咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道   作:しおんの書棚

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予選!


二本場 その裏で、そして

美穂子 side

 

 開会式を終えて控え室に向かおうとしたのですが……。

 

「なんか進めないし!」

 

 華菜の言う通り人集りで進めずにいると不意に声をかけられました。

 

「悪いわね、どうもウチの部員がチョット……ね。私も解決に行きたいんだけど進めないのよ」

「私は風越の福路美穂子と申しますが、貴女は?」

 

 どこかで会った様な……そう記憶を探りながら私は問いかけます。

 

「清澄の竹井久よ、一応部長をやってるわ。よろしくね? 福路さん」

「竹井久さん……ですか? どこかでお会いした様な……」

 

 その時、名字に記憶は無かったのですが“久”という名は私にとって特別で。

 そして思い出したんです、三年前のインターミドルで私を苦しめた上埜(うえの)さんを。間違いないという確信と一緒に。

 

「上埜さん……ですよね? 三年前のインターミドルで対局した」

「あら、よく覚えてたわね。色々あって今は竹井よ、福路さん。

 さて、なんとか通れそうね。私はそろそろ行くわ、迷惑かけて悪かったわね」

 

 そう言いながら上埜さん……、いえ竹井さんは人混みに消えました。

 

「キャプテン、そろそろ控え室に行けそうだし!」

「そうね、みんな行きましょうか」

「「「はい!」」」

 

 私の声に返事をしてくれたみんなと一緒に控え室へと向かいました、竹井さんの麻雀を思い出しながら……。

 

美穂子 side out

 

 

久 side

 

 控え室は御通夜ムード、参ったわね……。

 

「今回は優希の発言が問題じゃった、次からはきーつけるんじゃぞ?

 それと二人共、そろそろ切り替えていかんと負ける。それでいいんか?」

 

 まこが諌めて発破をかけてくれてる、あと一押しかしらね?

 

「まあ、鶴賀にいるってわかっただけ良しとしましょう、機会は私がなんとかするわ」

 

 そう言うとやっとのことで顔を上げた二人。

 須賀君は私が追い出した様なものだからできることはするって決めていた、だから覚悟はできてる。

 

「本当ですか? 部長」

 

 予め決めていたことだし、咲の問いかけに私は即答した。そうでなければ誰も付いてこないと十分わかっているから。

 いえ、須賀君が消えてからの日々で学んだが正解ね。

 

「二言はないわ、でもその前に私達にはすることがあるわよね?」

 

 二人は深く頷いた、意志の光を再び目に灯して。なら言うことは一つ。

 

「私達はそれぞれの目的のために勝つしかないわ、どこが相手でも……ね」

 

 こうして清澄高校麻雀部の団体戦は幕を開けた、勝つというただ一点で団結して……。

 

久 side out

 

 

京太郎 side

 

 鶴賀学園麻雀部は女子団体戦と男子個人戦に参加している、そして個人戦は団体戦の後だ。

 だから俺は控え室で女子団体戦をサポートしつつ、応援と他校の技術見得に挑んでいた。

 

「それにしても随分思い切ったっすね、京さん」

「ああ、髪のことか? 俺も気合い入れるのに昔を思い出して切ったんだ、似合わないか?」

 

 随分と伸びた髪、ハンドをやってる時は短くしてた。俺は今回の大会前日にバッサリ切って昔に戻したという訳だ。

 まあ、それだけが理由って訳でもないんだけどな? とりあえず置いとくが。

 

「良いんじゃないか? 何かを変えることでより一層気合いが入ることもあるだろう」

「私も良いと思うっす! 短髪も新鮮でいいっすね!」

「キョウタが鬼軍曹に見えるぞー、合宿の時それだったらなー」

 

 部長のネタでみんなして噴き出した、いい雰囲気だな。俺がネタじゃなきゃ尚良いんだけどさ。

 まあ、リラックスできてる証拠だ。そして今、闘っている津山先輩の調子がいいからこうやっていられる。

 

「さて、須賀コーチ。この対局、どう見る?」

「そうだな…って止めて下さいよ、加治木先輩」

 

そう言うとまた笑い声が、それが静まるのを待って私見を述べ始めた。

 

「とりあえず有難いことに何処も新人がいない。

 つまり能力持ち不在で事前調査済みの相手ばかりです、油断せず鶴賀の麻雀を打てば問題無いでしょう。

 それにしても部長のくじ運に助けられましたね、新人が能力持ちで無い限り何処が上がってこようとうちが有利なブロックなんですから」

 

 そう、うちには妹尾先輩とモモがいる。この二人の得点力は正直とんでもない。

 多少振ろうと役満で回収してしまう妹尾先輩、ステルスが発動すれば気づかれることなく振り込ませられるモモ。

 残る三人は堅守に徹するだけで十分勝利できる、それでいて加治木先輩には得点力もあって盤石だ。

 だからこそ津山先輩と部長には堅い麻雀が必要、そしてそこをクリアしたからこそ俺は問題無いと判断した。

 

「智美ちゃんは昔からくじ運いいよね?」

「そうだなー、実は時間無かったから教習所で車の免許取ってなー、そしたら車欲しくなるだろー?

 それで目についた懸賞に応募したら車が当たってなー、流石に私も驚いたぞ、ワハハ」

 

 は? そんな都合良く?

 

「とんでもないっすね……」

「運がいいじゃすみませんよ、部長……」

 

 ここまで極端な話だと驚きを通り越して呆れるんだな、初めて知った。

 声の聞こえなかった加治木先輩を見れば頭を抱えてる、まあ気持ちはわからなくもないな。

 

「蒲原、頼むからその運を大会で使ってくれ……」

 

 そう言った加治木先輩の声からは本気のニュアンスが……、さりげなくモモが気づかうのを見て俺はふと思い出した。

 俺が加わった直後の鶴賀って、こういう緩いところだったな……と。

 

京太郎 side out

 

 

ゆみ side

 

 須賀君のいう通り、私達が対局した麻雀部には結局能力持ちがいなかった。

 そして鶴賀の麻雀を徹底した私達は信じ難いことに初出場ながらも決勝の舞台に上がる権利を昨日得て再びこの控え室にいる。

 

「目標に掲げはしたが、まさか現実になるとはな……」

「初めに言った筈ですよ、能力持ちがいなければ不測の事態でも起きない限り勝てる、と」

 

 私の独り言に反応した須賀君は誇らしげに言ってくれた、その言葉に信じていたという想いを感じて胸が熱くなる。

 なら、乗せられてみるのも悪くない。そう思った私はこう返した。

 

「ふっ、という事は決勝で勝つのは難しいということになるな? 須賀コーチ」

「そんなこと本気で思ってないでしょう? 挑みもしないで諦めますか? 鶴賀学園麻雀部の大将が」

 

 参ったな、これは一本取られた。そう思っていると……。

 

「これを受け取って下さい」

 

 須賀君はそう言って津山に御守りを贈る。

 

「先鋒の津山先輩。堅い麻雀で清澄の豪運、龍門淵の流れを操る能力、そして針の穴を通す読みの風越に打ち勝って下さい。

 清澄はツモってくるでしょうが龍門淵が黙っていません、ですが同時に風越が雪辱を晴らすため龍門淵を喰らおうとする筈です、それこそ周りを利用してでも。

 ですがその三すくみにこそ勝機があります、振らずチャンスをモノにして下さいね」

「うむ、全力を尽くすさ、須賀君。私達は全国に行く……、ここは通過点だから……」

 

 次いで妹尾。

 

「次鋒の妹尾先輩。相手に能力持ちはいません、安心していつも通り自分のペースで打って下さいね」

「ありがとう、須賀君。私もみんなと少しでも長く一緒に居たいから精一杯闘ってきます」

 

 この流れなら蒲原だな。

 

「中堅の部長。龍門淵と風越は実力者です、そして清澄は能力持ち。ですが癖と打ち筋はご存知の通り。

 惑わされる事なく堅守して、隙があれば逆に清澄を食って下さい」

「任せろ、キョウタ。私の成長を見せるぞー、けど調子に乗らない様にするからなー」

 

 モモの番か。

 

「副将のモモ。屈指の堅さを誇る三人が相手だ、デジタル打ちが二人、実力者が一人のな。

 だけど龍門淵は時にデジタルから外れる、清澄は絶対に外れない、風越はそこを見極めた打ち手。

 ステルスは強力な武器、だけど例外がいることも想定しておくんだぞ」

「よーくわかってるっすよ、京さんで。チャンスは逃さないっすけど、十分注意して稼ぐっす!」

 

 最後は私だな。

 

「大将の加治木先輩。大会屈指の強力な能力持ち二人と風越二年連続大将の得点力、打ち破るのは困難を極めます。

 能力は判明していてご存知の通り、そして能力に関係無くあがってくるのが非常に危険。

 ですが秘密兵器を用意しました、対抗できる筈です」

 

 秘密兵器? そう言われても思いつくものは無いんだが……。しかし、須賀君は嘘をつかない。なら……。

 

「秘密兵器とやらはわからないが、私は臆すこと無く闘おう。須賀君の献身に報い、鶴賀が全国へ行くために。

 みんな、気合いは入ったな! 私達は勝つためにここに居る!

 最高の麻雀を見せてやろうじゃないか、鶴賀学園麻雀部が誇る麻雀を!」

 

 私の宣言にみんな雄叫びを上げた。ありがとう、須賀君。最高の激励に私達は応えよう、結果をもって!

 

ゆみ side out

 

 

京太郎 side

 

『さあ、ついに始まりました、長野県予選決戦!

 泣いても笑っても全国に行けるのはこの四校のうち一校のみ!』

 

 控え室のモニターで俺は一人、各校の紹介を見ていた。まったく面識がないのは風越だけっていうのは流石に出来過ぎな気もするが、実力から言えば順当か……。

 そんな事を考えているうちに五人は戻って来た。

 

「ああも注目されると流石に疲れるな、まあ貴重な経験だが」

「贅沢な話ですね、負けた高校に怒られますよ? 加治木先輩」

 

 軽口が出ている内は心に余裕がある証拠だ、俺にできるのはリラックスさせること。

 

「ふっ、そうだな。彼女達の想いも背負っている事を肝に銘じよう、さてルールの確認と行こうか。

 決戦は一人半荘二回ずつ、トータル十回で点数は引き継がれる。昨日までとは違って二倍以上の集中力が必要だ」

 

 確かに、だけどメリットも存在する。

 

「そういう見方も当然ありますがチャンスが二倍とも言えますね、仮にミスを犯してもフォローできる。

 とはいえ油断は禁物ですし、態々不利になる必要もありませんから上手く集中と休養を取って下さい」

「その辺は合宿で散々やったからなー、事前準備が大切だってよくわかったぞ、キョウタ〜」

 

 わかってる事に手を打たないのは愚策にも程があるからな、メニューにはそういうのも入れておいて正解だった。

 

「そういう事です、さてそろそろ出番ですね、津山先輩」

「うむ、まあいつもの様にいつもの如く、だったな……」

「ええ、無駄に力む必要はありませんよ。今まで通りに楽しんで来て下さい、それが一番です」

 

 そういうと津山先輩とハイタッチする。

 

「行ってくる……」

「鶴賀の麻雀を見せつけて下さい」

「ここから応援してるっす!」

「まあ、気楽になー」

「私も応援してます!」

「ああ、行ってこい」

 

 それぞれの特徴が出た応援に手を上げて津山先輩は会場へと向かった……。

 

京太郎 side out

 

 

?? side

 

 そろそろあちらも決勝でしょうか、御役に立てればいいのですが……。

 京太郎様、私は貴方を諦めませんよ。私を救ってくれて一人の人間、一人の女性として扱って頂いた貴方を。

 

「何をお考えでしたか?」

「勿論、京太郎様の事です。貴女も思うところがあるのでしょう?」

 

 私はそう問いかけました、あの場に居合わせた彼女に。

 

「●様の命の恩人であり、私達の不徳により起きた事を解決して下さった方。

 できれば●様に婿入りしていただき、こちらの人間になっていただきたいと思っております」

「それは本心では無いでしょう? 隠すことはありませんよ」

「……」

 

 少々意地悪でしたね、ですが彼女にもチャンスがあっていいと思うのです。

 

「どちらにせよ、まずは大会を制しなければいけません。

 皆の活躍に期待しています、勿論私も京太郎様に相応しい人となるため全力を尽くしましょう」

「皆に伝えておきましよう、それでは失礼します」

 

 全国でお会いしましょう、京太郎様。貴方様なら必ず勝ち上がって来ると信じております。

 私はその想いを長野へ届けとばかりに強く念じたのでした。

 

?? side out




さてさて、ついに始まります、決勝戦。
京太郎には秘密兵器があるようで?

加えて最後のは一体誰なんでしょうね?w

とにかく次回から決戦戦の模様をお送りします!
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