咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道 作:しおんの書棚
靖子 side
「ロンあがりを除き前半戦は搶槓と嶺上開花、後半戦東場では海底、嶺上、数え役満、役満!
長らく解説をしている私も見たことが無い異常事態!
依然トップは鶴賀ですが役満二回で名門風越、一気に約三万点差まで詰め寄りました!
苦しい昨年の覇者、龍門淵が現在最下位。清澄と共に十万点差は絶望的か!」
ここまで差が埋まらないとは思っていなかったが、衣にとっては十分射程圏内。それよりも異常なのは……。
「天江に目が行きがちだが、清澄のあがりは全て嶺上開花。
それが四度ともなれば、これこそ異常だ」
「確かにそうですね。
準決勝までに幾度かあったことを考えると、その異常さが一層浮き彫りになります」
宮永咲……、宮永? まさかとは思うが二年連続インハイチャンプの宮永
なんせ方や東京は白糸台、方や長野だ。憶測で物を言うべきでは無いだろう、事実だとしてどんな事情があるかわかった物じゃない。
「さて、南一局ですが静かな立ち上がり。今のところ淡々と場は進んでいますが……」
『カン』
「話題に登った清澄の宮永選手、ここでトップの鶴賀からカン! またしても嶺上開花か!?」
いや、それでは勝てん。なら、狙いは……。
「大明槓か!」
「宮永選手、嶺上開花を見送り……」
まさか、いや……もしそうだとしたら!
『もいっこカン!』
馬鹿な! しかし現実に目の前で起きていることは否定できん! なら、ここでは止まらない!
「宮永選手、連続カン! しかも、またしても嶺上開花!? 見送り、見送りました!」
『もいっこ、カン!!』
三槓子! しかもこれで五筒をツモれば清一色だと!? そして宮永がカンした以上は! 私は予感した、してしまった。
「宮永選手、三連続カン! そして、これはっ!?」
『ツモ、清一色、対々和、三暗刻、三槓子、赤1、嶺上開花。数え役満は32,000です!』
コイツは……、本物だ!
「大明槓からの数え役満! トップの鶴賀に炸裂!
県予選二度目の数え役満で風越と合わせて三連続役満!
しかも何度あったでしょう、全て嶺上開花!!
三位とはいえトップの鶴賀とは三万点差まで一気に詰め寄りました!
二位の風越は四千点以上あがればトップの位置に浮上!」
「……牌に愛された、か。この試合、まだまだ荒れるぞ」
本来ならこれで宮永の勝ちを予感するだろう、だがここまでされて黙ってるお前じゃないだろう? なあ、衣。私は未だ勝者は決まっていないと確信していた……。
靖子 side out
衣 side
迂闊、清澄を潰すべくまばったばかりにユミと風越に大物を許した挙句、この様な……。
淵底の向こうは衣の支配がおよばぬ、その王牌から! そう思いを巡らせている最中、聞こえたのは清澄の嶺上使いの声。
「
「な、に?」
今、此奴はなんと言った?
「今日も色んな人と打てて
聞き間違いでは無いのだな、清澄の嶺上使い! 貴様は……貴様だけは!
衣の怒りは天にも届き、会場は闇に包まれた……。わかる、今の衣は
「停電!? 対局者は動かないで下さい! 今、予備電源に……」
「清澄の嶺上使いに問う、その
キョータローから楽しさを奪った貴様に、貴様らに……、麻雀の楽しさを語る資格があろうか。否! 断じて否!!
「え? あっ……」
「吐いた唾は飲み込めんぞ? 貴様はここで
衣の全てを賭けてでもキョータローの無念、骨の髄まで刻み付けて見せよう! 二度とその様な口がきけぬ程に。
そして衣の
闇は晴れた。だが世闇深く月満ちて衣の意志が固まった今、見敵必滅。故に……。
「
南二局、衣の親、十七巡目。
「リーチ」
そして次巡。
「ツモ、リーチ、一発、
数え役満、16,000オール」
衣は淡々と告げた。もう勝ちは揺るがない、その確信と共に。
衣 side out
透華 side
「これは……決まりましたわね」
今の数え役満でうちが十万、鶴賀と風越が十一万強、清澄は八万強。しかも衣の親は継続で、最高の状態。
「それにしても言って良いことと悪いことがあるよね。
ここまでのことは御屋敷でも起こったこと無いよ、それだけ衣は許せなかった」
「そうだな、まあ巻き込まれた二人には悪いが恨むなら清澄だってわかるだろ」
まったくもってその通りですわね、
「……もうすぐ」
「十七巡目、か……」
『リーチ』
いつもの様に衣がリーチを宣言して牌を曲げた瞬間、わたくし達は予想もしなかった声を聞きました。
『カン!』
「なんですって!?」
今の衣相手に対抗できるっていうんですの!?
『ツモ、嶺上開花。30符1翻の一本場は400/600です!』
わたくしはこの時のことを決して忘れないでしょう。驚きに彩られた衣の表情、そして背中に流れ落ちた冷たい汗の感覚と共に……。
透華 side out
華菜 side
天江の親が流れた、正直助かったし! さっきのは今までで一番酷かった、なんか寒気がしたし……。
「馬鹿な……」
天江の呟き、そしてそこから私は滅多に見せない動揺を感じとった。これならきっと、いや絶対行けるし!
天江だって完全じゃないのは今までで証明されてる、ならやりようはあるし!
トップとの差なんて無いようなものだし! まずは天江と同じ位ヤバい清澄の親を速攻で流す! 無理はしない、高かったらラッキーくらいの気持ちで行くし!
南三局を含めて、残り二局で捲る! そしてうちが、風越が勝って絶対キャプテンに恩返しするんだ!!
配牌、理牌。やっぱり天江の調子、さっきよりは落ちてるし! ってことはどこも仕掛けてくるから、やっぱり速攻しかない!
ここは最速で聴牌を目指してく! 出あがりは期待しない、ツモるんだ!
華菜 side out
咲 side
……さっきのは私が悪かった、けど! どうしても負けられない!! 私はみんなに、ううん、原村さんに託されたんだから!! だから謝るのも泣くのも全部終わってからだって決めて。
龍門淵の人、数え役満の時よりは落ちてるけど……。それでも
「カン」
發を暗槓。
「もいっこ、カン!」
一筒を暗槓、そしてこれを
「? 切りました」
「……ああ、すまない」
さあ、準備は終わったよ? 風越の人。
「リーチ! だし!!」
「カン!」
一萬を鳴いて三槓子!
「ツモ、嶺上開花、三槓子、混老頭、發。跳満の一本場は12,300です!」
まだまだ、これからだよ!
咲 side out
衣 side
……今、衣は驕ったのだな、キョータロー。なんと情け無いことか! だが、キョータローが教えてくれた
ああ、再び
南三局二本場、
決して衣は止まらぬ、しかして驕りも無い。ならば……。
「ポン」
さあ、海底まで付き合ってもらうぞ! 足掻けるものなら足掻いてみよ! それすらも打ち砕いてくれる!!
そして十八巡目。衣は掬う、海の底にまで光を届け美しく映る満月を。
「ツモ!
満貫の二本場、2,200/4,200!」
さあ、次で終焉の刻だ。衣は油断無く、盗っ人を見ていた……。
衣 side out
咲 side
大丈夫、私には確信があった。トップは鶴賀の人で十一万強、そして私は八万強。今なら
配牌から予想より
さあ、始めよう! この闘いを勝って終わらせるために!
そして、
コトリと切られた牌。え? 違う、どうして? ううん、悩んでる場合じゃない。なら少し遅れるけどコッチに切り替える、大丈夫、まだ追いつかれてない。そして、来た!
「ポン!」
いける! 次順をツモって加槓すれば四槓子で逆転勝ち! そして……。
「カン!」「ロン」
「え?」
今の声は……、鶴賀の……人?
今のタイミング、開かれた手牌。私が
「国士無双。親の役満、48,000だ」
搶槓は警戒してた、けど河で国士無双は無いって判断して……。
「これが鶴賀の麻雀、コーチの教え、その集大成だ」
親のあがり止めで終局、私は……勝てなかったんだ。そう思ったら、もう動く気力も無くなっていった……。
咲 side out
ゆみ side
『長い、本当に長い闘いでした! その対局も遂に決着!
最後の最後に飛び出したのは搶槓による国士無双!!
まさに劇的な幕切れ! トップに立ってから一度も譲らず役満で締めた初出場の鶴賀学園!
二位の風越女子に五万点以上の差をつけ、インターハイへの切符を手にしました!!』
「勝ったぞ、須賀君……」
アナウンスを聞きながら、私はそう呟き深く椅子に腰掛けて振り返っていく。
須賀君からのアドバイスを聞いた私は策を用意した、それは
使えば保たない、なら本当に必要になるまで使わなければいい。簡単ではないが、風越にできて私にできないなどとは口が裂けても言えない。
そして、秘密兵器とは何か。物としては須賀君から贈られた御守りだが、これにはとある効果が秘められている。
須賀君曰く、この御守りは
須賀君が触れている人間は能力の干渉を受けない、ならば彼の一部。特に霊的な意味を持つ髪はそういった物を蓄えるという。
よって私は南場開始前に肌から極力離し、あの停電最中に再び直接肌へと当たる様にした。後は天江と清澄を欺くのに、最後まで邪魔を
特に効果的だったのは一度大明槓を清澄が成功したことだろう、これにより清澄は選択肢を自ら狭めた。その結果、二度目を狙うと読んだ私は河に迷彩をかけて国士無双で対抗。ここは運の要素もあるが天江の支配が幾分影響し出していたのを利用させて貰った。
ここからは須賀君の受け売りなのだが、清澄の嶺上開花も天江の海底と同じ様に場の支配が働いている。そうでなければ都合よく大明槓からの数え役満など不可能だ。そしてそれは先程実証された訳で、これも良くは無いのだが、須賀君が清澄にいたからこそ使えた手と言える。
さて、この御守りを卑怯というなら能力者は全員卑怯者ということになるだろう。何故ならただ
【大将戦最終結果】
龍門淵高校 天 江 衣 93,000点(+28,500点)
風 越 女 子 池 田 華 菜 111,700点(+14,800点)
鶴 賀 学 園 加治木 ゆみ 163,500点(-20,400点)
清 澄 高 校 宮 永 咲 31,800点(-22,900点)
ゆみ side out
私の描いた鶴賀学園女子団体戦勝利への道筋、楽しんでいただけたでしょうか?
ここまでの点数計算と破綻しない展開は、やはり原作あっての物です。
改めて原作者様に敬意を表したいと思います。
それはそれとして、改変した分の辻褄合わせは本当に苦労しました。
展開は先に決めていましたが、点数調整は頭が痛くなるほど大変でしたね。
オーラスの点数差がキッチリしてないと咲が大明樌を狙わないですし、衣と華菜が同時に勝てる状況を整えるとなれば余計に。
読者様一人一人、思うことはあるでしょうがこの物語ではこうなったんだなあと受け入れていただきたく存じます。
ちなみに役満が多いと思われるでしょうが、原作でも華菜は四暗刻単騎待ちをツモって勝負のために捨てました。
ゆみはオーラス9巡目で国士無双一向聴だった描写がありますので10巡目に聴牌させたのですが、原作を知れば知るほど楽しめるように考えたつもりです。
それはさておき勝負は終わっても必要なことがあります、もう少し男子個人戦はお預けですねw