アークナイツ in ホロライブ 作:うまい棒
| To:白上フブキ |
| 件名:元気ですか? |
| フブキさん、お久しぶりです。イレイナと申します。 あの頃からどうですか? 貴方がロドスと呼ばれる会社に向かってから1年が経過しました。 メールが届いているか不安なのですが、もしこのメールを確認したら一度返信してくれると嬉しいです。
私たちも先日、ラテラーノから離れ貴方達の元へ向かっております。先日貴方が送ってくださった位置情報を元に進行中なので、もしかしたらそこに到着する頃には貴方達もまた別の場所に移動している頃だと思います。 またその時になったら連絡しますので、その時に改めてまた位置情報を送信してください。
それはそうと、ケルシー先生とは無事話せたでしょうか? 貴方はまだ鉱石病に感染していないとはいえ、今後この世界で生きるというのならば、一度全貌を知っておいた方がいいと思います。私から伝えられる情報は、ほんの一部でしかありませんので。 昔、私も先生にはお世話になりました。根はとてもいい人だと思うので、貴方も一度は話してみてはどうでしょうか? 再会できた暁には、先生も加えてお茶でもまったりと野みたいですね。 まあ先生がノってくれるかはわかりかねますが(笑)。
それではまたメールします。 また会えた際には、盛大に抱き合いましょうか?
冗談です^^
イレイナ |
「君も彼女に会っていたのか」
「右も左も分からない時に助けてくれた人です。先生も知り合いだったんですね?」
「もう遥か昔の記憶だ。今は顔さえ覚えているか怪しい」
この世界に来てから1年3か月。色々な事がありすぎて未だに状況がのみ込めない私に追い打ちをかけるが如く、ここロドス・アイランドの医療部門の総責任者を務めているケルシーという女性が押しかけてくる。
何も文句を言いに来たわけではなく、昔親しくなった友人がメールを送ってきたとの事だ。尤もその内容は、特筆するべき事でもないものではあったのだが。
そうだとしても、彼女がここに向かっていると聞けたのは朗報だった。私がロドスに向かうといった際も、子供を見送る親の如く心配されたものだから、大丈夫なんだろうかと少し心配になったものだ。
「現在位置の情報を教えてくれたのは意外だったよ? 先生、そういうところには結構厳しいから」
「君は私の事を鬼の種とでも思っているのか? もし君が述べた人物が私達に不利益をもたらす有害な存在ならば当然却下しただろうが、現段階で優先すべき事項はあくまで感染者の保護だ。それに彼女は、医療の面においても特筆すべき点が多々ある。検査さえ通れば、我々ロドスにおいても有益な人物にもなり得る」
「あ~……うん、分かった分かった! ありがとうございますっ!」
この人には本当に頭が上がらない。一体何を考えているのだろうか? 付け入るスキがないとは正にこのことを言うのだろう。ロドスにやってきた際も、身体検査やら何やらを行う際に色々言われ続けたものだ。そりゃこの世界における戸籍等何も持ち合わせてない存在など、信用しろという方が難しい。
だが日が経つにつれて、少しづつ分かり合えるようにはなってきたと思う。まあ未だにさっきみたいな説教を受ける事もあるのだが、最初に来た頃よりは俄然マシだ。
「今のように呑気に対応するのも結構だが、君にはこの世界について知ろうとする思いすらないのか?」
「先生が全然教えてくれないからじゃないですか」
「私が無意味な事を自分から進んですることはない。君自身が知ろうとしないのなら、無意味に教える義理もない」
「よくわからないけれど……じゃあ、説明してくれませんか?」
先生はふうとため息を漏らしながら、近くに置いてあった椅子にスッと腰を下ろす。
「鉱石病というものについては先日簡単に説明したな?」
「はい。何でも感染したらほぼ確実に死に至る……とか」
鉱石病。それはこの世界に起こっている問題の元凶といっても過言ではない感染病。
この世界に突如として降り注いだ隕石――一種の天災とされているそれは、多大なる被害と同時に
――接する時が長ければ、鉱石病に感染してしまうことを除けば、とても良いものだったのかもしれない。
「それだけではない。鉱石病に感染した者にもたらされる未来は、死と同時に新たな源石と化すことだ。確実な死の上に新たな感染源となる。そんな事実を目の当たりにすれば、誰だって感染者を敵視するものだ」
「ここロドスは、そんな人たちを保護しているのですか? あぁいや、別に差別とかそういうわけではないんですけど」
「君の疑問も当然だ。それが君のような異世界とやらからやってきて、何の事情も知らないというのなら尚更だろう。だが感染者だとしても元々は無辜な人種に過ぎないというのは紛れもない事実だ、それは君も目にしているから分かる筈だろう?」
「……」
その会話を聞いて、メールを送ってきてくれたイレイナさんの事を思い出す。彼女は私が謎の理由によってこの世界にやってきてしまった時に、道案内等をしてくれた女性だ。とてもやさしく、正義感溢れる素晴らしい人だった。
しかし彼女はある日、鉱石病に感染してしまった。近くで採取された源石確認のために離れていた事が原因なのだろうと私は聞かせてもらった情報をもとに判断した。
彼女が感染者となった途端にこの世界の一部人間たちから迫害に近いような扱いを受けるようになった。成程、さっき聞いた話を聞けばそうなってしまうのにも納得がいってしまう。なんとも酷い世界だ。
私は彼女に助けてもらった恩も含め、この世界について調べている間に『ロドス・アイランド』なる製薬会社がある事を知った。聞けばそこは、感染者の保護や治療の研究も行っているとのことだった。
だから私はそこを目指して旅に出た。いつしかそこにたどり着き、彼女を保護してもらえるか相談するために。――今この時をもって、ようやく叶いそうにはなっているのだが。
「ありがとうございます、一番重要な部分は聞けた気がします」
「君にはもっと色々と知ってもらいたいのだが?」
「それはそうだけど、後は自分の目で見た方が速い、そうではないですか? 尤も、ここで生きていくうえで大事な事ぐらいは知れたので」
「そうか」
再び先生は溜息をこぼす。目にうっすらとクマが出来ている。きっと寝てないから少しストレスもたまっているのだろう。この世界の情勢だ、それに医療関係者ともなれば、当然と言えば当然だ。
「何時までもここに居座らせてもらうのもアレだから、手伝えることがあったらいつでも言ってください。可能なことならなんでもやりますのでっ」
「それはつまり、ロドスのオペレーターに志願したいということか?」
「その件についても色々教えてくれましたね? 色々なテストの後に合格って……。一先ず受ける事ぐらいは出来るのではないですか?」
彼女は顎に手をかけ思案する。
「君の考えは実に短絡的だ。少しばかりの事情を聞いただけでは、その志願は到底受理できるものではない。少なくとも今は、だ」
「あ、そうですか」
「この世界は君の思う程甘いものではない。少しばかりのミスでも命取りとなる。暫くは雑務にでも専念することだ、それが今君にできる唯一の最善策だ」
「……はーい」
Apex等のFPSで鍛えたAIM力とか戦術力とか霊力渾々とか、そういう小さなものでは到底なんとかできる状況ではないらしい。尤もそれは、彼女らが私の実力を知らない事もあるのだろうけど。
だが暫くは、それに従う他無さそうだ。この世界にやって来る前に一緒にいた仲間たちの安否も確認できていない。というかこの世界にいるのだろうか? 何はともあれ、今は無事を祈るほかない。
……どうにかなってくれるといいのだが。