茶髪の大柄の男は「予言者を引いた」と言った。
少しの間を置いて、ようやく理解した。
――あれ?予言者って、私が引いた……
「あ、あの!」
「あの」
私は、急いで手を挙げた。
そして、短髪メガネも自分と同じタイミングで言葉を発した。
「お?なんだ?」
「私が、予言者引いた……よ?」
大柄の男は「そっちは?」と短髪メガネの方に顔を向ける。短髪メガネは少し戸惑い、首を横に振った。
「いや、ちょっとルールが曖昧で」
「んだよ、紛らわしい」
そう言うと、大柄の男は私の方に歩いてくる。
この男は確実に嘘をついている。
「俺は撤回する。てことで、予言者は彼女で決定な?」
頭が追いついていない。
すると、大柄の男はクククク……と笑い始めた。
「あはははは!バカだなぁ!あはははは!」
突然大きな声で笑い始めた男。
「このゲーム、村人側の勝ちだよ!あはははは!」
「……へ?」
私は、言ってる意味が分からなかった。
「予言者は確定!そこを用心棒が守る。毎日、確実に陣営が判明していく。人狼ならばラッキー、村人ならば投票の候補から外す!」
演説をするように、ペラペラとジェスチャーありで語っていく男を見て、少しの怖さを覚えた。
「じゃあ次、霊媒師」
「はい!俺っす」
すぐに手を挙げたのは、背の低い男子だった。
「あーお前?」
「そうですっ!」
「他は!」
だが、誰も手を挙げない。
その様子を見て、大柄の男は呟く。
「こりゃ、人狼2人とも、さっき手を挙げた人狼ゲーム経験者の可能性が高いなぁ〜」
人数的に、未経験者が2人減って、残り未経験者がショートカット女子とお嬢様女子だけになったというのもあるだろうし、何か別の考えがあるのだろう。
「今日の投票は、海老原を加えた男子4人、計5人の中から行う!とりあえず、今は議論しても仕方ない。それぞれこの建物を探検なり、互いにコミュニケーションをとるなり、好きにしてくれ。ただ、禁止行為で自殺はしないように!それじゃ!」
大柄の男はそう言うと、ひとりで出て行った。
続くように、海老原さんも出て行く。
「予言者さん」
短髪メガネの男子に、突然呼ばれた。
「あの仕切ってる男、あいつが怪しいです」
◇◆◇
私は「よく分かんない」とその場を流し、大広間を後にした。廊下を進み、自分達の部屋の階らしき場所に来た。
ドアには名前のプレートが貼ってある。
503の自分の部屋を見つけ、中に入った。
ベッドにタンス、机にテレビ、質素な場所だが、とりあえずこう言った家具はあるらしい。部屋の小さい古いテレビを付けてみるが、電波が悪いのか何も映らない。
何用なのだろう?
菜穂は、自分のポケットから役職カードを取り出すと、下の方に文字が書いているのを見つけた。
『夜10時から12時までの間に、テレビをつけて、正体の知りたい人の部屋番号を選択してください。テレビの画面に表示されます』
テレビは観るようではなく、
役職の為にあるものらしい。
ベッドに横になり、天井を見上げる。
褒められた事で緊張は少しだけ和らいだが、ひとりだと心細かった。部屋を出て、探検をすることにした。階段を上がり、屋上にやってきた。
秋の涼しい風が吹いている。
遠くを見るが、木々ばかりで建物の気配はない。
「あーーーーーーっ!!」
私は叫んだ。
山じゃないから、山彦は帰って来なかった。
「だ〜れにも〜気づかせたり〜は〜」
次は、歌い始めた。
それも、大きな声で。
不安を少しでも消す為に、大きな声で。
叫ぶように歌った。
「歌!……上手いのね」
屋上のドアの前には、海老原さんが立っていた。
夢中で歌ってたから、全然気配に気づかなかった。
「あ、いや……」
「ごめんなさい?あまりにも気持ちよさそうに歌ってたから、少し聴いてた」
「は、恥ずかしいなぁ〜あははは……」
海老原さんは、隣に来てその場にしゃがんだ。
「余裕?」
「へ?」
「絶対に殺されない位置。少し余裕があるでしょう?」
「……あ、いや」
「嘘つかなくていいわ」
海老原さんの言う通りだ。
褒められたって言うのもあるし、夜は守られていて、昼は投票されない。自分は絶対に死なないのだ。
さっきまでの安心感は、そのせいかもしれない。
そして今、それを指摘されて安心感が確信に変わった。
その瞬間、不安と緊張は一気に解けた。
「あなたに占われたら、私は明日から投票対象から外れるわね」
「あ、じゃあ今日の夜……」
「軽い冗談。本日の議論から、あなたが思った場所を選んでもらっていいわ」
海老原さんはそう言うと、前髪をさっと流すしぐさを見せた。
「さっきの、このゲーム2回目って話……」
「事実よ。8人は死んだわ」
「本当に、死ぬんですか……?」
「ええ、死ぬわ」
「……あの男の人は、前回の仲間なんですよね」
「仲間っていうか……何とも言えないわ」
「凄いですよね、あの人」
「凄くないわ。前回、私はあの男のせいで死にかけた」