咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道 作:しおんの書棚
智美 side
ユミちんと、ころたんが出ていった後、キョウタの打ち筋がわかる私達を一人含めた四人チーム三つ作って分担。作業を効率よく進めるのに態と時間差ができる組合せにしたんだ、まあ佳織はアレだからそこは龍門淵二人な?
こうすれば終わったチームから届けて見てる間に次が終わるだろー? まあ、実際のところは龍門渕でしっかりやってあったから余裕がある位なんだけどな? そういうことで私のチームから届けに行くぞー。
「キョウタ〜、お届け物だぞー」
チャイムを鳴らしてから声をかけるとキョウタが出てきた。
「部長、お届け物って……、はっ? え?
透華さん……は、まだわかるとしても風越のお二人は何故ここに?」
「まあまあ、キョウタ。説明するから、とりあえず中に入るぞー」
こういう時は多少強引な方が手っ取り早いんだよなー、キョウタは。だから私はそのまま中に入ったんだけど、そこには予想外の物があってな?
「……まさか持ち込んでるとは思わなかったぞ?」
ホテルの和室に備え付けられたテーブルには広げられたマットと牌、私はまだキョウタの信念を甘く見てたと知ったんだ……。
智美 side out
美穂子 side
この人が須賀京太郎君、風越は女子校だからよくわからないんだけど、男の子の金髪って普通なのかしら? いけない、思考が別な方向にいってるわね、まずは……。
「初めまして、風越女子三年の福路美穂子です」
「二年の池田華菜だし!」
挨拶は大切よね? そう思って告げた私に華菜も続いたわ。
「鶴賀学園麻雀部一年の須賀京太郎です。
それにしても凄いメンバーですね、部長の福路さんと大将の池田さんとは驚きました。
とりあえず立ち話もなんですから中へどうぞ、勿論、友人の透華さんも遠慮なく」
やっぱり……、今のやり取りには戸惑いがなかったわ、つまり私達のことをよく知ってるのね?
「失礼しますわ!」
龍門渕さんはそういうと迷うことなく中へ、私達もお言葉に甘えましょう。
「失礼するわね、須賀君」
「お邪魔するし!」
お部屋に入って、すぐ目に映ったのはテーブルを見つめる蒲原さん、その視線を追えば……。
「あの、どうして
牌を持ち込む人はいるかもしれないわ、けど手牌も山も関係なく全て表にして打つ、少なくても私は見聞きしたことがなくて……。
「ああ、あれですか? 四人分打っていたんです、男子団体戦の牌符を実際に」
えっと、それだけじゃわからないんだけど困ったわね……。
「どういうことだし!?」
ありがとう、華菜!
「そうですね、簡単にいえば
こうして実際に打つと、どう考えていたのかより見えてきますし、打ち筋や癖も同様です。
セオリーからのズレが多ければ、能力持ちか判別できて特徴も掴めるので対策にもなります」
「牌符からだけじゃ足りないということなの?」
風越では相手を知るために牌符を見るわ、けどさっきの方法論からいえば、それだけじゃ足りないということになる。
「一概にはいえませんね、福路さんの様に
ですが、私は自分のできることを全てやって、後悔しない一打を積み上げる。
その結果なら勝っても負けても納得できますよね? そういう麻雀が打ちたいんです。
そして常に挑戦し続けると決めた結果、辿り着いたのがこの方法だっただけですよ」
須賀君は普通に説明してくれたのだけど、その言葉は確かな重さと熱量を伴って私に届いたわ。鶴賀の人達、龍門淵の人達、華菜や文堂さん、そして私自身が彼に協力したくなったのかわかった気がして。
!? ちょっと待って! 今、私を
美穂子 side out
透華 side
いい覚悟ですわ、京太郎! そうでなくては!! わたくしは心からそう思っていました。
比べてわたくしは副将戦を最後まで自分の意思で打ちきれなかった、それは京太郎のいう後悔しない一打を積み上げきれなかったということ、不甲斐なくて不完全燃焼もいいところです。
ふと見まわせばいい面子ですわね? 京太郎の調整になりますし、わたくしも今の京太郎と打ちたくて仕方ありませんわ! ここは一つ提案とまいりましょう!
「京太郎、研究は勿論大切ですわ! ですが、もっと良いものが目の前にありましてよ?」
「そうですね、普段打つ機会のない相手との対局は得るものが多いかもしれません」
あら、ダシに使われましたわね? でも構いませんわ!
「そういうことなら相手になるし!」
「一理ありますね、それではよろしくお願いします、先輩方。
ですが先にいっておきます、鶴賀は今年の団体戦全国出場を決めた麻雀部です。
その一員である私が負ける訳にはいきません、ですから……」
そういった京太郎は、雀士の自分を曝け出しましたわ、絶対の意志をその瞳に宿して。
「その壁、全力で乗り越えてみせましょう!」
いい、いいですわ! 京太郎!! そうでなくては張り合いがないというもの!
わたくしはこの一戦に全力で挑み、打ち勝って見せますわよ? そして暴いてみせますわ! フランの正体を!
透華 side out
京太郎 side
それにしても随分と豪華なメンバーだな、まだ何をしにきたかも聞いてないんだけど、俺に異論なんかある訳がない。
女子個人戦全国出場の常連、福路美穂子さん。
一年から名門風越の大将を務める、池田華菜さん。
デジタルだけならず一撃があり、詳細不明の能力すら持つ、龍門淵透華さん。
不思議なもんだ、清澄にいた頃ならネームバリューだけで負けを覚悟した相手、なのに今の俺は卓へつけば
麻雀最大の敵は自分自身というのが俺の持論、まあ麻雀に限らず競技全般にいえることだが、これをクリアするのはとても難しい。もしかしたら和は対局中、今の俺と
「あー、あんまり時間かけてると目的が果たせなくなるぞ?」
部長の言葉から
「それもそうですわね、なら東風戦で勝負ですわ!」
「そうね、そうしましょう」
「わかったし!」
……もしかして池田さんと福路さんって、咲と和みたいな関係なのか? ただの先輩後輩の距離感じゃない気がする、阿吽の呼吸というか分かり合ってるというか。まあ、今は関係ない話だ、始めるとしようか!
「そうですね、では早速始めましょう!」
起家は池田さん、透華さん、福路さん、俺の順。さて、有言実行して明日に弾みをつけよう! 鶴賀で鍛えた俺の麻雀で!
京太郎 side out
華菜 side
この人が文堂の言ってた……、でも今は明るくて自信に満ちてるし! 私はそれが嬉しかった、鶴賀へ行って加治木さんにあそこまで言わせたのは、須賀自身築き上げた物だから。
私達はキャプテンのお陰で今がある、けど須賀は自力で……、ホント凄いし! あとは打てばわかる、そういう想いを込めて最初の牌を切った。
打ってるメンツは全員堅いってわかってる、加治木さんの話からいけば、その元が須賀の麻雀だから間違いないし!
そして、一番打点が高いのは、私! 慎重に、それでいて必要な時は強気にでる、それが私の麻雀だから!
「リーチだし!」
出あがりなんかありえない面子、ツモってみせる!
「チーですわ!」
一発が潰された!
「ポン」
キャプテン!? 龍門淵の捨てた東を鳴いて特急券だし! そう思いながら須賀を見て目を疑った、だって笑ってるし!
「やっぱり楽しいですね、麻雀は。ですが、
そういった須賀が無造作に切った牌は、私のリーチを難なく躱して通った……。
華菜 side out
美穂子 side
華菜のリーチは中盤に差し掛かった頃、そして今は終盤まできてる。華菜はツモれなくて、誰も振らない状況がずっと続いてたわ。そして遂に全員が聴牌、一番危険なのは勿論華菜、あの言葉は華菜に向けたものだったのね?
ここまで見てきてわかったのは、須賀君の麻雀が私の知る中でも一,二を争うほど堅実だということ。それは
「随分と余裕があるんですね、福路さん」
「え?」
そう言った須賀君は、まるで視えてるかの様に難なく通してみせた、三人の聴牌をするりと潜り抜けて。
「そろそろ
華菜が運良く通った。
「えっと、私は本気よ?」
龍門淵さんが、遂に降りた。
「片目では説得力がありません、福路さん、私は
それに貴女はまだ降りない、
確かにこの状況、降りないなら視るしか……って、まさか!
「私の牌符、から!?」
そして、私は
美穂子 side out
透華 side
鶴賀のブレーンでコーチと称される一年生、京太郎。先程言っていた通り、
そして、私が気づかなかった福路さんの秘密、彼女も能力者だった……。そうとわかれば納得できる場面を、幾つも思い出しましたわ、これがヤバげに感じた理由でしたのね。
ですが、
そういえば団体戦で珍しく振ってましたわね? もしやアレも京太郎が関係して? そんなことを考えながら様子を伺えば、福路さんは以前見たように確信を持って切りましたわ。
そして、その瞬間、良く通る声が聞こえました。
「ロン」
ガタっと音がした方を向けば、驚愕の表情を浮かべている福路さん。珍しいですわね、冷静を絵に描いた様な貴女でも、その様な行動をされることがあるんですのね。
「
「キョウタに能力の類いは通用しないぞ?」
いいタイミングですわ、流石は部長ということでしょうか。
「え?」
あら、随分と可愛いらしく驚きになりますのね、福路さん?
「そうですわね、京太郎に能力は通用しませんわ、衣ですら無効化されましたから。
先程の行動と言葉からいって、右目を開ければ針の穴を通す様に視えるのでしょう?
ですが、無効化されて自覚できる能力と、できない能力があるようですわね。
貴女の場合、自覚できない部類の様ですから、見誤って振り込むのは当然」
「うむ、其方の気持ちはわからんでもないが、今夜はここまでにして貰おう」
わたくしの言葉に続いて聞こえてきたのは……、衣のそんな言葉でした。
透華 side out
衣 side
サトミに塩梅を尋ねるべく連絡してみれば、対局することになったと聞き、ハギヨシの“すまほ”なる物で奴腹と共に見ていた訳だが……。
想像以上の打ち手になったものだな、キョータロー? いや研鑽を永続するのだ、遥か彼方の限界すら超えてみせるのだろう、流石は衣が認めた打ち手で友達だ。
先程の駆け引き、誰も気づいておらんのか? 態と能力に頼らせ振らせるとは策を講じるのもお手のものか、手札は多いに越したことはない、それを彼奴相手に試す度胸は称賛に値する。
さて、まだ本題すら告げてないとはサトミの言、迅速に事を済ませるとしよう。清澄についての言及は避けざるを得んが奴腹も納得済、悪く思うなよ?
「キョータロー、よく聞け。
鶴賀は勿論だが、我ら龍門淵と風越合わせて十五人が、一年男子の情報を整理した。
順次届く故、明日に備えよ、あまり時間も無いことだしな」
「それが目的で、ここに……」
一人納得したのか、そう呟くキョータロー、そして……。
「ありがとうございます、皆さんにもそう伝えてください、衣さん。
その、何故風越までという疑問は残りますが、感謝の気持ちに変わりはありません。
福路さん、池田さん、透華さん、対局ありがとうございました。
お陰様で自信をもって挑めます、勿論データも活かして結果で応えましょう」
一礼してから、そういったキョータローは笑顔で、衣はそれが一番嬉しかった。
衣 side out
京太郎の実力、その一端が明かされました。
美穂子をして全国レベル、しかもその比較対象は女子ですから、相当ですね。
ところで京太郎が主人公だと、こういったエピソードを出さないのは物語として不自然ですよね?
もう少し個人戦前夜にお付き合いください、団体戦を終えて本筋の京太郎物語になったので!