咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道 作:しおんの書棚
一本場 兆し
京太郎side
俺の名は
ちょっとした切欠から少し前に麻雀の楽しさを知って麻雀部へ今年1番で入部した
俺が入部した時、部員は3年で部長の
で、団体戦に出るには女子5人必要ってことで最後の1人を探してたんだが……。
中学からの付き合い。っていっても男女のじゃなくて、仲は良いけど危なっかしくて放っておけない女友達の
咲が麻雀を打てると知った俺は、いつも1人で本を読んでる咲に女友達ができるかもしれないというお節介。そして団体戦メンバーが揃うかも? という一石二鳥の理由で強引に部室へと連れてった。
部室へつくと咲を入れて1年4人、そうなればする事は対局だろ?
そこで途中から咲の後ろで見てた部長に言われるまで気付かなかった異常。咲が三連続±0だった事実、それが
まあ、それをどう受け取ったのか和が咲を追いかけたり、部長が咲と何やら約束して後日もう一度打つことになった。で、部長が咲に「持ち点1,000点と思って打ったら?」とアドバイスして始めた半荘一回。咲は圧倒的強さで勝つ。
その後、和と咲の間で一悶着あったみたいだけど咲が四月初旬に入部。和や優希とも仲良くなって、部長達念願の県予選団体戦へエントリー出来る様になった。
……そこまでは良かったんだ。
念願叶った部長達が咲・和・優希を鍛えるため色々手を打つ中、俺はネット麻雀と雑用に明け暮れる毎日。
俺が強ければその輪に入れたかもしれないが、初心者と実力者じゃ手の貸しようもない。それでも居場所が無くならないよう部長が気遣ってくれたんだと思って必死にこなして来た。
けどさ、俺だって麻雀がやりたくて、楽しみたくて、強くなりたくて入部したんだぜ? そんな風に雑用しながら考えることが日に日に増えていく。でも、邪魔はしたくなくてさ。
だから休日、気分転換しようと電車に乗って適当な駅で降りたんだ……。
京太郎 side out
?? side
普段、こんな人混みの多い所なんて滅多に来ない。ただ今日は気分が良かったからお気に入りの喫茶店で過ごそうと思って珍しく外出した、それがそもそもの間違い。
横断歩道で信号待ちしてたら、何かが後ろからぶつかって。
気がついたら車道で、迫って来る車がゆっくりに見えて。
ああ、死ぬんだって冷静な自分がいて、私は諦めて目を閉じた。
「手を伸ばせ!」
え? 突然聞こえた声に私は不思議に思ったけど、まだ死にたくなかったのか腕は勝手に声の方へと伸びて……。
?? side out
京太郎 side
信号待ちしていた俺は斜め前にいる同じ年位の女の子が気になっていた。
艶やかな黒髪、好みな横顔と結構なおもち、そして儚げな雰囲気と今まで出会ったことの無いタイプの女の子……。
いや、ストーカーじゃないからね!? ほんと横断歩道で止まったらいたってだけだから! って、誰に言い訳してるんだか、俺は。
まあ、いいか。とにかく、ちょっと部活のことを忘れたくて初めて来た街。そこでたまたま目に入ったその子が妙に気にかかってさ。で、子供が狭い所でぐるぐる母親の周りを走ってる、その前に彼女はいた。
あれって危なくねぇか? 子供が転んでぶつかったりしたら……。考え過ぎかもしれないけど俺が彼女に話しかけようとした瞬間の出来事だった。くそ! マジか! こんな予感的中とかふざけんな! 俺は咄嗟に動きながら大きな声で叫んだ!
「手を伸ばせ!」
俺の声に伸びた手をしっかり掴むと思いっきり引き寄せた。その直後、さっきまで彼女がいた場所を車が通り過ぎる。
「間一髪だったな……」
安心した俺はそう呟いた、冷や汗を流しながら……。
京太郎 side out
?? side
私は混乱の極地にいたっす、何故なら助けてくれた男の子の胸に抱き止められてたから。まあ、他にも理由はあるっすけど。
「あの、もう少し離れてくれないっすか」
「うお! ごめんなさい、ごめんなさい!
彼は慌てて飛び退く様に離れながら言う、けど私は手だけ離さずに。
「いやいや、そんな事はしないっす。命の恩人っすから」
私の話に安堵したのか、ふぅなんて聞こえて来た。落ち着きを取り戻した私は期待を込めて質問する。
「もしかして私が見えるっすか?」
「え? 見えるけど?」
彼は当たり前だとばかりにそう言ったけど……。
「ほら、大丈夫?」
「うん、なんかぶつかった〜」
「何もないわよ?」
聞こえてきた親子の会話に彼は
「多分この子が私にぶつかったんじゃないっすか?」
彼が母親に何か言いそうだったからそう話しかけて。
「その通り、何知らんぷりしてるんだか」
「待つっす。多分、今私達は
「え?」
そう言うと彼の視線は私と親子の間を行ったり来たり、信号はまだ変わらないっすね? 私は手を繋いだまま彼を軽く引いて親子の前に立つと顔の前で手を振ってみせた、勿論反応がある訳無いっす。
「試してみるっす」
「あ、ああ」
同じ様に彼が手を振っても同じ。
「本当に見えてないなんてあり得るのか? いや、でも実際反応無かったし……」
「とにかく説明するにしても場所が悪いっす。
良い所があるので着いてきて欲しいんすけど……、いいっすか?」
頷く彼を見て私は最高の笑顔を浮かべた。私を見つけてくれた人がいる、その実感が湧いて来たっすから!
?? side out
京太郎 side
あれから少し歩いて小道を通った先にちょっとした公園が見えた。
「ここは今時間殆ど人がいないっす。
特にあの木陰にあるベンチは気づく人も少ないので話すのに最適っすよ」
そう言う彼女は見惚れる程の笑顔で繋いだ手を引いてる、当然俺も笑顔を返す。
いや、ホント嬉しいよ? でもさ、初対面で手を繋いだまま歩くとかいいのか、これ。あれか? まだ信じられないけど見えないからいいとか? いやいや、そう言う問題じゃないよな。
それに此処。マジで人気が無いんだけど、俺大丈夫? 怖い人出て来ないよね? 今更気付いても遅いんだけどさ。まあ、悪い子には見えないから着いて来たし、覚悟を決めよう!
そんな事を考えているうちにベンチに着いた。ん? ちょっと汚れてるな。俺は手を離すとベンチにハンカチを敷いて彼女に即す。
「じゃあ、そこに座ってくれるか?」
「いやいや、それは流石に悪いっす」
「いいからいいから。ちょっと見栄はらせてよ、な?」
俺はジーンズだけど彼女はスカートだ、この程度は俺でも気をまわせる。ということで俺はさっさと座って待つことにした、すると彼女は少し考えてから一言。
「……お言葉に甘えるっす」
そう言ってやっと座ってくれた、そこでふと名乗って無いことに気付く。
「あ〜、今更だけど俺は須賀京太郎。清澄高校の1年だ」
「私は
ところで清澄から此処は随分離れてないっすか?
誰かに会う予定だったら申し訳無いっす……」
あ〜、ちょっと気落ちさせちまった、東横さんが気にすることでもないしフォローしとくか。
「いや、ただの気分転換で適当に降りた駅が此処ってだけだから気にしなくていいぜ。
目的もなかったし、話し相手になってくれて助かってる」
そう言うと東横さんは、ぱあっと笑顔を浮かべる。ホント笑顔が似合う子だなぁ、俺はそう思っていた。
京太郎 side out
桃子 side
須賀京太郎さん、私を初めて見つけてくれた人。それは私にとって特別っす。嬉しくて今すぐ泣きたい位だけどなんとか堪えたっす、だって彼を困らせたくなかったから。
私は存在感が無いを通り越して認識されないって言う特異体質。意図して目立つ様なことでもしない限り誰にも見えないし、聞こえない。
普通の人が言う孤独なんて私から見れば生温い、しかも特異体質は酷くなる一方で。だからコミニュケーションを取ろうとすることをすっかり諦めていた。一生誰にも気付いて貰えず死ぬんだなって思ってたぐらいっすから。
って、まだお礼も言ってなかったっす!
「遅くなったけど助けてくれてありがとうっす!」
「いや、実はさ。少し前から危ないと思ってたんだけど、いきなり声かけるのも気が引けて……。
やっと決心して声をかけようとしたんだけど遅くてさ。
早く声かけてれば危ない目に遭わせなくて済んだと今更後悔してるんだ」
そう言うと須賀さんは顔を伏せた、そんなこと言わなければわかりもしないのに誠実で優しい人なんすね。
「須賀さんは優しいっすね、私はそんなの気にしないっす。
命の恩人なんすから胸を張っていいんすよ?」
「そう、なのかな」
「助けて貰った私が言うんすから安心するっす!
須賀さんが私を見つけてくれなかったら間違いなく死んでたんすよ?」
「そっか。じゃあ、その感謝、素直に受け取るよ。助けられて本当に良かった」
今、私と須賀さんは手を繋いでないのに普通の会話が出来る。それが嬉しくて須賀さんの笑顔に私も笑顔で応えた。
桃子 side out
京太郎 side
なんか新鮮だな。
いつもの雑用でも感謝とか気遣いの言葉は貰うけど優希なんかは当たり前みたいに言うんだよな。しまいには“犬”とか言ってくるし……、だから正直言うと心が篭ってない気がしてた。
でも、東横さんの言葉と笑顔には心が篭ってるって感じる。助けられたのは偶然だけど、俺は今すっげー嬉しかった。
……そう言えば見えるとか見えないって話があったな、俺で良ければ相談にのりたいって心から思ったんだ。
「そう言えばさっき見えてないって証明されたんだけどさ。
嫌じゃなかったら相談に乗りたいんだ、力になれるかはわからないけど」
「ありがとうっす!
私は存在感が無いどころじゃなくてマイナス、今まで誰も私を見つけられなかったっす。
目立つ動きとかすれば見える様になるんすけど須賀さんみたいに見える人には会った事なくて。
もし今、誰かが私達を見たら須賀さんは1人で話してるヤバい人っすよ、はははっ……」
東横さんの言う事は本当なんだと俺は感じた。
だってさ、話を進める程に辛そうで声から元気が無くなっていく。最後には乾いた笑いまで……、だから俺の中ではもう放って置けなくなってた。
「でも、一つは見えるかもしれない方法が見つかったんだろ?」
「相手に触れてる間だけ同じマイナスになる、それは他人から見えなくなるのがわかっただけ。
元々見える須賀さん以外ではまだ分からないけど試す価値はあるっすね」
希望が見えたからか少し元気になったか? やっぱりこれは別の意味で咲以上に放って置けないんじゃないか? 誰にも認識されないなんて孤独どころの話じゃないだろ、なら……。
「今日会っていきなりかも知れないけどさ……、よかったら俺と友達になってくれないか?」
「ホントっすか! こちらこそ是非お願いするっす!」
うおっ! すっげー元気になった。
「じゃあ今から俺達は友達だ、俺のことは京太郎でもなんでも好きに呼んでくれ」
「ん〜じゃあ、京さんって呼んでもいいっすか? 私の事はモモって呼んでくれると嬉しいっす」
京さんか、初めて呼ばれたな。
「じゃあ、遠慮なくそう呼ばせてもらうよ、モモ。俺の呼び方は任せたから構わないぜ。
京さんなんて呼ばれたのは初めてだから、ちょっと照れくさいけどな。
とりあえず連絡先交換しようか」
「勿論っす、京さん!」
俺達はそう言うと早速連絡先を交換した、にしても随分衝撃的な出会いから友達か。世の中どうなるかわからないもんだな、なんて嬉しそうなモモを見ながら思っていた。
京太郎 side out
モモ side
そう言えば気分転換なのに適当な駅で降りたって言ってたっすね、しかも目的がないって……。
出逢ってから貰ってばっかりっす。話し相手が地元にいない様な人に感じないから、身近な人には話せない? 話を振って断られたら引き下がるけど、聞くだけ聞いてみるっす!
「京さんは気分転換に来たんすよね?」
「ん、ちょっとな。身近な人には言えないモヤモヤがあってさ。
偶然降りた街でモモに出会ったのも今話してるのもちょっと出来過ぎだよな、流石に」
運命って奴っすか!? ちょっとドキドキするけど今はそのモヤモヤを解消してあげたいっすね。
「良かったら話して欲しいっす、無理にとはいわないっすけど」
京さんは空を見上げて少しの間、沈黙。そして吐き出す様に語り始めた。
「これは独り言だ、俺はちょっとした切欠から麻雀が好きになって今は麻雀部にいる初心者。
女子5人に男子は俺1人で当然女子全員俺より強くてさ、去年の全中チャンプまでいるんだぜ?
女子は3年目にしてやっと団体戦に出られる様になったから必死にやってる。
ちなみに女子3人は俺と同じ一年だ。
俺が強ければ協力しながら麻雀できたんだろうけどそれが出来ない。
そんな俺を部長は気づかってくれてさ、居場所が無くならない様にサポート役をくれたんだ。
だから毎日色々な雑務とネット麻雀をやってる。
……日に日に思うんだ、好きな麻雀を楽しく打ちたい、強くなりたい。
そのために入部したんだろってさ。
でも邪魔はしたくないんだ、皆の気持ちもわかるから。
どうしたらいいんだろうな、もう俺にはわかんねぇよ」
それを聞いた私は京さんが優しいから他の5人が甘えてるとしか思えなかったっす、1年が4人いるなら雑務は分担すればいいだけっすから。
うちも人のこと言える学校じゃないけど清澄も無名校、ノーマークで実力者が集まったと仮定して県大会。 まかり間違って全国大会まで放置したら、半年以上京さんはこのままっす。
それは絶対駄目っすね、京さんの気持ちを
「私も独り言っす、鶴賀学園は今年から共学になったんすけど、男子は定員割れしてるっす。
今年入学した男子は3年間公立高校と同じだけの授業料で入学金免除。
けど女子が多くて馴染めず転校する人が結構出て転入者は更に優遇される事になってるっす。
男子寮があるんすけど実績作りに食費も含めて無料、でも転入者はまだいないらしいっす。
もう一つ。実は私、麻雀部から勧誘を受けてるけど見つけられたらって言ってあるっす。
入部はしないけど、ちょっと調べてみるっすよ。
初心者って事は今、基礎固めしておかないと伸びるものも伸びない。
変な癖がつくかもしれないから1番大事な時期っす、聞いた限りでの判断っすけど……。
正直言って今の環境は最悪っす。
とりあえず、うちがちゃんとした環境だったら連絡するっすよ」
京さんは空を見たまま。
「今の環境は最悪なのか……、自分じゃわからないもんだな、真剣に考えてみるよ」
その言葉が空に溶けた……。
モモ side out
あの!京太郎が(を)モモを(が)ナンパしましたよ!どっちさw
2022/03/08 改定