咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道   作:しおんの書棚

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大変お待たせしましたが復活です!よろしければ、またお付き合い下さい。

ちなみに“この物語では“こうなんだーってくらい単純に楽しんでいただけると嬉しいです。


追伸
感想などいただけると狂喜乱舞しますw
モチベーションも上がるので、よろしくお願いします♪



五本場 絆は力に、そして不器用な優しさ

モモ side

 

 清澄が来て、いつの間にか意識を失った私が気がついたのは、ついさっき。体調に問題なかったので京さんの所へと来たら、風越の先鋒さんを口説いてる最中だったっす。

 とりあえず部長と一緒に問答無用で簀巻きにしたんすけど、後のことをまったく考えずに勢いでやったから、どうしたもんすかね……。

 

「東横さん、だったわね? ちょっといいかしら」

 

 そういうと風越の先鋒さんは私の手を引いて、部屋の隅に移動したっす。

 

「あのね、東横さん? 須賀君は私を励ましてくれただけなの、誤解なのよ?」

 

 最初から聞いてた訳じゃないから、そうかもしれないっすけど……。

 

「モモ〜、福路さんのいう通りだぞ?」

 

 いつの間にか部長も混ざって……、え!?

 

「ちょっ、部長! それなら止めて欲しかったっす!」

 

「面白いからいいかと思ってなー、ワハハ」

 

 笑いごとじゃないっす! あ〜、最悪っすよ、そう思って頭を抱えていたら小声で福路さんが……。

 

「東横さんは須賀君のことが好きなのね? 大丈夫よ、私は取ったりしないわ」

 

 私は顔が熱くなるのを感じたっす、福路さんにはバレバレっすか!?

 

「それとさっきのはね? いつから片目で麻雀していたか質問を受けたんだけど……。

 私が動揺したから須賀君は話を打ち切って気遣ってくれただけなのよ、だから安心してね?」

 

 勘違いでとんでもないことを! 慌てて京さんの所へ戻った私は急いで解放したっす、多分顔は赤いままだったと思うけど構っている余裕なんてまったくなかったんすから……。

 

モモ side out

 

 

美穂子 side

 

 今日、見聞きしたり、少しだけ話した私でも須賀君が仲間想いで、とても信頼されてるのはわかったわ。

 東横さんが須賀君を想ってることに関しては、清澄の拒絶具合やさっきの言動を見れば、多分誰でも気づくんじゃないかしら?

 

「それにしてもさっきの質問は……」

 

 慌てて解放する東横さんを見ながら、私は須賀君の意図を考える。思い起こせば小学生低学年の頃に目を閉じて、それ以降、麻雀以外では開かなかった私。

 そしてある日気づいたの、両目で見るとそれまで以上に視野が広がって得られる判断材料が格段に増えること、その情報量を処理して知識や経験からの読みが格段に上がる状態になれるって。

 私はそれを視界(・・)と名付けて、ここぞという時に使い勝ってきたわ。使い始めた頃は、時間にもよるけど頭痛や熱が出たりしてたんだけど……。いつの間にかそれも無くなった、使い熟せるようになったっていうより適応した(・・・・)んだと私は思ってるの。リスクが消えて、視界は能力に昇華した(・・・・・・・・・・)んだって。

 

「まさか……」

 

 須賀君の質問は、いつから片目で麻雀を打っていたかだったわね。つまり自分の物にする(・・・・・・・)ための質問! もしも私に能力者の資質があってリスクが消えたとするわ、須賀君にそれが無かったならリスクを背負うことになる。

 

「けど、積み上げるつもりなのね?」

 

 恐らく確認のためだった質問、答えがあってもなくても須賀君は鍛えるつもりなんだって私には思えたの。硬い麻雀をより高みへ引き上げるために必要、そう彼が判断したなら……。

 

美穂子 side out

 

 

京太郎 side

 

 衣さんが風越の団体戦メンバーを帰して、その前から次々と届く情報を俺は頭に叩き込んでいく。リハーサルにしては強過ぎるメンバーと打てたのも、勝負感の維持・向上へと繋がってありがたかった。

 

「あとは福路さんの件か……」

 

 あの反応は俺の話した時期があってたってことだ、つまり小学生の頃から片目で打ち、鍛え続けたことになる。試合を見る限り今はリスクが無いか、少なくてもかなりの時間、問題ないと……。

 

「仮に問題なかったとしたら、能力に昇華されたってとこだな」

 

 なら、俺は? 時間的に今は(・・)無理だけど取り入れられる物はある、全国に行ければ(・・・・・・・)だけどな。だってそうだろ? 数ヶ月でも今よりは確実に成長できる見本が存在するんだ、福路さんっていう結果を伴って。

 まあ、能力に昇華できるとは思っていない、だけど今より精度が上がるのだけは確かだ、ならやらない手はないだろ? 特に俺の麻雀なら、な。

 

「結局、勝ち抜くってことに集約される訳だ」

 

 神代さん達との約束もある、鶴賀の仲間として意地も。だから俺は絶対に負けられない、勿論、誰にも負けてやる気なんかないけどさ。

 とにかく考えは纏まった、あとはひたすらデータと睨めっこだな。俺はみんなが協力してくれた成果に集中する、万全な状態で明日勝つ、ただそれだけのために……。

 

京太郎 side out

 

 

優希 side

 

 私達は京太郎に必要なデータを十分纏めたつもりだった、けど全然足りないって天江と加治木さんが加わって思い知ったんだじぇ。

 

「ここまで必要なんか、京太郎……」

 

 染谷先輩の声が聞こえる。きっと対局の記憶(・・・・・)っていうある意味でデータを使うから、そう言ったんだって私は思ったんだじょ。

 

「参ったわね、マコのいう通り相手を丸裸にしてでも必ず勝ち筋を見つけるってレベルよ?」

 

「その結果を見たであろう? 風越の二人もトーカも研究し尽くされていた。

 故にキョータローが負けるとしたら、基本的に初見殺しか天運が相手にある時のみ。

 能力などキョータロー相手に無意味、故に完全なる実力勝負、衣はそれが楽しくて仕方ない」

 

 天江の能力は、麻雀は強過ぎた。だって全然勝負にならなかったんだじょ、けどそれは天江にとってもつまらなかったってことで……、私は思わず聞いてた。

 

「京太郎との麻雀、どうだったんだじぇ?」

 

「たった一週間の腕で追い詰められた。

 勝ったのは衣だったが……、あれは運が傾いただけのこと。

 心躍る対局などあれ以来一度も……、いや決勝はまあ楽しめたか」

 

 強いっていうのは孤独なのか……、勝てれば楽しいとしか私は思ってなかった。けど天江は寂しそうな顔をしてから、嬉しさが溢れる表情になったんだじぇ。

 

「東場の、衣は何度打っても貴様に負けることは無い」

 

 うっ、そこまで断言されると流石に凹むんだじょ……。

 

「だがキョータローは別だ、次に打って必ず勝てるなどと間違っても衣には言えん。

 キョータローは凡人だが努力とあらゆる手段で実力を引き上げ続ける、常に進化しているのだ。

 その成長速度こそがキョータローの強み、それをキョータロー自身よく知っているのだからな」

 

 さっきの麻雀を思い出す。硬い守りに揺さぶりや情報制限、やってるのは基本なのに勝ったのは京太郎。私は自分の東場に強い能力に頼り過ぎだったって、二度と忘れられない教訓を今度こそ心に刻み込まれたんだじょ。

 それとさっき嬉しそうだったのは京太郎のことを考えた時に自然と浮かんだ表情で、それだけ気に入ってるし、一緒に打って楽しかったんだなって私に思わせた。

 

「それについては私も同意する」

 

 そして加治木さんが引き継ぐ様に切り出す。

 

「須賀君ほどの熱意を持って早くから打ち込まなかったのか、そう思ったことは数え切れない。

 今回の結果も須賀君がいたからこそ成し得たものだと私は、私達は実感している。

 須賀君が来てくれなければ運良く決勝まで辿り着いても負けただろうな、まず間違いなく」

 

「うむ、その通りだな、その場合はまず衣達が勝っていただろう。

 まあ、清澄の嶺上使いがどこまでのモノ(・・)かが懸念材料といったところだ。

 片鱗は見たが、あれで全力だったと言い切れる程の確証が無い故な」

 

 天江のいう通り咲ちゃんはうちで一番強い、けど京太郎のことがあって、もしかしたら何かが噛み合っていなかったのかも。私はそんなことを考えてたんだじぇ、そしたら……。

 

「さて、君達の望みは叶えた、データもこれでいいだろう。

 それにそろそろ君達も宿舎に戻るべきだ、ここにいない二人は仲間なのだろう?」

 

「本当は二人も来たかったのよ、けど……」

 

 加治木さんの言葉に部長が答えかけたけど、それを遮ったのも加治木さんだった。

 

「私は責めてなどいない、誰にでも事情があると理解しているつもりだからな。

 だが、理由はどうあれ彼女達は須賀君より自身を優先したのも事実。

 それに君達とて事情があれば、恐らくこなかっただろう?」

 

「それは……」

 

 うっ、そう言われると弱いじぇ……。部長も口籠っちゃったし、染谷先輩は黙ったままで。

 

「沈黙が答えだ、衣達は京太郎と出会ってすぐに個人戦を辞退した。

 トーカなどハラムラだったか? あれと決着をつけたがっていたが迷いすらしなかったな」

 

「私達も同じだ、須賀君が入部して人柄を知り早々にな。

 繰り返すが責めている訳ではない、ただ事実を述べたまでだ」

 

 そんな二校と私達、この差はどこでできちゃったのか私にはわからないままホテルを後にしたんだじぇ……。

 

優希 side out

 

 

衣 side

 

「まったくもってユミは優しいな」

 

 奴腹が出て行った後でそう告げる。清澄が気づいたかはわからん、しかし気持ちがあるなら動き続けろ(・・・・・)と発破をかけるとは。

 

「私はあくまでも事実を述べたまでだ、どうするかは彼女達次第、そうだろう、衣?」

 

「まあ、言わんとしていることはわからんでもない。かといって、簡単に許せるかといえば……」

 

 答えは否、反省すればよいというものでもない。既に実害をキョータローは被ったのだ。

 

「だが、私達が変われた(・・・・)のはある意味、そのお陰ともいえる。

 確かに許し難いと思うことは多い、しかし人は間違いを犯すものだろう?

 心当たりがある筈だ」

 

 確かにユミのいう通り、衣が変われたのはキョータローのお陰、それまでの衣が誤ちだったなら……。

 

「奴腹だけを責めるのは理不尽だというのだな?」

 

「ああ、私達とて同じ轍を踏まなかった保証は無い。ならば責めるのではなく、償いに期待する。

 少なくとも今回動いたのだからなんらかの変化があった筈だ、簡単に認めはしないが」

 

 うむ、まあどちらにせよ、決めるのは……。

 

「衣達がどう思おうとキョータローが決めること、といったところだな」

 

 衣の言葉にユミは深く頷いた。

 

衣 side out

 

 

ゆみ side

 

 私達が纏めていたのは男子団体戦決勝、能力と思わしきモノも確認された。とはいえ、それ以前のデータは既に須賀君の下へ届き、検証・把握している筈。

 つまり駄目押しのこのデータを届ければ、須賀君の事前準備は整う。そういう意味で彼女らが関わるリスクを最小限に抑え、そこに私と衣が加わり、問題無い物が準備できた訳だが……。

 

「須賀君、加治木だ、入るぞ」

 

 そう告げて衣と入室した私達は目の前の光景に言葉を失った。唖然とするみんなの前で須賀君は四人分を打っていたが、それは決勝戦の牌符に酷似していたからだ。

 

「事前のデータから、ここまで読み切った……のか?」

 

 しかも、私達の声は届いていない。それだけ集中しているし、相手になりきり思考している。加えてこちらに反応しないのは、外因で須賀君の集中力をそう簡単に乱せない証拠。

 

「また強くなったな。衣もさらに地力を引き上げねば……、次は負けかねん」

 

 その言葉に思わず振り返った。御守りがなければあれほど対抗できなかったと理解しているし、決して地力が低い訳ではない衣にそこまで危機感を与えるのか、今の須賀君は。

 

「これならば私達の出番は無いな」

 

 そう判断した私は須賀君の側にデータとメモを置くとみんなに声をかけた。

 

「ここからは私達がいても意味がない、須賀君一人にするのも気遣いだ」

 

「その様だな、トーカ、衣達も戻るとしよう」

 

「そうですわね、流石に驚きましたが衣のいう通りにしますわ」

 

 こうして私達は解散、あとは須賀君次第となったのだった……。

 

ゆみ side out

 

 

京太郎 side

 

 ふと気づけば部屋には俺一人。あー、集中し過ぎて気づかなかったのか? 申し訳ないことをしたと思った時、視界に追加データとメモが映った。

 

「加治木先輩らしいな」

 

 目を通したメモには一言、『自身を貫け』の文字。俺は幸せ者だ、理解してくれて、協力してくれる人が沢山できた。勝てじゃなく、自身を貫けってことは勝敗よりも俺の麻雀を、俺自身を尊重してくれたってことだから。

 

「ええ、自身を貫きますよ、加治木先輩。

 みんなや衣さん達、風越の団体戦メンバーの協力、決して無駄にはしません」

 

 だから、改めてここに誓う。俺は俺自身の麻雀を貫いた結果、勝って気持ちに報いると。

 

「最後のデータも活かしきって……」

 

 そう言いながら読みだしたところで、妙な違和感を感じた。なんだ? 何かこれまでの纏め方とは若干違う様な……。

 

「……今は気にしている場合じゃない、か」

 

 時間も時間だ、そう思った俺は内容だけに集中していく。自身を貫き通すために……。

 

京太郎 side out




京太郎は能力無しで凡人ですが、努力の仕方も自分自身も理解しています。
そうなれば辿る強化方法などある程度限られるのですが、和と美穂子という必要な要素と出会いました。
加えてこれまで、清澄での経験、龍門淵邸での対局、鶴賀女子団体戦の情報収集などを通して目指す指標が確立されたのでブレません。
勿論、フランとしての対局数は膨大。今後が楽しみですね!

……と、自分を追い込む筆者でした(汗

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