咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道   作:しおんの書棚

16 / 31
先に明記しますが、私は決してどこの誰のアンチでもありません。
ただ京太郎を主人公としたこの物語では今までの経緯からこうなった、ただそれだけだと御理解下さいね?


五本場 前半 中堅戦 仲間・友人・共感、そして

智美 side

 

 昼休みが終わる少し前に私は控え室を出て必ず鉢合わせになる場所で待っていた、どうしても確認したかったからなー。

 

「あれ? 確か鶴賀の部長さんだったよね?」

 

「おー、そうだぞー? そっちこそどうしたんだー? はじめっち」

 

 声をかけて来たのは龍門淵の中堅、国広一だから“はじめっち”で決まりだなー。

 

「はじめっちって……。まあ、いいけどもしかして待ってる(・・・・)?」

 

「そうだぞー、そっちもかー?」

 

「当然だね、大切な友達が酷いことされた。黙ってられないでしょ?」

 

 キョウタの友達っていい奴ばっかりだなー。それと実は私も詳しくは知らないんだよなー、何があったかは。

 

「はじめっちは、キョウタが何されたか知ってるのかー? 私はコレしか知らないんだー」

 

 そう言ってモモのアンケートを取り出した。

 

「何それ? アンケート? 見てもいいかな?」

 

「キョウタの友達ならいいぞー、それ以上知ってたら教えてほしいんだけどな?」

 

 そう言った私に、はじめっちは頷いたんだー。

 

智美 side out

 

 

一 side

 

 なるほどね、だから京太郎は鶴賀に行くって決めたのかあ。僕はアンケートの答えを見てそう思った。

 それに次鋒はちょっと別だけど、先鋒の麻雀は京太郎の色が出てて上手くやってたのが伝わってくる。

 そして、僕と同じ様にここで待ってるこの鶴賀の部長。うん、これは伝えるべきだね。

 

「なるほどね、京太郎が僕達の誘いを断って鶴賀に行った理由がわかったよ」

 

「キョウタを誘った!?」

 

 ああ、それも知らないんだ。ホント京太郎は律儀だよね、別に言ったっていいのにさ。

 

「うん、京太郎が僕達と打ったのは知ってるんだよね?」

 

「おー、それは知ってるぞー?」

 

「その時、うちに誘ったんだけど待ってくれてる人がいるって断ったんだよ、京太郎は」

 

 流石に想定外だったのか、驚いたみたいだ。まあ、当然だよね。どう考えても龍門淵の方が鶴賀より実績があるんだから、去年の全国出場校だしね。

 でも今の鶴賀を見る限り、京太郎の判断は正しかったって僕には思える。

 

「で、京太郎が何されたかだったよね? 簡単に言えば部活をさせて貰えなかったんだよ。

 雑用を全部京太郎に任せて教えもしないし打たせもしない。

 

 京太郎が頼んで最後に打った時には負けたくせになんて言ったと思う?

 流石にびっくりしたよ、『一緒には打たない』って部長自ら部員に宣言したんだ。

 

 そうだよね? 清澄の部長さん」

 

「……否定しないわ、私の内心はどうあれ事実だから」

 

 僕は気づいていた、途中から聞いていたこの人に。だから事実だけを話したんだ、絶対言い逃れできない様にね。

 

「ねえ、知ってる? うちの大将、天江衣は能力やそれに類似した物に詳しくてさ。

 その衣によると京太郎の影響力って本当は無かった筈の物なんだって」

 

「え? でも、実際に……」

 

 鶴賀の部長さんは黙って聞いてる、この人は想像より手強そうだ。今も(はらわた)が煮え繰り返ってる筈なのに冷静さを極力保ってる。

 

「うん、実際には発現したよ? それは条件を満たしたからなんだってさ」

 

「条件……」

 

「そう、条件。それは次から次へと失ったからだって衣が言ってた。

 心当たりがあるんじゃない、清澄の部長さんにはさ?

 だから自業自得なんだよ、最後のトリガーを引いたのは清澄の麻雀部と部員だったんだから」

 

 僕は言わなきゃいけないことをそのままぶつける、少しでも京太郎の痛みを伝えるためにね。

 

一 side out

 

 

星夏 side

 

 私は聞いてしまった、そして自分がどれだけ恵まれていたのか再認識して。同時にそのキョウタロウという人がキャプテンの存在しなかった私に聞こえて……。

 キャプテンは大所帯の風越で雑用を全部1人でやってまで私に、私達に打って強くなる時間を作ってくれた優しい人。

 そんなキャプテンがいて応援してくれたから校内ランキング78位の私が2か月で5位まで上げることができたし、団体戦メンバーになれたんだ。

 

 そう思ったら私は行動していた。同情じゃなくて共感、そして絶対に許せなかったから。

 

「失礼します。

 私は風越女子の文堂星夏といいますが清澄高校の竹井さんに一つだけ伝えさせて下さい」

 

 突然話しかけたので驚いたみたいだけど返事はすぐに来た。

 

「……何かしら」

 

「風越女子が大所帯なのはご存知ですよね?

 その雑用を全部進んでやってくれたのはキャプテンの福路美穂子先輩です。

 部員が少しでも多く打って強くなれる様に、と言ってくれました。

 その結果、私は団体戦メンバーになれたんです。それだけ伝えさせて貰います。

 

 では卓でお会いしましょう、貴女には絶対負けませんから」

 

 普段の私なら出ない言葉が口をついて出て、私は会場へ向かおうとしました。

 

「……あのなー、私の麻雀をよく見ておけよー(・・・・・・・・)

 

 隣からそう聞こえて。

 

「さ〜て、僕も行こっと。君、いい啖呵だったよ」

 

 逆からも。

 

 私達は3人並んで会場入りしました、多分同じ気持ちを抱いて……。

 

星夏 side out

 

 

久 side

 

「参ったわね……」

 

 去っていく背中から熱を感じる、それも3人全員。それぞれ須賀君との関係性は違うけど、どうも標的は私1人になったと見て間違いない。

 それでいて正直なところ私はショックを受けていた、龍門淵のいう通りなら全ての原因は……。

 

「けど負ける訳にはいかないのよ、私も」

 

 追うようにして会場に入ると丁度選手の紹介が始まった。

 

『県予選決勝中堅戦の選手を紹介します!

 大波乱! 現在最下位は昨年の覇者! 龍門淵高校二年、国広一!

 二位からトップへ躍り出るか! 風越女子一年、文堂星夏!

 次鋒戦でダントツのトップに立った新鋭! 鶴賀学園三年、蒲原智美!

 ここから昇り詰めることができるのか! 清澄高校三年、竹井久!』

 

 まあ、好き放題言ってくれるわね。でも、私には丁度良い。逆境でこそ悪待ちは活きるんだから。

 起家は龍門淵、私、風越、鶴賀の順か。配牌は五向聴って微妙な手ね、でもまあ自分のやり方で行きましょう!

 

 淡々と進み、八巡目。完全に裏目った、いえ、この一萬が来た意味って……。そして九巡目、来た!

 

「リーチ!!」

 

 さあ、相手になってあげようじゃない! と息巻いてみたものの全員現物ってどういうことよ。

 それが切れたら今度は生牌!? 

 

「聴牌」

「ノーテン」×3

 

 まさかよね? 私は途轍もなく嫌な予感に襲われた……。

 

久 side out

 

 

一 side

 

 風越と鶴賀の捨て牌、現物のうちは理解できたけど生牌になって意味がわかったよ。

 「よく見ておけよー(・・・・・・・・)」っていうのは清澄の攻略法だったとはね、どうもこの人、悪い待ちにするとあがれるらしい。

 開いた手牌から確認できた、まず間違いないね。あとはそれに騙されないようにだけ気をつければ敵じゃない。

 

 東二局も清澄は聴牌、けど誰も振らずに手牌が晒される。もう間違いない、清澄はツモ以外ではあがれない!

 なら、最下位から追い上げるとしようか! 透華が買ってくれた正攻法の麻雀で!

 

 一本場、配牌から最短で手が仕上がった。これなら行ける!

 

「リーチ!」

 

 僕のリーチに堅い鶴賀、競争率の激しい中で一気に昇り詰めた風越は手堅くオリてくる。まあ、そうだよね。

 で、清澄の悪待ちさんはどうかなって見てたんだけど……。へー、こういう時はしっかりオリてくるんだね、清澄の部長さん?

 でも出あがりなんか僕は期待してない……、来い!

 

「ツモ! リーチ、一発、ツモ、断么、平和。跳満の一本場は3,100/6,100!」

 

 うん、僕は真っ直ぐな僕のまま勝ってみせる! さあ、これからだよ!

 

一 side out

 

 

靖子 side

 

 久、完全に研究されてるぞ。私は東一局と二局でそう結論付けた、でなければあのオリ方はおかし過ぎる。

 

「先程から清澄高校の竹井選手が聴牌すると安牌はわかりますが……。

 生牌を次に選ぶというのは理解できませんね、如何ですか? 藤田プロ」

 

「そうだな、だがそうでなければあがっていた。

 なんらかの理由があるんだろう、ここからではわからない何かが」

 

 私と久は気の合う知り合いだ、当然久の麻雀はよく知ってる。だがこの先がある以上、迂闊に話せん。

 

「それに比べて龍門淵高校の国広選手は正攻法で着々と追い上げていますね」

 

「元々実力のある雀士だ。鶴賀は堅守、風越も無理をしていない、そして清澄はあがれず。

 なら必然的に龍門淵が追い上げるだろう?」

 

 粛々と進む対局、徐々に盛り返す龍門淵。そうこうしているうちに前半戦が終わる。

 久は完全に抑え込まれたな、後半戦でどうなるか……。

 

「トップは依然として鶴賀学園! 次いで風越女子と順位に変動はありません!

 大きく盛り返したのは龍門淵高校! 実力を遺憾無く発揮して唯一のプラス収支!

 清澄高校は3校にあがりを阻まれ、苦しい状況で後半戦を迎えます!」

 

 私はそんな実況を聞きながらも鶴賀に注目していた、次鋒はともかく先鋒と中堅の堅さが並じゃない。これで初出場、しかも能力持ちが今のところ出ていない。これはまったく読めなくなってきたな……。

 

 だが大将戦まで縺れれば天江衣が出て来る。

 今の天江は昨年と違って遊びが無く、麻雀を打たされていない(・・・・・・・・・・・)

 清澄の大将も大概だが今の天江に勝てるか? 私はそう思いながらモニターを見ていた……。

 

靖子 side out

 

 

星夏 side

 

 キャプテンが教えてくれた攻略法、そのお陰で被害は最小限に抑えられた。そして、竹井さんの手作りもあれだけ開けば当然わかる。

 私は前半戦、他校も含めて見ることにしていた。竹井さんがいなければ違っただろうけど、お陰で私はまた強くなった実感がある。

 

『5分の休憩の後、同じメンバーによる後半戦を行います。御来場の……』

 

 アナウンスが流れる中、誰も卓を離れずに座っていた。私は竹井さんの手作りと国広さんの手作りを思い出しながら後半戦での巻き返しに備える。

 蒲原さんは堅くて見る機会が無かったけど、勝てないとは思えなかった。

 

 ……やりようはある。今ならそう自信を持って言えます、キャプテン。だから見てて下さい、キャプテンのくれた時間で恩返ししますから。

 そして覚悟して下さい、竹井さん。キャプテンが昔苦しめられた分、私が共感したキョウタロウという人の分。受け取って貰います、絶対に。

 

 その上で風越は全国へ行くんです。だって私は風越女子の序列5位、文堂星夏。貴女達を倒す者なんですから!

 

 

【中堅戦前半結果】

龍門淵高校 二年 国広 一    76,700点(+18,300点)

風 越 女 子 一年 文堂 星夏  104,900点(- 7,200点)

鶴 賀 学 園 三年 蒲原 智美  136,300点(- 4,900点)

清 澄 高 校 三年 竹井 久    82,100点(- 6,200点)

 

 

星夏 side out




完封された久。
鶴賀は京太郎から、風越はキャプテンから。
龍門淵は智美の言葉と捨て牌から悪待ちがバレていますので当然こうなります。
後半戦はどうなるかわかりませんが……。

ちなみに原作では不遇だった文堂さん、私はあの努力と意気込みを買っています。
咲という物語は、能力持ち以外だと割と不遇な扱いが多いです。
しかし、能力持ち以外が勝てないなら余程好きでない限り誰も麻雀しないんですよ、私が思うに。
ですから、誰もが活躍できるんだという想いで書いています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。