私と苑果ちゃん、尾田ちゃんの3人は食堂で軽く食事をとっていた。犯人らが用意したカップ麺やパンが厨房に置いてあり、私たちはそこから取って、食事をしている。
「3人とも、ここにいたんだ」
そんなに広くない食堂。
そこへ、センター分け男子の五十嵐春大がやって来た。
「俺も、一緒に食べていいかな」
「うん、どうぞ」
と、私は隣の椅子を引いた。
五十嵐くんは隣の椅子へ座り、パンを頬張る。
「あのさ、皆んなに聞きたい。この中に、用心棒っている?」
3人とも、首を横に振った。
五十嵐くんは「そっか」と言った。
「え、なんの確認ですか?」
と尾田ちゃんは聞き返す。
「……用心棒を名乗る人物が現れた」
と小声で話す。
「誰なんですか?」
と私が聞くと、五十嵐くんは「彼女が村人側と確定していないから言えない」と、苑果ちゃんを見てそう答えた。
「なんの話してるんだ?用心棒だのなんだの」
食堂の入り口には、岡元くんが立っていた。
「その話、興味あるわ」
「……彼が、狂人の可能性がある」
五十嵐くんは小声でそう言うと、軽く会釈してその場から去っていった。すれ違うように、岡元くんは私たちの方に近づいてくる。
「んで?誰が用心棒だって?」
「……名前は、教えられてません」
と、尾田ちゃんが答えた。
岡元くんは、興味深そうな顔をして入口の方を振り返った。
「……ほう!?」
大きな声でそう言うと、食堂の入り口の方から去っていく足音が聞こえた。どうやら、まだそこに五十嵐くんがいたらしい。
「んで、お前らにも提案がある」
その視線の先は、苑果ちゃんと尾田ちゃんだった。
「今日の投票、海老原一香に入れてくれ」
「あの、なんでそんなに海老原さんを殺したがるんですか?前回に、何があったんですか?」
岡元くんは、へらへらと笑う表情を変えずに立ち上がる。
「あいつは頭がおかしいからな。人狼であってもおかしくないってこと」
「頭がおかしい……?」
「その言い方は、流石に酷いと思う!」
声をあげたのは、尾田ちゃんだ。
「お前、投票されない立場にいるからって、急に発言強くなったな?安心感か?」
今の発言で、初日に海老原さんから言われた言葉を思い出した。
「ええ、そうよ!」
尾田ちゃんは堂々と返す。
「頭がおかしいから?私から見たら、貴方の方が頭おかしいよ!?なんでそんな、人をぽんぽんと殺せる発言ができるの?」
岡元くんは、黙った。
「前半戦、村人で勝ったって調子に乗らないで」
「あ?」
「貴方の推理は間違ってるって、投票の時に海老原さんは言ってた!私は貴方に従わない!」
「……そっか。因みに、今日間違ったらお前も、お前も死ぬ可能性があるからな」
岡元くんは、私と尾田ちゃんを指差し、そのまま食堂から去っていった。
「……はぁぁぁ」
深いため息と共に、尾田ちゃんは椅子に座った。
「しんど……」
◇◆◇
日はあっという間に落ち、投票の時間になった。
「今日の投票、コイツに入れないか?」
岡元くんが指差したのは、五十嵐くんだった。
「……はい?」
海老原さんは目を丸くした。
私ではないのか、という表情だろう。
「コイツは、あの女子3人組に用心棒はいないか?と聞いていた。そんなの聞くの、人狼側しかいないだろ」
「いや、だからそれには理由があって」
「どんな理由だ?言ってみろ?」
「……」
彼の視線は、海老原さんに向けられた。
「なんだ?海老原がどうしたって?」
「……」
「アイツの指示か?」
「……いや、そうじゃなくて」
五十嵐は、ここで海老原さんが用心棒だと言うと、用心棒が今夜襲われてしまうと思い、口を開くことができなかった。
「お前が、狂人の可能性がある!」
五十嵐くんは、岡元を指差し急にそう叫んだ。
「あ?」
「何をしても、例え占われても村人側と出る狂人。だから堂々と行動ができて、村人側アピールができる!」
「お前は村人か?」
「ああ、そうだよ」
「村人なら、村人側アピールしなくていいのか?」
「……は?」
岡元くんは急に冷静な態度をとり始める。
「人狼側なら、村人側アピールをして当然。じゃあ村人なら村人側アピールをしなくていいのか?」
「何言ってんだよ」
「全員が村人側アピールしなくてどうする?それは村人なら、村人側の奴らにとって利敵な行為だろ?」
「……そうだよ、全員が村人側を主張する必要が」
「なら、お前は何かしたか?」
この発言の攻撃力は大きい。
五十嵐くんは顔を青くした。
「お前がしたのは、用心棒の炙り出し。それは果たして、村人側として利のある行動なのか?」