マイネルハイウェイの温泉掘削計画 作:BuddPioneer
初めて執筆する作品になります。色々と拙い部分はありますが、何卒よろしくお願いいたします。
日本中の優秀なウマ娘が集まる日本ウマ娘トレーニングエンター学園、通称トレセン学園。生徒の人数は2000人を超えるマンモス校だ。生徒会長のシンボリルドルフは圧倒的なカリスマを誇り、彼女に憧れて入学する子も少なくない。
彼女の下には、毎日学園内の生活をよりよくしようと様々なアイデアが持ち込まれる。採用することもあれば、場合によっては却下されることも少なくない。
今日もその生徒会室で、1人のウマ娘がルドルフを相手取って大激論を繰り広げていた。
「だから、我が校にはこれが絶対に必要なんです!」
青鹿毛のウマ娘がシンボリルドルフを前にして半ば怒気を孕んだ声で熱演していた。
「貴女の意見は十二分に分かるが、その案を今すぐ受け取るわけにはいかない。それは今すぐ必要なものではなかろう?別になくとも生徒たちは十分に学園生活を送ることができるはずだ。」
流石は皇帝シンボリルドルフ。熱弁する相手を前にしても冷静に対処し、正論を突いて青鹿毛のウマ娘を論破してみせた。
「ですが・・・!!!」
「ですが、何だい?他に文句があるのでも?」
青鹿毛のウマ娘は必死に食い下がるが、正論を言われてしまっては何を返すこともできない。完全に固まってしまった。
「もし、それでもこの案を通したいのなら、もっとちゃんとした根拠を述べてから出直すのだな。とりあえず、今日のところはお引き取り願いたい。我々も貴女に時間を割いてばかりではいられないからね。」
ルドルフは、青鹿毛のウマ娘に今日のところは帰るように指示する。
「し、失礼します・・・!」
対する青鹿毛のウマ娘は、苦虫を噛み潰したような顔でなくなく書類の束を持って生徒会室を後にした。
「しかし、温泉掘削計画、ね。確かに面白い計画だが、如何せん決め手に欠けるよ。」
青鹿毛のウマ娘が去った後の生徒会室で、ルドルフは1人、彼女が持ってきた申請書を見つめていた。
その表紙には、「トレセン学園美浦寮及び栗東寮大浴場に使用する温泉掘削計画」と毛筆の達筆で書かれていた。
「なんでさ、なんで私の計画案が却下されなきゃいけないのさ。」
一方、こちらは先ほどルドルフと1対1の話し合いをして見事に論破された青鹿毛のウマ娘。完全に不満全開モードでぶつくさと愚痴を垂れ流しつつ、廊下をドスドスと音を立てながら歩いていた。それこそ思わず周りの生徒がびっくりしてしまうくらいの音を出しながら。
彼女の名前はマイネルハイウェイ。サポート科に所属するアメリカ生まれ日本育ちのウマ娘で、チーム・スピカに所属し、最初はトゥインクルシリーズに参戦していたが、怪我のためにトゥインクルシリーズを去り、現在はサポート科で障害バ術を学んでいる。
トレセン学園では、トゥインクルシリーズに挑む通称「普通科」の他に、「サポート科」と呼ばれる学科も存在する。
このサポート科は、トゥインクルシリーズに参戦することはないが、レースの裏方の仕事、例えば蹄鉄の打ち方やトレーナーになるための研鑽を積む、勝負服の服飾デザインなど学ぶことができるほか、バ場バ術や障害バ術などといった実技なども学ぶことができる。
基本的にサポート科の生徒は最初からサポート科に入学した生徒に加え、途中で怪我などの理由からトゥインクルシリーズを引退したウマ娘が編入されることがある。マイネルハイウェイの場合は編入のケースに当てはまる。
「仕方ないか。自分で考えても絶対に考えが纏まることはないだろうから、友人にどうすればいいか聞こうっと。」
このまま1人で改善案を考えてもどうせまたルドルフにあっさり論破されるだろうと思ったマイネルハイウェイは、ウマホを使って友人を呼び寄せ、どうすればいいか聞くことにした。
美浦寮、栗東寮にはそれぞれ談話室と呼ばれるフリースペースがある。そこでは基本的に雑談や悩み事の相談、ちょっとしたボードゲームをする、いわば生徒たちにとっての憩いの場である。
その談話室の片隅に、5人のウマ娘がテーブルを囲んで座っていた。
「諸君、今宵は集まってくれてありがとう。感謝する。」
ゲンドウポーズで青鹿毛の長髪を靡かせて決め台詞を言うのはマイネルハイウェイ。この談話室に友人を呼び寄せた張本人である。
「別にマイネルのことだから大丈夫だよ~♪それより今日はどんな相談なのさ?あとバナナ美味しい。」
ゆる~い答えを返しつつ、バナナを頬張る鹿毛のウマ娘はイノベータ。ゆる~い性格のウマ娘だ。
「いや、まあ、さ。別にマイネルが相談するのはいいんだよ。それはいいとしてさ、何で私はいつもマイネルに抱えられているわけ?!」
そう文句を言う栗毛のウマ娘はサンデーダンサー。今回集まった5人の中で最も背が低い。よって、一番背が高いマイネルによく抱かれている。
「やっぱりスイカしか勝ちませんわね。早くマイネルさんの相談を終わらせて寝たいですわ。」
スイカを食べながらお嬢様口調で話す鹿毛のウマ娘はプライマリーケア。マイネルハイウェイの相談には毎回乗ってはいるが、ちょっと退屈気味に感じている。
「それで、一体何の用なわけ?こっちだって暇じゃないんだからさ。」
急に呼ばれて若干キレ気味な青鹿毛のウマ娘はソングオブウインド。チーム・スピカに所属し、日々レースに向けて切磋琢磨している。
「まあまあ、ソング、落ち着きなって。すぐ本題に入るから。」
そう言ってコホンと一回わざとらしい咳払いをしたマイネルハイウェイは、4人に話題を切り出した。
「トレセン学園の寮の大浴場に、温泉を引きたいんだ。勿論、学園の敷地内から源泉を掘削して、ね。」
マイネルハイウェイの言葉に一同は驚愕した。何故なら、どう考えてもあり得ないような計画を向こうが言ってきたからだ。
少しの間を置いて、4人は口を開いたが、
「それ普通に考えて無理ゲーでしょ~♪」
「いやいやいやいやいや。どう考えても不可能でしょ。」
「常識的に考えて無理じゃありませんこと?」
「は?そんなの無理だろ。」
その回答は完全に無理だというものだった。そりゃ当然である。トレセン学園の敷地から温泉を掘削して、それを寮の大浴場に引こうというのである。どう考えてもできる要素が全くない。ダメ出しの4連コンボを食らい、マイネルは完全に真っ白に燃え尽きてしまった。口からは魂が出て、昇天寸前である。
「そもそもさ~、なんで温泉に拘るの~?別に今の風呂でもいいんじゃない~?」
この気まずい状況を変えようと質問したのがイノベータだった。彼女は、マイネルが急に温泉を何故掘削したいと言い出したのか、その根幹が気になっていた。
「イノ、それはね!」
イノベータの質問を聞いたマイネルはさっきまでの状況がウソだったかと言わせるようなレベルの速さで復活し、目をキラキラさせてこう答えた。
「私が温泉に入りたいからに決まっているじゃない!」
と。
これを聞いた4人はすぐに「まーたマイネルの悪いクセが発動しちゃったよ。」と言いたげな表情になった。
正直なところ、マイネルの突飛なクセは今に始まったことではなく、既に入学当初からあったものだった。周りの生徒がもっと問題児な分、彼女の奇行は埋もれがちだが、それでも生徒会の問題児リストに入れられるくらいには普通に問題児だった。ちなみに、取り巻きの4人も生徒会の問題児リストに入っている。とんだとばっちりである。ちなみに、それがバレた日にはマイネルに連続して関節技がかけられて談話室に悲痛な悲鳴が木霊していた。
「マイネルの言いたいことは分かるけどよ、別にトレセン学園に温泉を掘る必要は無いんじゃね?だってよ、福島と函館にURAの所有する温泉があるんだしよ。もし湯治をしたいんだったら、そっちに行けばいいんじゃねえの?」
しかしここで待ったをかけたのはサンデーダンサーだった。実は、URAは福島と函館にリハビリ専用の温泉を持っている。基本はリハビリ専用だが、ごく稀にトレセン学園の生徒でも使用することができる。しかし、いかんせん距離が遠いので誰も利用することはない。
正直なところ、自分が温泉に入りたいのなら近所の銭湯にでも行けばよいのではないか、と考えていたサンデーだったが、マイネルは更に目をキラキラさせながら話し始めた。
「勿論自分が温泉に入りたいのは本音だけど、本音はもう1つあるの。」
そう言うと、一呼吸置いてマイネルはまた話し始めた。
「ほら、私たちって、結構な量運動するでしょ?だから、常に疲労が溜まるわけ。でも、その疲労は普通の風呂じゃ抜けないと思うのよ。だからこそ、温泉を掘削して常に疲労回復するような環境作りができないか、と思って申請してみたんだけど、流石に根拠が足りなくてね。皇帝様にボッコボコに論破されちゃいましたよ、ええ。」
あながち自分のためだけでもないんだな、と内心納得したサンデーだったが、ここでプライマリーケアが更なる質問を投げかけた。
「ですが、本当に掘削できるとして、生徒たちはそれを望んでいるのかしら?温泉を掘削するということ自体タダではありませんでしょう?だから、仮に掘っても我々生徒がそれに賛成しないと、掘る意味がないものでしてよ?」
プライマリーケアのいうこともごもっともだった。仮に掘っても、生徒たちが納得しないと掘る意味がない。なんせ、温泉を掘削するだけでとてつもない費用がかかる。果たして、そこを分かっているのか、という意味での質問だったのだが、
「あーそこ?全っ然気にしていなかった!」
完全に気にしていなかったマイネルの気の抜けた返答にずっこけてしまう一同であった。
「・・・で、さっきプライマリーも言っていたけど、結局費用面はどうするの?」
最後に聞いてきたのはソング。プライマリーも先ほど触れていたが、温泉を掘削するのには場合によって億単位の金が必要になる。本当に掘ることになった場合、一体その費用をどこから持ってくるのか、というのが懸念事項だった。
「ソング、いいところに気がついてしまったね。そう、資金源は」
ドヤ顔でソングはこう言い張った。
「まだアテはない!多分理事長あたりがポケットマネー突っ込んでくれるかな、と思って行動している。」
完全に行き当たりばったりの温泉掘削計画、果たして成功するのだろうか?
「とりあえず、話し合おうか。」
夜はゆっくりと更けてゆく・・・。
数週間後、マイネルハイウェイは書類を携えて生徒会室でシンボリルドルフと向き合っていた。勿論、目的は温泉掘削の許可をもらうためである。前回は根拠に欠けていた申請書だったが、今回は違う。様々な論文や文献を読み込み、温泉を寮の大浴場に引くことのメリットをしっかりと説明していた。
「・・・なるほど。確かにこの申請書なら及第点だろう。でだ。これを踏まえて、私から1点だけ質問させてもらう。」
申請書を一通り読み終わったシンボリルドルフは、マイネルハイウェイに1つの質問を投げかけた。
「マイネルハイウェイ、君の提出した申請書は十分理に適っているし、恐らく理事会でも承認されるだろう。
しかし、仮に受理されたとして、生徒たちはそれで満足するだろうか?中には温泉になることを好まない生徒もいるのではないか?そう考えた事はないのかい?」
シンボリルドルフの指摘はごもっともである。確かに、生徒会や理事会が承認しても、最終的に大浴場を使うのは生徒たち。彼女たちが温泉導入にどのような感情を抱いているのか理解しておくことは重要だ。
これに対し、マイネルハイウェイは臆することなくこう答えた。
「その点については投票で決めます。投票を行うことで、私の計画案の妥当性を問いたいと考えています。」
マイネルハイウェイは、投票で温泉掘削の是非を問うことを提案した。確かに、投票ならば絶対に結果までは余程のことをしない限り操作できない。
「分かった。君の考えは、我々生徒会ではなく、全校生徒に委ねるとしよう。」
最終的に、温泉掘削の是非は全校投票で決められることとなった。
数週間後、投票は朝のHRの時間を使って行われた。なお、投票用紙には寮の風呂を温泉にすることに対して「はい」か「いいえ」のどちらかに丸をつけるだけ。
投票が終わった投票用紙は即日開票され、結果はその日のうちに公表される予定となっていた。
その結果・・・
「圧倒的大多数の賛成により、温泉掘削は生徒が望んでいるということが分かりました!」
なんと、9割の生徒が賛成したのである。これにより、温泉を掘削しても問題はないということが確認された。
それからはもう早い。理事長の2つ返事でこの申請は承認され、気がつけば寮の大浴場には温泉が引かれていた。なお、湧出地はトレセン学園の森の中である。
ちなみに、温泉が引かれたことで生徒が怪我をする回数が減ったとか減らなかったとか。
はじめまして。Budd Pioneerと申します。この度、ウマ娘の二次創作小説を初めて執筆しました。
正直、初めてということもあり、思うように駆けない部分が多々ありましたが、作品を書き上げることができてホッとしています。
今作の主人公であるマイネルハイウェイは、華々しい活躍こそしていませんでしたが、自分が馬を好きになるきっかけとなった子です。ウマ娘として登場させることができて、よかったです。
最後になりますが、誤字、脱字等がありましたら、報告していただければ幸いです。