風になりたい逃亡者と走ったら死ぬ風神 作:Hetzer愛好家
『風神と異次元の逃亡者、心中か』
世間を賑わせた2名の、あまりにも早すぎる突然の死。身も蓋もない様々な憶測が飛び交ったのだが、遺体発見から数日経った日に、フウが残した遺書を偶然彼の家族が発見。フウの家族が内容を公表した事で、徐々に鎮火へと向かって行った。
それとは別で、陸上競技場に設置されていた防犯カメラに映っていた、フウとスズカのラストランが世間を騒がせた。
専門家がこぞって解析を進めた結果、最終的にフウとスズカは時速100km近くで走行していたと言う結果が明らかになった。普通の人間のはずであるフウが異次元の逃亡者とまで謳われたスズカの手を引き、笑みを浮かべながらとんでもない速度で走る様子は多くの人を戦慄させた。人間の構造上不可能であると声を上げた者も居たが、ちょっと大袈裟な噂の方が好きな人間の声に掻き消されたのは可哀想である……。
まあ、防犯カメラが全く細工されていない状態である事を真っ先に提示された時点で詰んでいた。細工も何もしてないのに車並みの速度で人間が走るのだから、否定したくなる気持ちも当然起こるだろう。だが、今回ばかりは相手が悪かった。
やがて2人の死因の方もハッキリした事で、時を重ねる毎に。2人の事を忘れる人が増えて行った。彼らと深く関わっていた者や、尊敬していた者を除いて。
陸上界に突如現れた超新星とされたフウの存在は、走者の永遠の憧れとして心に留まる事になった。彼の走り方は徹底的に研究され、真似をしようとする選手が後を絶たなかったのだが……。
どう足掻いてもフウのような大逃げを可能とする選手は遂に現れなかった。それもそうだ。フウのような大逃げを常に行うなら、小さい頃からウマ娘と走る根性と、絶対的な力にも折れないメンタルが必須なのだから。条件があまりにも厳し過ぎる。
スズカも同じような物だ。怪我から復帰した後に彼女が見せた、他を常に圧倒的する走りを真似できるウマ娘は居ない。天性の才能、“走”への飽くなき探究心、絶対に負けたくないと考えられる頑固さ。1つでも欠けた時点で達成不可能だ。
本当の意味で、フウとスズカは風になった。誰よりも疾い風となり、雲の上まで昇って行ってしまった。手の届かない場所まで、1度も止まる事なく、あっという間に。
1回だけだが世界大会に出場し、全てを振り切る走りを見せた後に悲劇に見舞われた嵐山風輝。
風輝に救われた命を限界まで燃やし、ほんの一瞬も自身の影を踏ませずに駆け抜けたサイレンススズカ。
生で彼らの走りを見た者は絶対に忘れないだろう。何もかもを置いてきぼりにするバケモノを。触れるどころか、影を踏む事すらも許さない、幻の絶対王者の走りを。
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「ねえ、神様。僕たちをわざわざ呼んだのは何故ですか? もっとスズカちゃんと走りたかったんですけど」
「……神様も邪魔をするんですか?」
「待て待て。そんな物騒な顔をしないでおくれよ。少し見て貰いたい物があるから呼んだのさ」
「はぁ、そうですか。出来るだけ早めに終わらせてくださいね」
「手厳しいねぇ。ま、黙ってこれを見なさいな」
「……? あの、これは?」
「違う選択をした君たちさ」
――物語は、まだ終わらない。
次回は「スズカが無理にでも止めるルート」を執筆します。少々お待ちください。
展開アンケート(多い物が正史になります)
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片肺で風になるルート
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強引にでもスズカが止めるルート
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スズカが肺をフウに渡すルート