咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道 作:しおんの書棚
そうなると女子と同じだけ回らない訳ですが、回るようにしました(汗
追記
皆さんの応援が力になっています、感想、高評価ありがとうございます!
聡 side
私が注目する組合せの一つ、全中チャンプと須賀君が遂に卓を囲むか……。
「それにしても南浦プロ、今年の長野は男子個人戦参加者が非常に多いですね」
「ああ、その結果、例年なら一人の男子個人戦全国枠が二人になった訳だ」
まあ、
だが、それは須賀君の参加でどうなるかわからなくなった。とはいえ話題性でいけば須賀君に軍配が上がる、女子団体戦と男子個人戦双方に初参加の鶴賀からインターハイ出場となれば。
「そうですね。
そして十三戦現在の状況ですが、トップは変わらず二年連続全国出場の裾花高校大将。
二位は辛うじて全中チャンプ、三位に僅差で鶴賀の須賀選手。
これから始まる十四戦目で二位と三位の直接対決となりますがどうお考えですか?」
「この一戦は今後の展開に大きな影響を及ぼしかねん」
全中チャンプは能力持ちだ、だが女子の異常さに比べれば強力という程ではない。だからこそ麻雀の実力も決して低くはないが、実力という点でいけば須賀君に軍配が上がる。
今までの全中チャンプの相手はネームバリューで実力を発揮できていない者が多かったが須賀君はどうだろうか、私には誰相手でも変わらないと思える。
「と、いいますと?」
「メンタルの問題だ。
仮にここで須賀君が勝てば、それは周りに伝播するだろう、勿論全中チャンプ自身にも。
逆を言えば全中チャンプは勝てばいい、だが須賀君が簡単に負けるとも思えないがな」
十三戦、放銃零、これは途轍もない記録だ。確かに男子のレベルは女子より低いが、私の見た限り須賀君は振らないという意識が他者と一線を画す。
当然の話、誰もがそう思って麻雀を打つが、どこかで博打を打たなければならない状況に陥るもの。だが須賀君にそれは見られなかった、事前の危機管理が徹底しているからだ。まあ、何をどうすればあそこまで備えられるのか私にもわからんが、
「確かに飲まれている選手は多い様に見えますね、参加者の多い一年生は特に。
その全中チャンプを須賀選手が下せば、影響が出るというのも頷けます」
さて、今までとは違い、今回は能力持ち。ここで彼、須賀君の真価が問われる。見たいものだな、
聡 side out
京太郎 side
流石は能力持ち、なかなか差を縮められなかったけど直接対決なら関係ない。俺としては、できるだけ大差をつけて勝っておかないとな、まあ相手もそのつもりなんだろうけどさ。
ちなみに全中チャンプの能力は五巡目までにリーチした場合、十巡目に絶対ツモるっていう場の支配の一種。これにヤミテンを混ぜてあがったり、引っかけたりと有利に立ち回るスタイルでそういう意味では上手い。そして
「さて、席決めしますか」
おーおー、自信たっぷりだな。ちなみに視線は俺に向けられてたりするんだが、こうやっていつも圧をかけてペースを乱そうとする。とはいえこんな程度が俺に通じる訳ないんだよ、打ってきた相手がヤバ過ぎてさ。まあ、ここは演技といこうか、油断してもらうとしよう。
「……そう、だな」
なにやら満足そうだ、単純な奴だな。とりあえず起家が全中チャンプ、東福寺の次鋒、俺、千曲東の中堅か。
東一局はさっさと流すに限る、できれば親から上がりたいが。配牌は三向聴か、いつもと同じく安牌を確保しながら行くとしよう、全中チャンプの手が早そうだ。
そして五巡目、全中チャンプが張った、さてどうくる?
「リーチ」
来たか。周りは手が遅いのか顔色が悪いな、どうも知ってるらしい、俺もそれらしい顔をしておく。
東福寺は安牌を切った、そして俺の番。実は一向聴だったんだが来てくれた、安牌を素知らぬ顔で切る。
お? 千曲東の中堅は三年生なんだけど俺の聴牌に気づいたらしい、流石中堅を任されるだけはある。その捨て牌を見て、他の二人も気づいた。
全中チャンプの顔色が悪いな、まあ逃げられないのにリーチするからだ。プレッシャーをかけるのにやったんだろうが五巡目は悪手だろ、安牌が五つもある状況だぞ? 俺ならヤミテン一択だ。
「ロン、チャンタ、東、ドラ3、跳満は12,000です」
風牌がドラだったのはありがたかった、幸先のいいスタートだな、俺は全中チャンプから上がって親を流すことにも成功した。
京太郎 side out
ゆみ side
『鶴賀の須賀選手、全中チャンプに直撃! 先制は須賀選手となりました!』
『普通なら五巡目で安牌を確保しようとは思わんが、全中チャンプの能力を知っていれば話は別だ。
有名税というヤツだな、三人共確保済。須賀君の聴牌に気づいた千曲東の中堅は三年、経験が違う』
南浦プロのいう通り、知っていれば対策するのは当然。そして全中チャンプはリーチしづらくなったな、須賀君は楔を打ち込んだ訳だ。だが、目的は他にもある。
「キョータローめ、味な真似をする。この一戦、奴に
流石は衣、気づいたか。
「ああ、私もそう思う、後半戦への布石だろう」
「……なるほど、そういうことですか。
ではこの一戦、全中チャンプがリーチした場合、かかっても九巡以内に仕留めるつもりなんですのね」
私は頷く。そう、須賀君は全中チャンプに能力の喪失を気づかせないつもりなんだろう。
そして、それは
「相手がヤミテンでも振らない自信が京さんにはあるっす、誰でもできることじゃないっすね」
「流石はキョウタだなー、まあ福路さんと打ち合えるんだから当然だけどな?」
モモと蒲原の言う通り、須賀君の堅さがあって初めて成立する、まったく大した後輩でコーチだよ。私達は主語を隠しつつ話しながら須賀君の麻雀を目に焼き付けていた、自分の糧とするために。
ゆみ side out
京太郎 side
衣さんや加治木先輩辺りは俺の意図に気づいただろうな、実のところ全中チャンプは堅い方だけど福路さんや和に比べれば穴だらけだ、男子には通用しても女子に通用するほどの堅さじゃない。
しかも男子には少ない能力持ちだからか無意識だろうけど
まあ、だからこそ最初から狙っていた訳で、上手くハマった結果が東一局の結果に結びついた。
こうなると人間慎重になるもんだ、それはペースを乱す。俺が思うに自分を貫き通してこその麻雀だろ? それを乱されれば実力を発揮するのは難しい。ジャイアントキリングなんてのは麻雀に限らず、揺らいだ方が負けるっていういい例だろう。つまり、たたみかけるなら今ということだ。
その証拠に全中チャンプは三巡目で聴牌したにも関わらずリーチしなかった、はっきりいって逆だろう、さっきすべきじゃなかったんだ。ちなみに聴牌には全員気づいている、さっきの分を取り返そうとしてるのが雰囲気で伝わってくるからだ。和を知ってると本当に全中チャンプなのか信じられなくなるな、崩せば脆いって感じか?
おいおい、聴牌を崩して引き入れたってことは高めを狙いにいったってことだけど……。
「ポン」
東福寺の次鋒が鳴いた、特急券だ、そして聴牌。ついでに聴牌を崩して出てきた以上、もう一牌あるのが確定した訳だ。まあ、国士無双以外では使いようが無いから捨てるんだろうな。
「ポン」
今度は千曲東の中堅か、俺を警戒してとばしつつ、こっちも聴牌。言わんこっちゃない、自分のペースを乱したから他が動きやすくなった訳で、全中チャンプはもう降りるしかない。
両方に通すのは厳しいだろうから聴牌しても無意味、これで運は尽きた、もう上がれない。
東福寺の次鋒はツモ切り、そして俺の番だが張った、流れが変わったな? 二人に通るのは……こっちか、俺は迷わず切った。
京太郎 side out
聡 side
上手いな、ここでそうくるか。
「ここで須賀選手、七対子を聴牌して見事に通しました! 放銃零の腕前が冴えます!」
「それだけじゃないな、あの河から上がり牌は読めん、それでいて安牌を確保している。
こうなれば他は下りるか、運良く安牌を引く以外で凌げない」
そして、その先はもう決まった様なものだ。読み違えば振り、今の様に下りて時間を与えれば……。
『ツモ、七対子、ドラ2、満貫は2,000/4,000です』
当然、こうなる。これが本来の麻雀だ、須賀君はよく考えているな。
「鶴賀の須賀選手、他家をよそに見事ツモ!
東風戦での連続上がりは勝利を大きく引き寄せます、そして次の親は須賀選手!
南浦プロ、これは一気に行く可能性が高まりましたね」
「確かにな、ここでの立ち回り次第で決まるかもしれん。
とはいえ須賀君は自分の麻雀を崩すことはない、その上でどうするか楽しみだ」
この局の布石が東一局にあったと気づいたのは何人いるか……。あそこで全中チャンプに楔を打ち込んでペースを乱した結果、三人が動きやすくなり最も堅い須賀君は有利にたった。さらに動きやすくなった二人を利用して、ツモまでの時間を稼ぎ出したのだからな。
「そうですね、このまま須賀選手が独走するのか、それを阻むことができるのか!
予選前半戦注目の一戦、須賀選手の親番が始まります!」
私は須賀君の麻雀を既に認めている、ここから先が本当に楽しみだ。
聡 side out
まこ side
「ほんまに強くなったのお、京太郎は」
わしは思わず呟いていた、昨日の麻雀では言葉を、今日はそれに加えて……。
「ええ、相手のペースを乱して自分の土俵に引きづり込んだわ。
三人に下りさせて、ツモる確率を上げるのに時間を稼ぐ、その間に上がってもいい。
完全に須賀君のペースよ、自分の麻雀で場を支配したともいえるわね」
わしは頷く。そうじゃ、久のいう通り能力に頼らずとも京太郎は場を支配してみせた、自分の麻雀で。
「東一局が効いとるの、あれが布石じゃ」
「どういうことだじぇ?」
「全中チャンプは須賀君ほどじゃないけど堅い方よ、そのうえ能力持ち。
けどね、私達も知る通り穴がある、そこを利用してペースを乱したのよ」
久のいう通り京太郎がペースを乱したのは確かじゃ、けどそれだけじゃなか。
「もう一つ、京太郎は全中チャンプに気づかせないつもりじゃ」
「ええ、そうね、私もそう思うわ」
まあ、知っとるからこそいえる話じゃ、知らなければ想像もできんよ、こんなことは。
「……京太郎は凄いじぇ、私はそんなこと考えながら打ったことないじょ」
久が優希を気遣ってアドバイスしちょるが、優希は考えて打てば強くなるタイプじゃなか。向いてるのはうちじゃ、理由はそれだけじゃないが、わしは京太郎の麻雀を応援しながら真剣に見続けていた。
わしは素の雀力が低い訳じゃなか、けど記憶に頼り過ぎて初心者に大負けした。
だからこそ京太郎の麻雀を目に焼き付けるんじゃ。自分の麻雀を貫くことの大切さとわしの持つ弱みを削る必要性、それを強く感じながら……。
まこ side out
【東風戦 十四戦目 東二局終了時点】
裾 花高校 先鋒 一年生 12,000点(-15,000点)
東福寺高校 次鋒 二年生 23,000点(- 4,000点)
鶴 賀学園 須賀 京太郎 47,000点(+20,000点)
千曲東高校 中堅 三年生 25,000点(- 2,000点)
京太郎の麻雀は考える麻雀です、できることはなんでもします。
それが異常な能力の無い雀士にできること、京太郎の強みの一つですね。