咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道 作:しおんの書棚
いよいよ始まります、闘いが(色々な意味で)。
追伸:私にしては早い更新、温かい感想や高評価いただけるとモチベーションになります。
筆者に愛の手を! すっかり飢えているので更新が止まりかねません(; ;
一本場 集う想いの形
和 side
須賀君が転校してから約二か月、その間色々とありました。一時期は酷い状況で特に宮永さんが……。
ですが、それぞれの想いや大会へ臨む理由を話し合い、須賀君からの手紙に記された応援の言葉の後押しもあって清澄高校麻雀部は県大会に臨み全国を目指すために団結。
私は優勝することで長野に残るため、宮永さんはお姉さんとの和解のために頂点を目指して。
個人的に気になったことと言えばネット麻雀界に新たな風が吹いたことでしょうか。
放銃率0%、運営のNPCではないかとまで言われる存在、名前とそのスコアからミス・パーフェクトと呼ばれるフランさんの出現。
恥ずかしながら同じ様に噂される“のどっち”こと私も幾度か対局する機会があったのですが、その堅さは鉄壁で、ツモ以外ではフランさんから点をまったく奪えませんでした。
そして感じる既視感、思い出すのは須賀君とのあの対局。何故ならフランさんは余程の状況でない限り鳴かず、リーチもしない。それは須賀君が言っていた事と同じだからです。
ただ本人だという確証が持てない理由もあります、あまりにも腕が違い過ぎるのです。ですが、それも技術を磨いた結果だとしたら……。
須賀君は大会に出ると全員に手紙で宣言しています、仮に地区が同じなら県大会で、別ならば全国大会で会える筈です。
私は大会を勝ち進めば何処に居ようと会えるという想いもあり、より一層意気込みを強くして今日という日を迎えました。
「宮永さん、絶対に勝ちましょう」
「そうだね、原村さん。私は京ちゃんに会って謝りたい、お姉ちゃんと麻雀を通して話したい」
「私も須賀君に謝りたいですし、負けられない理由がありますから」
私達を優希が手を振って呼んでいますね、部長と染谷先輩もそこに。
「行きましょう! 宮永さん!」
私はそういうと宮永さんの手を取って、そちらに向かいました。インターハイ長野県大会会場へと……。
和 side out
ゆみ side
県大会会場は鶴賀から遠かったが、私達の戦意やコンディションは最高だった。
あの日、蒲原が胸の内を明かしてから始まった須賀君の強化プラン。それから私達は恐ろしい程に濃密な日々を過ごしてきた。
徹底した観察や対策による論理的麻雀談義と各々の経験に基づく感覚的麻雀の共有。
そしてゴールデンウィークを利用した合宿での実践と反省会をひたすらに繰り返すというスパルタ練習、いやアレはそんな生優しい物じゃなかったな。
まさか須賀君が元ハンドボール部のエースであり、事にあたっては妥協を許さない体育会系だとは思いもしなかった。
「だが、地力が上がったのは事実だ、“色々な意味”でな」
なんとも情け無い話だが急激に腕が上がった要因は須賀君による妥協なき強化プランの賜物、今や鶴賀の麻雀部と言えば須賀君無しには語れないほどだ。
それだけ彼はストイックに麻雀と向き合い、愛し闘い続けた。加えて、その姿を私達に見せることで“強力な自主性の発揮と意欲向上“を齎すことに成功する。
そして生まれ変わったのだ、全員が。ライバルとして彼に負けるものかと、仲間として彼を一人にするものかと。
「まあ、妹尾は少し違うがな」
妹尾の役満は能力ではなく“無知からくる無欲が運を引き寄せる”と私達は結論付けた。
そして運が一定量ある時に役満へ到達するというあまりにも非科学的な現象、だが状況証拠からそうとしか言えないのだ。
だから妹尾にはチョンボしないだけの知識しか“態と”与えていない。
そして気負わない様に上手く誘導した結果、未だこの現象が起き続けている以上、そう的外れではないという証拠だろう。
「鶴賀に能力持ちはいないが、現象持ちなら“三人”いる……か」
能力の尋常ならざる強力さを聞いて折れかかった私達に須賀君がくれた言葉、それは今も心に残り力になっている。
だから私達は恐れず、受け止め、ただ最善を尽くせばいい。そうすれば自ずと結果は付いてくるとも言っていたな。
そのための事前調査、各校の能力者洗い出しや対策検討を須賀君はいつの間にか終え揃えてくれた。
「自分のついでなんて理由、女子校分は通用しないとわかっていながら……」
そう呟いた時、フッとよく知る気配を感じる。
「モモか、どうした?」
「それが京さんっすよ、加治木先輩。優しいから傷つけられて、それでも意思の強さで諦めず鶴賀に来てくれた。
そこから“ここまで”這い上がって消されかけた本来の強さを取り戻したっす、私達を鍛えながらも」
どこから聞いていたのやら……、だが事実だな。
「ああ、そうだな、モモ」
「そうっすよ! 京さんは私の命の恩人で今や鶴賀学園麻雀部のブレーン。
そしてネット麻雀界にまで名を刻む存在になったんすから」
今、聞き捨てならない言葉が……。
「何? それはどういう……」
「みんな、待ってるっす。行くっすよ、加治木先輩!」
ネット麻雀界に名を刻む? 私はその言葉に疑問を感じながらモモに引っ張られて会場入りする。
かけがえのない最高の仲間達でありライバルでもある存在と少しでも長く過ごすためには、県大会で足を止める訳にいかないのだから……。
ゆみ side out
透華 side
京太郎のお陰で衣は救われ、今は以前より確実に強くなりましたわ。それは人としても雀士としても。
あの日を最後に会えていない友人、衣はここのところソワソワと落ち着かなくて困ったものですが。
「む、トウカ。衣に無礼なことを考えたか?」
無礼も何も本当のことですわ、まったくこういうところは変わらないんですのね。
それでも最初から会場入りするだけ良くなったのでしょう、いえ、いつ消えてもおかしくないですわね。
まあ、ハギヨシが付いていますから問題ありませんわ。なら話を逸らすには……。
「京太郎のことを考えていただけですわ、どこまで強くなったのか楽しみで」
「キョータローは衣でも感じ取りづらいからな。
だが約束したのだ、鶴賀が強くなっていればキョータローはそれ以上に強くなっている。
会うのもキョータローの麻雀を見るのも楽しみだ、勿論鶴賀と打つのもな」
やはり変わりましたわね、衣は。以前の衣なら楽しみだなんて言葉は出てこなかった筈ですわ。
ですが今は不敵に笑っています、心の底から楽しそうに。
「そろそろ行こうぜ、京太郎が来てるんだろ? もしかしたら会えるかもしれないぞ」
「む、それは本当か? ジュン」
「会えるかも、だ。入ってみなきゃわかんないだろう?」
まあ、純の言う通りですわね。なら行きましょうか、原村和よりわたくしが上だと証明して差し上げますわ!
そして、わたくしの予想通り原村和が“のどっち”かどうか。加えて“フラン”が京太郎なのかも暴いてみせましてよ!
「……そろそろ時間」
「うん、開会式が始まるから行こう、衣、透華」
「真打ちは最後に登場するものですわ! ですが、遅れるのも厳禁ですわね。行きますわよ、衣」
「そういうものか。では行くとしよう、有象無象を叩き潰して京太郎との約束を守りに」
……物騒な物言いは直りませんでしたわね。わたくしはそう思いながら開会式に臨んだのです、頼もしく大切な家族と共に。
透華 side out
京太郎 side
大会までの期間、俺にできることはやり切ったし、吸収できる物を貪欲に吸収するための強化プランを練って全員で共有した。
実は転入する時、学業は勿論だが麻雀に打ち込める環境があるからと動機を告げていたのが功を奏し合宿許可が出たんだが、みんなには秘密にしてある。
所謂利害の一致というやつで、俺は麻雀に取り組める環境を、鶴賀学園は欠員の出ている男子生徒の補充と実績作り。
だからこそなんの実績も無い麻雀部が合宿できたという訳だ。
とはいえ予算なんか無いから俺が勝ち取った方法は、ガラガラに空いている男子寮を活用するという物。
目的は食堂でコミュニケーションを取ったり、一緒に食事することでチームワークを強固にすること。
そして一つ屋根の下で暮らせば使える時間全てを麻雀だけに注げるから、自分でもやり過ぎだと思うくらいの麻雀漬け生活が送れる。
昼間は部室で卓を囲み、夜はネット麻雀。ただし、しっかりと睡眠を取ってコンディションは落とさない俺のやり方を守ってもらった。
時に真剣に、時に楽しく過ごしたからか弱音を吐いた部員は一人もいなかったし、その結果、大幅に地力が向上して今に至る訳だ。
そんなことを思い返しているうちに開会式は終わり、それぞれに与えられた部屋へ移動……しようとしたんだけど小さな影が俺を呼びながら飛びついてきた。
「会いたかったぞ! キョータロー!」
「久しぶりですね、衣さん。お元気でしたか?」
「衣は元気だ! みんなもな!」
うわー、すっげー注目されてる。それもそうか、最多得点王と無名の男が抱き合ってるようにしか見えないよな。
その証拠に俺の左肩がめちゃくちゃ痛い、いやマジで!
「京さん、公衆の面前っすよ……。それと説明を求むっす」
「ん? 汝は鶴賀学園麻雀部の者か? 衣は衣だ、キョータローとは友達だぞ?」
衣さんの言葉を聞いて肩の痛みが消えた、モモ、ちょっと怖いぞ。
「君が龍門淵の天江衣さんか。私は鶴賀学園麻雀部、三年の加治木ゆみ。
ところで決勝での対局が終わるまで必要以上の他校との接触は禁じられている、旧交を温めたいのはわかるが遠慮して貰いたい」
「む、そうなのか、それは済まないことをした」
衣さんがそう言って俺を離すと、息を切らせて透華さん達が現れた。
「衣! いきなり走って何処に……って京太郎を見つけたんですわね。ところでこの人集り、どうやら迷惑をかけた様で。
わたくしは龍門淵透華、貴女は鶴賀学園の?」
「ああ、加治木ゆみだ。君も須賀君の友人の様だが規定もある、すまないが……」
「わかっておりますわ。衣、控え室に行きますわよ、今は駄目ですわ」
透華さんの言葉もあって衣さんは素直に従ってくれた。
「うむ、ではキョータロー、決勝の後でな!」
「ええ、決勝の後で会いましょう、衣さん」
そう言うと衣さん達は立ち去ろうとしたんだが……。
「犬! あっ違うじょ! 京太郎!」
聞き慣れた呼び名と声に俺を含め全員が足を止めた、視線の先に声の主達を捉えて……。
京太郎 side out
咲 side
開会式場から出た私達は人集りに足を止めた。
「誰か有名人でも来てるのか? 見に行ってみるじょ!」
そう言って優希ちゃんが歩き出した時、聞こえてきた会話。
「うむ、“キョータロー”、決勝の後でな」
「ええ、決勝の後で会いましょう、衣さん」
京太郎? それに今の声は間違いなく京ちゃん……だよね?
「咲ちゃん!」
その声に釣られて優希ちゃんと人集りをかき分けた先には京ちゃんがいて、私は思わず固まった。
なんて声をかければいいんだろう、そう迷ってるうちに声が響いて。
「犬! あっ違うじょ! 京太郎!」
その瞬間、周囲の視線が私達に集まった。
「失礼な人っすね、“どこの誰っすか?“ 私達の仲間を犬呼ばわりするのは!」
「ご、ごめんだじょ、その、思わず……」
急に現れた黒髪の女の子が大きな声で凄く怒ってて、周囲の視線にも軽蔑の気配がするし、ヒソヒソと非難の声が聞こえる。
「もう一人の子〜、私は鶴賀学園麻雀部の部長で三年の蒲原智美だー」
「あっ、私は……」
そこまで話したら声が割り込んで。
「宮永咲さんですわ、清澄高校一年の。インターミドルチャンピオン、原村和と同じ所属ですわね」
「なるほどなー、これだからキョウタは……」
「その通りだ、衣は清澄を許さない。衣の最初の友達、キョータローを苦しめた罪は万死に値する。
行くぞ、鶴賀の。この様な輩にキョータローを含め汝らが関わる必要はない。我は天江衣、道を開けよ!」
その一喝に人集りが割れて11人はその場を後にした、京ちゃんはなんとも言えない視線でこっちを見てたけど一言も発さずに……。
咲 side out
京太郎 side
だから言ったんだ、その癖が公衆の面前で出れば大変なことになるってさ。
あれから約二か月、結局誰も指摘して直させなかったんだな……。
「あの子が片岡優希だろー? 東場で豪運を発揮するっていう」
「当たれば津山の相手だが冷静にな? 特にモモ。全員合宿を思い出せ、どんな時も平常心だ」
鶴賀の仲間はこうやってお互いの色々な部分を改善してきた。モモがあんな大声を出すとは思って無かったけど、それを嬉しく思う俺がいる。
「大丈夫っす、確かに怒ったけど心理戦の意識もあったっすから」
「なるほどなー、まあ使える物は何でも使わないとな、勝率を上げるために。
まあ、キョウタの受け売りだけどな、ワハハ」
「俺のせいで嫌な想いをさせましたね、すみません」
「それこそまさかっす! 京さんは何も悪くない、そうっすよね?」
その問いかけに全員が微笑みながら頷いてくれた、なら……。
「じゃあ、さっきのことは忘れましょう!
俺達は勝つためにここへ来た、相手が誰であろうといつものように打って倒すのみです!」
「「「「「おー!」」」」」
鶴賀学園の控え室は一致団結して勝利への意欲に満ちる、出番を今か今かと待ちながら……。
京太郎 side out
鉢合わせた3校、ぶつかる想いと意志。
優希の悪癖が咄嗟に出て完全な対立関係となってしまいました、京太郎の予想通りですね。
勘違いして欲しくないのは私に嫌いなキャラクターはいないという事です。
優希の不用意な発言は場所を選ばないと認識していますし、一度付いた癖は咄嗟に出るもの。
何かに意識を割けば、言葉まで回らず出てしまう。それが口癖ですので起きるべくして起きたと私は思っています。
ですから清澄が嫌いとか貶め様などとは考えておらず、あり得る可能性を表現したまで。
清澄大好きな方には特に理解して欲しく思います。
さて、次回デュエルスタンバイ!w