「……んん……」
少女が目を覚ました。
俺は左手に松明を持って右手の十徳ナイフを見せつけながら話しかける。
俺の予想だと、この世界には遠慮と言うのがあまりない。ガンガン強気で行くべし。
「さて、キリキリと話を聞かせてもらおうか……黙秘権はやらん。騙そうとしたりしたら……わかってんだよな?」
「ひっ!」
少女は完全に怯えてしまったらしく、部屋の隅でブルブルと震え始めた。
……前言撤回。
強気で行きすぎるのも考えものだ。
「あー、悪い悪い。脅してすまんかった。というか、お前、名前なんだ?」
尋ねると少女は深呼吸で気持ちを落ち着けてから答えた。
「……レイラ・プリズムリバー、と言いますの」
「OK。レイラ、お前の種族は?」
「人間ですわ。当たり前でしょう?」
「……本当か?人間の声には聞こえねえなぁ」
「私はれっきとした人間ですわ」
「……まぁいいや。他に家族とかは?」
「姉が三人いるのだけど……今は三人とも留守にしてますの」
「なるほど……まぁ、帰る方法探しなんだけど、どうしたものか……特に何も得るものねえしなぁ……帰る場所なんてどこにも無いけど」
「あ、あの……」
「お?」
「えっと……あなた、なんて名前ですの?」
「ああ。言ってなかったな。俺は普通風味の男子高校生、木亥広星だ」
「では、広星。今、外は危険らしいですわよ?なんでも、おとといの夜に起きた異変の首謀者を捕まえようと色んな方が酷いことをなさってるらしいので……もしかしたら飛び火するかもですわよ?なんでも、異変の協力者のうちの一人も行方不明で、巫女が探し回ってるとか……なので、よろしかったら姉達の帰りを一緒に待っててくれません?私一人じゃ寂しいんですの」
要するに、ここに泊まれというのか?こんなお化け屋敷に……でも、外なら俺はお尋ね者。
「……ところでレイラ、コインとか持ってない?」
「コインですか?それならこちらにございますわよ」
俺はコインを受け取り、表と裏を決める。
表ならGO。
裏はSTAY。
そして、指で弾いて空中で回転するコインを見つめた。
ちょっと悩んだ時はこうして運に自分の行動を任せるにかぎる。
だって。そうするとどんな結果になっても『運が悪い』と責任を他に求める口実ができて自分を騙せるから。
神、もといコインが下す答えは裏。STAY。つまり、ここに残ることだった。
「わかった。ここに残るぜ。というかいいのか?さっき軽くお前を壁に叩きつけちゃったぜ?」
「いえ、いいんですの。私も少し気を取り乱してしまっていたので……おかげで目が覚めましたわ」
「でも、もっと何かをするかもだぜ?」
「今のあなたの様子を見れば、あなたがどう言う人か読めますわ」
「へぇ……というか、ここって英語とかばっかで、お前も変な名前してるくせに、日本語うまいな」
「ニッポンはこれから大きく成長するだろうからと、勉強してましたの。これでも、貿易商の娘ですので、ビジネスの相手に失礼のないようにするのは当然よ」
「なるほどな……」
「ところで、電灯は使いませんの?」
その一言が一瞬理解できなかった。
だって、俺が探索した時にどの部屋にもその手のスイッチは見つからなかったからだ。
「お、おいおいレイラ?そんなもんあるの?」
「わかりませんでしたの?それとも、電灯を知りませんでしたの?まぁ、そんな松明を使ってる人の知識量なんてたかがしれてますがね」
なんか思いっきり見下されてる。まぁ、俺も作るのならもうちょっとマシなもん作るべきだとは思ったが……。
レイラはすっと立つとスタスタと入り口まで行き、スイッチをおした。
すると、上にあった蛍光灯に光がともる。
少しだけ目がくらみ、舌打ちする。
「……あったのかよちくしょう」
「日本人ってみんなそんななのですの?呆れてしまいますわね」
「ちげぇし!本気だしたらすげえかんな!?俺!」
「ふふふ……わかったわかった」
「馬鹿にすんな!だぁくそ!んで?俺はどこで寝たらいい?」
「そうねぇ……どこにしましょう」
「一階の西廊下の手前の部屋のベッドって使っていいの?」
と、俺が言うとレイラはパチパチと拍手していった。
「よく西とか東がわかったのね。いい子いい子」
頭を撫でてもらった。
……
「って子供扱いすんなや!」
「でも、何気満更でもないような表情してたでしょう?無理しなくていいんですのよ?」
「じゃかしい!」
なんかこいつ……本気で俺が原始人並みの知能だと思ってやがる……多分。目がマジだ。
「見てろよ!?絶対に見返してやるからな!?せいぜい足を洗って待ってろ!」
「……?私悪いこと何もしてませんわ」
「うっせぇ!ミスっただけや!」
俺はちゃんと松明を持ってレイラの部屋を出た。
ええ。レイラ・プリズムリバー。四女だお。まあ、最後まで読んで見て。どういうことかは書くからさ