ありがとう。読者の皆様。
それしか言う言葉が見つからない
川のほとり
「……なんだここ……無駄に広い」
俺は少し霧がかかった川のほとりを歩いていた。ちょっと前に目覚めたら花が咲き乱れる中で寝ていたもので、正邪と会話(物理)した後、何があったのかよく覚えてない。というか、正邪はいないあたり、あいつとは仲直りしたかったのに……というか、もしかしたら、今頃あいつは自宅でぬくぬくしてるかもな。妬ましい。こっちはさっきから人魂だか白玉だかよくわからんもんとしかすれ違ってねえってのに。
「あー、本当さ。なんなの?もっとまともなことに土地利用しようぜ……ん?」
目を凝らすと、遠くの岩の陰から、赤い髪が見えた。ありがてえ、人は一応いるみたいだな。
俺はゆっくり岩に近づきつつ、角度を変えると、一人の女性が岩に寄りかかって筆を持ち、幅は手のひらほどの細長い和紙を見つめていた。赤髪は頭の両サイドに束ねてあるが、その先は癖っ毛なのか緩やかなウェーブを描いてた。服装は水色だか青だかよくわからん中途半端な色をした着物で、胸部の大きなそれは自分の存在を全力でアピールしてて、目に毒なほどに眩い白をした首のあたりの肌や鎖骨を露出していた。帯には名前は知らんけど昔の真ん中に四角い穴が空いた紐で縛られてた。その刹那。女性はすらすらと流れるように筆を動かし、読み上げた。
「せせらぎや
生業ともに
しつれども
鎌を奪いし
冷たきあなた」
それは強かであり、優しい声をしていて、なんとなく古典の先公を思い出さし、条件反射的になんか眠くなった。
確か、短歌つったっけ?こういうの。すごいやつなんだろうが、俺にはよくわからん。
「岩となり
隠れて歌を
詠みければ
得も知らぬもの
汝はおのこ」
またなんかを言った。今度のは紙に書いてないようだ。とりあえず俺の数少ない古典知識を総動員して考える。
えーっと、岩となる?岩になってるのか?いや、岩隣か?んで、隠れて歌を読む?あー、今の状況ね。得体の知れない人?何時?あー、わかんね。
すると、女性は言った。
「岩の隣で、岩のように息を潜めて隠れて歌を詠んでいたら、得体も、短歌の心得も知らない人が来た。とりあえずわかるのはあんたは男だよね?ってこと」
「おう。三割わかった」
「七割わからなかったのか……で、あんたは誰だい?」
「あー、俺は普通風味の男子高校生、木亥広星だ。お前は?」
「あたいは小野塚小町、ここの川の船頭さ。あんた、この川を渡るのか?」
「すまん。ここってどこだ?気づいたらここでぶっ倒れてたんだけど」
というと、急に小町は困ったような顔をして、後頭部をかきながらキョロキョロあたりを見渡した。
「あちゃあ……多分あんた死んだんだよ。ここは三途の川で、私はまぁ、俗に言う死神なのさ」
何を言ってるのか理解できなかった。
「あっはっはっは。なにいってるんだ?それはない」
「じゃあ聞くけどあんた、ここに来る前何してた?」
「3Dアクションゲーム!」
「あんたを川にシュートしてやろうか?」
「というか、普通に会話してただけだぜ?」
「うーん……ケースは明らかに死亡と同じパターンだけど……これは……」
「っ!やめろ!俺は死んでねえ!」
「おや、小町、なんの騒ぎです?」
第三者の声が聞こえた。低い女声だ。
声のした方に目を向ければ、青を基調とした服をピシッと着て、独特のヘンテコな帽子を被った緑の単発の少女が背筋をしゃんと立ててこちらに歩いてくるのがみえた。第一印象としては、自分の苦手なタイプだ。昔のうるさい委員長を思い出す。
「あ、映姫様。どうしてこんなところに?」
「ちょっと休養を取ったので、現世でも回ろうかと。それであなたに案内を頼もうと思ったんですが……その男の子は?」
「木亥広星、という名らしいですよ」
というと、映姫は懐から一冊の古臭い手帳を取り出した。閻魔手帳、とかいてある。そして、中をパラパラとめくって、キッと俺を見てこう言ってきた。
「はぁ……まったく、なぜ最近の幻想郷はこんな人たちで溢れているのでしょう……なぜあなたは嘘をつくのです?だいたい嘘たはその場の現実を鵜呑みにしたくないからついてしまう現実逃避的行為なのに、なぜあなたはこうも簡単に嘘をつけるのです?あなたに辛い現実はあるでしょう。でも、あなたには待ってくれている人がいるじゃないですか。それなのにその現実から逃げてどうするのです?現実から逃げるとはとても愚かな行動なのです。現実は常に真実ともにある。この事を忘れてはなりません。前は進むためにあるのですよ?ただし、あなたは少し後ろを見過ぎている。あなたは自分の力が無いことをいい事に生き残るためとかなんかのためにいつでも真実を偽っている。それはとても由々しき行為です!真実を偽っても何も生まれません。むしろまわりを困らせるただそれだけです!そう。あなたは現実から逃げ過ぎている。何かしらとその場で真実を語らずにすぐに仮想や無かったことを話しててきとうに誤魔化してるだけです!判決は黒!あなたには再度現実を見つめ直す必要があります。ので、あなたにはまた生きてもらいます。そこで本来の真実は何か、本物の現実かを見直して来なさい!」
……
「じゃあ帰りはあちらから。気をつけて帰りな」
…………
小町と映姫は、何処かへ歩き出してしまった。
その二人の背中が妬ましかった。
きっと彼らは、堂々と胸を張って正論だけを語っても生きていける強さがあったのだろう。
ぼつり、言葉が漏れる。
「正直者は馬鹿を見るんだよ……」
もともと木亥広星さんは嘘つきです。
能力はその人の性質を表すってことで、テストの結果とかいろいろ隠して誤魔化して生きて来ました。
にしても、この短歌をつくるのはなかなかあれだった……やっぱり俺にはセンスないけど。