人狼ゲーム BLOOMS《ブルームズ》   作:海老原

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7話 投票の時間

 

 私と短髪メガネの菅野くんは、大広間に入った。

 ここを出て以降、入るのは初めてだ。

 

「あとは、チビ霊媒師だけだな」

 

 大柄の男がそう言うと、霊媒師の子が入って来た。

 

「よし、全員座れ!」

 

 立っていた海老原さんや、髪の長いメガネ男子は、彼の一言で席に着く。

 

「……さて、議論を始めようか」

 

 菅野くんと、視線があった。

 彼は目で強く「言え」と訴えかけてくる。

 

「あ、あの……!」

「どうした予言者」

「その、怪しい人がいて……あなた……なんですけど」

「ほう??」

 

 大柄の男は、余裕ぶった表情で私の方を見てくる。

 

「あとひとりくらい、いないか?怪しい人物」

「え……」

「んじゃあ聞く、俺のどこが怪しかった?」

「え……っと、その、自信満々な所、とか?」

「そりゃ、村人として予言者の確定は大きい。これだけで勝率はぐんと上がった。これを喜ばない方が逆に怪しい。他は?」

 

 何も考えてない。

 ただ言えって言われただけ。

 

 そんな事、今更言えない。

 

「もしかして、朝に彼が言った事を気にしてる?」

「へ?」

 

 ショートカット女子がそう訊ねてくる。

 彼と言いながら、彼女は菅野くんに顔を向けた。

 

 彼は、大広間を出る時にも言っていた。

 その発言は、先に出て行った大柄男と海老原さん以外の、近くにいた人たちが聞いていただろう。

 

「その話、詳しく」

 

 大柄男は、ショートカット女子に噛み付く。

 

「2人が出て行った後、彼が岳田さんに言ってたの。仕切ってる男が怪しいって」

 

 大柄男は立ち上がった。

 

「立て、お前」

「……は?なんで俺が」

「俺は予言者さんからの指名。お前は、俺からの指名だ」

「お前に指名される権利なんてない」

「お前は予言者の女の子に言ったんだろ?俺を指名しろって。遠回しに言えば、お前が俺を指名した事になる。俺がお前を指名しても同じだろ」

「そんな理由、通じないな」

「じゃあ一方的に攻めさせていただくわ」

 

 大柄男は、円形の中央に立つ。

 

「むしろ俺は、こいつがもうひとりで良かった!」

 

 彼はまた、嬉しそうに演説を始める。

 だが、声は少し震えている。

 自分の死を、今身近に感じているのだろう。

 

「こいつが、全員の中でいちばん怪しかった!」

「……は?」

「予言者確認の時、こいつも声を上げたよな?」

「……ああ。そうだよ?だから?」

「こいつ、経験者って言ってたのに、声を上げた理由がルールが理解してないって?」

「は?そんな事言ってねーし」

「いや、言ったわ」

 

 彼が、同じタイミングで声を上げたのは覚えていた。

 でも、その後の内容は覚えていなかった。

 

 でも、彼の言う通りルールが理解できてない……みたいな事を言っていた、そんな気はする。

 

「でもさっき、大広間に来る途中で会った時、彼はルール難しいよねって言ってました。だからあんまり分かってないんだと思います」

 

 と、私はフォローを入れる。

 

「なに、ここに来る前に2人きりになったと?」

「え……うん」

「その時に、他に言われたことは?俺を指名しろってだけ?」

 

 私は頷いた。

 

「へぇ……朝以外にもう一回、頼んでたんだ」

「そうだよ、お前が怪しいからな!」

「お前、予言者を名乗り出ようとしたんじゃないか?」

「……は?」

「彼女が名乗り出なかったら、お前が出てただろ?俺に対抗するために。でもお前の計画は崩れた」

「何言ってんのお前」

 

「お前は、俺が予言者だと思った。で、人狼陣営として対抗しようと思った。でももうひとりが手を挙げたから、これは狂人、もしくは仲間の人狼と被った。だから自分は折れよう。で、変な理由を言った。でも実際は俺のブラフに引っ掛かっただけ!俺が言ったバカはお前だった、違うか?」

 

「は?お前聞いてた?俺はただルールが理解できてないだけ」

 

 菅野くんは、座りながら上目で、大柄男を睨んだ。

 彼の目力は、やはり強い。

 

「じゃあどうぞ?お前が俺を怪しいと思った理由!」

「仕切ってるからだろ?!」

「仕切ってれば怪しいのか?」

「ああ。人狼っぽい!」

「人狼だったら、撤回するか?」

「するだろ」

「いやしないね。そのまま撤回しなかったら、予言者の対抗枠を取れただろ?確定予言者を作るなんて、人狼陣営はそんな自殺行為をするわけがない」

 

 菅野くんは、大柄男を攻めれなかった。

 理由が甘すぎたのだ。

 

「お前ら、普通は予言者が仕切るだろ?!なのに自分が仕切ってる、これは不自然だ!おかしい!」

「ならば、予言者と霊媒師に仕切ってもらおうぜ?これなら問題ないだろ?」

「ああ!問題ねーよ!変に出しゃばんなよな!」

 

 大柄男は、余裕ぶった笑みを浮かべて椅子に座った。

 すると、霊媒師の小柄男子は口を開く。

 

「俺は……あいつで良いと思うけど」

 

 と、菅野くんを指さす。

 

「はぁ?!」

「じゃあ、そいつでいいだろ。反対のやつは挙手しろ」

 

 菅野くん以外、誰も挙手をしなかった。

 

「おい!」

 

 彼の怒鳴り先と視線は、私だった。

 

「お前何してんの!?」

「……でも」

「あいつを殺すって!あいつに票集めろって!」

 

 一方的に頼まれただけで、そんな事は言ってない。

 

「予言者ちゃん、君名前は?」

「……菜穂」

「菜穂ちゃん。こんな奴の言うこと聞かなくて良いから。君が理由をハッキリ喋れなかった時、俺は誰かに言われたなってすぐに分かったぜ?」

 

「おい!そうやって仲間勧誘するなよ!」

 

 と、菅野くんが割り込んでくる。

 

「お前もした事だろうがよ」

「は?してねーし!」

「頼んだんだろ?俺を殺せって」

「は?頼んでねーよ!」

「お前、言ってる事滅茶苦茶だわ」

 

 お嬢様女子が口を開く。

 

「投票、どうやるんですか……」

「指投票だよ」

 

 大柄男はそう言い、円形の中央の上を見上げた。

 そこには、丸い監視カメラが付いてる。

 

「上からも見てる。腕を伸ばせば、誰が誰に入れたか分かる」

 

 時計の針は、進んでいく。

 

 ふたりの男子以外は、安全な場所にいる。

 今日、投票されるのはどちらか。

 

 私たちはまだ、人の死に対面していない。

 想像もつかない分、恐怖も60%ほどしか感じない。

 

 だけど、実際に人が死ぬと、

 恐怖などが、一気に押し寄せるのだろうか。

 

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