※注意:未成年飲酒し、初体験のアルコールに半ば狂った少年がでて来ます。電波はちょっと……と思っても読んでください。
俺は、ジョッキを投げ捨てた。
「……ふぅ」
アタマぼーっとする。
ねつある?
考え まとまらない
さっき、グリーンベレーをかぶり、メガネをつけた男が何杯もビールを飲んでた。何故か、気づいたら敬礼していた。
幻覚?いや、どうでもいい。
なんだかとっても気持ちがいい。なんだかとっても幸せ。
俺は今歩いてる?立ってる?座ってる?今俺が手にしてるのは食べ物?飲み物?武器?防具?
なんでもいい。どうでもいい。
なにも理解できないけど、全てをわかった気がす?。
どんなにあくどいことをしても許される気がする。
そうか。幸せは、全てを掴んでいて、全てを掴んでいないのか。
そうか。平和とは、曖昧な灰色なのか。
そうか。生きることは、死ぬことなのか。
「あっはっはっはっはっはっは!」
ここは、対義語が同時に存在しつつ、対義語のどちらも存在しない1/0の領域だ。屍で腹を満たした地面はあいもかわらず可能性を吐き続け、する事なす事、全てが巡り回る。
やっとたどり着けた。でもどうしよう。人に伝えておくべきか。いや、世界に俺を咲かせよう。
俺はおもむろにハープを取り出した。
そっと指で弾き、かんを取り戻す。
指は震え、世界は揺れてるが知ったことじゃない。俺が憎んで愛したありとあらゆる蛹と夕闇に沈んだ昨日の哀を笑い、喜を泣くんだ。
「大好きだったあの君に♪足をもがれる夢を見た♪やだやだこんなのこの話♪皆が皆笑ってた♪」
気持ちが高ぶるままにわめく。胃液のようなものがこみ上げたが、無理やり飲み込む。
「うぷっ……アルファベットや数字をさ♪並べてわかる世界なら♪退屈過ぎて宙ぶらりん♪もっと幸せ詰め込んで♪混ぜ混ぜして咀嚼しよ♪」
音も声もグダグダだけど、それがどうした!こんなに世界は回ってる。俺の声が留まるなら、自転で世界の全ての人に聞かせられる。こんなに背伸びした俺は過去からみたら滑稽に見えるのか、偉く見えるのか。
わからないけど、何処と無く感じられる気がする。
「ひらひらふわりと千鳥足♪俺もお前も皆さんも♪ひらひらふわりと千鳥足♪行き先知らずの迷子道♪ひらひらふわりと千鳥足♪予知も予報も糞食らえ♪ひらひらふわりと千鳥足♪時に振り向きさようなら♪」
あ、誰かいる。俺の前に女の子がいる。誰だろう?なんだろう?
……?女子が泣いてる?悲しいのか?なにが?何故?どうして?俺になにができるだろう。俺はなにをすべきだろう。
誰かが何かを言っている。でも、なにも聞こえない。手招きしてる?なんだろう。
ぱちん。
女が俺の頬を叩いた。
その瞬間、冷水を頭からぶっかけられたような感覚がした。
目が覚めた。いや、生まれ変わった気分だ。揺れていた世界は戻り、目は冴え、感覚はクリアで、雑多なものは感じられない。身体は冷えていた。
目の前で俺を叩いた女の名をつぶやく。
「……レイラ」
レイラは柔らかく微笑むと、風の中に溶けて行った。
……なんだったのだろう。もう、レイラはいないはずなのに。
でも、言わなきゃいけない。いや、言うべきだ。
「ごめん」
頭を下げる。わざわざ、正気に戻してくれるために来たのだろう。どうやって来たのかよくわからないけど。
さて。一つ深呼吸し、顔を上げて、ぐるりと見渡す。
周りは暗く、さっきまで目に見えた提灯や人の姿は見えない森の中で、ぐるりと見渡してみても木より他はなし。
「……遭難したっぽいなこりゃ」
舌打ち一つ、木の枝を一本拾って上に投げる。
深い意味はない。投げた枝がさした方向に歩こうと思っただけだ。といっても、進む方向は二方向出来上がるわけだけど。その二択は適当にといったところだ。
「こっちだな」
青々とした草を踏みしめ、闇に目を慣らしながら歩く。すると、しばらく見なかった、まさに一年ぶりに見ることになるものをみた。
「……紅葉」
赤く色づいた葉っぱだ。別に木に詳しくとか全然ないから、これが何の葉っぱかわか、らないけど……あれ?椛ってこれだっけ?いや、違う。
なんと思いながら顔を上げると、暗闇の向こうに真っ赤な服を着た金髪の女の子が木にそっと触れてた。
こいつぁありがたい。
もしかしたら人里への帰り道を教えてくれるかもしれない。
「あ、あの……」
俺は声をかけようとした。でもできなかった。目の前で起きた出来事に思わず息を飲んでしまっていた。
女の子が触れてた木の葉が瞬く間に赤く衣替えをしたのだ。
と、見とれていると、金髪の女の子が少し木から離れた。そして、
「ちぇいさー!」
という掛け声とともにいきなり木に回し蹴りをしたのだ。木は揺れ、赤い葉っぱを撒き散らす。
恐ろしかったのは、その金髪の女の子は足の甲で蹴ってたくせに全く痛がっていなかった。少し想像するだけでも痛そうなのに、平然と次の木に向かってあるいてる。
それにしてもあの女の子がどういう奴なのか、危ないやつじゃないか?だって夜な夜な夜の森で木を紅葉させてから木を蹴ってるなんて、なんの意味があるかさっぱりわからん。考えられるとしたら、人間にみたてて八つ当たりしてるのかもしれない。ひょっとしたらかなり凶暴なやつかもしれない。
ここで戦っても意味はないだろう。
俺はそこまで考え、女の子とは違う方向へできるだけ気配を殺しながら走った。できるだけ早く、遠くへ。
……本音としては、かたすぎて勝てる気がせず、怖かったのだ。
「……はぁ……はぁ」
気づいたら森というよりもはや樹海の中に迷い込んでいた。といっても、なぜか細道があったから、そこを歩いてるわけだけど。歩きやすいことは歩きやすいが、泣き出したいほどに心細い。ヘンゼルとグレーテルがお菓子の家を警戒せずに入っていった気持ちがよくわかる。もしあったら罠だろうとなんだろうと踏み込みたくなるもんだ。
「……いや、俺はヤンデルとグレテルみたいな連中にガキじゃねえ。大丈夫だ!全ての道はローマに続いてる!つまり歩いてりゃどうにか都市には行けるから、そこからエアジャックしちまえばいい!」
などと叫んで無理やり強がりながら、どんどん歩く。
その時、確かに俺は聞いた。いや、まだ止まってない。
こちらに向かって歩く足音だ。とおりゃんせも聞こえてきた。
「ごめんなさい!調子こいてました!勘弁してください!」
思わず地面に膝をついて頭を下げる。
これはもう終わったな。きっと近づいてくる奴が俺の頭をちぎるんだろう。それか呪い殺すのだろう。
カチカチと歯が恐怖で震えていた。
情けない話だが、死ぬのは怖い物だ。
足音は俺の目の前で止まり、クスクスと笑い始めた。
ああ、怪物が無様な獲物を嗤ってる。
殺される?死ぬ?
どうせそうなるなら、一矢報いてやろうじゃないか!
俺は腹をくくり、能力で自分の位置を誤魔化しながら立ち上がるべく顔を上げようとした。
が、すっと差し出された手が俺に触れる。
「!?」
見えてる。目の前のこいつに誤魔化しは通用しない!
まさに手詰まりだ。こんなことなら、リュックサックの中をまさぐることさえ許してくれないだろう。
「えぇい!こうなったら煮るなり焼くなり好きにしろぉい!」
「……くすくす」
……なんか頭を撫でられてる。
いよいよ目の前にいるのが誰か気になって来た。
顔を上げると、ゴスロリ姿で長い緑の髪を前におろしてフリルがたくさんついたリボンで結ってある女性が微笑んでた。敵意はないようだ
「……誰だ?」
「鍵山雛と申します。わざわざ五体投地までありがとうございます」
雛はぺこりと頭を下げた。
何が何だかさっぱりわからん。
というか、触れられた後でなんだが、こいつからはなんか嫌な予感がする。まるで、死亡フラグ。
とりあえず、敵意はないらしいし、次行く方向を決める手がかりがあるかどうか話を聞いて、すぐさまこいつから離れよう。
「なぁ、鬼人正邪って奴を見なかったか?」
「……えっと……」
まじまじと雛が俺を見る。俺の目を覗き込み、何かを探ってるみたいだ。
俺がどうすべきか困っていると、女性はいった。
「……そうですね。この道をまっすぐ行くといいですよ」
「おう!わかった!」
俺が今まで通ってた道をそのまま走る。
「……ごめんなさい」
そんな声が後ろから聞こえた気がするけど、俺はスルーし、一気に道をかけて行った。
連投!