11話 2日目・上
朝起きて、私たちは507号室の前に集まった。
中を見ると、霊媒師の屯くんが、壁にもたれ掛かりながら息絶えていた。
「……いや、いやっっ!」
苑果ちゃんは、急に声をあげて走って行ってしまった。階段の方に曲がって行った、恐らく自分の部屋に行ったのだろう。
「私、様子見てきます……!」
尾田ちゃんはそう言うと、走って苑果ちゃんを追いかけて行った。
「……人狼の人、すごい刺してる」
そう言ったのは里見さんだった。
里見さんは、床を見ながら目だけを壁の死体に向けていた。
「人狼、やべーやつじゃん。なぁ?海老原一香」
「なに、私が人狼って言いたいの?」
「いや?別に?」
海老原さんは、岡元くんの正面に向き合うように体を向けた。
「前回からそう。あなたが何故、私をそんなに殺したいのか分からないけど、間違っているって事。それと、この死体の処理はよろしくって事は伝えておくわ」
そう言うと、海老原さんも歩いて行ってしまった。
岡元さんは「ちっ」と舌打ちをして、敵を見るかのような目で海老原さんの背中を見ていた。
「これで、信じられるのは貴女だけってなる。それと、貴女が昨晩、占った人のみ」
里見さんは廊下に出て、壁に寄りかかりながら私の方を見てそう言った。
「……そうだ、誰を占った?」
それに食いつくように、大柄男の岡元くんも質問してくる。
「尾田さん。尾田さんは村人側だった」
「尾田って誰?」
「えっと、追いかけてった子」
「あーあいつかぁ。そこか……」
そこかというのは、恐らく占って欲しかった場所が異なったのだろう。
「では、貴方は何処を占ってほしかったんですか」
とメガネ男子の鬼崎くんが訪ねる。
「お前か、最初に走ってった女か」
彼は、鬼崎くんか苑果さんを占ってほしいと言った。
「お前らに言う。今日の投票は、海老原一香に入れろ」
◇◆◇
その後、私は苑果さんの部屋に行った。
2回ノックすると、中から尾田ちゃんが出て来た。
「あ、えっと……菜穂さん?」
「そう。苑果ちゃん、大丈夫そう?」
「うーん」
苑果さんは、ベッドの横にしゃがみ込んでいた。
「私、気分が悪くて窓開けてたら、叫び声が聞こえて。そこから怖くなっちゃって、それで……夜が、怖くて」
「……らしくてね、私が近づこうとすると」
「やめて、来ないで」
「……完全に、疑心暗鬼の状態なの」
苑果さんの目には、私以外全員が人狼の可能性がある。
夜に殺しに来る殺人鬼と自分が話しているのではないか?という恐怖に襲われているのだろう。
「苑果ちゃん。あのね、尾田ちゃんは村人だよ」
「……へ?」
そう反応したのは、尾田ちゃんだ。
「私、尾田ちゃん占ったの」
その言葉と同時に、2人は顔を上げる。
「ありがとう、菜穂ちゃん!」
尾田ちゃんは、涙目で私に抱きついて来た。
苑果ちゃんはゆっくり立ち上がって、私たちに近づいて来た。
「尾田さん……ごめん」
「いいの。おいで、苑果ちゃん」
「……?」
尾田ちゃんは、私と苑果ちゃんを同時に抱きしめた。
「頑張って、生き残ろう……!」
「待って、まだ私は村人確定してないよ?」
と、苑果ちゃんは控えめに喋った。
「さっきの怯えた様子からだと、苑果ちゃんは人狼じゃないよ?」
「私も、そう思う」
2人の言葉を聞いて、今度は苑果ちゃんが涙を流した。
「ありがとう……」
◇◆◇
屋上にいた海老原一香に、人影が近づく。
「……こんにちは」
彼はただ、外の空気を吸いに、屋上に来ただけだった。海老原は気配を感じたのか、背中を向けたまま挨拶をした。
「こんにちは。えっと、海老原さん?」
海老原一香は振り返る。
そこには、センター分け男子の五十嵐春大が立っていた。
「何してるんですか」
「外を見ながら、考え事よ」
「そうなんですか」
五十嵐は、海老原の隣に立った。
「……そういえば、あの茶髪の男、貴女に投票しろって言っていました。何故そんなに、敵対しているんですか?」
海老原の表情は固まり、それはすぐに解けた。
「前回からよ。彼は私を殺そうとしている」
「何かあったんですか」
「さあ」
五十嵐は、海老原に助言をする。
「このままだと、貴女に票が集まります。彼は自分とメガネの男、あとは髪の長い女子と予言者の子にそう言いました。これで5票」
海老原は五十嵐の方を向いた。
その表情は、少しだけ笑っていた。
「狂人と人狼の2人が生きている可能性が高い」
「……それは」
「このゲーム、同数票になったら処刑が行われないの。今日の投票に失敗したら、確実に死ぬのは村人側」
「……」
「彼は狂人じゃないかしら」
「それは、堂々としてて占われても大丈夫な位置、だとか?」
「そう」
海老原の、今日の投票に失敗したら死ぬという発言は、五十嵐の頭に深く刺さった。
「貴方、村人?」
「はい」
「私、用心棒なの」
「……は?」