IS×MG 銀龍の物語   作:ミッツ

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 この物語の主人公は、名前や設定こそ「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」の主人公と同じですが、全くの別人です。
 また、細かい設定なども原作と違っているところがありますのでご了承ください。


その名は機龍

「あなたが中條義人(なかじょう よしと)さんですか?」

 

「はいそうです。僕が中条で間違いないです。」

 

 目の前の女性の質問に俺はすばやく答えた。元は特性自衛隊にいただけにこうした質問に対しては、素早く、明確に答えることが習慣として染みついている。

 

「そうですか。私はこのIS学園で教師をしています、山田真耶です。こちらは同僚の織斑千冬先生です。」

 

 そう言って山田と名乗った女性が隣の女性を紹介すると、織斑という女性は軽く頭を下げた。

 

 織斑千冬と山田真耶

 この二人に対し俺が最初に抱いた印象は、まるで正反対の二人だな、というものだった。

 ビシッとして、女性ながら凛々しさを感じさせる織斑さんと、背が低いながらも、女性として主張するところはしっかりと主張している山田さん。

 一見アンバランスでありながら、どこかしっくりとしたものを感じざる負えない。

 というか、山田さんのあの胸部はいったい何なのだろう?

 普通、詰め物でもしない限りあんな風にはならないはずだ。ハッキリ言って、あれは男にとってメーサー級の平気だ。あれでまともなダメージを受けない男はいないんじゃないか。

 あ、でも織斑さんも、どことなく家城さんに似た雰囲気があるな。すごい美人さんだし。

 

「あの、どうかされましたか?」

 

 などと考え事をしていたら不審に思われたようだ。

 

「い、いえ、何でもありません。」

 

「? そうですか、ではいくつか質問させていただきたいのですがよろしいでしょうか?」

 

「ああ、はい。大丈夫です。」

 

「えーと、じゃあ単刀直入に聞きます。」 

 

 

 

「あれはいったい何ですか。」

 

 そういって、山田さんは俺の後ろ、俺たちをここまで載せて来たコンテナの中をを指さした。

 俺はゆっくりと振り返り、そいつを見た。

 そこに鎮座するのは銀色の龍。2mを軽く超す体躯は以前と比べ遥かに小さなものではあったが、全身にこれでもかと備え付けられた武装は周囲を威圧するには十分なものだ。それだけで、この機体が何を目的に制作された物か容易に想像がつく。

 

「IS…ではないですね。どちらかというとロボットに近い感じがします。あの、中条さん。これは篠ノ之博士が作ったものなんですか?」

 

「ええと、まあ、そんな感じです。」

 

 実は僕たちは異世界の出身で、巨大怪獣との戦闘の末にこの世界に飛ばされたんです、といったところで正常な人間ならまず信じないだろう。仮に信じる人がいたら、逆にその人の精神を疑う。そうなると、事前に打ち合わせしていたように、こいつを作ったのは篠ノ之博士とした方が賢明という判断だ。修理してくれたのは篠ノ之博士だし、知らぬ間にいろいろと機能を付け加えられていたのであながち間違いでもない。

 

「名前はなんていうんですか?」

 

「名前ですか?」

 

「ええ、この機体の名前です。もしかして、まだ付けられていませんでしたか?」

 

 山田さんは心配するかのように聞いてきた。

 名前か…。元いた世界ではこいつもいろいろな名前で呼ばれてきたな。ただ、今この状態のこいつを呼ぶとしたら、ピッタリな名は一つしかないな。

 

「こいつの名前は機龍。機械の龍と書いて機龍です。正式名は3式機龍っていうんですけどね。」

 

「3式…機龍…。」

 

 そう、それこそ、この銀の龍の名前だ。

 人間の身勝手な思惑にほんろうされながらも、戦場に立ち、多くの人々の住む場所と命を守り抜いた、まぎれもない英雄の名だ。

 

「…そいつは本当に篠ノ之束が作ったものなのか?」

 

 その言葉は、今まで俺と山田さんとのやり取りを無言で見守っていた織斑さんのものだった。

 その声色からは、露骨に俺の話を疑っているような節を感じた。

 

「……何か問題がありましたか。篠ノ之博士がこいつを作ったら。」

 

「別にあいつが何を作ろうが、大した問題ではない。ただ平等に世界を混乱させるだけだ。」

 

 何か今この人とんでもないこと言わなかったか!世界を混乱させることを大したことじゃないとか。見れば山田さんもあっけにとられてるし。

 

「私が疑問なのは、あいつが今、何故こんなものを作ったかだ。ISの全盛期に、世界中が新たなISを求めている昨今に、何故あいつがISと似ても似つかないものを作って、わざわざこの学園に送り付けてきたのかが分からない。ISの開発者である篠ノ之束がだ。」

 

 織斑さんは、まるで心の奥底まで見透かすような目で俺を見てくる。思わず背中に嫌な汗を搔いてしまった。

 

「何よりわからないのはこの機体ではなく、君の事だ。」

 

「俺の…ことですか…。」

 

「ああ、そうだ。自慢ではないが私は束とは長い付き合いでな。あいつがどういう人間なのかは重々承知している。あいつが一部の例外を除き、他人に対して極端に興味を示さないこともだ。」

 

 ああ、それについては身をもって知ってます。最初はまともにコミュニケーションが取れなかったもんな…。機龍がいてくれたから何とかなったけど…。

 

「あいつがいったい、君のどこを気に入って使いによこしたのか、私はとても気になる。聞かせてもらえないか?あいつと君の馴れ初めを…。」

 

「馴れ初めって…。」

 

 うーん、果たしてどう説明したものか…。一応、俺と篠ノ之博士の出会いについての設定は考えてあるんだけど、どうも胡散臭いんだよなあ。だからと言って本当のことを話すわけにはいかないし…。

 

『そのことについては、私から説明させていただきます。』

 

「ん?いったい誰の声?」

 

 突如として整備室内に響いた機械で作られた音声。IS学園の女教師二人は声の出所を見つけるべく、周囲に視線を走らせている。俺はというと、まあ、発言元がどこなのか見当はついているのだが…。いったい何を思って、あいつは口を開いたのか…。

 

 やがて、織斑さんと山田さんの二人の視線は俺の右手首へと向けられた。これ見よがしに黄色く点滅していたら、そりゃあ気づくわな…。

 

「あの、すいません中条さん…。今の声はそのガントレットから…。」

 

「えーとですね、今の声は何というか・・。」

 

『はじめまして、織斑千冬、山田真耶。私がたった今、ヨシトが紹介した3式機龍、正式名称「3式多目的戦闘システム 」、通称「機龍」です。どうぞよろしくお願いします。』

 

 ああ、お二人とも信じられないといった風に機龍の話を聞いている。元の世界でも、これほどまでに自然に会話のできる人工AIは無かった。こちらの世界の技術力が俺のいた世界と変わらないものとすれば、この反応は当然といえる。

 

「…機龍だったか。君はそこにあるロボットに搭載された人工知能と考えても問題ないのか?」

 

『厳密に言えば、私は従来のロボットとは異なる存在です。今私はヨシトがつけているガントレット型音声システムを介して、あなた方と会話をしています。これらのシステムはすべて篠ノ之束博士が開発しました。』

 

「…なるほど、了解した。ところで、中条さんと束の経緯について話してくれるとのことだが…。」

 

『はい。実を言いますと、そこにいる中条義人は束博士と出会う以前の記憶がありません。いわゆる、記憶喪失というものです。』

 

「え、それって本当なんですか!?」

 

 山田さんが心配するような目を向けてきた。うん、本当にこの人はかわいいな。って、そんなこと考えてる場合じゃない!

 とりあえず頷いておこう。

 

『束博士によりますと、ヨシトは浜辺で気を失っていたそうです。束博士はヨシトを保護しましたが、気を取り戻した義人は自分の名前以外、何も思い出すことが出来なかったそうです。仕方なく束博士はヨシトを自分のラボに連れていき、自分の研究の手伝いをさせつつ、記憶を取り戻せるように手を回しています。』

 

 なあ、この話を聞いて「そうか、それは大変だったな。」って言える人間は何人いる?

 どんだけ嘘くさいんだよ!篠ノ之博士は確かに技術者としては一流だけど、実はアホなんじゃないか。

 案の定、織斑さんは俺のことを余計に胡散臭げな眼で見てきてるし!

 一方、山田さんは、あれ、なんであなたはハンカチなんか出して目元をぬぐっているんですか?そんな涙目で俺のことを見ないでください。罪悪感で死にそうです。

 

『今回、束博士がヨシトを使いに送ったのは、従来のロボットやISと勝手の違う、私の本体の整備についてある程度知識のある人間を向かわせることもありますが、それ以上にヨシトの出身地である日本で生活を送らせることで、記憶を取り戻す切っ掛けが掴めないかという事があります。ですので千冬が考えているような事はありませんのでご安心ください。』

 

「…ずいぶんと利口な人工知能だな。私の知る限り、これほどのものを作れる人間はあいつ以外にいないな。」

 

 そういうと、織斑さんは俺の方を真っ直ぐに見てきた。

 

「君たちのことは既に上の方にも伝わっている。とりあえずは学園で扱う問い事にはなっているが、おそらく君たちのことを利用しようと近づいててくる人間もいるだろう。篠ノ之束の名はそれほどまでに大きな意味を持つんだ。そのことだけは忘れないでくれ。では、山田先生、私は少し用がありますので後のことはお願いします。」

 

 そういうと、織斑さんは俺たちに背を向け、整備室を出ていった。

 あとに残ったのは、何やら慌てた様子の山田さんと、どうも状況がつかめない一人と一体だけであった。

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