咲-Saki- side K 京太郎、雀士への道   作:しおんの書棚

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大変お待たせしました、記念すべき鶴賀での一局目をお送りします。


二本場 必要な物

ゆみ side

 

 須賀君の麻雀はモモ曰く鉄壁、振らないことに全力を傾けていると聞いた。

 そして私達に足りない地力を引き上げる土壌もそこにあるというのが彼の言いたいことだろう。

 

 特に先鋒を勤める津山の相手は往々にしてエース、ツモられるのはやむを得ないが振るのは避けなければならない。

 ならば最初のメンバーは決まった、須賀君が自力で鍛えた実力を見つつ私達の穴を自覚させてもらうとしようか。

 

「まずは東風戦で全員対局するとしよう、最初は私・津山・モモ・須賀君だ」

 

 このメンバーならまず間違いなく自覚できるだろう、誰が一番脆いかを。

 私の言葉によって集まったメンバーで席決めが行われる。

 

 津山が東場で親。モモ、私、須賀君の順となり席に着いた。

 さて私に、私達に見せてくれ。須賀君の力とその意志、勝つために必要な物を。

 

 そして私達は須賀君の成長を助ける、今まで打てなかった分など余裕で取り返せるように。

 そのためにも私は全力を尽くそう、そう決意して席に着いた……。

 

ゆみ side out

 

 

京太郎 side

 

 見る目があるな、加治木先輩は。俺がまず危惧した先鋒の津山先輩、半端な堅さなら役目を果たせないと自覚させるのが目的としか思えないメンバー。

 俺のことは置いておくがモモと加治木先輩は、この部の上位二人だと聞いてるからだ。

 

 そして俺が打つということはモモも実力で勝負することになり、必然的に地力が引き上がるだろう。

 俺という実例がある以上、モモの体質が効かない相手もいる筈。その時に物をいうのは地力だ、誰が相手だろうと絶対的に必要なんだからな。

 

 俺を除く全員の理牌が終わって鶴賀での最初の麻雀が始まった。手配は悪くない、二向聴とはツイてる。

 

 津山先輩が切り出して、淡々と場は進んで行く中でも俺は全員の観察を怠らない。

 勿論、手作りしつつ河に迷彩をかけ、さらに聴牌気配にも意識を割く。振らないということは聴牌を察する観察眼や勘が重要だからだ。

 

 どうも一番手が進んでいるのは津山先輩の様だ、なら安牌を確保しつつあがりを目指すとしようか!

 

京太郎 side out

 

 

睦月 side

 

 配牌が良かったお陰で聴牌、3人はまだの様に私には見える。

 ただ須賀君の河は迷彩が掛かっていて確証が持てない、ここはダマで安全に行こう……。

 幸い切るのは安牌、少なくともここで振ることだけはない。

 

 黙々と場が進んで行く、本当に誰も聴牌してないのか……?

 そう思う私は偶々、全員の安牌を引いては切り続けていた。

 

 だが、そんな幸運がいつまでも続くとは思っていない。

 そして遂に引いてしまった……、思わず私の手が止まる。

 安牌ではない……、2人は聴牌してない様だけど須賀君は読み切れず……。

 どうしようか……、降りるのが正しそうな……。

 

 そして出した答えは押すこと。

 親は私、ここで押さなくてどこで押すと考えた結果。しかし……。

 

「ロン、混一色、發、ドラ1。満貫は8,000点です」

 

 っく、押すと決めた直後に振るなんて。

 須賀君の河から混一色を読み切れず、聴牌気配も見て取ることができなかった……。

 

 こうして私の親はあっさりと流れ、東二局へと移る。

 

睦月 side out

 

 

モモ side

 

 京さんは理牌しないんすね、申告の時に理牌するのを見て初めて知ったっすよ?

 今まではネット麻雀だっだから知らなかったっす。

 

 東一局は様子見に徹したんすけど、河の迷彩といい理牌しないことといい情報コントロールが徹底してるっす。

 むっちゃん先輩が手本にするには最高っすね、しかも本人からあがったのは効果的。

 それにしても混一色を隠し切ったのは見事っす、私も聴牌には気づいてたっすけど混一色とは思ってなかったっすから。

 

「やるっすね、京さん。また腕があがってるっす」

「どういう事だ? モモ」

 

 あ、言ってなかったっすね、そう言えば。

 

「私はネット麻雀で京さんと打ってたっすから、ある程度は知ってたっす。

 実際に打つのは今日が初めてっすけど、リアルの方が強いっすね」

「河の迷彩はネット麻雀でも見てとれるが、理牌しないのはリアルでなければわからない……か」

 

 加治木先輩の言葉に頷く、それだけじゃないっすけどね?

 まあ、加治木先輩は言わなくてもわかってそうっすから。

 

「私が親っすね」

 

 私は配牌を終えると切り出した、三向聴、まあまあっすね。

 しかも順調に手が伸びるっす、さて堅さ比べといくっすか?

 

 そんなことを考えてる内に聴牌。純チャン、三色、ドラ1の6翻で親の跳満確定っす。

 リーチ一発でも裏ドラ次第でも倍満、上手く乗れば三倍満っすか……。

 けど京さんが張ってるんすよね、振り込みたくないし連荘狙い、ダマで勝負っす!

 

 河からチャンタは読めるっすね? って加治木先輩も聴牌っすか!

 京さんは……張り替えて安牌を手出し、やるっすね……。

 捨て牌から見て断么っすけど、見せかけって可能性もあって読み切れないっす。

 

 むっちゃん先輩は降りたっすね、正解っす。後は3人の捲り合い……。

 ホント京さんは堅いっす、また張り替えたっすよ? なんかヒキが良いように感じるっす。

 

 加治木先輩も降りたっすね、私もそろそろヤバいっす。

 ん? むっちゃん先輩の手が止まったっす、もしかして安牌切れたっすか?

 うわー凄いとこ通したっすね、運も実力のうちっすからありっすけど。

 

 あ、駄目っす、私も降りるしか無いっすね。

 

「ノーテン」

 

 むっちゃん先輩、私、加治木先輩と続き……。

 

「聴牌」

 

 京さんだけが聴牌、結局流されたっすけどより一層堅くなったっすね、見事っす。

 まあ、今のは回り順もあるっすけど。

 

 これで京さんだけが浮き、でも残り二局あるっす! 次こそあがるっすよ!

 

モモ side out

 

 

ゆみ side

 

 これは予想以上の堅さだな、こうなればツモるしかあるまい。

 トップの須賀君とは11,000点差、親の私なら満貫で十分だ。

 

 予想通りなのは、やはり津山がこの中で一番脆い。先程は運良く通ったが、アレで終わっていてもおかしくないからな。

 

「私の親番だな」

 

 そう言いつつ配牌、理牌。二向聴か、勝負時だな。

 ここは意地でもあがりたいところだ、まあ振るのは論外だが。

 

 そう思いつつ切り出して割と順調に引き、聴牌まで来た。

 断么、平和、一盃口、ドラ2の両面待ちで親の満貫確定。

 リーチすれば跳満だがリスキーだ、モモにしろ須賀君にしろ堅いからな。

 

 津山からの出あがりか、自力でツモるしかないだろうがその前に振る可能性が高い。

 二人共聴牌が近く感じるし、安全策でダマがいいだろう。ツモれば跳満なのは変わらないしな。

 

 津山は手が遅いのか降りたか、モモが張ったな、ダマで正解だ。

 引いて来た牌を入れ替え安牌を手出しで聴牌継続、須賀君も張ったか。

 

 ……運もあるんだろうが須賀君は想像以上に腕がいい。

 こんな打ち手を腐らせておくとは清澄の考えが理解できないな、私には。そして……。

 

「ツモ、断么、平和、一盃口、ドラ2。親の跳満だ、6,000オール」

 

 今回はツモに恵まれたな、まあ連荘を狙わせて貰おう。

 

 それにしても本当に須賀君は堅い、いい打ち手だ。女子なら妹尾と入れ替えて蒲原を次鋒、中堅以降で使いたい位に安定している。

 もしくは先鋒で失点を抑えて貰うのもありだ、易々と点を減らさない打ち筋は個人・団体戦問わず有効だからな。

 

 私は理牌しながら、そう考えていた。

 

ゆみ side out

 

 

京太郎 side

 

 配牌やヒキが良かったのはあるんだろうけど、加治木先輩の待ち方は俺に似てる。

 モモにしても加治木先輩にしても改善の余地はあるけど十分堅い、比べて津山先輩は聴牌気配の読みが甘い分脆い。

 その結果、降りる判断ができなくて俺に振り、遅れては安牌が切れる悪循環。

 

 なるほど、人の振り見て我が振り直せってヤツだな。

 俺がさらに堅くなるには聴牌を察するのは勿論だけど、その前段階の一向聴や二向聴まで見て取る必要がある。降りるにしても安牌を切らさない徹底した準備が必要で、機を逃すのは論外という訳か。

 

「さて一本場だ」

 

 このまま加治木先輩を連荘させれば流れが一気に持っていかれる、非科学的だけど往々にしてそういうことが起きるのが麻雀だ。

 そして俺は知ってる、そんな流れをコントロールする打ち手が実際にいることを。井上純さんという能力者、その存在が“流れはある”ことを証明してるんだからな。

 

 既に配牌は終わってるんだが、四向聴……。

 これは少し遠いな、安牌を確保しつつ手作りするしかない。

 しかも冗談抜きで加治木先輩に流れはあるのか手が進んでる様に見える、モモと津山先輩は手が遅そうだ。

 

 上手く安牌を抱えて一向聴まで来たが、加治木先輩もそろそろ張りそうだ、どうする?

 その時、加治木先輩が捨てたのは……、見た瞬間これだと直感した俺は禁を破った。

 

「ポン」

 

 白を鳴いて聴牌、安牌は十分確保してるし、ツモに賭けつつ加治木先輩から流れを奪う!

 そして次巡、加治木先輩は聴牌したが……。

 

「ツモ、白のみ。30符1翻の一本場は400/600点」

 

 偶然だろうが上手くいったな、俺は連荘を阻止した上であがれたことを素直に受け止めた。

 

京太郎 side out

 

 

モモ side

 

 京さんが鳴いた……、手牌を見た私はそこに並ぶ“加治木先輩の安牌”。そこから察したっす、加治木先輩の連荘を阻止して流れを持って行かれない様にしたんだと。

 実際、加治木先輩の聴牌は一巡遅くて京さんがツモったっす、つまり流れを自分に……。

 

 凄いっす! 京さん! 例えその結果が偶然だとしても、あの鳴きがなければこうはならなかったっす。

 それにこういうのはリアル麻雀の方が重要で、理論だけじゃ説明つかない物っすから。

 ……負けてられないっすね。

 

「オーラスですね」

 

 京さんの声で始まった東四局、配牌は三向聴でまあまあなんすけど……。

 京さん、引きが良すぎじゃないっすか!? 二巡で聴牌とかさっきので流れが傾いて?

 ……ちょっ、なんで千点棒持ってるんすか! まさかっすよね!?

 

「リーチ」

 

 京さんがリーチ!? 状況的にはわかるっすけどマズいっす!

 あーもう、降り、降りるしか無いっす! 安牌が少な過ぎて選択の余地無し!

 捨て牌から読める状況にないっす、とりあえず手出しで凌ぐしか!

 

 流石にみんな苦しそうっすね……って、え?

 

「ロン、リーチ、断么。40符2翻は3,900点です」

 

 暗刻二つで両面待ちの断么をトップの加治木先輩から直撃っすか!

 あの納得した表情だと安牌は切れてたし読み切れる状況じゃなかったって感じっすね。

 まだ加治木先輩がトップっすけど連荘。これはマズいっす、次、次で止めてみせるっすよ!

 

「一本場、続けましょう」

 

 落ち着いた京さんの声で東四局一本場が始まる。

 

モモ side out

 

 

睦月 side

 

 三局打ってわかったのは私の守りが他の三人に比べて弱いということ。

 しかし、守りを重視して来た私にとって悔しいというより喜びが勝っていた。

 それはまだまだ強くなる余地があって、しかも手本となりアドバイスを貰える相手がいるとわかったから……。

 

 今のままでは駄目だけど大会までには……、そんなことを思いながらも対局は粛々と進んで行く。

 配牌は三向聴とまあまあだった割にヒキがよくない……。

 

 しかも須賀君とモモから聴牌気配……、先程の二の前にならないようすぐに降りを選択。

 安牌を切って凌ぐのに全力を尽くしていたが……。

 

「ツモっす! チャンタ、ドラ1。40符4翻は満貫っすね、2,000/4,000っす!」

 

 暗刻二つに頭が字牌の両面待ちでツモ、確かに満貫。結局一度もあがれなかったが収穫の多い対局に私は納得していた。

 

「津山、気づいたか?」

「はい、加治木先輩、これからもっと鍛えます」

 

 私はこのメンバーが“そういう理由”で選ばれたと気づいていた。

 鶴賀学園麻雀部が勝ち進むために自分が必要とされていること、そしてそのために目指す物を知るためだったと。

 

【東風戦一回目】

 睦 月 -22

 モ モ - 4

 ゆ み +28

 京太郎 - 2

 

 それにしても加治木先輩のトップはともかく初心者から鍛え始めてそれほど経たない須賀君が二位という好成績。

 この結果は私が目指すべき物に間違いがないという証明でもある。それは一度も振ることなく勝ち取った順位なのだから……。

 

睦月 side out




睦月に自覚させて自身を鍛える気にさせるという、ユミちんの目的は達成。
加えて京太郎の腕を正当に評価しました。

まあ、随分とヒキが良かった気もしますがそこはそれ、勘弁してください。

それと睦月本来の口調はゆみに割と似ていて語尾に……が多く、先輩と話す時は丁寧になるのを咲日和から把握。
ちなみに同級生以下からの返事は「うむ」、モモにはむっちゃん先輩と呼ばれてる……がモモをどう呼んでるかわからないのでモモに仮設定しました。
こんな感じでいい筈です、多分、きっと、メイビー……。
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