咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道   作:しおんの書棚

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大変お待たせしました、今回から鶴賀学園で京太郎の物語が始まります。


第ニ局 新たな環境
一本場 転入、鶴賀学園


京太郎 side

 

 目が覚める、見慣れない天井に此処が鶴賀の男子寮だと思い出した。

 

 高校生という事もあって男子寮は学園の敷地内。

 夜遊びして問題を起こさない様にこうなったらしい。

 そうは言っても外出届を出せば外出・外泊可能、休日まで缶詰じゃないあたり中々の匙加減だ。

 

 ちなみ転校した男子生徒が予想より多いのか、俺の部屋より奥は全部空室。

 そりゃ待遇も良くなる訳だと納得した。

 

 とにかく今日から俺は此処で学び、麻雀に打ち込む。

 気合いを入れて起きると身支度を整え朝食に向かった。

 

「初めて見る顔だね、新しい子かい?」

「はい、今日からお世話になる須賀京太郎です」

 

 声をかけてきたのは、まさにおふくろという雰囲気の年配女性で人当たりが良さそうな感じに好感を持った。

 

「そうかい、しっかり食べて頑張るんだよ」

「はい、ありがとうございます」

 

 そんな普通のやり取りが、やけに温かく感じる。やっぱりこの人も良い人だ。

 なんだろうな、モモが切っ掛けをくれて龍門渕の人達と友達になってさ。清澄を辞めるって考え始めてから出逢った人達は……みんな本当に温かくて。

 別に清澄が冷たかったとまでは思ってないけど現状を見れば、まるでこの道の選択を祝福してくれてるみたいに俺は感じてる。

 

 それに何もできなかった俺が衣さんを救ったって透華さん達は言ってくれた。

 だから思うんだ、きっとこれからも俺にしかできないことがあって、俺が俺らしく過ごすことでいろんな物を手に入れられるんじゃないかってさ。

 

 なら、やってみせるぜ? 昔に戻った須賀京太郎がこの鶴賀学園から最高の物語を生み出してやる。

 なんせ新たな学園生活は今日から始まるんだからな! 朝食を食べてお礼を言うと俺は歩き出した、進むべき道を見据えながら……。

 

京太郎 side out

 

 

モモ side

 

 京さんと一緒だった昨日は過去最高の日曜日。

 少し恥ずかしかったっすけど、好きな人と手を繋いで街を散策するのがどれだけ幸せなことか……。

 テレビで見聞きしても全く理解出来なかったのに実感できたっす!

 

 そして、今日からは……。

 

「SHRの前に皆さんへ朗報です、男子の転入生がこのクラスに来てくれました!」

 

 うちのクラスにも何人かいたっすけど既に転校したんすよね。

 それにしてもみんな騒ぎ過ぎじゃないっすか? ほぼ女子校だから、こうなると予想してはいたっすけど予想以上っすね。

 

「では、入って自己紹介をお願いしますね」

「失礼します」

 

 来たっす! ホントに京さんが鶴賀の制服で!

 私は事前に聞いてたっすけど転入してまさかの同じクラス、部活では三年間一緒ということも凄く嬉しくて。

 その幸せを噛み締めていたら京さんの自己紹介が始まったっす。

 

「皆さん、初めまして。清澄高校から転入して来た須賀京太郎です。

 今、力を入れているのは麻雀、特技は家事全般。

 

 それと髪は金髪なのですが地毛なので怖がらないでくれると助かります。

 クラスに男一人という事で迷惑をかけない様に努力しますが気付かないこともあるでしょう。

 その時はやんわりと教えて下さい、よろしくお願いします」

 

 私は気にならなかったけど地毛なのに金髪だからって結構苦労したんすね……、とにかく京さんはそう言って自己紹介を終えたっす。

 それにしてもクラスメートはそわそわしてるし、小声で話してる子も。むむっ、京さんだけは誰にも譲らないし渡さないっすよ!

 まだ、その……恋人って訳じゃないっすけど私が普通に見えてコミニュケーションを取れるのは京さん唯一人で普通の人とは京さんの価値が全く別次元。

 勿論、理由はそれだけじゃないっすよ? 優しくて気遣いのできる努力家な人柄に私は救われて惹かれたんすから。

 

「はい、静粛にね? それじゃあ須賀君はあそこの空いてる席に」

「わかりました」

 

 空いてる席って隣っすか!?

 京さんは席まで来て私と隣の子に挨拶、それから着席してSHRが始まった。

 

モモ side out

 

 

京太郎 side

 

 休み時間の質問責め、どこかしらから突き刺さる複数の視線。

 なるほど、これは転校する訳だと理解した。

 けど長続きはしないだろう、俺ってイケメンでも無いし今は物珍しいだけさ。勘違いするほど自惚れてないからな。

 そう感じているうちに気づけば、あっという間に放課後。

 

 ともかく昼休みに入部届は提出済、モモの案内で部室へ向かおうとする俺にクラスメート達が声をかけてきた。

 

「須賀くん、時間ある? 良かったらお話しない?」

「折角声かけてくれたのにごめん。

 麻雀部に入部したんだけど、大会まで期間があまり無いから練習頑張りたいんだ」

 

 俺は悪いと思いつつも、軽く頭を下げて断りを入れる。

 折角転入者である俺とコミニュケーションを取ろうとしてくれたんだ、最低限の礼節は当然必要だろう?

 それに此処は殆ど女子校、悪印象を与えて噂が広まりでもしたら大変な事になるしな。

 

「ううん、気にしないでね? 大会頑張って、応援してるからね!」

「ありがとう、良かったら明日の休み時間にでも話そうか。俺も早くクラスの一員になりたいからさ」

「OKOK、じゃあまた明日!」

 

 彼女達に笑顔で頷くと俺は教室を後にする、望んだ環境で全力を尽くすために。

 

京太郎 side out

 

 

ゆみ side

 

 モモの話によれば今日転入生、須賀京太郎という男子生徒が来る筈だ。

 例のアンケートとモモの情報から随分と不遇だったのは周知の事実、そんな彼は転校してまで麻雀に打ち込もうとしている。

 

 私とて蒲原に誘われて打ったのが切っ掛けで麻雀の楽しさや奥深さを知り虜となった一人。

 彼の境遇に同情しつつも同好の士として、モモの友人として。そして同じ部に所属する者として全力を尽くすつもりだ。

 

 私の目標は当初、高校生活最後の思い出として団体戦に出ることだったが今は違う。

 須賀君の情熱と覚悟から影響を受け、出るからには勝つと私は決めた。そうでなければ此処を選んだ彼に失礼極まりない。そんな私の雰囲気を察したのか、蒲原が話しかけてきた。

 

「ユミちんは本気になっちゃったみたいだなぁ、ワハハ」

「当たり前だ、私は彼が全力で取り組むために選んだ部の部員で三年だぞ。

 そういう蒲原だって部長で同じく三年なんだ、情けない姿は晒さないでくれよ?」

「ユミちんは難しいこと言うなぁ、ワハハ」

 

 そんなやり取りをハラハラしながら見ている妹尾。

 普段と変わりない様に見えて緊張が隠せない津山。

 それぞれの心境はともかくモモと須賀君が来るのを全員楽しみに待っていた、特に聞いただけで私に影響を与えた本人を。

 

「あそこが鶴賀学園麻雀部の部室っすよ、京さん。みんな待ってるっす!」

「そんなに引っ張らなくても部室は逃げないって、モモ」

「部室は逃げなくても、みんなはわからないっすよ?」

「お、おい、モモ。それはどう言う意味だ? 何を話したらそうなる!?」

「秘密っす!」

 

 ドア越しに少し離れた場所から聞こえてくる話振りで二人の距離感が伺えるな、モモは命の恩人と言い張ってたが……。誰がどう聞いても好意を隠せていない、仕方ないとも思うがな。

 

 私達は顔を見合わせると全員笑みを浮かべた。聞いたことの無い程に楽しそうなモモ、そしてそれを成した須賀君の姿を想像して……。

 

ゆみ side out

 

 

京太郎 side

 

 モモに急かされて部室の前まで来た俺は一抹の不安を抱えながらドアをノック。

 さっきの会話が気になってはいる、けれどそれはそれと割り切った。

 

「失礼します、新入部員の須賀ですが」

「遠慮なく入ってくれて構わない」

「加治木先輩っすね、行くっすよ」

 

 そういうとモモが先になって部室へ入る、すると待っていてくれたらしい四人が目に入った。

 

「君のことはモモから聞いている。

 私は三年の加治木ゆみだ、転入してまでの入部を私達は歓迎する」

 

 この人がモモにあの衝撃的な勧誘を行った人か、落ち着いた雰囲気からは想像もできないな。

 聞いた話では部で一番の実力者らしい、しかも麻雀歴は短いと言うのが気になっている。

 

「ありがとうございます、加治木先輩。一年の須賀京太郎です、よろしくお願いします」

「ワハハ、堅苦しいのはやめよう、ユミちん。同じく三年の蒲原智美だ、よろしくー」

「部長の蒲原がしっかりしないからだというのに……」

 

 部長の蒲原先輩か、確かに緩い雰囲気だけど一番麻雀歴が長いと聞いた。

 こういうタイプは顔に出づらいだろうな、打ち筋にも興味が湧く。

 それはそれとして加治木先輩が苦労してそうだな。

 

「智美ちゃんの後なら私でしょうか……、二年の妹尾佳織です〜」

 

 この人が噂の初心者で役満ばかりあがるっていう妹尾先輩……、もしかして自覚の無い能力者かもしれない。

 ビギナーズラックにしては頻度が高すぎるって聞いたし、まあ一度打てばハッキリする。

 

「同じく二年の津山睦月です、よろしくお願いします」

 

 割と堅い打ち筋の津山先輩……か。

 割とじゃ厳しいだろうな、この人は相当鍛える必要がありそうだ。

 

「最後は私っすね!」

 

 そしてモモ、実力が高く体質で“消える”ことができる……か。オーダーの予想はついたな、ともかく全員にもう一度挨拶するとしよう。

 

「改めまして一年の須賀京太郎です、皆さんよろしくお願いします」

 

 これで俺は鶴賀学園麻雀部の一員になった訳だが……、一つ確認と行こうか。

 

「ところで質問です、この麻雀部が大会で目指すのは何ですか?」

「勿論、勝利のみだ」

「……つまり全国制覇ということですね?

 ではハッキリ言いましょう、現状では県大会すら抜けられません。

 

 私は龍門渕・清澄の麻雀部と対局経験があり、モモから皆さんの実力を聞いています。

 予想されるオーダーは、津山先輩、妹尾先輩、蒲原部長、モモ、加治木先輩……。

 理由は先鋒での失点を抑える堅い津山先輩。

 予想のつかない妹尾先輩を次鋒として、フォローを歴の長い部長が中堅で勤める。

 副将戦でモモが稼ぎ、加治木先輩は大将戦で臨機応変に対応すると見たからです」

 

 俺は自分にもそうだが、勝ちを目指すなら甘えは許されないと思っている。

 加治木先輩は勝利すると言った、けど何を根拠に?

 だから現実を突き付けて実力を最大限引き出すためなら衣さんの言葉通り情報を活用する、悪いとは思うが清澄についても。

 それぐらいしないと能力者と普通の打ち手じゃあ差があり過ぎて勝負にならないのを俺は身を以って知ってる。

 だから見せてくれ、今の俺にできる最大限の協力をするために本気で勝とうとする意志とその覚悟を……。

 

京太郎 side out

 

 

モモ side

 

 京さん、最初から本気っすね……。確かに期間が無いからわかるっすけど凄い勇気、入部早々口にできるほど簡単なことじゃないっす。

 

「オーダーは須賀君の予想通りだ、厳しいだろうことも理解している」

「失礼ですが何をもって厳しいと判断したのか教えて下さい」

「私達の実力と他校の戦績からだ」

 

 あ、駄目っす、加治木先輩。それじゃあ足りないっす(・・・・・・)よ? 能力者相手には。

 そういう私も京さんから聞いて理解したんすけど。

 

「……私は清澄で対戦校のデータに一通り目を通しています、戦績だけでなく牌譜も含めて。

 

 極端な例を挙げますが……。

 龍門渕の天江衣さんは夜に近づくほど、満月に近づくほど場を支配する力が強くなる能力者。

 自分以外は一向聴地獄に陥り、海底一巡前にリーチして必ず海底撈月(ハイテイラオユエ)であがる。

 しかも地力の高さから当然出上がりもあって、去年の最多得点王になりました。

 ……大将戦だけで飛ばせる相手と何も知らずに戦って勝てるとは思えません」

「なるほどな、つまり敵を知り己を知れということか……」

 

 その通りっす、加治木先輩。

 

「ええ、逆に能力者相手でも勝てることを証明している人がいます。

 姫松高校の愛宕さんは地力で勝ってますので」

「では、私達に必要なのは可及的速やかな地力向上と情報収集による対策検討ということだな。

 なら早速地力を上げることから始めるとしようか、須賀君の実力も知りたいしな」

 

 京さんの話をみんな真剣に聞いてたっす、特に加治木先輩が。

 そして鶴賀学園麻雀部で京さんの実力を示す機会が早速訪れたっす、心から望んでいた強くなるための対局が……。

 

モモ side out




本気になっちゃた加治木ゆみ率いる鶴賀勢に京太郎の加入で勢いは加速。
原作では決戦まで来て欲が出たユミちんですが、この差はどんな結末に結びつくのか。そして京太郎は?

次回、デュエルスタンバイ!w
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