Gレポート   作:木違 口虚

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今回も今回でごめんなさい。でも、結構これがやりたくてこの輝針城シリーズしてた。


後片付け

 

 

「広星。ここから先は通行止めよ」

俺の視界に弁々と八つ橋が入ってきた。真ん前に立ってて、わかりやすく通行止めのつもりだろう。

俺は口を開く。

「ええー?いいやんいいやん。ちーっと正邪がどこ行ったか気になるだけや」

「だから、それがダメなんですよ。後で連絡は行くので待っててください」

「……そうだなぁ。現状の報告だけでもなあ。今、人間に大量の被害が出てるぜ?どう思うよ?」

「あたし達にそんなのは関係ない。むしろせいせいしたって感じだ」

「おいおい、人間いなかったらお前ら生まれてねえぜ?なんでそんな……」

「広星、妙に人間に肩入れしますね」

「人間はあたし達を勝手に生み出して勝手に棄てて!あたし達をどう思ってるかなんて考えてなんかいないんだ!だから、あたし達道具が支配するんだ!この世界を!」

「へぇ。それはそれはつまらなさそうな世界やな。思わず笑っちまうぜ。ヒヒッ」

「どうですか?広星。今引き下がれば、もしそんな世界になってもあなたの社会的地位は保証します」

「降りる気なんてさらさらねえよ。ちょっとばかしこれは見てられないくらいひどい」

「……あたし達の名前を適当につけたり、そして今度は裏切るのか!身勝手すぎるぞ!」

「意見が違ったんだ。しょーがねえだろ?」

「お前のような奴がいるから!世界はぁ!」

さて、そろそろ頃合いかな。

俺は能力を解除した。

そして、通話ボタンを切る。

弁々と八つ橋は今頃、俺がいきなり早苗になってびびってるだろう。俺の姿を早苗と被らせるように立たせて、早苗の携帯とビデオ通話を行い、早苗のカメラを早苗の真ん前に来るようにして、あたかも俺がそこにいて弁々と八つ橋と話してるように演出していたんだ。

さて、そろそろかな。

「……あ、なんだ。巫女服やめたんだ」

俺は林の中のすこし開けたところで、正邪に追いついた。

というのも、正邪は林の中で寝そべってたんだ。当たり前っちゃあ当たり前。

正邪が言った通り、俺はもう巫女服を脱いでいる。俺の元々の半袖短パンだ。

「よう。正邪。人間にたくさん被害が出てたぜ?どう思う?」

「まぁ、でも、博麗のが動いてて、暴徒鎮圧して行ったんだろ?おあいこおあいこ」

「なるほどね。んで?針妙丸はどうしたんだ?一緒に逃げた方んじゃねえの?」

「あのアホは今頃小人族としてのアイデンティティを取り戻してると思うよ。身の丈の合わないことをねがった罰かな。ま、多分黒白魔法使いがぶっ放したゲロビでも食らって消し炭かもね。んで?何しに来たんだ?」

「ちーっと話し合いかな。目的は」

「そうか。でも、話し合いにエアガンはいらないだろ?」

「そうだな。素手で十分だな」

「まぁ、私もお前が大好きだし、今からちょっと平和に話し合おうじゃないか」

「あっはっはっは」

「あっはっはっは」

俺が正邪に殴りかかるのと、正邪が殴りかかるのは同時だった。

俺はあえて左の拳殴ったので、正邪の右の拳にあたり、うまいこと威力を殺すことはできた。が、まるで丸太でも殴ったような感覚だった。

「っ!」

思わずバックし、距離をとる。

「いってー……全く……まぁ、許すけどさ」

正邪はにたにたと笑顔を浮かべながら言う。

「てえい!」

妖力弾を正邪に撃つ。

「うわぁ!死んじゃう!」

妖力弾はまっすぐ俺に帰って来る。「ちっ!」

俺がしゃがんで回避すると、正邪は言った。

「ほらほら、来ないんだったら帰っちゃうよ」

正邪は軽くしゃがんだ後、こちらに手を伸ばしながら突っ込んで来た。

右手の苦手。左手の毒手。

あれはやばい気がしてならない。俺の仮説が正しければ。

けど。

「俺は蜃気楼だぜ?お前が見てる位置に俺はいねえ」

俺が能力を解除すると、正邪の目には俺が後ろに突如下がったように見えてるのだろう。俺の目の前で着地し、隙を見せる。

俺はその顔に右腕で殴りかかり、そして正邪の目の前で右腕を引く。

すると、吸い込まれるように拳は正邪の頬を殴った。

「が……な」

正邪は転がって姿勢制御する。

俺はあまり痛くない拳を軽く振り、正邪のわけがわからないといいたそうなツラにいってやった。

「なんでもひっくり返す程度の能力……なかなかいいよな。俺が攻撃しようとした時、直前で力の向きをひっくり返す。すると、痛みが全て俺に行くわけだ。でも、それはやる瞬間に体の周りの空気に自分の妖力を流す。ちょっと異能力者やってて長いから、能力が発動する瞬間は何と無くわかるんだ。後はタイミングに合わせて拳をひくだけ。さっき俺に飛びついて来たのは、血流を操作して逆流しようとしてた。元々動脈に比べて静脈は壁が薄い。もし逆流なんてすれば静脈は突如として来た大量の血で内側から破けてしまう。俺は妖怪だから即死じゃないけど、軽く戦闘不能になる。初段でそれをやらず、わざわざ手を広げてやったってことは、発動までに時間がかかるんだな?掴んで動きを止める必要があるほど。まぁ、当たらなきゃいいんだけどな。答え合わせは?」

正邪は舌打ちし、答える。

「ハズレだ……全く、針妙丸め……」

「ははっ!君のように勘のいいガキは嫌いだよってか?」

俺は正邪に突っ込み、右腕を振り上げる。

正邪も負けじと俺の懐に入り、俺をつかもうとしたが、俺がそのまま左足で弁慶の泣き所を蹴ったことで怯んでくれた。

「今度はあえて能力を使わなかった。言ったろ?読めるって」

俺はそのまま振り上げた右腕で思いっきり殴り正邪をとばす。

「立てよ。まだまだ足りねえんだ」

「……」

正邪は口の唇の端に滲んだ血を手の甲でぬぐった。そして、

「……本当に面白げもない奴だ」

と言った後、細かいジグザグとしたステップを踏み、こっちに殴りかかって来た。

腕をしたに下げ、拳を握ってるあたりからアッパーだろうと思われる。

「てぇい!」

俺は正邪の拳を左手で受け止める。

が、そのあとかなりの速度で頭突きが飛んできた。

「なっ……」

衝撃で怯んだ左手を正邪は振り払って俺の頭を掴み、思いっきり膝蹴りをされた。ぐちゅっと音がし、鼻に鈍い痛みを感じる。

正邪はそのまま俺を蹴り飛ばし、俺は地面に思いっきり叩きつけられる。

「能力全開だコラァ!」

正邪の言ってることは反対だろう。いまあいつは、能力を全て切ってる。能力に使う分の妖力を全て体力増強にしてる。先ほどとは反応速度が段違いだ。俺の能力に騙されず、まっすぐ俺を捉えた攻撃をしたのは、自分のまわりに妖力を流すのをやめたから、妖力が見えてきたのだろう。自分がスピーカーもって音楽を流してる時より、音楽を流してない時の方がどこから音がしてるかわかるように。俺が能力を流してる時の妖力から位置を逆探知してきたのだろう。けど、あいつ、かなりプッツンしてるな。さっき掴まれた時、血流操作しなかったし。よほど頭にキテるのか……好都合。

俺は立って能力の使用をやめ、iPhoneの電源を切り、リュックサックとウエストポーチを投げた。

荷物にさっき吹き飛んだ分の衝撃が入ってないのは多分、打ち出の小槌でパワーアップしたサユリがガードしてくれたんだろう。

「……よし」

正邪はもうすでに俺に接近し、右のストレートを放とうとしていた。

俺はしゃがみ、その正邪の腕を掴み、そのまま一本背負いで投げる。

そしてそのツラを思いっきり蹴ろうとするが、転がって回避される。

離れてても仕方ないから接近し、俺は右腕でフェイントをし、右足で蹴り上げようとする。

対して正邪は下段からの蹴り上げを読んでいたのか、思いっきり跳躍し、俺の頭を踏みつける。

首にかかる負担に顔をしかめながら、俺は勘で肘打ちを繰り出す。

正邪はそれを上体を後ろにそらすことで避け、腰のバネで姿勢を直し、勢いのままに右で思いっきり殴ってきた。

「ぐっ!」

その細腕では予想もつかない程の重い拳を肋骨に受ける。

俺は歯を食いしばり、サイドステップで正邪から一度離れ、正邪に向き直る。対して正邪は手を振り上げてきた。頭を思いっきり殴り、脳震盪狙いだろうか。目が参ってるのか、ルート的に明らかに俺に当たらないはずのところだ。

俺は顔狙いでフックを繰り出したが、いきなり正邪の姿が視界から消える。

何故?と、戸惑ってる間に俺の頬には正邪のかかとが当たっていた。

「ぐわっ!」

なんと正邪は身体を地面に飛び込むようにして拳をさけて、地面に手をつき、勢いのままにブレイクダンスの横領で足を回転して蹴っていたのだ。

俺は立って口にこみ上げてきた血を地面に吐き捨て、きっと正邪を睨む。

正邪もファインティングポーズを取りながら接近して右で拳を繰り出す。

俺もその拳めがけて左で拳で殴る。

続けざまに右で殴ろうとしたら正邪も俺の拳を左で殴る。

こうなったら持久力勝負だ。俺はがむしゃらに拳を振るう。

「へいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへいへい!」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!」

俺は拳とともにからかいの念を込めた言うと、正邪も呼応し殴りながら殺意を伝えてくる。

そのうち、正邪の拳のキレがだんだん悪くなってきたので、そのまま殴り抜ける。

「あめえ!知り合いの黒崎よりも全然あめえっての!」

俺は正邪に向けて親指を下げるモーションを見せ、挑発する。

正邪はゆらりと起き上がり、俺に走り寄る。

俺は一歩引き、まっすぐ正邪の腹に右ストレートを出す。

正邪はその腕に対して身をさばき、俺の腕の関節に膝蹴りをした。

ごきりという鈍い音とともに俺の関節が逆に曲がる。

「ぐぁぁぁぁ!?」

そのまま正邪は足払いし、俺のマウントポジションを取り、顔を何度も殴ってくる。

俺は顔全体に骨が肉にめり込んでくる痛みを受けつつ、左手で正邪の脇腹に手を突っ込んだ。

「っ!」

一瞬正邪が怯んだので暴れ正邪をどかす。

そして俺は左手で自分の右腕を掴み、正しい方向に力一杯引っ張る。

激痛が腕に走るが、踏ん張り、正邪から距離を取る。

軽く右腕を振るとなんとか動いた。

再生能力もなかなか上がってるらしい。

正邪は俺を見て嘲り、言った。

「強いなてめえ!こりゃあ能力を使うかいがあるってもんだ!」

聞く価値もない嘘を聞き流しつつ、俺は正邪の頭に手のひらを伸ばす。

正邪は鼻で笑い、その下をくぐって俺に腹パンをかまそうとする。もちろんわかってた。アイアンクローをいきなり出しても通らないくらい。けど。

俺は腹筋に力を込め、正邪の拳をできる限り衝撃をなくす。

お返しに正邪の肩のあたりの服を掴み、何度も膝蹴りを腹にかます。

「肉を切らせて骨を断つ!」

そして、足が少し疲れたので、手に力を込めて正邪を押し倒す。

そのまま追い打ちをかけようと正邪に近寄る。が、ハンドスプリングをいかした蹴りを繰り出されて身体は空中に投げ出される。

地面に再び叩きつけられたとき、一瞬息ができなかった。そして、立とうとして手で地面を捉えた時、感じ取った。

明らかに自分は消耗してる。さっきまではアドレナリンが分泌されてコンバットハイになっててあまり感じなかったが、今はもう全身が痛くてならない。

それでも、俺は。

対する正邪は立ってはいたが、膝が震えていた。

俺は声をかけようかと思ったが、こちらもそんな余裕はないため、決着をつけるべく、殴りすぎて痛い右手を握った。

そして、正邪に走り寄る。

対して正邪は動かず。

そして、俺は右腕を思いっきり振りかぶり、前に突き出した。

正邪も俺に向けて右ストレートを放って来る。が、俺と正邪の拳はぶつかることはなかった。

俺は右腕を引いて正邪の股間を蹴り上げていたからだ。

女の股間なんざ蹴ったことなかったが、手応えとして違和感が残った。

そして俺は最後に踏ん張り、正邪の頭を掴み、思いっきり地面に叩きつける。

「……ふぅ……」

俺は気絶したらしく動かない正邪を前に、身体を地面に投げ出した。上を見ると嵐は止んでいて、藍色の中にたくさんの星がきらめいていた。

俺はふっと笑い、疲労した意識をまどろみに任せてゆっくりと闇に落として行った。

 




あ、この後、わりと早く正邪さんは起きて逃げてったそうです。それでアマノジャクが始まるわけです。
もともと広星の道具をぶんどったらうまく逃げ切れるかもって思っての行動ですしお寿司。
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