咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道 作:しおんの書棚
追記
原作では団体戦の一週間後が個人戦なのですが、本作では翌日からと独自設定しております。
一本場 思わぬ影響
衣 side
キョータロー達の所から早々に退散したのは、やりたい事があったからだ。鶴賀の麻雀を見て感じたキョータローの色、そのうちの一つは……。
「トーカ、
「勿論ですわ! ハギヨシ!」
「透華様、男子団体戦の全牌譜と映像で御座います。量が量ですので整理は既に」
そう、
トーカと打った清澄の者など、いつ何時誰相手だろうと打ち筋に変化が無い。あれはあれで意味はある、しかし
その逆が、ユミの搶樌。あれは狙ったもの、清澄の嶺上使いがどう打つか把握している前提でのみ可能になる。聞けばそれを示したのはキョータロー、つまり情報を活かすことこそがキョータローの強みの一つ。知る者ではなく、識る者の証。
「ハギヨシ、忠勤御苦労。ここからは衣達に任せよ、大義であった」
「御用が御座いましたらいつでもお呼び下さい、それでは失礼致します」
さて、衣の家族でこの様な事に最も長けているのは勿論……。
「トモキ」
「……二時間、いえ一時間半」
流石に話が早いな、既に取り掛かりながらの答えに衣は頷く。
「でしたら画像チェックはわたくし達ですわね」
「そうだね、まあ大半は京太郎の敵じゃないけど」
「言えてるな、個人戦ルールほど京太郎に向いてるルールは無いぜ?」
確かにな、まず前提としてユミ以上の力量をキョータローは持っている。これはユミ本人の言であり、信頼に値するだろう。だが団体戦の様な一発勝負では、キョータローの持ち味を存分に発揮するのは難しい。
しかし、個人戦ルールなら話は大きく変わる。東風戦20回・半荘10回の総合得点方式であれば、トーカやトモキの様な長期的勝率の高い者が有利。そしてキョータローはそちらに該当する、つまり
「とはいえ油断大敵とキョータローが教えてくれた。
そして人事を尽くす事に意味があるとも、鶴賀全国出場という結果で示したからな。
まあ、キョータローは天命など待たずに自身で切り拓く者だが」
そう言って笑みを浮かべた衣に、家族は揃って頷いた。
衣 side out
ゆみ side
須賀君は女子団体戦の情報収集を男子個人戦と合わせてやってくれた、つまり二年生分までは既に対策済と見ていい。であれば私達と同様に一年生のデータが欠けている、ならばそこを埋めるのが今できるサポートだ、とはいえ……。
「これは……、多いな……」
思わず溢してしまったが今年は男子に有能な雀士が多かったのか、それとも二・三年生が少なかったのか、とにかく一年生が多いのだ。
「まさか去年の男子インターミドルチャンピオンも長野とはなー。
今まで意識してなかったから、どこが強いかもさっぱりだぞ?」
「片っ端から当たるしか……」
そう言ってる最中にノックの音、心当たりは須賀君ぐらいのものだが……。そう考えている間に妹尾が覗き穴から見て一言。
「龍門淵の人達!?」
『あら、声が聞こえましてよ?』
『夜分済まぬ、ユミよ、衣達だ。其方らにも関係する故、見て貰いたい物があって訪ねてきた』
私達にも関係があって、見せたい物? ともかく中で話を聞くとしようか。
「妹尾、入って貰ってくれ」
そう言った私に頷くと妹尾はドアを開けて、衣達を招き入れたのだった。
ゆみ side out
美穂子 side
私は文堂さんの話、加治木さんの話、そして中堅戦を思い出しながらずっと考えていたわ。
もしも文堂さんが鉢合わせて言った言葉、それが蒲原さんの発言に繋がったんだとしたら? 文堂さんの実力を認めてる私だけど、後半戦の結果に大きく影響したのも間違いないと思うの。
竹井さんが須賀君に加治木さんの言った事をした……、それはとても悲しいこと。
けれど須賀君は鶴賀でとても大切な人達に出会って、加治木さん達もそれは同じだと私には感じられたわ。そして私達もその関係に助けられた部分がきっとあって、全国には行けなかったけど龍門淵に勝つことができた。
一度も会ったことの無い須賀京太郎君という人が決戦戦に大きな影響を与えた結果なら、私は少しでも力になりたいと思うの。
「キャプテン、どうしたんだし」
考え込んでいたから心配させてしまったのね? 見渡せばみんなが私を見ていた。
「ごめんなさい、悩んでいた訳じゃないから心配しないで?
ただ、須賀君のお陰で私達が有利になった部分はあったんじゃないかって思ったの。
それなら彼のために何かできることはないかしらって……」
色々考えてみたけれど良い方法が思い浮かばなかったので、私に感謝してるって言ってくれた華菜達に考えを伝えてみたわ。
私にとっては部長として次代の風越を育てるのは当たり前だったし、お洗濯やお弁当を作るのは好きだから苦じゃなかったのだけど、みんなにとってはそうじゃなかったみたいで須賀君に共感したのが力になったとも聞いたから。
「……あるし」
「え?」
今、華菜はあるって言ったの?
「鶴賀の大将は言ってたし、その人がブレーンでコーチだって。
ずっと考えてたけど……、あの搶樌も悪待ち対策もきっとその人が分析した結果だし。
そして個人戦に出るなら事前分析は終わってる、けど……」
「……新人の分は今やってる?」
華菜と吉留さんからそう聞いた私は納得したわ、偶然じゃなく必然だったのね?
そして風越は部員が多くて、みんなで牌符を準備してくれたから、個人戦に出る私達の準備がもう終わってるのも。
「行きましょう、キャプテン!」
須賀君に一番共感していた文堂さんの声、みんなも頷いてる、それなら!
「そうね、行きましょう!」
そう宣言すると、私達は部屋を後にしたのでした。
美穂子 side out
智美 side
「それでころたんは、何を見せたいんだー?」
衣だから、ころたん。うん、またいいあだ名をつけたなーと思いながら返事を待ってみる。
「サトミといったか、その
「そうだぞ? 衣だからころたん、キョウタの友達は私の友達だからな、ワハハ」
「蒲原……、いくらなんでも早過ぎだ、会ったばかりだぞ?」
そんなことは言われなくてもわかってるぞ? でも、ころたんってなんか難しい言葉を使うけど寂しがり屋に見えるんだよなー。
「いや、ユミ、衣は気に入ったぞ! サトミと衣は友達なのだな?」
「勿論だぞ?」
「トーカ! 衣に友達がまた増えたぞ!」
うん、やっぱり寂しかったんだなー、理由はわからなくても見てればなんとな〜くわかるんだぞ? 私には。龍門淵はみんな仲良いな? ワイワイと盛り上がってる。
さて、じゃあ話を元に戻すかーって思った時に、チャイムが鳴った。仕方ない、私が行くかー。
「む、流石にもう心当たりは無いんだが、誰だ……っていきなり開けるな! 蒲原!」
「もう遅いぞ?」
開けたら、そこにいたのは風越の……。
「お、文ちゃん達だ、どうしたんだー?」
「手伝いに来たし!」
って、なんか猫っぽいのが言ったんだー。
智美 side out
まこ side
「さて、行くとするかの」
わしは今まで良い意味でも悪い意味でも干渉してこんかったが、今回ばかりは動くと決めた。
「行くってどこに? まこ」
「決まっとる、鶴賀んとこじゃ。
応援するのはわしらの勝手、それだけではただの自己満足にすぎんじゃろ?
少しでも京太郎の役に立つことせんと、わしは自分を許せんよ。
例え罵られようが許されなかろうが構わん、わしはわしのやり方で京太郎に協力するだけじゃ」
みんなは久が封じ込まれたのも咲が河に騙されたうえ搶樌で狙い打ちされたのも、京太郎の情報が原因だと思っとる。
勿論それもあるが、それだけであそこまでできるもんか? わしにゃあ情報だけじゃ同じことはできん。
つまりじゃ、それができる様になる前提があったとわしは考えた。それで鶴賀の牌符を見とったら、ある事に気づいたんじゃ。
「久、鶴賀の強さの一因は対策じゃ。
どこ相手じゃろうと、研究して対策しとったのが牌符を見てようわかった。
……似たような経験に記憶があるじゃろ? しかも清澄の部室で」
「……須賀君との東風戦。それじゃあ、その対策を練ったのは!」
少しは頭が回ってきたか? 久。
「そうじゃ、わしは京太郎だと思っとる。
わしの麻雀から得るのは難しいとか言いながら、しっかり持っていきおった」
わしは膨大な過去の対局を記憶に残して、そこから似た局面を引き出すことができる。それを京太郎は逐次情報を集めた上で研究し尽くし、対局に臨むことで自分の物にした。
勿論研究と対策自体は誰にでもできるし、やっとるとこは多い。じゃがその深さが違い過ぎる、でなければ搶樌などあのギリギリの局面で狙えん。
そしてそれだけの信頼を勝ち取ったのなら……、今の京太郎は鶴賀の大将より手強いということにもなる。ただし、裏を返せば初見に弱いとも言えるが。まあ、対策有無の差であって実力が低いという意味には決してならんがの。
「あ、靖子? 鶴賀が泊まってるホテル、わかる!?」
やっとらしくなったの? そうじゃ、それが竹井久じゃ。わしは藤田プロに電話する久を見ながらそう思っとった……。
まこ side out
モモ side
龍門淵が来たと思ったら、風越が来たっす。まあ、龍門淵は加治木先輩から聞いてたから、まだわかるっすけど風越とは何も無かった……って、あれっすか? 部長が話したからとか?
「夜分にごめんなさい、加治木さん」
「いや、構わないが……とりあえず中に入って説明してくれるか?」
和室で良かったっすね、これで十五人っすよ? 割と限界な人数に膨れあがった室内で話が始まったっす。
「まずは衣から頼む」
「うむ、実はキョータローに必要だと思って男子の情報を洗ってきた。
量が量だからな、牌符と画像を整理して一通り目を通し、絞り込んである。
キョータローに見せる前にユミ達と確認しようと思っていたのだ」
「それはありがたいな、私達はこれから手をつける所だった」
京さん、ホントに友達っすか? 普通一緒に打っただけでここまでしないっすよ? それとも聞いてないだけで何か特別な理由があるんすかね?
「あら、それは丁度良かったわ」
今度は風越っすか……。
「丁度良いということは……」
「ええ、須賀君には間接的にだけど助けられたと私達は思ってるわ。
それで新人分の情報整理が必要だろうから手伝いたくて来たの」
こっちもっすか? まさか本当に?
「あー、文ちゃんから聞いたのかー?」
「聞いたし! 私達にとっては他人事じゃないから気合いも入った。
文堂も助けられたし、私も折れそうになった時、耐えられたのは話を聞いたからだし」
うわー、京さんの影響力が凄過ぎるっす、でもわかるっすよ? 私も助けられた一人っすから。
「ならば今はキョータローのために協力して迅速に確認せぬか?」
「そうね、あまり時間はかけられないから急ぎましょう?」
「そうだな、では全員よろしく頼む」
そう加治木先輩が言って頭を下げた直後、三度目の来客を知らせるチャイムが鳴った……。
モモ side out
鶴賀に、龍門淵に、風越にと京太郎は直接間接問わず影響を与えました。その結果、こんなことに。
そして遂にまこが動き、決戦四校が!
次回、(別の意味で)デュエルスタンバイ! あー、恐ろしい(汗
ちなみに和室、人口密度やばいですねw
そうそう、ころたんは咲日和から連れてきました! ころたん、イェ〜イ♪ w