Ideal Fantasy:Online   作:暁星

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注力していた別の作品に一区切りついたのと、ゼノブレ3ダイレクトで人生のモチベ上がったので半年ぶりに更新できました


ある日の森、出会ったものは

『アウローラ中央なう。今どこ、後輩くん』

 

 森の中、天音先輩から届いたメッセージ。既にログインしているようなので、仮想キーボードを叩いてこちらもメッセージを入力した。『アウローラ西の森でレベル上げてます』と。

 送信した瞬間に、既読という二文字が表示される。街の中央にいるなら転移門も近いだろうから、入り口まで戻って待っておこうか。

 

「この森はインスタントエリアの一種で、同時に入ることができるのはパーティーメンバーのみです。なので早めに外に出ておくべきかと」

「へえ、ここも……。じゃあ戻るか」

 

 武器を鞘に納め、土を覆う新緑を踏みながら踵を返す。

 街中のショップがそうなのは、分かる。始まりの街にあり、主要なアイテムのほとんどを購入できる場所だ。サービス開始初日ということもあり、さぞ混雑するだろう。

 だがこの森は、どうなのだろうか。あまり規模が大きいわけではないし、まだまだ浅い現在地点での印象ではあるが、混み合う理由など無いように思える。

 

「何かあるのかな、この森に」

 

 序盤に訪れる特徴の無い場所にこそ、何かが眠っているものだ。それは使い古された陳腐な構造ではなく、いつでも心躍らせる王道の展開。

 とはいえ、特徴の無い場所が特徴の無いまま安らかに眠るというケースも多い。この森に対する小さな期待は、頭の片隅に留めておくことにした。

 

 チラつく木漏れ日を浴びながら道を引き返すと、すぐに草原へ出た。来るときは気がつかなかったが、森とアウローラの間にはほんの少し傾斜があるらしい。若葉色に波打つ草原の向こうに見える街が円形であることを、この目で見ることができた。

 

「……プレイヤーの二人組がいますね。あの方たちが、マスターの?」

「え? どうだろう……何も聞いてないけど」

 

 エルが示すのは、草原の中央。二つの人影が、こちらへ向かっている。

 先輩と落ち合う大雑把な約束はしたものの、そういえば他の人のことなどは互いに話していなかった。少なくとも俺のほうには、エルという仲間が既にいることなんて。

 先輩に追加でメッセージを送ってみようと手を動かし始めたのと同時に、俺たちを認識した二人組が駆けてきた。ひとまず手を止めて、そちらに顔を向ける。

 

「やあ。ここで友人と会う約束をしているんだけど、キミがそう……だよね。顔一緒だし」

「はい。キャラクリにあんまり時間かけたくなかったので。声だけはちょっと変えましたけど……それにしても先輩、早かったですね」

 

 朗らかな挨拶と共に右手を上げたのは、現実世界(リアル)で見慣れた風貌の槍使い。シルバーブルーに染められたセミロングの髪は、現実よりも光沢を増していた。

 

「彼女の部屋にお邪魔して、ソファからログインしたからね。……とりあえず、自己紹介といこうか。ボクは(あかね)。キミたち同士は初対面だろうけど、どっちもボクとはリアルでの友人。友達の友達として、キミたち同士も仲良くなってくれると嬉しいな」

「次は私かな? 名前はユウ。戦闘力には自信無いけど、できる限りがんばるよ。ちなみに、茜ちゃんとは数年来の付き合いです。よろしくね!」

 

 初対面としての距離感を狂わせられるような、可憐な笑みが向けられる。先輩やエルとは異なるタイプの美形だ。彼女が漂わせる明るい雰囲気の源は、その笑みと、ブラウンのボブカットに入った赤いインナーカラーだろうか。背負われたヴァイオリンの影響はないだろう。

 

「クロトです。よろしくお願いします」

「……初めて会ったときとか、あとクラス替えのときにも思ったけどさ。キミって、自己紹介の言葉がいささか少ないよね」

「そうですか? まあ確かに、言われてみるとそうかもしれません」

「では私が代わりましょう。現在のレベルは3、片手剣スキルと体術スキルを習得済み。スキルヒントは《見切り》と、もう一つ詳細不明のものを獲得しています。装備は片手剣の《ブロンズソード》と初期防具です」

 

 ずいっと一歩前に出たエルが、流れるように俺のステータスを明かす。ビルドの相談がてら伝えるつもりのことではあったが、なぜこのバディはある意味で個人情報とも言えるものをぺらぺらと話してしまったのだろう。

 

「あははっ。エルちゃん、やっぱりかわいいねー!」

 

 エルの言葉が止まってから少し遅れて、先輩たちが小さな笑い声を上げた。ユウさんがエルに後ろから軽く抱きついたが、彼女はこれといった反応をせず、自分のことへと言葉を繋げる。

 

「そして、私はエルフのエルです。ご存じの通り、航り人の船出を導く者……ですが、今はギフトとして、マスター・クロトのバディとなっています」

「えっ? ギフトにそんな項目あった!? 気づいたら絶対選んでたよー!」

「なんでキミが彼女と一緒にいるのか疑問だったけど、そういうこと。だけど……ギフトか。ボクも気づかなかったな」

「厳密には私をバディとするためのアイテムである契約書がギフトなのですが、それは特定のプレイヤーにのみ表示されていたようです。具体的には、かつての世界……《Ideal Fantasy》でハンターを経験したという記憶が、VRギアを通して確認されたプレイヤーに」

「ああ、それなら気づくはずもないね。ボクは一度も実機に出会えていないから、リストにはそもそも載っていなかったわけだ」

 

 合点がいったとばかりに先輩が小さく頷く。その横で、俺も静かに納得していた。エルを介して聞いた創造主の言葉が、ほんの少し気になっていたからだ。

 確か、『最初に気づいたあなたには、それを選ぶ権利を与えよう』だったか。サービス開始から一時間ほど出遅れたにも拘らず、俺より先にギフトを選んだ数多のプレイヤーたちは誰も気づかなかったのか、なんて思っていたのだ。

 

「じゃあ私はただ見逃しただけか〜。急ぎ過ぎるのは良くなかったね」

「ってことは、ユウさんもやったことあるんですか?」

「うん。地元に住んでるお兄ちゃんが、いわゆるレトロゲーム? が大好きな感じの人なんだけど、何年か前に布教されてから私もハマっちゃって……。受験勉強しながら実績全解除したのは、遠き日の思い出です」

「それと、ユウもボクと同じβテスターだよ。当時は知らなかったけどね」

 

 彼女たちが揃って幸運なのか、俺が不運なのか。かなりの倍率になっていたと思われるβテストの当選者が、近くに二人もいるなんて。

 

「だって茜ちゃん、全然連絡取れなかったんだもん。話したいな〜って思ってるうちに、期間終わっちゃうし。……まあいいや、そろそろ行こう? 話してるだけなんて、時間がもったいないよ!」

「それもそうだね。フレンド登録だけ済ませて、とりあえずこの森の探索でもしようか」

 

 流れるような手つきでメニューを操作した先輩たちから、フレンド申請が届く。Yesのボタンを押した先の画面に映るのは、《茜》レベル5、そして《ユウ》レベル9という表示。

 

「レベル差、すごくないですか。三倍なんですけど」

「ふふーん。私は元ハンターかつβテスターなんだよ? これくらいは朝飯前! ……といっても、IFの知識はほとんど役に立ってないんだけどねー」

「むしろボクは、キミがレベルを二つも上げていたことに驚いたよ。帰ってから合流するまでの短時間で、よく稼げたね」

 

 ウインドウを閉じて、四人で森の中へ歩き始める。先輩が前で、エルが後ろ。間に俺とユウさんが並んで、少し歪んだ四角形の出来上がりだ。

 

「エルのおかげです。バディの経験値を増加させるスキルを持ってるんですよ。あと純粋に強くて、戦ってたモンスターが一瞬で溶けました」

「グレーラットとブラウンモンキーを、二匹ずつ。マスターが倒した全モンスターです」

「その数でレベル3か〜。じゃあもしエルちゃんが私のバディだったら、今頃は15くらいまで上がってたのかも。ちょっと悔しくなってきた」

 

 少し前に猿どもと交戦したあたりをあっという間に通り過ぎて、どんどん奥へ進んでいく。始まりの街のすぐ近くにある森だからだろうか。モンスターの湧きは、あまり多くないらしい。

 

「そうだ、二人のビルド聞いてもいいですか? 俺、まだ全くステ振りしてなくて。レベル的にもβ的にも、参考にしたいんです」

「ボクはDex(技量)Agi(俊敏さ)メインで、少しVit(生命力)も上げてる感じ。それぞれ攻撃力と機動力、そして保険の耐久力だね。攻撃は受けるより避ける派だから」

「先に言っておくけど、私のは多分参考にならないと思うよ。何故ならこのユウ、武闘派ヴァイオリニストとしてStr(筋力)とDexを上げておりますので!」

「えっ」

 

 驚きの声が抑えられなかった。というか、隠す気もあまりなかった。まさか小柄なその身に背負ったヴァイオリンが武器だとは、俺でなくとも思うまい。

 いや確かに、言われてみればそうなのだ。ケースにも入れず実体化させて背負っているなら、普通は武器だと…………思えるか? やっぱり無理な気がする。

 

「マスターにお教えしましょう。ユウさんの持っているヴァイオリン、カテゴリーは打撃武器です。武器種は楽器、固有能力として良い音が鳴ります。そういうギフトです。ご理解いただけましたか?」

「いや、まあ……うん、覚えてるよ? 確かにあった。ギフトの中に、ヴァイオリンがさ。でも純粋な楽器だと思うじゃん。武器だとは思わないじゃん? 武器種が楽器って、何……?」

「ふふっ、混乱してるクロトくん、かわいいね」

「久しぶりに聞いた気がするよ、キミのそういう口調。……そうだ、せっかく一緒にゲームをしているんだし、これからは砕けた口調で話してほしいな。いわゆるタメ口ってやつ」

「あ、私も! そのほうが仲良くなれそうだもん!」

「え? ああ、はい。二人がそう言うなら努力するけど、ちょっと恥ずかしいな……」

 

 俺の中にある固定観念(じょうしき)の形が、大きく変えられてしまった。もしかしたらリアルでも、ヴァイオリンを見る度にこのことを思い出すかもしれない。

 それにしても、良い音が鳴る打撃武器、か……。いっそ俺も探してみようかな。タンバリンとかカスタネットくらいなら扱えそうだし。

 

「ビルドの話に戻すけど、《見切り》のスキルヒントを獲得した……ってのは、さっきエルが言ったか。ジャストガードとかパリィとか、そういうスキルがIFで好きだったからIFOでも使いたくて」

「分かる! ジャスガマシンの()()とか、頼もしかったし」

「?」

 

 振り向いた先輩が首を傾げる。さらさらと音を立てた髪が木漏れ日を反射して、綺麗だった。

 

「茜先輩じゃなくて、IFの登場人物の話かな。最初からいる仲間で、戦闘時の役割がいわゆる回避盾なんだけど……育てていくと、なぜか回避を全くせずにジャストガードばかりするっていう謎性能のキャラ。……のことだよね、ユウさん」

「そうだよ。そして私の推しの一人! ごめん茜ちゃん、ちょっと紛らわしかったね」

「ううん、大丈夫。クロトが反応した瞬間に分かったよ」

「それで、二人はどう思う? そういうプレイスタイルで行くなら、どういうステ振りがいいか。あとβ的に、ジャスガとかパリィはどんな感じかとか。……いやそもそも、どっちもありますよね?」

「んー、どうだっけ? ガードはスキル不要の基本アクションだけど、ジャスト判定は分かんないや」

「あったと思うけど、自信ないな。回避しかしないから」

「槍もヴァイオリンも、そんなにガードする武器じゃなさそうだしな……それもそうか」

 

 一応は全ての武器種がガード可能なはずだが、それと実用的であるかはまた別の話だ。ガードの強度を上回る攻撃は受けられないし、その強度は武器種とステータスに依存して決まる。例えば先輩があの細い槍でガードを狙ったところで、直に受けるよりはマシ程度の軽減しかできないだろう。滅多に使わないアクションであれば、知らないのも当然といえる。

 

「マスター・クロト。私由来の知識でよければ、その問いにお答えできますが」

 

 一度断った前例があるからか、きちんと前置きをしながらエルが手を挙げる。前回は謎解きのようなものだから自分で解くと言ったが、今回は聞いたほうがいいだろう。きっとエルが持つ知識も含めて、ギフトなのだから。

 

「ああ、教えてほしい」

「かしこまりました。まずガードのジャスト判定ですが、必要なパッシブスキルを持っていなければカット率にはあまり影響しません。これは盾を含め、どの装備にも共通する仕様です。そしてパリィは、一部装備にのみ対応するアクティブスキルとして実装されています。大盾を除く各種盾や短剣、刀などが主な効果対象です。ジャストガードを主体とする場合はStr、パリィであればDexを上昇させることで快適な戦闘ができるでしょう。どちらも刀剣類を扱うのであれば重要なステータスですから、今のところは均等に上げればよろしいかと」

「これがエルちゃんの叡智……!」

「ありがとう、エル。やりたいスタイル、なんとなく決まったよ」

「お役に立てたのなら幸いです」

 

 指を動かしてメニューを呼び出し、ステータス画面を開く。ここまでにレベルアップした回数は二回だけ。ステータスの上がり幅は、まだまだ小さい。だが、その差が戦闘に及ぼす影響は小さくないはずだ。

 今ある全てのポイントをStrとDexへ均等に振って、メニューを閉じた。

 

「あ、ちょっと軽くなったかも」

「振り終わったね? ちょうどよく、モンスターがお出ましだよ」

「グルルル……」

 

 低く唸る狼たちが、左右から二匹ずつ現れた。真っ赤なカーソルを浮かべて、こちらを睨みつけている。

 

「《アッシュウルフ》の群れ? 私でやっと同格だよ。気をつけて」

「βだと、もっと前線にしかいなかったんだけどね」

 

 レベル9のユウさんで同格ということは、その半分ほどである先輩……ましてや俺からすると、集中が必要な格上だ。

 能動的な攻撃がしづらいエルを含めたうえで並ぶ頭数のことも考えると、少し危ない状況かもしれない。

 

「バウッ!」

 

 統制の取れた動きでこちらの様子を窺っていたアッシュウルフ。そのうちの一匹が、俊敏なステップを交えながら先輩に向けて飛びかかった。鋭い牙が、ぎらりと光る。

 

「《スラスト》」

 

 捻りを加えて突き出される、白銀の槍。ネオンブルーの軌跡を描いた穂先が、剥き出された牙とぶつかった。

 攻撃をより強い攻撃に潰されたことで狼がダウンする。激突の衝撃を上手い具合に流したらしい先輩が追撃を試みるが、次なる個体が割って入ったことで仕切り直しのような形になった。

 

「この手応え……アーツ無しで打ち合うのはやめたほうがよさそうだ。ユウ、攻撃は頼んだよ」

「りょーかいっ!」

 

 本人は戦闘力に自信がないと言っていたが、ステータス的な面で言えば今確実にそれがあるのはユウさんだけだ。俺たちはアッシュウルフの連携を乱し、隙を作ることに専念したほうがいい……先輩からのそんな目配せに頷きを返し、前へ出て剣を構える。

 

「エル、ここは一旦任せてくれ」

「はい。見守っておきましょう」

 

 数的不利をわざわざ被ることになるが、恐らく彼女はこのモンスターに対して極めて相性が良い。攻撃の対処に伴ってアーツが自動発動されるという性質上、防御は容易だが攻めづらいというアッシュウルフはカモだ。

 俺は、この戦いを楽しみたい。初めて先輩と共に遊ぶVRゲームで、初めて共に挑む戦い。色々な面で先輩のほうが強いと分かっているから、俺が埋めるべき差を肌で感じたかった。

 

「それもまた、私の使命ですから」

 

 

 倒れていたもの以外の三匹が、吠える。重なりあって、二度、三度。耳を塞ぐほどの音ではないが、先刻の猿よりも断然、威嚇としての圧は強い。

 

(あくまでも、目的は隙を作ることだ。欲張るなよ、俺)

 

 攻撃にアーツを合わせれば、確実に隙は作れる。先輩がやったように。だが、先輩がやった通りにはいかない。俺はあんな風に、衝撃を流して自分の隙を消すことはできない。そこを向こうの追撃に突かれれば、先輩やユウさんの負担を増やすことになる。

 だから、俺は別の方法を選ぶことにした。

 

「俺が引き受けます。先輩は援護を!」

 

 一番小柄な個体が、先ほどの焼き直しのように飛びかかってくる。やはり俊敏だ。今からアーツを発動させられるような余裕はない。

 だがそんなつもりも、毛頭ない。

 刺々しく並んだ、上下の牙。それを確かに見据えて、噛みつきの軌道を予測する。相手は跳躍中だ。以後の動きは、そう簡単に変えられないはず。

 

「……ッ!」

 

 最大限引きつけてから、右足を動かしてほんの少しだけ後ろに下がる。

 俺の肩部があった場所で赤銅の刀身を構え、牙と噛み合うように差し込んだ。

 

「グラァッ!」

「任せて。《スラスト》ッ!」

 

 さっきと同じだ。二匹目が、援護のために距離を詰めてきた。ジグザグのステップを挟んでから、首元を狙っての跳躍。

 その横っ腹に、ネオンブルーの螺旋が突き立った。

 

「こっち、も!」

「キャンッ!」

 

 墜落した二匹目に向けて、剣で抑えていた一匹目を叩きつける。小柄な個体とはいえ、数十キロはあるだろう。それを振り回せたのは、やはりステータスアップの恩恵だろうか。

 

「まとめて、ドーン!」

 

 ペグのあたりを両手で握り、ヴァイオリンがヴァイオリンらしからぬ用途で真っ直ぐ振り下ろされる。

 そして、殴打によるものとはとても思えないヒットSEが奏でられた。

 

 


 

 

「よしっ、レベルアップ! 一足お先に、駆け出し卒業です!」

 

 無事にアッシュウルフの群れを撃破したことで獲得した経験値は、俺たちのレベルを少しずつ上昇させた。上がり幅は最も低レベルだった俺が2、先輩たちが1で、それによってユウさんはレベル10へ到達した。

 

「まあ、何か変わるっていうわけじゃ……あれ、通知?」

「ん、ボクたちにも来てるね」

 

 各々ドロップした素材を確認したり、獲得したステータスポイントを振り分けたりしている最中に、同じタイミングで何かの通知を受信した。イベント告知のようだ。

 

『アウローラ付近で、大規模な時空の歪みが確認されました。戦闘能力を持つ航り人、並びにハンターは速やかに集合してください』

 

「あっ、公式SNSも動いてるよ」

 

 ユウさんの言葉を聞いて、アプリを起動する。ゲーム内で届いたものとは別の視点から、この件を告知しているようだ。

 

「歪みが限界を迎えるのは十七時頃、ね。三十分後……少し急じゃない?」

「初日ならそんなもんじゃないですか? 俺たちは試験でしたけど、今日は一応土曜ですし」

「……そういえば、戻ってるよ。クロト」

「あ」

 

 指摘されてようやく、いつも通りの口調に戻っていることを自覚した。

 思い返してみれば、戦闘に入ったときからそうだったような気がする。やはり慣れというものは、無意識に出てしまうようだ。

 

「やっぱまだ慣れないな」

「まあそれこそ初日だからね。ゆっくり慣れていこうよ。……さて、とりあえずは街に戻るという方向でいいかな?」

「異論なーし」

「同じく」

「マスターに従います」

 

 そうして、道を引き返す。繁る枝葉から垣間見える空は、心なしか曇り始めているように見えた。




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