「えーっと、やっぱりここで三本アンテナだな」
俺はにとりのラボの裏手で座り込み、携帯を取り出した。
アプリの一覧に、草原の中に皿が置いてあるようなアイコンのアプリが増えてた。
名前は草の根妖怪ネットワーク。開くとにとりの生首が『ゆっくりしていってね!』と言ってる画像が表示され、設定画面に移行した。
「えーっと、名前は……木亥広星。
年齢は、16歳。電話番号は……えーっと電話帳電話帳……あったあった。よし、コピペ。好きな色?灰色と黒と白と銀だな。ペット?は!そんな金の余裕ねえよ!前科は……二科。好きな本は、とある、バカテス、都会トム、フルメタ、悪の娘、ゲートなどなど。好きな言葉、『食う!寝る!遊ぶ!その間にちょっと人生!』だな。好きな教科は……物理と体育だな。好きな音楽?ボカロ、アニソン。好きなアーティスト?ああ、最近藤宮ゆきさんとかlily-anさんとかよく聞くな……あとは……歌い手さんの名前は出さない方がいいかな?間奏ブレイカーズの皆さんが大好きなんだけど……好きな人?えーっと……そうだ。ネタで妖怪の名前書いてツッコミ待ちしよっと。黒谷ヤマメっと。そういやあいつ元気かなぁ……。あれ?逆にあいつ、病原菌の塊みたいな感じだっけ?あいつが、病気なら、医者の不養生ならぬバイキンマンの不養生だな。で、好きなもみじ?なんじゃこりゃ?……もみじ饅頭一択だな。好きなちぇん?うーん、チェーンソーインセクトかな。あいつ生贄いらねえのに攻撃力二千超えだから強いんだよ。アタックすると相手がドローするけど。好きなさとりちゃん?古明地さんやな。好きな双子は鏡音リンレン……」
しばらくしてから、設定が終わった。
「さてと!あ、Twitterみたいな感じにタイムラインがメインなのか。んで、ダイレクトメッセージもある……あり?ノート機能?それに音声メッセージ機能もある……おお!TwitterとLINEがいい感じに混ざってる!すげぇ!」
今、格安料金で一定時間B級グルメ食べ放題のような店に入った時のように感動に身を震わせてた。
俺はさっそくタイムライン機能で、
挨拶の文を書き込んで流した。
ここまで。
ここまで止めて、冷静さをなんとか取り戻すべきだった。
この後、興奮してて段取りを忘れて盛大に玉砕した。
2ツイート目で地霊温泉郷のことを宣伝したら、大炎上した。
よくよく考えたら当たり前だ。現実でも同じことをしたら、『宣伝乙』や『はいはい、ステマステマ』など、相手にしてもらえないだろう。
これが自分にだけ被害が収まるならよかった。もう一度ゆっくりと仲を改善して行けばいい。でも。
多数のユーザーからこんな言葉が聞こえた。
『やはり地底の妖怪はマナーもわきまえないクズばかりw』
俺が。俺の不注意で。俺のミスで、さらに地底の地位を下げてしまったのだ。
にとりのラボを離れてふらふらと自転車を押しながら、当てもなく山をさまよう。
街灯のない夜の闇は少し怖かったが、そこそこ夜目が効いてるので、どちらかというと携帯や飯のこと、そして、地底への心配が俺の頭を占めてる。
「……っと……がぁ!?」
俺は気づいたら落ちてた。チャリンコが重くなんとか妖力を使っても飛べず、落下速度を落とすとどまりしかできなかった。
どん、と音ともに木があまり生えてないところに着地すると、どっと疲労が押し寄せてきて、俺はその場にへたり込んだ。
「……腹減った…めし……」
そのまま寝転がり、空を見上げた。
そして、一瞬呼吸を忘れた。
星が。木で見えないところがあるが、それでも、俺の真上は切り取られたようによく見える部分があり、そこから覗く星に圧倒された。
星座もなにもわからないけれど、ただただ綺麗だった。
「……はは」
笑みがこぼれる。なぜ?なぜ?自分でもわからない。でも笑える。
「……あは…は……あははははは…あははははははははははははは!あっはっはっは!」
自分の中からドロドロと黒い感情が流れる。俺はそれを止める気は毛頭ない。
「あははは!なんだこれ!馬鹿じゃねえの!?あは!なんだこのオチ!何も!何もできてねえじゃん俺!あははは!あれ?何がしたかったっけ!?俺は何をするためにいるの!?あははは!わからねえ!わからねえよ!」
目から雫が流れるのを感じる。
俺は思いっきり地面を蹴り上げると空に土がまう。そして、その中にミミズが見えた。
地を掘り進み、土を食む者。目も何もない筋肉のみの生物。
俺はそいつを拾って握りしめ、思いっきり歯で噛みちぎった。
土の味が広がる。悪くはない。
「ねたましい!ねたましいぜ強者が!人気者がよ!英雄がぁ!あはははははは!くそが!」
俺はそこらの蛇を捕まえ、岩に叩きつけ、肉にかぶりつく。
うまい。肉だ。弱者の肉だ。
「あははははははははははは!」
あー、最初に間違えてGレポートって入ってるのは、もともとこれがLINEのボードに載せてるやつだからです。