咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道 作:しおんの書棚
さあ、麻雀を楽しもうか!
ゆみ side
医師の説明を受けた蒲原曰く、モモはかなり消耗してはいるものの命に関わったり後遺症が出たりする心配は無いとのことで今は眠っている。
付き添いは須賀君に頼み、秘密兵器についてもその場で明かされた。聞かされてみれば納得できるソレ。これほどのモノならば、なるほど確かに秘密兵器だ。
『加治木先輩、衣さんと咲の能力は伝えた通りですが……。
和の例をみれば、より強化されていると見て間違いないでしょう。
ですが、弱点や攻略法が無い訳ではありません。
特に秘密兵器を持つ加治木先輩とその麻雀センスがあれば。
難しい注文をしているのは十分承知していますが……。
俺にできて加治木先輩にできない訳がありません。
見せつけてやって下さい、能力が無くても勝てるということを。
麻雀が技術を競う競技だと知らしめるために、集った六人で鶴賀は全国へ。
ここで負ける様なら、当然全国では通用しませんよ?
何故なら龍門淵は去年、全国で敗退してるんですから』
「ああ、そうだな、須賀君の言う通りだ。ここは通過点、だが正念場でもある全国への試金石。
相手がどれだけ理不尽で強かろうと私が諦めることは無いと誓おう」
最後まで全力を尽くしたモモが起きた時、笑顔で会うために。私と蒲原の誘いに応じてくれた津山や妹尾に報いるために。
そして、ここまでの道筋を付けてくれた須賀君の献身に応えるためにも……。
「絶対に……勝つ」
そう口にした私は、かつてない程に高まっていく自分を感じながら会場へと向かう。
ここは終わりじゃない、もう一度そう心に刻んで……。
ゆみ side out
靖子 side
「県予選決勝も遂に大将戦を迎えました! 各校の命運を委ねられたメンバーを紹介します!
昨年の覇者、龍門淵高校の大将はやはりこの人! 最多得点王、天江衣!
名門、風越女子も昨年決勝で闘った得点力の高い打ち手! 池田華菜!
初出場ながら現在圧倒的大差で独走状態! 鶴賀学園! 加治木ゆみ!
準決勝までに他校を飛ばした大将! 清澄高校! 宮永咲!」
うーん、この得点差は予想外だが衣がいる以上、勝負はこれからだな。十二万点差なら普通は決まった様なものだが衣と同じ長野にいたのは不運というほか無い。
「全国大会へ出場できるのは一校のみ! 残す東南戦二回の結果で決まります!」
いや、当たり前だろ、それ……。
「次鋒戦からトップを守り積み上げ続けた鶴賀学園。
このままインターハイへ勝ち抜けるのか!
それとも昨年のファイナリスト二校が、ここから巻き返すのか!
どうお考えですか? 藤田プロ」
「最多得点王、龍門淵高校の天江がこのまま終わるとは思えんな」
というか私は衣が食い潰すと思ってるんだが鶴賀のせいでまったく読めん、ここまでも
「天江選手ですか。
インターハイでも多くの記録を残した選手です。
今年もどんな闘いになるのか期待が高まりますね」
そして気になるのがもう一人。
「ああ、それと個人的に注目してる選手がもう一人いる」
すっかり失念していたがな……。
「清澄高校の宮永だ」
「なるほど、それでは注目の大将戦前半開始です!」
私はその背中をモニター越しに見ていた、宮永咲の……。
靖子 side out
衣 side
起家は風越、清澄、鶴賀、衣。
それにしても京太郎、よくぞ約束を守ってくれた。そして予想通り上がって来た清澄、其を玩弄し打ち壊す! 風越何する者ぞ!
だが油断はしない、衣は衣の意志で麻雀を打つ楽しみと信じるべき
「御戸開きと行こうか」
最初から本気で勝負する! だが気をつけねばな、飛ばしてしまえば終わる。狙いは……。
「鶴賀の、ユミと言ったか? 勝負の世界だ、許せとは言わぬ。覚悟せよ」
「それは光栄だな、だができるかな? うちのブレーンは最高だぞ?」
何!? 清澄や風越は衣の支配を感じているというのに、ユミのこの余裕。まるでキョータローと……。
「それと、よくこう言ってたよ……。さあ、麻雀を楽しもうか! とな!」
「よくぞ言った! 気に入ったぞ、ユミ!」
最高だ、キョータロー! 衣の最初の友達がキョータローで良かったと、衣は心から思う!!
衣 side out
咲 side
やっぱりこの人! この感じ! なのに、なんで鶴賀の人は……。
それに一向聴からまったく手が進まない、このツモどうかしてるよ〜。
けど! 私は負けられない! なら……。
「ポン!」
よし! これで……。
「……所詮その程度か、清澄の?それでキョータローを追い出したと?」
それはっ! 何も言い返せないよ……。
「そう虐めるものではないぞ、天江?それにこの場はこうするものだろう?」
え?
「ロン」「なっ!」
あの人、えっと天江さん?が立ち上がって驚いてる……、それにどうして鶴賀の人はこの一向聴地獄で聴牌できるの!?
「断么、ドラ2。30符3翻は3,900だ」
この人からは何も感じないのに……、私はカンすらできずに振ってしまった。
咲 side out
華菜 side
鶴賀の絶対おかしいし!
「なあ、天江。そんなことをして勝って楽しいか?
なんてこと言うし! って効かない!? じゃあ一向聴地獄じゃなかった?
「……一人では無かったという事か。キョータローめ、どこから見つけてきたのだ?
だが、それでこそ楽しめるというもの! 有象無象など放っておけ、ユミ。衣が相手しよう!」
二人で勝手に話を進めないでほしーし! とりあえず東二局、清澄が親。けど、また一向聴地獄だし!
「ポン」
これでルートイン! 早くなんとかするし! 鶴賀の!! なんで何もしないし!!!
「リーチ」
ああ……、天江のリーチが、海底が……。
「カン」
え? ここで南をカンって天江の海底が無くなった?
「言った筈だ、本気を出せ、と」
まさか……。
「ツモ、嶺上開花、南、ドラ4。跳満は3,000/6,000」
なんなんだし! 天江以上にヤバいし! 私はこの異常さに驚くしかなかった……。
華菜 side out
ゆみ side
清澄からあがれたのは
そして天江の海底を阻止する事で優位に立つため、鳴ける準備を幾つか整えておいたんだが……。
暗刻のドラが出てカンせざるを得なくなり、結果、残り牌の少なさから運良く嶺上開花。
須賀君から清澄の目の前で嶺上開花をあがれば、自分のテリトリーを侵される恐怖効果がある筈と言われてはいたが……。
とはいえ、こうも上手くいくとは。これも秘密兵器のお陰だったりしてな、いや偶然か。
しかし、これで精神的優位に立ったことは間違いない。
「衣の海底が……」「私の嶺上開花が……」
気の毒だが天江の言う通り勝負の世界。稼げる時には稼ぎ、飛ばせれば最高だが削り切られないのもまた手の一つ。
私自身守りの麻雀では無いが、須賀君から手解きは十分受けている。勝利への道筋は多いに越したことはないからな、なんとしても勝つためには手段を選んでいられん。
だが、まさかこれがトリガーになるなど、この時の私にはまったく想像もつかなかった……。
ゆみ side out
衣 side
キョータロー、本当にとんでもない打ち手を衣に……。今までも本気ではあった、だが
清澄は衣の気に当てられたな? この程度でその体たらく、話にならん。比べてユミを見よ、平然としてるではないか!
さあ、ユミ。この東三局で衣の本気を見よ! ……行くぞ?
「ポン」
副露
「ポン」
二副露、そして
「聞こえるか?
ロン、対々和、東、白、赤2。跳満は12,000だ、ユミ。
世が
さあ、麻雀を楽しもうではないか!
衣 side out
咲 side
私はまだ一度もあがれてない……、取り返さなきゃいけないのに。
「ポン」
ダブ東……!! そして……。
「ツモ! 対々和、ダブ東、赤1。親の跳満、6,000オール!」
このままじゃ駄目だ、
……東四局一本場、
また一向聴地獄? ううん、違う。ほら、槓材があるよ。なら私はあがれる、そう自信を持って言えるんだ。
「カン」
明槓で一向聴。
「ポン」
二副露で聴牌、槓材もできたよ。
「カン」
加槓、そして……。
「ツモ、嶺上開花、ドラ4。跳満の一本場は3,100/6,100です!」
さあ、これからだよ!
咲 side out
ゆみ side
まさかより強力になるとはな、初めにあがっておいて良かったよ。それに清澄が嶺上開花可能となった、天江の支配下でだ。須賀君が懸念した通り、強化されていた訳だな。
良い状況とは言えないが闘えるなら問題は無い。どちらも基本ツモあがり、天江に振るのと清澄の大明槓には要注意だな。
私も全力であがらせて貰う、これからはチキンレースだ。削り切られる前にあがり、流せ!
南一局、親の風越は一向聴地獄か。親だけに焦りが出る頃合いだが、さて。ともかく天江と清澄にツモられずにあがらせて貰おう。
この配牌、うってつけだ。須賀君仕込みの河を読み切れるものなら読んでみるがいい! 私は六人で闘っているんだ!
まずは清澄の順を飛ばす。
「ポン」
南で特急券、だが捨て牌に気をつけろ。ここは一九字牌を避けるんだ、天江の副露はそれが多い。清澄が副露したなら……“狙う”だったな! 須賀君!
「ポン」
清澄か! ならこれで……。よし! 風越の捨て牌に反応せず……。
「カン!」「ロン!」
ん? 聞こえていないのか?
「その嶺上、取るべからず。既にロンと言ったが聞き逃したか?
搶槓、南、ドラ2、赤1。満貫、8,000だ」
簡単に削れると思われては困るな、鶴賀のブレーンは
ゆみ side out
衣 side
なんという打ち手! 衣とて槍槓など狙えはしない、だが今のは確実に清澄を
……キョータローの入れ知恵か? だとしても余程の信頼関係が無ければ受け付けんぞ!
楽しいな、キョータロー! 楽しいぞ、ユミ! 気に入らんが清澄も一役買っている。
なら次は衣の番だ! 大物を仕留めるとしよう!
南二局、この配牌であれば速攻あるのみ! 夕闇が覆い今日はほぼ満月、不可能は無いに等しい。
一巡目で聴牌、さあ行くぞ?
「リーチ!」
安牌など切った二筒しかありはしな……。
「カン」
清澄が性懲りも無く!
「ツモ、嶺上開花、断么、ドラ2、赤1。親の跳満は6,000オールです!」
っく、余計な茶々を! 気づいているのか? 清澄! 今の状況が
それとも連荘して削り切るつもりか? 衣は苛立ちを覚えていた、清澄の麻雀に……。
衣 side out
京太郎 side
モモ、聞こえるか? 加治木先輩の闘う音が。俺はモモのいる部屋からモニターで観戦している、付き添いながら。
そして俺の予想通り、咲は強くなっていた。衣さんの支配下で嶺上開花を連発、まったく凄いというかとんでもないというか……。
それでも現状は加治木先輩の思惑通り、ツモられる分は上手く稼いで削られるのを最小限に抑えている。
『現在、南二局一本場ですがとんでもないことが起こっています!
天江選手のロンあがりを除けば、嶺上・槍槓・嶺上・嶺上! どう思われますか、藤田プロ?』
『偶然、とは言えんな。少なくとも鶴賀の嶺上開花と搶槓は状況から見て狙った物だ。
まあ、狙ったからといって100%できる物ではないが確率は引き上げていた』
流石はプロだな、目の付け所が違う。
『嶺上開花の時は牌が極僅か、搶槓は恐らく
宮永が加槓すると読んだ訳だが加槓できる保証は無い、ただ宮永には槓材が集まる様に見える。
私が言えるのはこんなところだな、なんにしても
あー、やっぱりそう思うよなあ、部長をよく知らなければ。
『なるほど、ちなみに鶴賀の部長は中堅の蒲原です。
さて、清澄の親は話題に登った加治木選手が速攻でツモあがり。
白のみでしたが、これだけの点差を考えれば当然と言ったところです』
『はあ!? マジで!? え? 部長!?』
藤田プロ……、ご愁傷様です。それにしてもこれで南三局か、このまま凌げれば一息つけるんだが……。信じてますよ、加治木先輩。
京太郎 side out
華菜 side
なんなんだし! なんで私だけ何もできないし! 点差はあったけど二位だったのがあっという間に八万点を切った。
清澄は六万点、龍門淵には追いつかれて八万点、トップが十八万点。このままじゃ……。
!? 配牌がなんか違うし! とりあえず高目狙ってって……、それだ!
「ポンだし!」
ドラで自風牌の西! やっと聴牌だし! 多面待ちの混一色、これで!
「カン!」
え?
「ツモ、嶺上開花、対々和、南、北。跳満は3,000/6,000です!」
そんな……、いや、まだだし! オーラスで少しでも! また配牌が良いし今度こそ!
慎重に行く……、手が伸びるし……。でも、まだだし。まだ全然足りない!
「ツモ、断么、ドラ2、赤1。満貫、2,000/4,000」
は、はははっ、鶴賀はなんなんだし……。もうどうしたらいいのかわからないです、キャプテン……。結局、私だけがあがれないまま前半戦は終わった……。
【大将戦前半結果】
龍門淵高校 天 江 衣 79,400点(+14,900点)
風 越 女 子 池 田 華 菜 73,800点(-23,100点)
鶴 賀 学 園 加治木 ゆみ 177,000点(- 6,900点)
清 澄 高 校 宮 永 咲 69,800点(+15,100点)
華菜 side out
最初から本気を出した衣。
しかし秘密兵器と情報・知略、そしてユミちんの力量が合わさり約10万点差をキープして衣と咲は抑え込まれました。
風越の池田ー!は悉く潰されて、ほぼ三校が横並びの展開に。
とはいえ夜はこれから深ける一方でさらに強くなるだろう衣。
一点狙いの大明樌を持ち、原作モードを残している咲。
ユミちんの闘いは、まだまだこれからですね!