人狼ゲーム BLOOMS《ブルームズ》   作:海老原

8 / 12
8話 最初の犠牲者

 

 大柄男が言うには、それぞれ投票したい相手の方に腕を伸ばす。これだけで、円形の中央上にあるカメラで見てる犯人が、最多票者を把握するらしい。

 

 現在の投票は、

 大柄男か、短髪メガネの菅野くん。

 

「まだ投票までは少し時間がある。じゃあ投票せずに1回だけ、全員の意見を聞こうぜ」

 

 大柄男は立ち上がった。

 

「全員、目を瞑って下を向け」

 

 私は、言われた通りに目を瞑って下を向いた。

 従わない人がいたのか「はやく!」と大声を浴びせる声が聞こえる。

 

「お前は見てろ。メガネ。じゃあ聞く……メガネより俺の方が怪しいと思う奴は手を挙げろ」

 

 私は手を挙げなかった。

 正直、今のやりとりを見ていたら、2人を比べるとどちらかというと、菅野くんの方が怪しく見えた。

 

 なぜ、彼が目立っているから吊りたいのか。

 彼がいると、自分に害があるのか?

 

「おかしい……いや、お前ら、待て!」

 

 流石に目を開けていいだろうと、私は顔を上げた。

 

「おいまだ……まあいいや」

 

 見ると、誰も手を挙げていないのだ。

 そして、バラバラと顔を上げていく人たち。

 

 菅野くんは、歯をカチカチと鳴らし、怖さで踊っている瞳で、全員の事を見ていた。

 

「……だとよ?」

「お前!お前がベラベラと喋って、全員を恐怖に陥れた結果だろ!?手を挙げたのが自分だったら……次は狙われる!そう思って手を挙げなかったに違いない!!」

 

「あと5分……全員を説得してみろよ。俺は、お前に聞かれたことしか答えない。口を挟まない。さ、説得してみろ」

 

 大柄男は、菅野くんに全てを丸投げた。

 菅野くんは立ち上がり、全員の顔を見る。

 

「……コイツが怖いんだろ?」

 

 ひとりに言っているようで、これは全員に言っている言葉なのだろう。

 

「手を挙げたら、次に狙われるのは自分だ……それが怖いんだろ?」

 

 全員、彼とは目を合わせなかった。

 初めての投票場の恐怖だけではなく、やはり大柄男の威圧というのもあるだろう。

 

「俺は人狼じゃない。今はアイツのせいで、俺が一番怪しく見えているだけ。お前らは、この流れに流されようとしているだけ……あいつの言う通りにしてていいのか!?アイツが人狼だったら、お前らはこの先も流されて、死ぬぞ!?」

 

 死ぬぞ。その言葉の重み。

 この場で最多票を集めた者は死ぬ、それがルール。

 

「でも、彼が人狼ならば、撤回はしてないと思うけど」

「……あぁ、そうだな。認める、認めるよ!」

「人狼を?」

 

 海老原さんは急に口を挟み、彼を茶化す。

 

「ちがう!」

 

 海老原さんの問いに、菅野くんは大きく反対した。

 

「俺は人狼じゃない!アイツの村人側が濃厚なのも認める!でも……でも俺は“今回も”人狼じゃない!俺に投票しちゃいけない!」

 

「今回も……?」

 

 と大柄男は、急に真剣な顔をして呟いた。

 

「もう9時になります……!」

 

 お嬢様女子が、切迫したトーンで話す。

 海老原さんは、菅野くんへ腕を伸ばした。

 

 それを見て、センター分け男子も真似をし、菅野くんへ腕を伸ばした。

 

「ごめん……っ!」

 

 お嬢様女子は謝ると、目を瞑って腕を伸ばした。

 

「……俺じゃねえ!!」

 

 菅野くんは、大柄男に。

 大柄男は、真剣な表情で腕を伸ばした。

 

「……なんで」

 

 その腕は、センター分け男子に向けられていた。

 順々と、投票していく。

 

 私は、ゆっくりと菅野くんへ指をさした。

 これで、全員の投票が完了した。

 

「……なんでだよぉぉ」

「……ひとつ、聞かせろ」

 

 大柄男は立ち上がり、菅野の目の前へ立った。

 

「お前も、後半戦なのか?」

「……そうだよ」

「……そっか」

「俺は!前回、狂人だった。俺は……あいつと違って、人を殺してないし、何も悪い事はしてない!」

 

 大柄男は、泣き叫ぶ菅野くんを黙って見ていた。

 

「お前がもっと早くカミングアウトしてたら、別の相手にしていた。後半戦の奴と、犯人像やこれからの事について、もっと話したかった」

 

「……おせぇよ」

 

 菅野くんは、テレビとは真逆の方へ歩いていく。

 その方向には、壁しかなかった。

 

「白々しい演技だったよ。」

 

 バァン!

 風船を割ったような、衝撃音が鳴った。

 

 菅野くんの向く側の壁は、彼の血がこびり付いていた。

 どうやら、首輪の中央が破裂したようだ。

 

「……っ!」

 

 大柄男は、顔を青くして、後ろに尻もちをついた。

 

「……え」

 

 人の死の瞬間を見たのは初めて。

 一瞬理解できなくて、すぐに強い恐怖感が襲ってきたのだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。