人狼ゲーム BLOOMS《ブルームズ》   作:海老原

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6話 菜穂と一香

 海老原さんは、前半戦での彼の事を話し始める。

 

「彼は、ずっと自信家だったわ」

「今も凄いですよね」

「ええ。その自信で、自分の意見を突き通す」

「……そうなんだ」

「私は、ずっと人狼だと言われてた。最後日の前日と、その前日は、あの男のせいで死にかけた。幸いなことに、途中から出しゃばった彼は、ほとんどの人から嫌われていたから、私は救われたんだけど。私が村人と分かった時の焦り具合、面白かったわ」

 

 海老原さんは立ち上がる。

 

「だから、殺したいって思える」

「……え」

「私は2回も殺されかけた。彼の間違った自信と推測で。そしてさっきの発言……彼は死ぬ必要のない人の命をも捨てたのに、命を背負ってるなんて、よく言えたわね……って」

 

 私は、海老原さんの、どこか遠くを見るような横顔を見つめながら、話を聞いていた。

 

「彼には、自信満々の状態で死んでほしい」

「……」

「あの男の絶望する顔を見てみたい」

 

 海老原さんの口角は、少しだけ上がっている。

 彼女は、彼の死ぬ話で少しだけ喜んでいる様子だった。

 

 余程、追い込まれていたのだろう。

 海老原さんが彼に対する感情は、復讐に近いのかもしれない。

 

「私、生き残れるかなぁ……」

 

 話を変えようと、私はそう呟いた。

 

「生き残れるわよ。用心棒さえ死ななければ」

 

「……私、歌手になりたいんです」

「そうなの」

「小さい頃から歌うのが好きで、歌手を見て、かっこいいなって……だから、歌のレッスンにも参加してるんです」

「上手だったから、なれるわよ」

「ありがとう……」

 

 私は、とても嬉しかった。

 嬉しさのあまり、涙が出てきた。

 

「私、家族や友達に上手い上手いって言われても、あんまり嬉しくなかったんだ。無名だし、まだ誰も評価してくれない。褒めてくれるのは身内だけ」

 

 海老原さんは、今あったばかり。

 そんな海老原さんは、褒めながら私に近づいてくれた。

 

「……近くにいる人に言われるより、全然、言葉の強みが違うっていうか。全く知らない他人の……その、海老原さんに言われたから、嬉しかった」

 

 海老原さんは「そう」と遠くを見ながら言葉を返す。

 

「だから、絶対にここから生きて出ないと。海老原さんも、絶対に出ましょう!」

 

「……」

 

 海老原さんは、何も答えなかった。

 

「あなた、名前は?」

 

 話題を変えられた。

 でも、さっき話を振った時に見せた、遠くを見てるけどまた別の表情。彼女には、この外の世界で何か辛い事でもあったのかもしれない。

 

「聞いてる?」

「あ、はい!岳田菜穂です!」

「菜穂ね……よろしく」

「えっと、海老原さん?」

「海老原一香。よろしく」

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 菜穂は、大浴場や食堂等で時間を潰し、

 自分の部屋に帰ってノートとペンを持った。

 

 夜の8時、そろそろ投票で集まる時間だった。

 廊下を進むと、短髪メガネの男子と会った。

 

「予言者の人……でしたっけ」

「はい」

「良かったら、一緒に行きましょう」

 

 この人の名前は、菅野 勇と言った。

 

「難しいですよね、ルールいっぱいあって」

「そうですね、私も何が何だか!」

「……朝、言ったこと覚えてますか」

「??」

「あの、仕切ってる男が怪しい」

「……うん」

 

 その男は、海老原さんからも恨まれてた。

 ここで2票が固まった。

 

「投票の提案、してくれませんか」

「へ?」

「俺が言っても、説得力ないし」

「……う、うん」

 

 それはつまり、殺す人の指名をしろと言ってるのだ。

 役職が確定していて、殺されない立場にいる。ということは逆に、指名する側に立っているということにもなる。

 

「頑張ってみる……」

 

 正直、あの自信家を押せる気がしない。

 




〜登場人物・整理〜

〈女子〉
・岳田 菜穂 (前髪ぱっつん三つ編み) →予言者
・海老原 一香 (ポニーテール女子)
・??? (ロング女子)
・??? (ショートカット女子)
・??? (お嬢様女子)

〈男子〉
・??? (茶髪の大柄男)
・??? (センター分け男子)
・??? (長髪メガネ)
・??? (低身長男子) →霊媒師
・菅野 勇 (短髪メガネ)
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