分も理解出来ない。

だが、その言葉は妙に心に染みた気がしたのだった。

 

「……やってやろうじゃないの。私は、キングヘイローよ!」

 

「おや、皆さん体が温まってきたようですね!それでは、更にバクシンしていきましょう!バクシンバクシーン!」

 

『バクシンバクシーン!』

 

元気よく叫ぶウマ娘塾一号生達。

人はそれを「やけっぱち」と呼ぶのだが、今の彼女達がそれに気づける筈も無かった。

 

 

 

 

 

『バクシンバクシーン!』

 

「ママー、あのお姉ちゃん達なんで電柱昇ってるのー?」

 

「しっ、見ちゃいけません!」

 

「あわわ……スカートだからあまり下から見ないで……」

 

 

 

 

 

『バクシンバクシーン!』

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!なんでウマ娘が男湯に入ってくるんだー!?」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!思わず女みたいな悲鳴挙げちまったー!」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!何やってんだオグリーーーーーー!?」

 

「むっ、風呂に入っていたのか北原。私達のことは気にせず、ゆっくりしていけ」

 

『出来るかーーーーーーーーーーっ!!!』

 

 

 

 

 

『バクシンバクシーン!』

 

「おい、なんだありゃぁ!?」

 

「なんであいつら川のど真ん中行進してるんだ!?」

 

「おい、あの旗持ってるのってキングヘイローじゃないか!?」

 

「もうヤケクソよーーーーーーーっ!おーっほっほっほっほっほ!」

 

 

 

 

 

こうして、いくつもの家屋を公共の設備を破壊しながら行なわれた『驀進行軍』だったが、またもやとある建物の裏手に来たところで停止する。

先頭を進んでいたサクラバクシンオーは振り向き、ゴールドシップに向かって手を差し伸べた。

 

「ゴールドシップさん、ここは貴方が一人で進みなさい!」

 

「監督生殿、()()()、でありますか?」

 

「この場所は少々バクシン難易度が高いのです。ここは一号生筆頭として、皆さんにお手本を見せてください!ついでにこれで、破廉恥な代物を持ち込んだことについてもチャラにしてあげましょう!」

 

それはつまり、校則違反がチャラになるほど危険ということではないのだろうか。

ライスシャワーが真相を明かそうとするも、ゴールドシップはそれを手で制し、サクラバクシンオーからハンマーを受け取る。

 

「押忍!一号生筆頭ゴールドシップ、バクシンいたします!」

 

「素晴らしい心意気です!それでは他の皆さんは、一足先に建物の表に回りますよ!」

 

「ゴールドシップさん……無理はしないでね」

 

不安そうにしながら、他の一号生達はサクラバクシンオーに引き連れられて建物の表側に向かう。

それを確認したゴールドシップは不敵に笑い、ハンマーを振りかぶった。

 

「鬼が出るか蛇が出るか……あらよぉっと!」

 

轟音と共に、壁が破壊される。

壁を破壊したその先には複数のウマ娘の姿があった。しかし、そのウマ娘達には普通と違う点がいくつかあった。

全員、目つきが鋭かったり露出させた肌に傷が見えていたりしたのだ。

部屋の中を見渡せば、そこら中に刀剣や拳銃が置かれていたり、挙げ句の果てには『仁義』と書かれた掛け軸が懸かっている。

極めつけにテーブルの上には、どう見ても真っ当な方法で稼いだとは思えない量のマニーが詰まったアタッシュケース。

 

「なんじゃわれぇ!」

 

「このご時世に()()()()とはふざけた真似しやがって!」

 

「ここを何処だと思っとるんじゃごらぁ!」

 

「ふふふっ、バクシンオーもやってくれるぜ」

 

なんと、サクラバクシンオーはゴールドシップを一人でウマヤクザの元へ乗り込ませたのだ。

絶対絶命のゴールドシップ。しかし、そんな状況でも彼女は笑ってみせる。

───狂気の沙汰ほどなんとやら!

 

「ゲザして詫びるだけじゃ済むと思うなやー!」

 

「トレーナー共をだまくらかして手に入れた120億マニーの裏取引まで見られちゃ、タダで返すわけにはいかねえなぁ!?」

 

「罰として、あちらで世界一位な芦毛撮影会といきましょうか、おぉーん!?」

 

「やれるもんならやってみな。ウマ娘塾一号生筆頭ゴールドシップ、抜錨だ!それとオメーはこんなところで何やってんだ芦毛狂い」

 

「実装されるまで暇で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんてこった!ここはあの、詐威戯(さいげ)組の事務所じゃないか!」*4

 

場面変わって、表に回った他の一号生達はゴールドシップが乗り込んだ場所の正体を知って戦慄していた。

 

「な、なんだってー!ここがあの、SSRキタサンブラックと同時にSSRエルコンドルパサーをPU(ピックアップ)し、エルコンドルパサーばかり当たる呪いを掛けて多くのトレーナーを爆死させたという、詐威戯組か!」

 

「その金でロリ巨乳オンリーのゲームを制作していると噂の、詐威戯組か!?」

 

「次に新規実装する育成ウマ娘はウチ……やなかった、タマモクロスと噂の、あの詐威戯組やっちゅうんかー!」*5

 

一部の願望が溢れる言葉はさておき、ゴールドシップが乗り込んでいったのはそんな悪評が立ち上る反社会的団体のたまり場なのだ。タダで済む筈がない。

 

「試練です!ウマ娘は試練を乗り越えて鍛え上げられるのです!かの伝説のウマ娘ホウショウツキゲも、精強な武田騎バ軍団との戦いを乗り越えて鍛えられたと本に……」

 

「んなこと言っとる場合かー!早くゴールドシップを助けに……」

 

一号生達が大慌てでゴールドシップを助けにいこうとした直後、建物の正面入り口が破砕され、何かが転がってくる。

何かとそちらを見れば、死んだ魚のような目が描かれた奇妙な円柱型のかぶり物をした、ウマ娘と思しき人物が転がっていた。

 

「ぐふっ……な、ナイス芦毛……」

 

「ふふふ、公式でデザインとCVが発表されてから出直してきな。この120億マニーは来年のゴルシウィークの資金に回させてもらうぜ」

 

『ご、ゴルシ!』

 

巨大な錨を担ぎながら、ゴールドシップは無傷で一号生達の前に姿を現した。

どこからそれを取り出したのかは甚だ疑問だが、仲間の無事を喜ぶ一号生。

 

「素晴らしいですゴールドシップさん!困難をはねのけバクシンする姿、ウマ娘の鏡です!」

 

「ふふっ……さあ、バクシンを続けようじゃないか!」

 

『おぉーーーーーーーっ!』

 

一号生達は腕を振り上げ、雄叫びを挙げる。

彼女達のテンションは、既にMAXまで振り切っていた。もう進むしかないと、ぶっちゃけ自棄になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな『驀進行軍』も、ついに終わりが訪れた。

 

(おや?この辺りの風景、そしてバクシンの方向……ちょわっ!?こ、これはマズいです!)

 

一同がとある建物の真正面に至った時、サクラバクシンオーは何処か慌てた様子で一同の前に立ち塞がった。

 

「ぜ、全体止まれー!」

 

テンションMAXでバクシンし続けていた一同も、先導者が止まれといったからには止まらざるを得ない。

いったいどうしたことか、また反社会団体の建物にでもぶつかってしまったか?

疑問符を浮かべる一号生達に向かって、サクラバクシンオーはこう続けた。

 

「皆さん、そろそろ体力が無くなってきたころでしょうからね!そんな状態でトレーニングしても、失敗して保健室送りになるのが関の山です!今日はここまで!解散、解散です!」

 

「そうはいかないわ!私達は体力が有り余ってるのよ、こうなったら地球の裏側にだってバクシンしてやるわよー!」

 

校旗の戦端をサクラバクシンオーに突きつけるキングヘイロー。

この光景を動画で見たキング母は、静かに涙を流したという。

 

「と、とにかく解散と言ったら解散───」

 

「あれ、どうしたんだバクシンオー?今日は監督生としてウマ娘塾で授業じゃなかったっけ?」

 

「ちょわっ!?」

 

ガチャリと扉を開けて姿を見せたのは、サクラバクシンオーのトレーナーだった。学園でよくサクラバクシンオーの指導を行なっている姿を、一号生達はよく見かけていた。

そんな彼が現れて、サクラバクシンオーは尋常ではなく慌てている。

 

「ここはサクラバクシンオーとトレーナーのウマ小屋やー!」

 

タマモクロスの声を聞き、一号生達はニヤリと口端をつり上げる。

なるほど、たしかにここは『驀進行軍』の終点のようだ。サクラバクシンオーもニクい真似をしてくれるではないか。

一号生達の怒りのボルテージが高まっていくのを、サクラバクシンオーはヒシヒシと感じ取り、悟る。

やり過ぎた、と。

 

「そうと分かれば、断固バクシンよ!」

 

「ど、どうかそこをなんとか!この家は賞金で買ったばかりなんですよぅ!」

 

「そんなの知らないわよ!」

 

『そうだそうだー!バクシーン!』

 

「ちょわわわ……ご、ゴールドシップさん、貴方からお願いします!」

 

サクラバクシンオーに泣き付かれたゴールドシップは、目を閉じて腕を組む。

三秒ほどその姿勢で考え込んだ後に、ゴールドシップは口を開いた。

 

「皆様、本日は金色観光の『驀進行軍』コースをご利用いただき、誠にありがとうございます。本日は大変お疲れ様でした。

本日の『驀進行軍』最終バクシン地はここ、サクラバクシンオー宅でございます♪」

 

「ちょわわわっ!?何卒、何卒ご容赦をっ!」

 

「えっ、なに一体どういうこと?」

 

手を合わせて懇願するサクラバクシンオーと、事情を飲み込めていないバクシンオートレーナー。

彼らに背を向けてゴールドシップは一号生達の顔を見た。

誰もが笑顔だった。白い歯を見せて笑っていた。

もっとも、誰もが額に青筋を浮かべていたが。

ならば、とゴールドシップはサクラバクシンオーに再度向き直り、拳を突き上げる。

ウマ娘塾一号生筆頭生として、告げるべき言葉は一つだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「突っ込めぇ!」

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!!!!』

 

「ちょわ、ちょわわわわわわわわわわわわわわわわわ!?」

 

「わー!どうなってんだバクシンオー!?」

 

悲鳴を挙げるサクラバクシンオーとトレーナーを弾き飛ばし、ウマ娘達はバクシンしていく!

 

「わはははは!ようやく楽しいバクシンの時間だー!」

 

「おりゃー!バクシンバクシーン!」

 

「わーい、なんだかよく分からないけど楽しいねライスちゃん!」

 

「ば、バクシンオーさんのお家が……これもライスの所為……?」

 

「一流のバクシンを見せてやるわー!おーっほっほっほっほ!」

 

「ウチは何時になったら実装されるんやーーーーーーっ!」

 

「そんなことよりお腹が空いたんだが」

 

斯くして、サクラバクシンオー宅は全壊した。

そしてサクラバクシンオーは事情を知ったトレーナーにしこたま叱られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くに上がる爆煙を見つめ、秋川やよいはニヤリと笑う。

 

「風を受けて新芽が強く育つように、試練を超えてウマ娘は磨かれるのだ。ウマ娘達よ、大死を抱け!

私が───」

 

「塾長、府中市から破壊された家屋と施設の修繕費支払いの請求書と苦情が多数届いています」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がウマ娘塾塾長、秋川やよいである!」

 

 

 

続く!?

*1
身につけさせたわけではないので許してくださいサイゲームス様

*2
舌だしゴルシで検索

*3
ウマ娘塾は新興勢力。お代わり可能な環境など無いのである

*4
本作品はフィクションです。実在の団体とは何の関わりもありません。勘弁してください

*5
この話を投稿した時点ではタマモクロスの育成ストーリーは実装されていなかった




YouTubeのオススメに唐突に男塾動画が上がってきたので初投稿です。

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