そう思う毎日、
「……あれ?パルスィがいない?」
地の底の橋を俺はヤマメと歩いている。ヤマメが周りを見てそう言ったので俺は訊いてみた
「パルスィって?」
「水橋パルスィ。橋姫なの。いつもここでつまらなさそうに頬杖ついているんだけど……今日はいないみたい」
「へぇ……」
「まぁ、広星君に言っても仕方なかったね。ごめんごめん」
「というか、結構深いな……ここ、地盤沈下とかしたら大惨事だろうな……」
「大丈夫よ。私が支えるから」
「……あれ?最近力ないんじゃなかったっけ?」
「あ、忘れてた。まあ、アトラク=ナチャに任せておけばいいか」
「誰だ?そいつ」
「ん?ちょっと異種族だけどね、知り合った強い友達」
話し込んでいたらいつの間にか橋を渡り終えてて、向こうに光が見えてきた。よく目を凝らすと待ちみたいなのが見えてきた。
「……へぇ、あ、なんか光が見えてきたな。あれが地霊殿か?」
「いや?まぁ、地霊殿の入り口みたいなものかな」
「というか、そもそもなんでこんな地下なんてあるんだ?」
「ああ、それはね。ここは昔地獄だったんだよ。でも、ちょっと部署をうつすことになって、その廃墟にわけがあるのが集まってるわけなんだよ」
「地獄か……うわ、まさかかつての地獄に足を踏み入れる事になるとは」
「人間はあんまりここまで来ないけどね」
「……あ、そういえば、ヤマメはなんでここに来たの?」
と訊いた途端、いきなりヤマメが速足で距離をとった。
そして、逆光に照らされながら俺に振り返る。満面ではあるが、嬉しそうな気持ちが全く読めず、逆に激怒してるとしか感じ取れない笑みを浮かべてた。
「……次にそれを訊いた時、そこで木亥さんを私のとっておきで大根おろしで削るように少しずつ命を削ぎ落とすよ?」
どこからどう見ても地雷だった。名前に君付けから苗字にさん付けまでに好感度が下がってる。
「ごめん」
「好奇心は厄介だよね。木亥さん。まるでハエみたいにぶんぶんと集って、目障りだよ」
「以後気をつけます。だから許してくれません?」
「……そうだな……じゃあ、地霊殿に行ったら下着一丁になって逆立ちしながら『ゆあっしょっく!』って叫んで」
「……え?きつすぎません?」
「断ったら、ここの知り合いのヘッドロックで骨を粉々にしてもらう」
「……まじ勘弁してくれ」
「それにしても、勇儀もいない…… まあ、勇儀は地霊温泉郷を作るとか で、工事かな」
あ、話がそれてくれた。これ幸いと思い、ヤマメに質問する。
「なぁ、あとどれくらいだ?」
「ん?もうすぐ着くよ」
ヤマメの言うとおり、目の前に大きな建物が見えてきた。
「あれか?」
「そうだよ」
「一人で住むには広すぎねえ?」
「そんなさとり妖怪だけなんてあるわけないでしょ。確か、妹と、ペットが居たわ。ペットの中で人間と口を聞けるのは二匹だけだけど」
「ふむふむ。なるほどね」
そして、地霊殿の前に来た。その時、ヤマメが肩を叩いてきた。
「ん?なんだ?」
「……斬新な挨拶、頑張ってね」
「……あ、さっきのか」
とりあえず、脱いでパンツ一丁になる。
少し肌寒い。地底だからだろう。温かい空気は上に、冷たい空気は下に行くって聞くし。決してヤマメの視線は関係ないだろう。うん。絶対に関係ない。ないから。
深呼吸した後、扉をノック。
「ノックしてもしも〜し」
「はい」
と、静かな声が聞こえて、扉が開く。
「どなたですk」
俺はどんな人が来たのか見えなかった。なぜかって?俺はブリッジしてていて、声のした方とは逆方向を上下逆の視点で眺めてたからだ。
そして、俺は叫んだ。
「ゆぁっしょっく!」
「……久振りね。ヤマメ」
「やっほー、さとり妖怪。ちょっと習い事に来たよ」
……無視された。まあ、これが一番マシな反応かな?うーむ……。
とりあえずやったことだし、ヤマメに許しを乞おう。
「……おい、ヤマメ、やったぞ?これで許してくれるか?」
「え?私はやって欲しいと言っただけで許すとは一言も言ってないよ?」
「HEEEEEEY!あーんまりだぁぁぁ!」
ヤマメはその時、心の底から楽しそうな笑みを浮かべていた。
「やめなさいよヤマメ。誰も得しないから。あと、そこのもさっさと服をきなさい」
地霊殿から出た、多分さとり妖怪と思われる声が聞こえてきた。
「そのさとり妖怪っていうのやめてくれる?私には古明地さとりって名前があるのよ。あなたに木亥広星と名前があるようにね」
……そのままじゃねえか。
高速で服を着ながらそっと思った。
「仕方ないじゃない。何事もわかりやすいってのがベストだし」
しっかりと心が読まれてた。これがこいつの能力か?
「ご名答。これが私の心を読む程度の能力」
……まあ、心読めて、そのあと何もしないあたりからこいつの限界を感じる……
「私に対して効果がない能力にそんなこと思われる筋合いはない」
服を着たので、俺は正面からさとりと向き合った。
さとりはピンク色の髪をしたちんまりとした低身長の少女で、空色の服が何と無く幼稚園児を思わせた。黄色い安全帽を頭にのせたらさぞかし似合うことだろう。
「……幼稚園児?何それ」
ただ、普通の人間と明らかに違うのがふわふわと紐のようなものを伸ばし、さとりの周りを浮いている目玉だろう。さっきからギョロギョロと俺の方を見てるそれは、少女が人間ではないことを雄弁に語っていた。
「さて、木亥広星。あなたはいろいろ教えて欲しいことがあるそうね。まずは、この世界、幻想郷について語らさせていただこうかしら。この世界、幻想郷は博麗大結界に囲まれた陸の孤島、忘れ去られた者達が集まるところ。言わば存在せざる者達の最後の楽園。ここでは他の世界で受け入れられなかったものばかりが集まるから、今までの常識を全て捨てることをオススメする。『あり得ない。なんてことはあり得ない』と言う事。ここはその中での地霊殿という場所。私の本拠地よ」
「……」
「この世界における戦いは全てスペルカードルールで統治されてる。遊戯における闘争。自分の得意技などを優雅に表現して闘うの。ルールは大きく分けて三種類。一つ目は弾幕ごっこと言って、攻め側と受け側に分かれて行う物。攻め側は使うカードの数を決めて、相手の体力を削りきれば勝ち。受け側は攻めの攻撃をかわしきれば勝ち。受け側にはボムと呼ばれるスペルカードを使うことができるわ。二つ目に、時間内に敵をどれだけ多く倒せたかを競う的当て。これは一人の場合だと移動しながらの体力やボムを入手できるの。もちろん、ボムは使ったら減るし、敵の反撃を受けたら体力は減るから、舐めてかかると悲惨なことになるわ。そして、三つ目が格闘戦よ。三つとも戦闘を宣言するとともに結界が貼られて、勝負が着いた途端に怪我は治るけど、攻撃はしばらくできなくなるの。これにより結果がついたってことになる」
「よし。わかったから、さっさとそのやり方を教えて?」
「わかったわ」
こうして、俺はさとりにここの戦闘術を教えてもらうことになった。
「……あれ?さとり、そういやヤマメどこ行った?」
「私といるのがよほど嫌らしくて帰った」
さとりさんは友達の大好きなキャラらしい。そいつからはおとがめなしだし、大丈夫だよね。