IS×MG 銀龍の物語   作:ミッツ

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 主人公の年齢ですが映画やwikiには明記されていなかったので、演者さんの当時の年齢を参考にしています。


義人、登校

翌日、俺は目を覚ますと、手早く身なりを整え、IS学園の校舎へと向かった。

 昨日になって急きょ決まったIS学園の授業参加であったが、冷静になって考えてみると篠ノ之博士が手を回していたんだと思う。彼女の研究ラボを出る際に、ちーちゃん(たぶん織斑さんのこと)をよろしくとか言っていたし、彼女のIS界に対する影響力を顧みると、IS学園に要望を出すなど容易いことだろう。

 そうでなければ、俺のような身元不明の不審者が、軍事機密の塊のような場所で女学生と机を並べるなど不可能なことだ。

 

 前日に言われた時間通りに職員室に向かうと、織斑さんの姿が見えない。近くにいた教師を捕まえて話を聞くと、朝の会議が伸びているそうだ。仕方なく職員室の前で立っていると、5分ほどして織斑さんが出てきた。

 

「あ、おはようございます織斑さん。今日からお世話になります。」

 

「おはよう、中条。ほう、なかなか制服姿も似合っているじゃないか。」

 

「からかわないで下さいよ。これでも結構恥ずかしいんですから。」

 

 まさか、この年になって再び学生服を着ることになるとは思わなかった。小〇旬でもあるまいし、なんでアラサーにもなってこんな恰好を…。

 

「まあ、それはいいとして。中条君、君は正式なIS学園の生徒というわけではないが、その制服を着ている以上私はほかの生徒と同じように接する。当然、校則を犯せば罰を与える。それと、私のことは織斑先生と呼ぶように。いいな。」

 

「はい。解りました、織斑先生。」

 

 織斑先生は、よろしい、というように頷くと俺を連れて歩き出した。

 

 それにしても、こうしてIS学園の校内を歩くのは初めてだからついつい周りに目が行ってしまう。校内は誇り一つ落ちていないほど清潔で、床も磨き上げられている。あとで聞いた話では、毎日専門の業者に頼んで掃除をしてもらっているそうだ。俺のいた高校は生徒が掃除していたのだが、IS学園の生徒はそういうことはしないらしい。おまけに、監視カメラをちらほらと見かけることが出来るあたり、さすが世界に日本が誇る一流学校といったところである。

 そんなことを考えており斑先生の跡について歩いていると、1年1組と書かれた扉の前についた。

 

「では、私が先に入るから、中条は私が呼んだら入ってきてくれ。」

 

「了解です。」

 

 そう言って、織斑先生が教室に入っていくのを見送ると、俺は右手のガントレットに声をかけた。

 

「はあ、おい機龍、いよいよだぞ。マジで大丈夫なのかなぁ。」

 

『何をそんなに心配してるんだい、ヨシト?』

 

 ガントレットからは機龍の声が聞こえてくる。

 ちなみに、機龍の本体は現在第3アリーナの整備室に待機しており、俺はガントレットを通して機龍と話している。決して、俺の隣に機龍のでかい体があるわけではないのであしからず。

 

「だってよう、IS学園は女子校なんだぜ。周りに女子しかいないとか、今まで経験したことがねえよ。」

 

『あまり気にしすぎない方がいいんじゃないの?ヨシトの方が年上なんだから、余裕をもって構えていれば問題ないよ。』

 

「そういうもんかなあ…。」

 

『そうだよ。大体ISの操縦者だと言っても、相手は女子校に通う10代の女性なんだから。変人の集まりでもあるまいし、普通にしてればそうそう騒ぎはおきな…』

 

 

 

「きゃああああああ! 千冬様、本物の千冬様よ!」

 

「ずっとファンでした!」

 

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!」

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

 

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

 

 

「………。」

 

『………。普通に過ごしていれば、まず騒ぎはおきな…。』

 

「おい、今の騒ぎを無視して話を進めるんじゃない。」

 

 なんかいきなり不安になってきたんだけど。なんだ、今のが女子校のテンションってやつなのか?それとも、今どきの10代の女子はあれがデフォなのか。どちらにしろ、とてもじゃないが俺はついて行ける自信がないぞ。

 

『落ち着いてヨシト。思い出すんだ。織斑千冬はこの世界でかなりの有名人だ。世界中の女性の憧れの存在というくらいだから、クラスの生徒があんな風になるのも仕方が…』

 

 

 

「きゃあああああああああっ! お姉様! もっと叱って! 罵って!!」

 

「でも時には優しくして!」

 

「そしてつけあがらないように躾をして~!」

 

 

 

「………。」

 

『………。』

 

「なあ、機龍…。今のを聞いて、何か思うところはあるか?」

 

『うん。人間って、不思議な生き物だなあ、と思う。』

 

 その意見には概ね同意するが、できれば人間の括りをこのクラスの中だけに限定してくれ。まだ俺は、まともな人間でいたいから。

 暫くすると、教室の喧騒は静まっていき、織斑先生の話す声だけが聞こえる。扉越しでよく聞こえなかったが、どうやらIS学園にいる間は自分の言う事を聞け、というようなことを説いているようだ。前々から思っていたのだが、織斑先生は教師というよりかは教官と言った方がしっくりくるような気がする。どうもあの話し方を聞いていると、自衛隊の教育課程を受けていた頃の教官を思い出してしまう。

 と、そんなことを考えていたら教室の扉が開いた。

 

「いいぞ中条。入って来い。」

 

 教室から織斑先生の声が聞こえる。

 もうこうなったら、逃げることはできない。

 

「よっしゃ。こうなりゃ仕方ない。いっちょ気合い入れていくか。」

 

『その意気だよ、ヨシト。』

 

 俺のつぶやきに機龍がそう応える。

 わかっているさ。ゴジラの相手をするわけじゃない。

 そう思うと幾分か気が楽になった。

 

 

 

 教室に入ると、クラス中の視線が一斉に俺を射抜く。

 そのほとんどが、驚きと戸惑い、そして強い興味を含んでいた。

 俺が教壇に立つと、織斑先生が口を開いた。

 

「彼の名前は中条義人。正式な生徒ではなく、ISの整備について学ぶ研修生として今年度よりお前たちと机を並べる事になった。なので、ISを扱うことはできないが、基本的にお前たちと立場は違わないので勘違いしないように。中条、挨拶をしろ。」

 

「はい。」

 

 織斑先生に促され、俺は一歩前に出る。

 足を肩幅に開き、両腕を後ろで組み、胸を逸らせ、背筋を伸ばす。そして、すっと息を吸い込むと、張りのある声を出すように意識し自己紹介を始めた。

 

「只今ご紹介に与りました、中条義人です。機会全般には強いですが、ISに関しては素人です。なので、IS学園で学べる機会を生かし、今後の自分の糧にしていきたいと思っています。なにぶん、素人ですので至らないところはあると思いますが、どうぞよろしくお願いします。」

 

 言い終えると、体を曲げ、深く礼をする。

 少々堅苦しく思われかもしれないが、遣り慣れた特性自衛隊流の自己紹介をしてみた。下手に受けを狙うよりかはだいぶましだと思ったのだが、生徒の反応は驚くほど薄い。呆気にとられているといってもよい。

 あれ、やっぱりちょっと堅すぎたか?

 そう思って教室を見渡していると、ある一点に目を奪われた。

 IS学園は女子校だ。正確には、ISを操ることが出来るのは女性のみなので、ISの操縦を学ぶIS学園の生徒は必然的に女子に絞られる。

 そう、本来なら俺のように反則じみた手段を使わなければ、男はIS学園の中に入る事すらできないのだ。

 にも拘らず、俺の目の前に座るその人物の姿かたちは、明らかに第二次成長を遂げた女性のものではなかった。 

 つまり、何が言いたいのかというと、

 

「「お、男?」」

 

 期せずして、声がハモる。

 これが、俺と世界で唯一の男性IS操縦者である、織斑一夏との出会いだった。

 

 

 

「えーと、確か中条義人だったよな?」

 

 一時間目の授業が終了すると、織斑一夏が教室の一番後ろ隅にある俺の席に近づいて、そう言った。

 

「ああ、そうだ。君は織斑一夏だよね。」

 

「うん。まさか、俺以外に男がいるなんて思ってなかったからホッとしたよ。」

 

「俺もだ。ところで織斑君、ここにいるってことはもしかしてISを動かせるの?」

 

「一夏でいいよ。俺も義人って呼ぶから。」

 

「わかった、そうするよ。で、どうなんだ?一夏はISを動かせるのか?」

 

 俺が改めてそう聞くと、一夏は困ったように頭を掻きながら答えた。

 

「うーん、まあ、そうなんだけどさ。正直、まだ実感がないんだよな。まともに動かしたわけじゃないし…。でも、義人は俺が動かせるって知らなかったのか?結構ニュースになったんだけど…。」

 

「あー、俺ってあんまりテレビとか見ないからさ。そういうのには鈍いんだ。」

 

 われながら随分と苦しい言い訳だと思うが、一夏はすんなりと納得してくれた。

 それからしばらく、一夏と他愛もない話をしていてわかったことは、一夏が織斑先生の弟だという事と、一夏がとても良い奴だということだった。

 なんというか、言動が悉くイケメンなのだ。その癖に、それが同性に対し嫌味になっておらず、それどころか爽やかさすら感じられる。それに加え、高身長で顔も男前と来ているのだから女にもモテるはずだろう。

 そのことを言うと、今までモテたことはなく、彼女もできたことがないらしい。

 もしかして、この世界のイケメンは俺の世界と基準が違うのかもしれない。別に女からキャーキャー言われたいわけではないが、なんか不安になってきたぞ。

 

「ちょっといいか?」

 

 と、一夏と会話をしていたら、不意に横から声を掛けられた。

 見ればポニーテールの少女がこちらを見ている。

 

「ん?箒か?いったいどうしたんだ?」

 

 一夏が少女に向かってそういった。どうやら、箒というのがこの子の名前らしい。随分と変わった名前だな。

 

「一夏に少し話がある。悪いが借りて行ってもいいか?」

 

 言葉は丁寧ではあったが、その裏に何やら有無を言わせぬものが見え隠れしている気がする。

 

「ああ、別にかまわないぞ。」

 

 断る理由もないし、初日からクラスの女子との仲をこじらせるのは得策じゃない。

 俺の返事を聞くと、箒という少女は一夏を伴って教室から出ていった。

 

 さて、俺は一人残されたわけだが、やることもないので次の授業の準備でもするとしよう。 

 ちなみに、SHRの直後に始まった最初の授業は学校の規則を確認するオリエンテーションの様なものだった。本格的な授業は次の時間からだ。

 そんな時、俺が教科書やノートを机の上に並べていると、周囲の女子の会話が聞こえてきた。

 

「ねえねえ、さっき織斑君と中条君、なんか話してたよね!」

 

「うん、すっごく仲良さそうだったよ!」

 

「はあ、どっちが受けで、どっちが攻めなのかなあ…。」

 

「中×一、一×中…。どちらにしろ滾るわ!」

 

 ………早く放課後にならないかなあ。

 このクラスの女子、ゴジラよりたちが悪い…。

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