咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道   作:しおんの書棚

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が、頑張ったじぇ……。


三本場 後半 先鋒戦 凌ぐ睦月、試練の時間を

優希 side

 

 休憩時間、私は後半戦用のタコスと大切な物を取りにいこうと会場を出たら……。

 

「ほれ、これじゃろ」

 

 そう言って待っていた染谷先輩が手渡してくれたんだじぇ、半分のタコスと“京太郎の手紙”を。

 

「苦しいのう、じゃが簡単には負けられん。そうじゃろ?」

 

 頷いた後、私は何度も読んだ京太郎の手紙を読み返す。

 

 

“片岡優希様へ

 

 最初の頃は楽しかったな、優希。

 咲はいなかったけど五人で代わる代わる打った麻雀、今も思い出すぜ?

 東場では好き放題されて、でも南場で取り返して。あの時期が俺にとって最高の時間だった。

 

 咲が入部して、俺は実力不足からサポート係として居場所を残して貰えた。

 だからサポート頑張ったんだけど、本当は俺も打ちたかったんだ。

 強くなるために、そしてまた楽しくみんなで過ごすためにもな?

 

 だから四日間、俺は俺にできる方法で意欲を見せたつもりなんだが……。

 まあ、過ぎた事はしょうがない。これを読んでるなら俺が転校したってことだからな。

 

 転校先は環境が整ってて、仲間に迎え入れてくれるそうだ。

 俺は強くなるぜ? そして大会に出る。

 

 優希、転校するから清澄を応援できないけど、お前はお前の麻雀を頑張れよ!

 俺も自分の麻雀で勝ち抜いてみせるからな、みんなが驚く位に!

 

 最後にひとつだけ、「親しき中にも礼儀あり」って言葉を覚えとけ? お前のためにな。

 

 元清澄高校麻雀部 サポート係 須賀京太郎より”

 

 

「私は馬鹿だじぇ……、ちゃんと京太郎は教えてくれてたのに」

「……なんのことかは聞かん、じゃが大切な事が書いてあったんじゃろ?

 なら後半戦で示すしかない、わかっとるな?」

 

 私はもう一度頷く。最初に読んだ時、決めたんだじぇ! 絶対全国へ行くって!

 追い出しちゃったのは私にも原因がある、ならそれだけの結果を示さなきゃいけないんだじょ!

 

「気合い入ったじぇ! 後半戦は……勝つ!」

 

 私は席に戻る、取り戻した意欲と強い想いを胸に……。

 

優希 side out

 

 

純 side

 

 なんだ? チビの様子が……。ちょっとカマかけてみるか。

 

「タコスより焼き鳥が似合ってるぜ?」※麻雀用語で焼き鳥は一度もあがらず終わった事を指す。

「だからどうしたんだじぇ? 好きに呼べばいいじょ」

 

 何があったか知らないが立ち直ってやがる。いやそんなもんじゃないな、こいつは。

 だが、その強気な態度も始まるまでだ。あんないい奴を追い出したお前達、誰が許しても俺は許さないからな!

 

「お二人共? 仲良く、ね?」

 

 風越か……、勝負の最中にお優しいことで。そんなだからウチに負けたんだ、まあ衣相手じゃ当たり前だけどな。

 それにしてもチビは黙々とタコスを食ってやがる、やる気十分ってことか。

 

『只今より後半戦、スタートです!』

 

 またチビからスタート、順に鶴賀、俺、風越。しかもチビから良さげな気配がするな、どうする?

 四万点差だ、ここは普段なら見送るんだが……。

 

「リーチだじょ!」

 

 こいつはっ! 流石にほっとけねえぞ、行くかっ!

 

「チー!」

 

 やばい気配に俺は喰った、流れを変えるために……。

 

純 side out

 

 

ゆみ side

 

「本当に流れを変えられるんだな……」

 

 私は清澄の一発を潰した鳴きに呟く。

 

「ええ、それが純さんの麻雀です、流れをコントロールして優位に立つという。

 アレをやられると今見た様になって極論あがれなくなるんです」

「防ぐ方法はあるのか……?」

 

 いや、そんな都合よくある訳が……。

 

「ありますよ。純さんを上回る能力持ちか、奪い切れない程の豪運があれば」

「……なるほど、簡単なことではないが能力で打ち破れないなら運を味方につける……か」

 

 そこに丁度、今のシーンについて解説が流れてきた。

 

『それにしても龍門淵高校の井上選手、時折不可解な鳴きが見られますが……どう思われますか?』

『そうだな……、断言はできないが手の進み具合や良し悪しを察してる雰囲気はある』

 

 流石はプロと言うべきか、見ただけでそこまで把握できるとは……。

 

『私にはとてもそんなことができる様には思えませんが、藤田プロは如何ですか?』

『……私にもムリだ。まあ、なんとなくならともかくな。それに私にはあの鳴き自体、訳がわからん。

 そうだな……、強いて言うなら流れが存在していて操っている(・・・・・・・・・・・・・・)様に見えんこともない』

 

 その後、須賀君と藤田プロの言葉を裏付ける様に清澄はあがれず。

 

『ロン、發のみ。30符1翻は1,300点です……』

 

 先程のチーで回ってきた發によって津山があがり、結果清澄の親は流れることに。

 まったくもって厄介な代物だ、能力というヤツは。私はそう感じながらも津山の健闘を見守り続けた。

 

ゆみ side out

 

 

優希 side

 

 まだだじょ! 私は絶対諦めない! 親じゃなくても東場には変わりないんだじぇ?

 なら、この私があがれない訳がない(・・・・・・・・・)! もっと勝利への意思を強く持つんだじょ!

 

 京太郎は数日で私達と闘えるまで自分を鍛えた! なら私はこの対局中にでも強くなってみせるんだじぇ!

 牌は応えてくれてる、ならノッポに負けないだけの意志でねじ伏せてみせる!

 

 最高打点じゃなくてもいい、とにかくあがるんだじょ! 絶対に負けられないんだから!!

 そんな想いに応えてか手牌はどんどん伸びてく。でも、もっと、もっとだじぇ! ノッポに邪魔されても稼げるだけの手を私に!!

 そして高得点が期待できて裏が乗れば数え役満を聴牌、私は勝負に出る!

 

「リーチ!」

 

 あれ? ノッポが鳴かない? ……違う、鳴けない(・・・・)んだじぇ!

 やっぱり東場は私の物だじょ、誰にも譲るもんか!! 

 

「ツモ! リーチ、一発、ツモ、清一色、一気通貫!」

 

 裏に期待するけど乗らなかったじぇ、でもやっとあがれた!

 

「裏は無し、三倍満は6,000/12,000だじぇ!」

 

 見たか、ノッポ! 私はもっと強くなる、京太郎に誇れる様に!

 この調子で一気に稼いでみせるじょ、まだ元点にも届いてないんだから!

 

優希 side out

 

 

睦月 side

 

 ……ツモだけは防げない、しかも親かぶりでほぼ元点。けど、私にできるのはただ一つ。

 苦しくても耐え忍んで、チャンスをモノにするだけ……。

 

 そして、わかったことが一つ。龍門淵が能力持ちでも鳴けない時はあるという事。

 能力も万能じゃない証拠……、ただそうなれば清澄が今の様に猛威を振るう。それでも私は鶴賀の麻雀を冷静に貫くと改めて誓った。

 

「リーチ!」「ポン!」

 

 清澄のリーチ、曲げた牌を龍門淵が鳴いて一発は消えた、これで清澄は……。

 な!? どうして手牌を? まさか!

 

「ツモ! 混一色、一盃口、發、ドラ1! 倍満は4,000/8,000だじぇ!」

 

 どういうことだ……、もしかして龍門淵の能力を上回った、とか? この短時間で?

 そんなことがあり得るのだろうか……。いや、現実を冷静に受け止めるのが基本、情報を整理して対処する鶴賀の麻雀を打つのみだ。

 龍門淵はもう清澄を止められないかも知れない……。なら焦りからミスが出る筈、狙い目は鳴いた龍門淵の捨て牌。

 

 そして私の予想は当たることになる……。

 

睦月 side out

 

 

純 side

 

 どうなってやがる!? 鳴いて流れを変えた筈が変えきれてない(・・・・・・・)なんて初めてだぞ!

 この対局中にチビの能力が俺を超えたっていうのか!? くそっ、そうとしか考えられねえ!

 

 かと言って放置すれば打点はもっと高くなる、鳴かない訳にもいかねぇ……。って、またか!

 

「リーチ!」

 

 いや! 今度は鶴賀から鳴ける! 好きにはやらせねぇぞ!

 

「チー!」

 

 よし! 今のはいい感じだった、後はコイツを切って……。

 

「……ロン」

 

 なんだと!? 俺の捨て牌を狙ったっていうのか? 流れが希薄でコイツを見逃した!?

 

「七対子、ドラ2。6,400点です……」

 

 くそっ! 俺はしくじったのか!? 清澄に構い過ぎて目を離し過ぎだ! 何やってるんだか!

 こうして後半戦は南入した、チビと鶴賀にいい様にやられて……。

 

純 side out

 

 

透華 side

 

「京太郎の色が見えますわね、あの打ち筋。それにしても純は何をしてるんですの!?」

「落ち着け、トウカ。清澄の気配が後半戦から強くなっていた、ジュンを超えたのだ」

 

 私は思わず衣に振り向きましたわ、そんなことが……。

 

「休憩時間に何かあったとしか考えられん、それが原因で意思力が純を上回った。

 能力は意思に大きく左右される、清澄の先鋒は意思力を引き上げるのに成功したのだ。

 それ自体は認めてやろう。だが、どちらにせよ衣が全てを覆す! 皆は安心して自分の麻雀を打つがいい」

 

 京太郎との出会いは衣に良い刺激を与え続けてますわね、敵を認めるなんて考えられなかったことですわ。

 そして、それ以上に麻雀への情熱が芽生えた事実。それをわたくしは、いえ、わたくし達は嬉しく思ったのです。

 

「頼もしいですわね、そうさせてもらいますわ。とはいえ、衣まで保つかは保証できなくてよ?」

「それならばその程度の相手だっただけのこと、全国で衣の力を見せ付けるまで。

 だが、鶴賀との麻雀は打ちたいものだ。またジュンを喰った先鋒だけ見ても期待以上だからな。

 今もジュンを狙い打った、本当にキョータローは衣を楽しませてくれる!」

 

 そう言った衣は不敵に笑いましたわ、わたくしの言った様にはならないとでも言う様に……。

 

透華 side out

 

 

美穂子 side

 

 もう観察は十分ですね、ここからは私達風越の番ですよ? 皆さん。

 片岡さんの東場は終わり、井上さんは動揺しています。津山さんは相変わらず冷静ですね。

 さあ、始めますよ? 私の麻雀を。まずは井上さんに沈んで貰います、雪辱を晴らすために。

 

 既に井上さんがリーチしているのですが、片岡さんの理牌癖から見て聴牌したようです。

 前半戦では無かった南場でのあがりができそうなんですね? ですがリーチするのを躊躇っている……。

 

 私は閉じていた目を開きました、オッドアイの右目を。こうすることで普段以上に“視える”のが私の能力。

 捨てたいのは……ドラの七筒、リーチに対して悩んでるのね? 大丈夫、それは通るのよ?

 私の視界に映る七筒は完全に安牌、だから道を作ってあげる。

 

「ロン、断么、ドラ2に赤ドラ。 満貫は8,000点です……」

 

 え? 私が津山さんに振ったの? 右目を使った視界で見落とすのは初めて……、どういうことかしら?

 まさか井上さんが振って驚いたのもコレが原因……、なら他の人と一緒に削るのは諦めるしかありませんか。

 私自身が振った以上、“何かがある”のは確かね。ここは津山さんの弱点、ツモで勝負するしかないようです。

 あとは基本的に井上さんを削りながら親まであがり続けますね?

 

「ポン!」「ロンです、30符2翻は2,000」

 

 ごめんなさいね? 片岡さん。

 そして甘いですよ、井上さん。私は能力に頼りきりではありません、鍛え続けた技量こそが最大の武器。

 これからは狙いますね、井上さんを。龍門淵を倒すために。

 

「ツモ、赤1。80符2翻は1,300/2,600です」

 

 そして迎えた南四局は私が親。みんなのためにも連荘して、少しでも多く稼ぎますね?

 

「ロンです、中のみ。30符1翻は1,500」

 

 一本場。

 

「ロン、断么。30符2翻2,900の一本場は3,200です」

 

 二本場。

 

「ロン、白のみ。30符1翻1,500の二本場は2,100です」

 

 三本場。

 

「ロンです、断么、赤1。7,700の三本場は8,600」

 

 そして四本場。

 

「ノーテン」×3

「聴牌」

 

 流石にそういつまでも続く訳がありませんね、ですがこれで一応トップ。

 井上さんは十分に削りましたから、あとをみんなに任せましょう。

 

 それにしても津山さんが何をしたのか結局わからなかったわ。

 

『先鋒戦終了! リードしたのは名門、風越女子! しかし三校が僅差で並ぶ展開となりました!

 龍門淵高校の巻き返しはなるのか! 次鋒戦に注目が集まります!』

 

 アナウンスが流れる中、私はそれだけが気になっていた……。

 

 

【先鋒戦最終結果】

龍門淵高校 二年 井上 純    69,900点(-30,100点)

風 越 女 子 三年 福路 美穂子 113,300点(+13,300点)

鶴 賀 学 園 二年 津山 睦月  109,000点(+ 9,000点)

清 澄 高 校 一年 片岡 優希  107,800点(+ 7,800点)

 

 

美穂子 side out




優希は原作でいうところの一皮剥けた状態一歩手前となり、現状の純では流れをコントロールし切れなくなった結果、プラス収支。
睦月は振らずに耐え忍び、隙を見てはあがったため、これまたプラス収支。
その余波で美穂子は原作より稼げませんでしたが、純を原作以上削ることに成功。
これで次鋒戦がよりスリリングになりましたね!

ちなみに強調したい部分とテンポ重視の部分を設けた結果、美穂子が割りを食いました。
美穂子ファンの方、勘弁してください(汗
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